テレワークでのチームマネジメント
テレワークでも働きやすい環境を作るには、十分なコミュニケーションの他にチームマネジメントがポイントになると考えられます。テレワークとオフィスワークでは、チームマネジメントのやり方に違いはあるのでしょうか。
離れた場所で仕事をするテレワークは相手の状況が見えないので、オフィスワークと同じようなチームマネジメントができるかどうか、漠然と不安を感じる責任者も少なくないと思います。しかし、働く場所や使用するツールが変わっても、業務内容そのものは変わらないので、マネジメントする責任者の役割は本質的に変わることはないでしょう。
伝え合う
マネジメントの役割りとして、「目標や指針を伝える」「それぞれの行動や議論を促す場づくり」「最終的な意思決定」があると考えられます。これらは、コミュケーション方法が変わると大きく影響を受けることになります。
テレワーク業務では、対面での会話がなくなり、テレビ会議やチャットでのコミュケーションが主体となります。そのため、同じ業務でもオフィスワークのとき以上に文字で伝える力が必要になります。
対面であれば、雰囲気や空気感でチームを率いることができていたかもしれませんが、非対面のコミュケーションでは言葉の比重が大きくなるので、空気感でチームをまとめることは難しくなります。
チャットなどのテキストコミュニケーションは、文字として残るので、受け取った側もじっくり読んで理解したり、あとから読み返して確認することもできるので、対面の会議に起こりうる聞き漏らしがなくなります。
このように、オンラインコミュニケーションはひとつひとつの言葉が明確に伝わるので、雰囲気で伝えてきたことも言葉にして伝えることが必要になってくるでしょう。
チームリーダーは、メンバーに「伝える」だけでなく、メンバーの反応、意向を知ることも重要です。
対面での会議なら、チーム内の表情や雰囲気で感じ取れることもありますが、テレビ会議で顔が見れると言っても、表情を読み取るのが難しいことが多く、チームリーダーに迷いが生じることがあるかもしれません。
円滑に意思統一を図るためには、チームメンバーには、いつも以上に言葉で伝える意識を持ってもらう必要があります。
全員が言葉で伝える意識を持っていれば、対面の会議以上にフラットな議論ができるようになるでしょう。さらに、役職順に席が決まっているオフィスでの会議と違って、テレビ会議は画面に常時参加者の顔が並んでうつるため、上下関係を感じづらくなることもフラットな議論ができる要素になるでしょう。
テレワークでは、ジェスチャーや表情よりも言葉によるコミュニケーションが中心となります。チームリーダーが伝えるべきことを伝え、チームで建設的に話し合うためにも全員が明確な言葉を使うことが重要なのです。
人材マネジメントとプロジェクトマネジメント
マネジメントを行う人が実務も行っている、いわゆるプレイングマネージャーとして働く人も多いと思います。テレワークを新しく導入するとなれば、プレイングマネージャーを続けることはとても大変なことです。一人が全てを背負うのではなく、チームメンバーに役割を分散させる意識を持つことも大切かもしれません。
一般的にマネジメントというと、上司が部下を指揮し、監督するものと思われますが、役職に関係なく意欲のある人がマネジメントをするという考え方もあると思います。
例えば、プロジェクトを発案した人がチームを作り、マネジメントをするということもできるのではないでしょうか。また、既存のチームで新たなプロジェクトを立ち上げたとしても、やる気のあるメンバーがマネジメントの役割を担い、チームリーダーはサポートにあたるという形もあり得ると思います。
様々なマネジメント業務がある中で、メンバーの能力や意欲に応じて仕事を任せることも、一つのチームの形ではないでしょうか。
相談しやすい環境
テレワークにおける人材マネジメントにおいて、チームメンバーの精神的サポートをすることはとても重要です。
精神的サポートで最も大切なことは、気軽に相談できる環境であることです。
この「気軽に」というのがなかなか難しいのです。人間関係がおろそかになっていると、チームメンバーからリーダーに問題を打ち明けづらくなり、ミスを隠したり、トラブルを見て見ぬふりをするなんてことも起こり兼ねないのです。
オフィスワークでは、困った様子だったり、疲れた表情などに気づくこともできますが、直接顔を合わす機会が少ないテレワークでは、チームメンバーの異変に気付きにくくなります。
また、メンバーがチームリーダーに相談したいと思っていても、テレワークでは、予定を合わせてテレビ会議のセッティングをして・・・などの手間を考えると、わざわざ時間を取るほどではないと遠慮するメンバーも少なくありません。
その対策として、チームリーダーが相談を受けられる時間を確保して、それをメンバーに公開することが効果的と考えられます。また、突発的にチームリーダーの時間が空いた時には、「今ならどんなことでも話しかけてOK!」と発信するなど、相談のハードルを意識的に下げるようにしましょう。
また、チームリーダーが率先してテレワーク制度を利用し、メリットを伝えていくことも大切です。
テレワークは、体験して初めてわかることも多いのです。例えば、休憩を取りにくく疲れやすいことや、業務の仕方に工夫が必要なこともあるでしょう。チームリーダーも他のメンバー同様にテレワークをしていれば、テレワーク中の悩みに共感したり気づくことができ、メンバーもフラットに相談することができるでしょう。
状況把握
テレワークでは、会話や表情からチームメンバーの状況を把握することができないため、日報などに業務の所感などを書いて、チームリーダーに伝えることを習慣化するといいでしょう。
毎日の業務報告だけでなく、その日の雑感を書き加えてもらうことで、チームメンバーの状況を感じるきっかけとなり、必要としているサポートが見えるてくるでしょう。
テレワークに限らず、オフィスワークでも日ごろからチームメンバーの状況をよく観察することは大切です。
メンバーそれぞれの働き方の傾向や、チーム内での立ち位置などを把握していれば、先回りして助言することができます。
メンバー同士のサポート
働くメンバーの様子を見ることができないテレワークでは、チームリーダーが一人ですべてのメンバーの状況を把握することはとても困難でしょう。メンバー同士で気づいたことがあれば、チームリーダに報告してもらうようにしましょう。情報をオープンにしたオンラインコミュニケーションは、誰でもやり取りを見ることができるので、異変に気付ける人数が増えるのです。
オンラインコミュニケーションに消極的なメンバーがいる場合には、リーダーから積極的にコミュニケーションをとることでフォローするようにしましょう。
意見調整
業務を行う中で、チーム内での意見の違いはあって当然のことです。チーム内で意見の対立が起きた場合、チームリーダーは問題解決に導かなくてはなりません。
第一のポイントは、テレビ会議を使うことです。
テキストコミュニケーションでは、先に言ったもの勝ちになりやすい傾向があります。インパクトのある意見に「いいね」と賛同する人が多く集まることで、違う意見を言い出すことができなかったり、テキストコミュニケーションだけではニュアンスが十分に伝わらず、話がかみ合わないことがあるかもしれません。
お互いの表情を確認しながら話し合いができるテレビ会議なら、誤解招くことも少なくなるでしょう。
第二のポイントは、最終決定者であるチームリーダーが、責任をもってメンバーに説明をすることです。
例えば、イレギュラーな働き方をしているメンバーがいるとします。当事者が他のメンバーに報告するだけでは、不審感を持つメンバーが出る可能性があります。そんなときは、イレギュラーな働き方を許可したリーダーから、他のメンバーに向けて説明を付け加えます。リーダーが事情を聴いたうえで許可したことであれば、納得感も強まり、さらにはリーダーが責任を持つという安心感にもつながります。
第三のポイントは、チームリーダーがメンバーの話をよく聞くことです。
問題が起きたときは、関係する一人一人とテレビ会議で顔を見ながら話をしましょう。
問題の解決方法
問題について話し合うとき、今どのような事実があり、どのような原因でその事実が引き起こされているのかを考えます。原因が見つかったら、「○○できない」ではなく「○○をする」に変換します。これが課題(=ToDo)となります。
この課題を行動に移すことによって、理想と現実のギャップが小さくなり、問題解決へとつながるのです。
チームメンバーの状況やチーム内に起きていることを、リーダーが知らないということはあってはなりません。
リーダーが知らない状態であることが、メンバーの不満の大部分を占めていることもあります。
テレビ会議を利用して一人一人の話をきいてみると、大体の状況を把握できるものです。リーダーが話を聞いて受け止めることができれば、改善できることが多くあるものです。
テレワークの勤怠管理
テレワークでは、それぞれが別の場所で業務を行うため、勤怠管理が問題になります。
出退勤・休憩の報告、日報や成果物の提出など、たくさんの義務を課して監視すれば、マネジメントする側は安心できるかもしれません。
一方でチームメンバーは、通常業務以外の報告や提出が増えることで窮屈な思いをすることになり、大変な思いをしてまでテレワークで業務をしたくないと考える人も出てきてしまうかもしれません。
メンバーに義務を課す場合には、その目的をはっきりさせ、納得したうえで実施することが望ましいのです。
勤怠管理については、自社に合うやり方を模索するのが一番ですが、それに費やす時間や労力を最小限にしたいものです。チームリーダーは、過去の報告を優先させるのではなく、この先どんなことをしていきたいかなど、未来についての話を聞くことに時間を費やす方が建設的ではないでしょうか。仕事の管理については、チームメンバーを信頼し、ある程度本人に委ねることも必要になるでしょう。
メンバーそれぞれに仕事の管理を任せるには、「隠し事をしなくてもよい組織風土」を作る必要があります。
不当に責められることがなく、相応な人事評価を受けられる信頼があれば、厳しい勤怠管理がなくても自己管理しながら働くことができます。
対面でチームが揃うときには、積極的にコミュニケーションを取るようにしましょう。チーム内で信頼関係を気付くことができていれば、離れて仕事をするテレワークでも詳細な管理は必要はありません。
チームメンバーがテレワークでも十分に力を発揮するためには、強固な監視下よりも、のびのびと仕事ができる環境である方がいいのではないでしょうか。
業務のチーム化
テレワークで滞りなく業務を遂行すためには、業務をチーム化することです。そのためには、自分しか知らない情報を作らないようにしましょう。
オンラインで業務についての情報を共有し、チーム全員が同じ情報にアクセスできるようにします。こうすることで、チーム全体で仕事に取り組むことが可能になります。
テレワークとオフィスワークを併用している場合は、分業がポイントになります。
オフィスに置かれた機材や道具を使う業務は、テレワークではすぐに取り掛かれないため、出社している人が担当外であっても業務をこなせるようにします。その代わりに、オフィス外でできる業務は、担当ではない案件も含めてテレワークで処理するなど、テレワークとオフィスワークで業務をカバーし合うといいでしょう。
しかし、専門性の高い業務は、誰かに代わってもらうことが難しいことが多いものです。
このように担当者にしかできない業務こそ、スケジュールやタスクなどの情報を共有することが大切です。
特定の人にしかできない業務が明確であれば、他の仕事を分担するなどして、必要な時に優先して業務を行ってもらうよう判断することができます。
チームで情報共有することで、プロジェクト全体が属人化されることなく、より効率的な分業ができるようになります。
意思決定の見える化
プロジェクトを効率よく進めるためには、業務計画や進捗状況をチームに共有することは重要です。
テレワークでは、その「タスクの共有」と並んで「意思決定」についても見える化することがポイントになります。
計画書やリスク対策、次のプロセスへの移行など、プロジェクトには様々な意思決定が必要となります。
すべての意思決定をチームリーダーが担うということもないでしょうから、誰がいつ、どの仕事につて意思決定するのか等を明確にしておくといいでしょう。
意思決定の担当者が明確であれば、誰に相談し、許可を取る必要があるのかなど、悩むこともありません。
テレワークでも高い成果を上げられるよう、タスクの見える化と意思決定の見える化は重要なのです。
テレビ会議
テレワーク中は、テレビ会議システムを活用してオンラインでプロジェクト会議を行うことになります。
対面会議に比べると、オンライン会議ではチームの参加意識が低くなりがちです。オンライン会議を実のあるものにするためには、チームリーダーが会議の初めに目的を説明して、参加者に会議における役割を意識させることが大切です。
画面上の限られた情報では、ほかの参加者の様子を読み取りにくく、発言したことが相手に伝わっているか不安になったり、発言のタイミングを逃したりと、活発な議論になりにくい傾向があります。
対処法としては、進行役の人がひとりひとりメンバーを指名して発言を促し、全員に発言してもらうことが良い効果を期待できます。また、発言する人が安心して話せるように、いつも以上にうなづいたり相槌をするなど、聞き手の人にはわかりやすいリアクションをするように心がけてもらいましょう。
それ以外にも、テレビ会議システムのチャット機能を使ってコメントしたり、絵文字機能を使って反応する方法もあります。わかりやすいリアクションをすることで、オンライン会議を盛り上げ一体感を生み出せれば、オンライン会議であっても充実した会議を行うことができるでしょう。
人事評価
テレワークでは、メーンバーの行動を直接確認できないため、そのプロセスにおいてどう活躍し、価値を生み出したのかを判断することが難しくなります。また、売上高や営業訪問件数など、数値化されるものが着目され、成果主義に偏りがちだといわれています。
メンバーの意欲や姿勢といった情意評価や、実行力や指導力などの能力評価が難しくなるテレワークでは、オフィスワークと同等の評価が得られないことで、メンバーからテレワーク制度を避けられてしまう可能性があります。
ある企業では、テレワークの評価として成長評価を設けています。メンバー自身が年間の成長目標を設定し、年度終わりにリーダと成長度合いを話し合いフィードバックします。
目標設定することで、リーダの着目点の目安となり、そのメンバーが成長しようとした努力を評価に入れやすくなります。
リーダがプロセスや情意、能力を適切に評価してメンバーにフィードバックすることで、テレワーク時の成果主義的な評価と目に見えない価値のバランスを取ることができます。
テレワークの継続
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、非常に多くの企業がテレワークの導入し、活用しました。
セキュリティ意識を高く持てば情報が守られること、オンラインでも工夫次第で十分なコミュニケーションが
取れること、情報を共有すれば滞りなく業務を進められることなど、テレワークを経験したことで実感できた人も多いと思います。
コロナ化が落ち着いて出勤ができるようになったり、テレワークの課題にぶつかったからという理由で、テレワークをやめてしまうのはあまりに惜しいです。今後も、パンデミックが起きたり、大きな災害などで出勤することが難しい状況に陥ることもあるかもしれません。
テレワークは人材獲得にも有効な手段です。今後もテレワークを活用し、多くの企業やチームに根付かせてほしいと思います。