「毎日投稿して、ハッシュタグも30個近くつけているのにフォロワーが増えず、来店にもつながらない」
多くのSNS担当者が、こうした悩みを抱えています。「インスタのハッシュタグはもう意味がない」「検索流入はオワコン」といった噂も耳にするでしょう。日々の地道な作業が、無駄になっているのではないかと不安になっていませんか。
結論から言うと、ハッシュタグは決して無意味ではありません。ただ、「かつてのような魔法の集客ツールではなくなった」というのが実情です。
Instagramのアルゴリズムは年々進化しています。単にタグを大量に並べるだけでは、以前のような効果は得られません。それどころか、誤った使い方はアカウントの評価を下げる要因になりかねないのです。
なぜ今、「ハッシュタグは意味がない」と言われるのでしょうか。本記事では、その背景にあるアルゴリズムの変化と、多くの企業が陥りがちなミスについて解説します。

なぜ「インスタのハッシュタグは意味ない」と言われるのか?
SNSマーケティング界隈で囁かれる「ハッシュタグ不要論」。この章では、その真偽とプラットフォーム側が意図する本来の役割について解説します。
結論から言えば、ハッシュタグは決して無意味ではありません。しかし、その機能は「拡散装置」から「分類ラベル」へと大きく変化しました。この認識のズレこそが、運用担当者を苦しめる最大の要因です。
役割は「拡散」から「分類」へ
かつてInstagramにおいて、ハッシュタグはフォロワー以外へ投稿を届ける唯一無二の「導線」でした。ユーザーはハッシュタグ検索(タグる)を頻繁におこない、そこから新しいアカウントを発見していたのです。
しかし現在、Instagramはハッシュタグだけに頼っていません。
画像認識技術とAI(人工知能)の進化により、システムはハッシュタグがなくても、写真や動画の内容を理解できるようになりました。AIは以下の要素を統合して、おすすめ(発見タブ)に表示させるコンテンツを決定しています。
- キャプションの文章
- 画像内の要素
- ユーザーの滞在時間
現在のハッシュタグの役割は、AIに対して「この投稿は〇〇ジャンルです」と補助的に伝える「分類ラベル」へと移行しました。直接的な集客ツールというより、Instagram内SEOにおける「カテゴリ登録」に近い意味合いが強まっています。
「意味ない説」が決定的となった背景
この不要論が決定的になった背景には、Instagramの責任者であるアダム・モッセーリ氏の発言が影響しています。
彼は自身のInstagram上で、ユーザーからの質問に対し「ハッシュタグはリーチ(閲覧数)を増やすためのものではない」と明言しました。ハッシュタグはあくまで「コンテンツを理解しやすくするもの」であり、それだけで表示回数が劇的に増えるわけではないという事実が示されたのです。
また、ユーザー行動の変化も無視できません。 現在のユーザーは、検索窓に言葉を打ち込むよりも、アルゴリズムが提案する「発見タブ」や「リール」を受動的に眺める時間が圧倒的に長くなっています。
「検索されない」かつ「公式も重要視していない(ように見える)」。この二重の要因により、「ハッシュタグは意味ない」という極端な言説が生まれたのです。
しかし、正しくは「ハッシュタグさえつければ伸びる時代が終わった」だけです。AIに正しいターゲット層を学習させるために、適切なタグ付けは依然として不可欠な工程と言えます。
ハッシュタグの効果が出ない3つの原因
ここからは、実際に運用現場で頻発している「努力が報われないハッシュタグ運用」の具体的な失敗パターンを3つ提示します。もしこれらに心当たりがある場合、日々の投稿作業そのものを見直す必要があるでしょう。
ビッグキーワードばかり選んでいる
「多くの人が検索する言葉を使えば、多くの人に見てもらえるはず」
この考えは、SNS運用における典型的な落とし穴です。
投稿件数が10万件を超えるようなビッグキーワードは競合が激しく、上位表示を狙うのは至難の業です。これは、創業したばかりの個人商店が、Google検索でいきなり「グルメ」や「ランチ」という単体キーワードで1位を取ろうとするようなものです。
特にフォロワー数が少ない段階では、ビッグキーワードでの流入はほぼ期待できません。それにもかかわらず、毎回 #東京 #大阪 といった広義すぎるタグばかりを使っていませんか。
それでは、ターゲット層に届かず、アカウントの成長は停滞します。「検索ボリュームの大きさ」と「自社への流入数」は比例しないという現実を、まずは直視する必要があります。
投稿内容とハッシュタグに関連性がない
Instagramの画像認識AIは極めて優秀です。写真に写っているのが「ラーメン」なのか「パスタ」なのか、あるいは「人物」なのか「風景」なのかを、テキスト情報なしでも高い精度で判別しています。
ここで発生するのが、情報の不一致による評価ダウンです。 画像認識AIが「これはコーヒーの写真だ」と判断しているのに、ハッシュタグに #タピオカ #スムージー などが含まれていると、Instagramのアルゴリズムは混乱します。
その結果、「このアカウントは正確な情報を提供していない」と判断され、「発見タブ」や「おすすめ」への露出が制限される可能性があります。
これは検索流入以前に、Instagram全体からの信頼を落としてしまっている状態と言えます。
固定のハッシュタグを毎回コピペしている
効率化のために、スマートフォンのメモ帳などに「いつものタグセット」を保存し、毎回の投稿で何も考えずにコピー&ペーストしていませんか。実はこれも、効果が出ない大きな要因の一つです。
Instagramは、その時々のリアルな投稿を好みます。毎回まったく同じハッシュタグ群が並んでいると、システムはそれを「ボット(自動化ツール)による機械的な操作」あるいは「スパム的な挙動」と疑う傾向があります。
また、投稿ごとの微妙なニュアンスの違いを無視して同じタグを使い続けることは、本来獲得できたはずのニッチな検索ニーズを逃がしていることになります。
思考停止したコピペ運用は、楽ができる反面、アルゴリズムの恩恵を受けるチャンスを自ら捨てているようなものです。
それでもインスタにハッシュタグが必要な3つの理由
「意味がないなら、つけるのはやめようか」そう考えるのは早計です。
先述の通り、「つけただけで無条件にリーチが伸びる時代」は終わりました。しかし、ハッシュタグは「拡散装置」から「分類ラベル」へと役割を進化させています。
Instagramという巨大なデータベースの中で、あなたのアカウントが「何を発信している誰なのか」をシステムに正しく認識させるために、ハッシュタグは依然として不可欠です。
この章では、現代の運用におけるハッシュタグの真の価値を3つの視点から解説します。
発見タブに表示されるチャンスが広がる
現在、Instagramでフォロワー外に投稿を届ける最大の経路は「発見タブ」です。
ハッシュタグは、アルゴリズムがあなたの投稿を理解するための「名札」のような役割を果たします。適切なタグがついていると、AIは以下のように処理をおこないます。
- 認識:「この投稿には『#ベイクドチーズケーキ』がついている。スイーツ関連の投稿だ」
- マッチング:「最近スイーツの投稿をよく見ているAさんの発見タブに、これを表示しよう」
つまりハッシュタグは、検索結果に載るためだけでなく、「興味関心の高いユーザーのおすすめ欄に載せるためのシグナル」として機能するのです。タグをつけないことは、この分類の機会を自ら放棄することになります。
ハッシュタグ検索からの流入が期待できる
「ググる」から「タグる」へと言われるように、ユーザーの検索行動は変化しています。特に、来店や購入を真剣に検討しているユーザーほど、ハッシュタグ検索を活用します。
例えば、「#新宿ランチ」と検索する人は、「今度新宿に行くから、良さそうな店を探したい」という明確な目的と高い熱量を持っています。
発見タブをなんとなく眺めるユーザーに比べ、検索経由のユーザーは、来店や購入といった「コンバージョン(成果)」に直結しやすいのが特徴です。リーチ数は以前より減ったとしても、「濃い見込み客」との接点を作るチャネルとして、ハッシュタグ検索は依然として強力です。
ブランド認知とコミュニティ形成に役立つ
独自のハッシュタグ(オリジナルタグ)を作ることで、ファンとのコミュニティを形成できます。
「#(店舗名)」「#(商品名)のある生活」といった独自のタグを発信し、フォロワーにも使ってもらうよう促してみましょう。ユーザーがそのタグを使って投稿(UGC)してくれれば、それが第三者による信頼できる「口コミ」として機能します。
独自タグに投稿が蓄積されることは、「これだけ多くの人が利用している」という信頼の証となり、新規顧客の安心感を醸成します。これは単なる検索対策を超えた、ブランディングにおける重要な機能です。

効果的なインスタのハッシュタグ選定5ステップ
ハッシュタグの役割が「数の勝負」から「質の勝負」に変わった今、どのような基準で選ぶべきなのでしょうか。
ここからは、SNS担当者が明日から実践できる、無駄のない選定プロセスを5つのステップで解説します。
【ステップ1】大・中・小のボリュームでバランスよく選ぶ
ハッシュタグはその投稿件数(ボリューム)によって、狙える効果が異なります。これらをバランスよく組み合わせるのが鉄則です。
| 種類 | 投稿件数の目安 | 特徴と狙い |
| ビッグワード | 10万件以上 | 競合が多く埋もれやすいが、当たれば爆発力がある。 例:#カフェ #ランチ |
| ミドルワード | 1万〜10万件 | ある程度の検索数があり、上位表示も現実的に狙えるゾーン。 例:#東京カフェ巡り #渋谷ランチ部 |
| スモールワード | 1万件未満 | 検索数は少ないが、競合が少なく「人気投稿」に載りやすい。 ターゲットが絞られており、濃いファンに届く。 例:#神南カフェ #渋谷個室ランチ |
最初は「スモール多め・ミドル少々・ビッグ1つ」くらいの配分を意識しましょう。まずはスモールワードでの上位表示を狙い、アカウントの評価を積み上げていく戦略が有効です。
【ステップ2】投稿内容に関連性の高いタグを優先する
アルゴリズムの評価を高めるための最重要ルールは、画像・文章・ハッシュタグの一致です。
もしあなたが「いちごパフェ」の写真を投稿する場合、
- OK:#いちごパフェ #スイーツ #カフェ
- NG:#いいね返し #副業 #海
関係のないタグが含まれていると、AIは「スパム的な挙動」と判断し、投稿の評価を下げてしまいます。「なんとなく人が多そうだから」という理由で、投稿内容と乖離したタグを入れるのは避けましょう。
【ステップ3】ターゲット層が検索しそうなタグを選ぶ
「写真に写っているもの」をただ言語化するだけでは不十分です。「お客様がどのような言葉で検索するか」を想像してください。
例えば、整体院が「腰痛施術」の様子を投稿する場合、
- 事業者目線:#骨盤矯正 #施術風景 #整体師
- お客様目線:#腰痛改善 #産後ダイエット #デスクワーク疲れ
お客様は施術の手法ではなく、自分の悩みの解決策を探しています。専門用語ばかりを並べるのではなく、ユーザーの悩みや利用シーンに寄り添った言葉を選ぶことで、本当に届けたい相手に見つけてもらえる確率が高まります。
【ステップ4】適切な個数は3~10個を目安にする
かつては「30個マックスまでつける」のが正解とされていましたが、現在は潮目が変わりました。Instagram公式も過去に「3〜5個程度」を推奨する発言をしています。
なぜ少ない方が良いのでしょうか。それは、タグが多すぎると、AIに対して「この投稿が何についてなのか」という情報のシグナルが分散してしまうからです。
30個のタグがついた投稿よりも、厳選された5〜10個の関連性の高いタグの方が、AIは「これは〇〇についての投稿だ」と明確に理解できます。
- 数よりも「関連性」を重視する
- 無理に30個埋めるための「捨てタグ」を入れない
まずは3〜10個程度を目安に、本当に必要なタグだけを厳選する運用に切り替えてみてください。
【ステップ5】投稿ごとにハッシュタグを見直す
「固定セットのコピペ」がNGである理由は前述の通りですが、これを防ぐには、投稿を作成するたびに「今回の写真にベストなタグは何か?」と問い直す習慣が必要です。
同じカフェのアカウントでも、「新メニューの告知」と「店内の雰囲気紹介」では、選ぶべきタグは異なります。
- 新メニュー:#新作スイーツ #期間限定 #いちご好き
- 店内紹介:#落ち着く空間 #Wi-Fi完備 #ひとりカフェ
毎回すべてを変える必要はありませんが、少なくとも2〜3個は、その投稿特有のタグに入れ替えることで、AIに対して「毎回オリジナルのコンテンツを発信している」というポジティブなシグナルを送ることができます。手間はかかりますが、この積み重ねがアカウントの信頼性を高めます。
目的別・業種別のインスタハッシュタグ例
ここまで、ハッシュタグ選定の理論とルールを解説してきました。この章では、それを具体的な実践に落とし込むため、主要な5つのジャンルにおけるハッシュタグの構成例を紹介します。
重要なのは、単にこれらをコピーすることではありません。「なぜこのタグを選ぶのか」という選定の意図(ユーザーの検索心理)を理解し、自社のアカウントに合わせて応用することです。
美容・コスメ系
美容ジャンルは情報の鮮度が命です。ユーザーは非常に具体的な悩みを抱えて検索をおこなう傾向があります。商品名だけでなく、「誰のためのものか(属性)」や「どうなれるのか(ベネフィット)」を組み合わせることがカギとなります。
構成例
- ビッグ(認知): #コスメ #美容 #スキンケア
- ミドル(属性・特徴): #イエベ春 #敏感肌スキンケア #韓国コスメレビュー
- スモール(悩み・具体性): #マスク荒れ対策 #時短メイク #オフィスメイク
化粧品メーカーのアカウントであれば、成分名(#レチノール #CICAなど)を入れるのも有効です。ユーザーは成分単位で効果を検索するほど知識レベルが上がっているため、専門性の高いタグほど購買意欲の高い層に刺さります。
グルメ・飲食系
飲食店の場合、最も重要なのは「場所 × 目的」のマッチングです。ユーザーは「どこで」「誰と」「どんな気分で」食事をするかを決めるために検索します。Instagramは地図アプリの代わりに使われていることを意識してください。
構成例
- ビッグ(ジャンル): #カフェ #ラーメン #居酒屋
- ミドル(地名×ジャンル):#新宿ランチ #梅田カフェ #横浜ディナー
- スモール(利用シーン):#子連れランチ東京 #個室焼肉 #女子会コース
「#おいしい」といった抽象的なタグよりも、「#〇〇駅グルメ」のように駅名まで絞り込んだタグの方が、実際の来店につながる確率は格段に高まります。エリア特化型のタグを最優先してください。
ファッション系
ファッションに関心があるユーザーは、服そのものよりも「着用後の自分」をイメージしたいと考えています。そのため、体型や身長、着用シーンに焦点を当てたタグが効果を発揮します。
構成例
- ビッグ(系統):#ファッション #コーデ #古着
- ミドル(スタイル):#大人カジュアル #シンプルコーデ #ママコーデ
- スモール(悩み・属性):#150cmコーデ #低身長ファッション #骨格ウェーブ #着痩せコーデ
最近は「#骨格ストレート」や「#ブルベ冬」など、自分の身体的特徴に合わせた服を探す検索行動が主流です。自社商品がどの骨格や体型に合うのかをタグで明示することで、ユーザーの「自分事化」を促せます。
ビジネス・副業系
このジャンルは怪しいスパム投稿が多いため、信頼性の獲得が最優先事項となります。「#稼げる」などの煽るようなタグは避け、具体的なスキルや学びの内容を示すタグを選びましょう。そうすることで、質の高いフォロワーを集められます。
構成例
- ビッグ(テーマ):#ビジネス #マーケティング #フリーランス
- ミドル(対象者):#社会人の勉強垢 #起業女子 #webデザイナー
- スモール(具体的スキル):#インスタ集客 #ライティング講座 #canvaデザイン
企業の公式アカウントであれば、「#(企業名)の裏側」や「#広報の日常」といったタグを活用しましょう。中の人の顔が見える発信をすることで、親近感と信頼感を醸成できます。
育児・ママ系
育児ジャンルは「共感」と「地域コミュニティ」がキーワードです。孤独を感じやすい育児中のユーザーは、同じ境遇の人や、リアルな解決策を探しています。キラキラした投稿だけでなく、等身大の悩みに寄り添うタグが反応を得やすい傾向にあります。
構成例
- ビッグ(属性):#男の子ママ #新米ママ #赤ちゃんのいる生活
- ミドル(月齢・年齢):#生後6ヶ月 #1歳誕生日 #イヤイヤ期
- スモール(悩み・地域):#離乳食拒否 #ワンオペ育児 #東京ママ友募集
子どもの成長は早いため、ターゲットとなるタグも数ヶ月単位で変化します。「#プレママ(妊娠中)」から「#産後ダイエット」へ、ユーザーのライフステージの変化に合わせたタグ選びを意識してみてください。

まとめ
本記事では、ハッシュタグは意味ないと言われる背景にあるアルゴリズムの変化から、現代における正しい活用法、そして業種別の具体的な選定事例までを解説してきました。
最後に、最も重要なポイントを3つ振り返ります。
- 役割の変化:ハッシュタグは「拡散のための魔法」から「コンテンツを分類する名札」へと役割が変わった。
- 質の重視:大量のタグ投下やコピペは逆効果。関連性の高いタグを3〜10個厳選する。
- 顧客視点:事業者目線の言葉ではなく、ユーザーが検索する「悩み」や「目的」をタグにする。
Instagramのハッシュタグは、決してオワコンではありません。使い方を間違えなければ、あなたの投稿を本当に必要としている「未来のお客様」と巡り合わせてくれる、強力な架け橋となります。
ただし、ハッシュタグはあくまで補助的なツールです。忘れてはならないのは、タグ検索でたどり着いたユーザーが、思わず保存したくなるような有益なコンテンツを作り続けることに他なりません。 タグ選定に悩みすぎて、投稿の手が止まってしまうのは本末転倒です。まずは目の前のお客様が喜ぶ情報を、一つでも多く発信してください。その積み重ねの上に、正しいタグ戦略を乗せることで、成果は必ずついてきます。
