マネージャーは、企業の上層部からは残業削減を求められ、現場からはサービス残業をしろということか?などと反発されて、板挟みになっている方も多いのではないでしょうか。
残業をしないチームを作るためには、第一にプレイングマネージャー自らの働き方を意識する必要があります。
プレイングマネージャーは、マネージャーとしての仕事とプレイヤーとしての仕事があります。どちらに重きを置いているかがポイントになるのです。
プレイングマネージャーは、個人の数値目標を課せられるうえに、マネージャーとしてチームの数値目標をも課せられるので、個人とチームどちらもバランスを考えなくてはなりません。
仕事の種類やチームの状態にもよりますが、8割をマネジメント、2割をプレイヤーとするくらいの気持ちでいることが効率的にも良いのではないでしょうか。
チームメンバーのモチベーション
例えば、プレイングマネージャー1名とメンバー5名、計6名のチームがあるとします。
仮に、プレイングマネージャーの戦力レベルが10で、他のメンバーが平均5だとすれば、チームとしては35の戦力があるといえます。では、チーム目標が37としたら、このままでは目標達成することは難しくなります。
このような時、多くのマネージャーは、プレイヤーとしての仕事に比重を置いて、チームに足りない戦力をマネージャー自らが補うことを選択するのではないでしょうか。
それは、マネージャーという仕事よりプレイヤーとしての仕事の方が成功体験も多く、結果が出しやすいし、やる気もわいてくるからです。特に、「最も戦力の高い自分が努力すれば解決できる」「マネージャー自ら頑張るのが当然」と考えるような責任感の強い人であればなおさら、そのような選択をされる人が多いでしょう。
こうして、プレイングマネージャーの懸命な努力によって、プレイングマネージャーの戦力が12となり、目標を達成できたとします。プレイングマネージャーはほっと胸をなでおろすとともに、頑張った自分をほめてあげたくなるでしょう。
しかし、この選択には深刻なリスクが伴うのです。
マネージャーが一人で頑張って成果を上げると、かえってチームのモチベーションを下げてしまう可能性があります。なぜなら、マネージャーが自分で何とかしようと考えるということは、チームメンバーには期待をしていないということになりかねないからです。そうすると、期待されていないと感じたメンバーは、マネージャーが頑張ればいいと解釈し、仕事に対するモチベーションを下げてしまいます。
さらに、マネージャーがプレイヤーとしての仕事に忙しく、時間的・心理的な余裕がないと、一人一人のメンバーの様子を観察して適切なサポートをするという「マネジメント業務」がおろそかになってしまう恐れがあります。
また、そんなときはメンバーとのコミュニケーションが不足がちとなり、一方的に指図してしまうことが増えてしまうこともあるでしょう。これは、さらに状況を悪化させてしまう要因となってしまいます。人は指図されると能動的に動かなくなり、指図されたことだけをやればいいと考える人も出てきてしまうのです。
極端なことを言えば、モチベーションが下がってしまったメンバーの前で「自分はこんなに頑張っているのに」というような感情的な発言をしてしまうと、ますますメンバーは委縮してしまい、チームとしての機能を果たさなくなってしまうかもしれません。
その結果、メンバーの平均戦力が5から4に落ちてしまうと、マネージャーが頑張って戦力12を保ったとしても、チームの総戦力は32となって当初より下がってしまうのです。
そして、そのマイナスを補おうとマネージャーがさらに無理をすることになれば、悪循環を招いてしまうのです。
プレイングマネージャーがプレイヤーに重点を置いて頑張りすぎることは、逆に大きなリスクとなってしまいます。
マネジメントの力
では、マネージャーとしての仕事に重点を置くとどうでしょうか。
マネージャーはあえてメンバーと同じ戦力5でプレイヤーとしての仕事をし、できる限りマネージャーの仕事に注力するとします。メンバーをよく観察し、問題を抱えているメンバーには適切なサポートをし、成長しているメンバーには具体的にほめる。マネージャーが担当していた仕事を少しずつ任せるなど、各自の得意分野に合わせて担当業務を見直す。メンバーの作業効率化のために上層部にIT投資を持ち掛けたり、チーム内の業務を精査して不要な仕事を減らす。
このようにしっかりとマネジメントができれば、メンバーが成長し個々の力を発揮しやすくなります。その結果、メンバーの平均戦力が6に上がれば、チームの総戦力が35と当初と同じ戦力になります。
総戦力の数字を見れば現状維持のようですが、チーム内に良いサイクルができていることを見逃さないでください。
マネージャーに頼りにされ自分の成長やチームに貢献していると実感したメンバーは、モチベーションを高めて成長軌道に乗ります。そうすれば、戦力レベルは伸びていくでしょう。それに応じて、チームの総戦力も上がっていきます。
このように、マネージャーがマネジメントに注力することで、以前よりも短い労働時間でチームの成果を上げ、目標を達成し続けることができるチームへと変わっていくのです。
これがマネジメントの力です。
マネージャーが頑張りすぎて疲弊するのとは真逆の現象を起こすことができます。
プレイングマネージャーがプレイヤーの仕事に重点を置かずに、本職はマネジメントとすることで、生産性の高いチームを作ることができるのです。