賃上げ目標とは
IT導入補助金においての賃上げ目標とは、
- 【給与支給総額】を年率平均1.5%以上増加すること
- 【事業場内最低賃金】を地域別最低賃金+30円以上にすること
を【3年の事業計画を策定】し、【従業員に表明】することです。
IT導入補助金においては、申請する枠によって、賃上げ目標を宣言される申請者に【加点】もしくは【必須】となります。
【厚生労働省】地域別最低賃金の全国一覧
※給与支給総額とは
全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)
※給与支払総額とは、決算書の項目で書くと
役員報酬+従業員給与+賞与+雑給+人材派遣費です。
事業場内最低賃金とは
工場・事務所・店舗内で働く人の中で、最も低い賃金で働く人の賃金のことです。
※従業員とは
IT導入補助金では「正規雇用」「契約社員」「パート・アルバイト」の人数を従業員数としています。
賃上げ目標の加点と必須の違い
IT導入補助金において、加点と必須に違いがあります。
必須:「賃上げ目標」が未達の場合、補助金の全部または一部の【返還を求められます】
加点:「賃上げ目標」が未達であっても、補助金の【返還は求められません】
賃上げ目標で加点される2つの条件
①3年の事業計画を策定する
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること
┗従業員規模50名以下の企業が短時間労働者を厚生年金に加入させる場合は、給与支給総額を年率平均1%以上の増加でOK - 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすること
- 事務局へ計画数値を期間内に報告すること
②従業員に表明する
- 社内掲示板等への掲載
- 朝礼時、会議、面談時等に口頭で
- 書面、電子メールによって
- その他の方法にて
3年の事業計画を策定し、従業員に表明はしなくても賃上げ目標で加点される5つの業種・業態
【IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型)版(PDF):P23参照】
①申請の要件に定める小規模事業者
業種分類 | 定義 |
---|---|
①商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数が5人以下の会社及び個人事業主 |
②サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
③製造業その他 | 常時使用する従業員の数が20人以下の会社及び個人事業主 |
- 「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」を意味する。また、会社役員及び個人事業主は予め解雇の予告を必要とする者に該当しないため「常時使用する従業員」には該当しないものとする。
- 本事業に申請する全ての事業者は、製品・サービスの生産・提供など、生産活動に資する事業を行っていることを前提とし、かつ申請・導入するITツールは、製品・サービスの生産・提供などの生産性向上に資するものであること。
②健康保険法、国民健康保険法、労災保険、自賠責保険の対象となる医療等の社会保険医療の給付等を行う【保険医療機関】及び【保険薬局】
③介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービスや施設サービスを提供する【介護サービス事業者】
④社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業及び更生保護事業法に規定する【更生保護事業を行う事業者】
⑤学校教育法に規定する学校、専修学校、修業年限が1年以上などの一定の要件を満たす【各種学校】
賃上げ目標が未達の場合どうなるのか
以下に該当する場合は、補助金の全部又は一部の返還を求められます。
- 【賃上げ目標が必須となるB類型】において、事業実施効果報告が事業実施効果報告期間内に提出がなかった場合
- 【賃上げ目標が必須となるB類型】において、(2)申請要件 (テ)」の内容を満たさないことを事業実施効果報告において事務局が確認した場合
(2)申請要件 (テ)の内容
【IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型)版(PDF):P8参照】
(テ)本事業のB類型に申請しようとする者(下記(注)の適用外の者は除く)は、以下の要件を全て満たす3年の事業計画を策定し、実行すること。
- 交付申請を行う時点で、以下の二及び三に規定する賃金引上げ計画を策定し従業員に表明していること。
- 事業計画期間において、給与支給総額*1を年率平均1.5%以上増加させること。ただし、被用者保険の適用拡大*2の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加させること。
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること。
- 以下の事業者については、(テ)で規定する要件の適用外とする。
被用者保険の任意適用とは
従業員規模51名~500名(ただし、2022年10月以降は51名~100名)の企業が短時間労働者を厚生年金に加入させることです。
※給与支給総額とは
全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)
※給与支払総額とは、決算書の項目で書くと
役員報酬+従業員給与+賞与+雑給+人材派遣費です。
(2)申請要件 (テ)を免れる(適用外)場合
- 賃上げ要件が【加点項目となる申請類型】を選択し交付申請した事業者
- 申請の要件に定める小規模事業者
- 「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」を意味する。また、会社役員及び個人事業主は予め解雇の予告を必要とする者に該当しないため「常時使用する従業員」には該当しないものとする。
- 本事業に申請する全ての事業者は、製品・サービスの生産・提供など、生産活動に資する事業を行っていることを前提とし、かつ申請・導入するITツールは、製品・サービスの生産・提供などの生産性向上に資するものであること。
- ②健康保険法、国民健康保険法、労災保険、自賠責保険の対象となる医療等の社会保険医療の給付等を行う【保険医療機関】及び【保険薬局】
- ③介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービスや施設サービスを提供する【介護サービス事業者】
- ④社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業及び更生保護事業法に規定する【更生保護事業を行う事業者】
- ⑤学校教育法に規定する学校、専修学校、修業年限が1年以上などの一定の要件を満たす【各種学校】
賃上げ目標未達によるIT導入補助金返還の例外について
- 付加価値額が目標通りに伸びなかった場合に給与支給総額の目標達成を求めることは困難なことから、給与支給総額の年率増加率平均が「付加価値額の年率増加率平均/2」を越えている場合
- 天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、上記の補助金返還を求めない。
- 給与支給総額を用いることが適切ではないと解される特別な事情がある場合には、給与支給総額増加率に代えて、一人当たり賃金の増加率を用いることを認める。
付加価値額とは
IT導入補助金においての付加価値額とは、粗利益を指します。
粗利益 = 売上高-原価
※給与支給総額とは
全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)
※給与支払総額とは、決算書の項目で書くと
役員報酬+従業員給与+賞与+雑給+人材派遣費です。
賃上げ目標を実際には表明していないことが発覚した場合
申請時に上記賃金引上げ計画を従業員に表明したと申告したにも関わらず、交付後に、実際には表明していないことが発覚した場合、事務局は、交付決定を取消されてしまいます。
- 策定した賃金引上げ計画目標が事業計画終了時点で達成できなかった場合
- 策定した賃金引上げ計画目標を事務局へ期間内に報告をしなかった場合
は、補助金の返還を求める。
なお、その場合の返還額は補助金交付額の上限とし、加算金・延滞金は含まないものとする。
(補助金の返還についての詳細は、以下の「給与支給総額の増加目標が未達の場合」「事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合」を参照)
賃上げ目標ごとの未達の違い
A【給与支給総額】の増加目標が未達の場合
- 事業計画終了時点の3年度目に達成/未達成を判断
B【最低賃金】の増加目標が未達の場合
- 3年間にわたって1年ごとに達成/未達成を判断
A【給与支給総額】の増加目標が未達の場合
事業計画終了時点において、給与支給総額の年率平均1.5%以上の増加目標が達成できていない場合は、補助金の全部の返還を求める場合がある。
補助金交付額が450万円のケースで、賃金支給総額の増加目標が未達の場合の返還額
- ただし、付加価値額が目標通りに伸びなかった場合に給与支給総額の目標達成を求めることは困難なことから、給与支給総額の年率増加率平均が「付加価値額の年率増加率平均/2」を越えている場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、上記の補助金返還を求めない。
- また、給与支給総額を用いることが適切ではないと解される特別な事情がある場合には、給与支給総額増加率に代えて、一人当たり賃金の増加率を用いることを認める。
B【最低賃金】の増加目標が未達の場合
事業計画中の毎年3月時点において、事業場内最低賃金の増加目標が達成できていない場合は、補助金額の全部若しくは一部の返還を求める。
ただし、付加価値額増加率が年率平均1.5%に達しない場合や、天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合は、上記の補助金一部返還を求めない。
補助金交付額が450万円のケースで、事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合の返還額
事業場内最低賃金の増加目標が
1年度目で未達の場合
全額
事業場内最低賃金の増加目標が
2年度目で未達の場合
返還額の2/3
事業場内最低賃金の増加目標が
3年度目で未達の場合
返還額の1/3
- 本事業において付加価値額とは、粗利益を指す。(粗利益 = 売上高-原価)
- 補助金返還額は、補助金額を労働生産性の計画目標年数である3年で除した金額に対して、その3年のうち目標未達年以降の年数(目標未達となった年を含む)を乗じた金額とする。ただし、未達となり返還を行った場合、翌年度以降の事業実施効果報告及び未達の場合の返還は求めないこととする。
- 3年度目において、事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合で、同時に給与支給総額の増加目標も未達である場合には、いずれか返還額の高い方での返還となるため、注意すること。
賃上げ要件の効果報告時の注意点
※賃上げ要件の効果報告においては、効果報告値と併せて必要に応じて証憑として
賃金台帳等事実の確認できる書類の提出を求める場合がある。
★IT導入補助金の報告を辞退した場合等
賃上げ目標必須要件の類型に申請した事業者(適用業種を除く)は、効果報告前及び賃上げ目標に定められた要件の達成状況判定前に辞退した場合、賃上げ目標の要件未達成とみなされ補助金の全額返還となるので留意すること。