テレワークという働き方は、良くも悪くも組織や個人に変化をもたらします。
テレワークはICTを活用した時間や場所にとらわれない働き方なので、個人の働き方は自由になり、企業にとっては、これまでにないやり方で事業展開することも可能です。
テレワークをうまく活用できれば、多くの組織とそこで働く人にとって大きなメリットとなります。
個人の変化
生活に仕事を合わせる
第一に、テレワークは自宅にいながら働くことができるので、通勤時間が無くなります。
従来の働き方では当たり前だった時間ロスがなくなることで、その分の時間を違うことに充てることができます。
さらに、混雑した電車やバス等で通勤する必要がないということは、ストレスの軽減にもなるでしょう。
第二にフレックスタイム制との相性です。
テレワークとフレックスタイムを組み合わせることで、一日の時間の使い方が自由になるでしょう。
たとえば、毎日送迎が必要な小さな子供がいる場合、従来の働き方なら時短勤務にすることが一般的ですが、
在宅勤務であれば一度仕事を抜けて、送迎を終えてからすぐに仕事に戻ることができます。
このように、テレワークなら生活に合わせた仕事の時間調整ができるようになります。
育児や介護と仕事の両立はとても困難で、仕事を続けることができない人も多くいたと思います。
しかし、テレワークを活用することで、それぞれの家庭の事情に合わせた時間で働くことができれば、育児や介護を担う働く人にとって、心身の負担が大きく軽減されるのではないでしょうか。
働き方の可能性
仕事と生活の混在
コロナ禍で突然テレワークへと働き方が変わった人の中には、自粛中の学校休校時に家族全員が家で過ごしたという人もいたと思います。そうなると、仕事の途中で家事や育児をしなくてはならないということが度々起きていたのではないでしょうか。
本来、仕事は生活の一部であり、仕事と生活をはっきりと分断することは難しいものなのです。
共働きが多い時代で、夫婦どちらも仕事と家事を行う場合は、仕事と生活が混在していることが自然といえるでしょう。
日々の暮らしは突発的な出来事の積み重ねですから、暮らしに合わせて柔軟に働けることが、より自然な形だろうと思います。
生活の拠点
テレワークは毎日の通勤がないため、様々な土地に暮らしながら働くことが可能です。
従来の働き方では、家庭の事情やライフステージの変化による引越しを機に、仕事を辞めざるを得なかった人も多いと思いますが、テレワークなら、場所にとらわれず今まで通り仕事を続けることができるかもしれません。
地方では就職先の選択肢が限られることも多く、やりたい仕事に就くために故郷を出て、都市部で就職することはよくあることです。さらに、一度都市部で就職すると、その後故郷に戻って暮らしたいと思っても、簡単に叶えることが難しいことが少なくありません。
しかし、テレワークが普及すれば、仕事を続けながらUターンすることが可能になります。
働く場所を自由にするテレワークは、仕事か生活かの選択を迫ることもありませんし、やりたい仕事か地元での生活かを選ぶ必要もなくなります。
住む場所に関係なく、自己実現を叶えられるようになるのではないでしょうか。
企業の変化
採用活動でのアピール
労働人口が減少し人手不足が深刻する中、最近では就職先を選ぶ人の感覚が変化し、働き方も含めて、可能な限り自分の希望を叶えらえる職場を求める人が多いといわれています。
企業側は、このようなニーズに応えられなければ、人材を確保することが難しくなってきています。
そのため、企業が採用機会を得るための人事戦略として、テレワークを導入する重要性が増しているといえます。
テレワークを利用すれば柔軟な労働環境を提供でき、働く人はプライベートの時間を多く持てたり、働く場所に制限されることがなくなります。それに魅力を感じた多くの人に、就職先として選んでもらいやすくなるということもあると思います。
また、テレワークは採用活動そのものにも変化を与えます。
海外に留学中の学生や企業所在地から離れた地域で暮らす学生とも、テレビ会議システムを使って採用面接をすることが可能です。そうすることで、企業から離れた場所にいる人の採用機会を逃さずにすみます。
企業がテレワークでの在宅勤務を主な働き方として認めていれば、離れた土地で生活する人も生活の基盤を変えることなく働くことができます。地方で暮らす人が、都市部の企業を就職先として選択肢に入れるようになれば、企業にとって採用の可能性が広がります。
反対に、地方の企業がテレワークを活用することで、都市部の人材を採用できるようにもなります。
地方では、急速に人口が減少しており、人手不足は地方企業にとって深刻な問題となっています。
テレワークを活用すれば地方に移住することなく働けるので、都市部からでも人を集めることができます。
さらに、複数の職業を持つ複業採用をすれば、さらに採用機会の幅は広がります。
都市部の労働者は、それまでの仕事や生活を維持したまま、地方でさらなる能力を生かすことができます。
地方の企業にとっては、都市部で経験を積んだ専門的なスキルを身につけた人でも、給与負担が大きくなることなく雇用しやすくなります。
都市部に暮らす人が地方企業で働くことで地方活性化、地方創生につながります。
働く場所にとらわれないテレワークは、都市部の労働者を地方へ、地方の労働者を都市部へ動かして、雇用の流動性を高める働きがあると考えらえます。
生活基盤にかかわらず、スキルの高い人材が全国各地の企業で働くことができるようにするためには、テレワークが人的資源の有効利用に貢献するといえるのではないでしょうか。
地方展開
テレワークを活用することで、物理的な支店を設けなくても、個人単位で支店事業を任せることが可能になります。
地元にいることで、地域の仕事を手伝ったりしながら新たな交友関係が生まれて、そこからビジネスに発展することもあるでしょう。テレワークで働くメンバーそれぞれが、各地の支店として働くことができれば、全国に小さな拠点ができることになります。将来的に広い範囲で地域ネットワークを持てる可能性がでてくるかもしれません。
人間関係を重視する地域の中には、今まで関わったことのない人といきなりビジネスをする習慣がないことも多いのです。すでに地方のコミュニティを持つメンバーが、そこで支店を構えてビジネスをする方法は、理に適っているといえるかもしれません。
情報格差
複数の支店を構える企業でよくある問題が情報の格差です。
本社で決められた事項が、一連のプロセスを知らされないまま伝えらえ、支店はそれに従うだけということがあります。支店からは、本社の意図が見えづらく、不信感を抱いたり、わだかまりが生じてしまうリスクがあります。
テレワークが浸透すれば、距離に関係なく情報の共有が可能となり、本社と支店の情報の格差は小さくなるでしょう。
海外展開
時間と場所に制限されないテレワークは、海外との時差の影響を受けづらく、グローバル企業や海外進出を考える企業にとっては、業務効率が上がることが期待されます。海外とのやり取りで、時差による遅い時間の打ち合わせのためオフィスに残って対応したり、勤務時間をずらして対応することもあると思います。しかし、テレワークなら、オフィスで待つことなく、自宅から約束の時間にオンライン会議にアクセスするだけで済むのです。
個性の積み重ね
テレワークは働く場所の時間や場所の制約がなく、柔軟な働き方を実現することができます。
テレワークが普及し、社会で当たり前に受け入れられたなら、フルタイムでオフィス中心に働く人、在宅勤務とオフィス勤務を併用する人、時間を決めて在宅勤務をする人など、人の数と同じ数の働き方が可能になるのです。
従来の企業は、働く場所や時間はもちろん、従業員を一定の形式にそろえて組織を作り、目的を達成させるやり方が一般的でした。個人の働き方が変わると、企業はその多様な働き方を受け入れることを求められます。
大きさも形も違う「石」を積み上げて石垣を築くように、それぞれの能力、違う働き方を積み重ねて組織を作るようになるでしょう。
個人は自分らしく働くことが可能になり、ワークライフバランスが向上して暮らしが豊かになり、おのずとパフォーマンス力も上がります。
個人が働きやすくなると同時に生産性も上がり、企業にとってもプラスになることでしょう。
求められれる力
働き方が固定されていた従来と違って自由な働き方を選択できるということは、自分がどのような暮らしの中で、どういう仕事をしていきたいかを、個人に問われることになります。自分の働き方のビジョンを明確にしておかないと、どの時間にどの場所で働くのかさえ選ぶことができません。それではチーム内の仕事の分担も難しくなり、自分自身の目標も見えなくなります。
自分がどう働きたいのかという明確な意思を持つことが個人に求められます。そして、チームの中で自分をどう活かすのかを考える必要があります。自分の強み、弱み、役割を見つけなくてはなりません。メンバーそれぞれが自分の個性を相手に伝えられるようになれば、チーム力は一層高まることでしょう。
一方、組織は多彩な個性をまとめて成果を上げることが求められます。
一人一人の個性をうまく組み合わせるためには、メンバーの能力や状況を把握し、どのような働き方で力を発揮できるかを知る必要があります。そのうえで、一人一人に合う役割を分担するなど、きめ細やかなマネジメントが求められます。
それぞれの個性を生かすことができれば、今までにはないアイデアが生まれるかもしれません。その新しいアイデアを基に違った価値を生み出せれば、さらに企業の競争力は高まることでしょう。新たな価値はインパクトのある革新や刷新、変革をもたらすことになるかもしれません。