「工務店の集客にインスタグラムが良いと聞くけれど、何から始めれば…」
「本当にインスタグラムで家づくりのお客様が見つかるのだろうか?」
スマートフォンの普及に伴い、顧客の情報収集の方法は大きく変わりました。特に、家づくりを検討する中心層である20〜40代にとって、インスタグラムは単なる情報収集ツールではありません。暮らしのイメージを膨らませ、ライフスタイルを考える上で欠かせないツールになっています。
この記事では、工務店がインスタグラム集客で成果を出すための具体的なノウハウを解説します。運用のメリット・デメリットといった基礎知識から、投稿の考え方、成果を出すための5つのステップまで網羅的にご紹介します。 ぜひ最後までご覧いただき、集客活動にお役立てください。
なぜ今、工務店がインスタグラム集客に取り組むべきなのか?

多くの工務店がインスタグラムを集客の柱として活用し始めています。その理由は、家づくりの主要顧客層が最も利用しているSNSがインスタグラムだからです。
総務省情報通信政策研究所が発表した「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、インスタグラムの年代別利用率は以下のようになっています。
- 20代:78.8%
- 30代:68.0%
- 40代:57.2%
この数値は、まさにこれから家を建てようと考える中心的な年齢層と重なります。
従来のチラシや住宅展示場といった手法では出会えなかった未来のお客様が、インスタグラムには数多くいるのです。 さらに、写真や動画で魅力を伝えるインスタグラムは、デザイン性や世界観が強みとなる工務店の家づくりと非常に相性の良い媒体といえるでしょう。
工務店がインスタグラム集客で得られる5つのメリット
インスタグラムの重要性は理解できても、具体的にどのようなメリットがあるのか気になるところでしょう。ここでは、工務店がインスタグラム集客に取り組むことで得られる、代表的な5つのメリットを解説します。
低コストで始められ費用対効果が高い
まず挙げられるメリットは、費用対効果の高さです。インスタグラムのアカウント開設や投稿は無料のため、初期投資をほとんどかけずに始められます。
もちろん、広告出稿や運用代行の依頼には費用が発生します。しかし、自社で運用する場合、コストは人件費が中心です。新聞広告や住宅情報誌への掲載などに比べ、コストを抑えて幅広いターゲットに情報を届けられる可能性があります。
家づくりの潜在層にアプローチできる
インスタグラムは、「そろそろ家を建てたい」と考える顕在層だけではありません。「いつか素敵な家に住みたいな」と考える潜在層にもアプローチできる点が強みです。
ユーザーは「#注文住宅」や「#おしゃれな家」などのハッシュタグで検索します。また、発見タブで好みの投稿を眺める中で、偶然あなたの工務店を知るかもしれません。この「偶然の出会い」を創出できるのは、インスタグラムならではの魅力です。
魅力的な施工事例を発信し続けることで、潜在層の憧れを育み、将来の顧客へとつなげられます。
顧客との信頼関係を築きやすい
家づくりは、お客様にとって一生に一度の大きな買い物です。だからこそ、最終的に選ばれるのは「信頼できる」工務店と言えるでしょう。
インスタグラムでは、コメントやDM(ダイレクトメッセージ)を通じて顧客と直接やり取りができます。そのため、信頼関係を築きやすいというメリットがあります。投稿への質問に丁寧に答えたり、家づくりの相談に乗ったりすることで、お客様との間に親近感や信頼感が育まれます。
この地道なコミュニケーションの積み重ねが、最終的な契約への重要な鍵となります。
ホームページやイベントへの導線になる
インスタグラムは、単体で集客を完結させるツールではありません。より詳しい情報がある自社のホームページや、見学会・相談会といったイベントへの「入り口」として重要な役割を果たします。
プロフィール欄には、自社サイト等へのリンクを1つ設置できます。また、ストーリーズ機能を使えば、投稿にリンクを貼り付けて特定のページへユーザーを直接誘導することも可能です
「この家の間取りをもっと見たい」「見学会に参加したい」と感じたユーザーを、スムーズに次の行動へつなげる導線を設計しましょう。
採用活動にも好影響を与える
意外に思われるかもしれませんが、インスタグラム運用は採用活動にも良い影響をもたらします。会社の理念や家づくりへの想い、スタッフの日常や現場の雰囲気を発信することで、企業の文化を求職者に伝えられるからです。
株式会社リソースクリエイションが実施した「26卒におけるSNS就活についての実態調査」によると、就職活動中の学生の85.8%がSNSで企業名を検索し、そのうち67.3%がインスタグラムを利用したと回答しました。 自社の魅力を多角的に発信することは、理念に共感する優秀な人材の獲得や、入社後のミスマッチ防止にもつながる効果的な採用ブランディングと言えます。
始める前に知っておきたいインスタグラム集客のデメリット
多くのメリットがある一方、インスタグラム集客には注意すべき点もあります。ここでは、運用を始める前に知っておきたい4つのデメリットとその対策を解説します。
メリットだけでなく、こうした現実的な側面も理解した上で取り組むことが、成功の鍵となります。
短期的な成果は出にくい
インスタグラム運用は、すぐに問い合わせが増えたり、契約につながったりする即効性のある施策ではありません。
広告とは異なり、投稿を通じてファンを増やし、時間をかけて信頼を築く「資産蓄積型」のマーケティング手法だからです。成果を実感できるまでには、少なくとも半年から1年程度の期間を見ておく必要があります。
短期的な成果を求めすぎず、長期的な視点でコツコツと継続することが何よりも重要です。
運用リソース(時間・人材)の確保が必要
手軽に始められる反面、継続的な運用には相応のリソース(時間・人材)が必要です。
- 投稿作成:写真撮影、動画編集、キャプション作成、ハッシュタグ選定
- 交流:コメントやDMへの返信
- 分析・改善:成果を分析し、次の施策を立案
こうした一連の作業には、想像以上に時間がかかります。
片手間で運用しようとすると、投稿が滞ったりお客様への対応が疎かになったりして、かえって企業イメージを損なうことにもなりかねません。「誰が、週に何時間使って運用するのか」という体制を、事前にしっかり整えておきましょう。
専門知識が求められる
ただやみくもに施工事例の写真を投稿しているだけでは、残念ながら集客にはつながりにくいでしょう。成果を出すためには、マーケティングの知識やインスタグラムのアルゴリズムへの理解が求められます。
「誰に(ターゲット)、何を(コンセプト)、どう伝えるか」という戦略設計から、投稿の分析方法(インサイトの見方)まで、学ぶべきことは少なくありません。
自社での学習が難しい場合は、専門家のコンサルティングを受けたり、セミナーに参加したりするのも有効な手段です。
炎上リスクとコメントへの適切な対応
SNSである以上、意図しない形で批判的なコメントがついたり、情報が拡散されたりする「炎上」のリスクが常にともないます。
特に、建築基準や施工に関する誤った情報を発信した場合、企業の信頼を大きく損なう事態になりかねません。また、お客様からの否定的な意見やクレームが、コメント欄に書き込まれる可能性もあります。
こうした事態に備え、以下のようなリスク管理を徹底することが重要です。
- コメントへの返信ポリシーをあらかじめ定めておく
複数人で投稿内容をダブルチェックする体制を整える
【成功事例に学ぶ】工務店のインスタ集客、3つの勝ちパターン

ここからは、実際にインスタグラム集客で成功している工務店アカウントを分析し、その「勝ちパターン」を3つに分類して解説します。
自社の強みや特徴と照らし合わせ、どのパターンが最もフィットするかを考えることで、アカウント設計のヒントが見つかるはずです。
パターン1:美しい世界観でファンを魅了する「施工事例」特化型
デザイン性の高い住宅や、特定のテイスト(例:北欧モダン、和モダン、無垢材の家など)に強みを持つ工務店に最適な、王道のスタイルです。
建築雑誌のような美しい施工事例の写真を投稿し、アカウント全体で統一感のある世界観を創出。これによりユーザーのファン化を狙います。
成功の鍵は、写真のクオリティに徹底的にこだわること。プロカメラマンによる撮影はもちろん、光の活かし方や構図、写真の色味(トーン)を揃えることで、洗練された印象を与えます。結果として、ユーザーの「こんな家に住みたい」という憧れを強くかき立てることができるでしょう。
パターン2:悩みに寄り添い信頼を得る「お役立ち情報」発信型
家づくりを検討し始めたばかりのユーザーが抱える悩みや疑問に、専門家の視点で応えるコンテンツが中心のスタイルです。
「後悔しない土地選び」「失敗しない間取り」「住宅ローンの賢い組み方」など、ユーザーが本当に知りたい情報を発信し、「信頼できる専門家」としての認知を獲得します。
役立つ投稿はユーザーに「保存」されやすく、インスタグラムからのアカウント評価向上にもつながるのが特徴です。文字や図解を取り入れたカルーセル投稿を活用し、分かりやすさを追求することが成功のポイントです。
パターン3:人の魅力で選ばれる「地域密着・スタッフ訴求」型
高額な買い物である家づくりでは、「誰から買うか」が非常に重要な要素になります。このパターンは、スタッフの人柄や家づくりへの情熱といった人の魅力を前面に押し出し、ユーザーに安心感と親近感を与えるスタイルです。
特に、商圏が限定される地域密着型の工務店にとって効果的です。
- 社長の想いを綴った投稿
- 現場で働くスタッフの笑顔
- お客様感謝祭の様子
上記のような発信を通じて企業の温かい雰囲気が伝われば、「この人たちに任せたい」という信頼感につながります。ストーリーズ機能で日常をラフに発信するなど、飾らない素の姿を見せることがファンを増やす鍵です。
工務店のインスタグラム集客を成功させる5つのステップ
自社に合った勝ちパターンが見えてきたら、次はいよいよ、アカウントを具体的に動かすフェーズです。ここでは、インスタグラム集客を成功に導くための基本的な5つのステップを、順を追って解説します。
このステップに沿って進めることで、戦略的で効果的なアカウント運用が可能になります。
ステップ1:目的とターゲット(ペルソナ)を明確にする
まず最初に、「何のためにインスタグラムを運用するのか(目的)」と「誰に情報を届けたいのか(ターゲット)」を定義することから始めます。
目的が「見学会への集客を月5組増やす」のか、「若年層からの認知度を高める」のかで、発信する内容は大きく変わります。
同様に、ターゲット設定も重要です。年齢、家族構成、ライフスタイル、価値観などを具体的に設定した「ペルソナ」を描くことで、投稿の切り口や言葉遣いが定まり、メッセージがより深く響きます。この最初の設計が、アカウントの方向性を決め、成否を大きく左右します。
ステップ2:アカウントのコンセプト(世界観)を決める
目的とターゲットが定まったら、次にアカウントの「コンセプト」を決定します。
コンセプトとは、「誰に、どのような価値を提供し、どんな未来を約束するアカウントなのか」を一言で表す、運用の軸となる考え方です。たとえば、「デザイン性と性能を両立した家づくりで、30代子育て世代の理想の暮らしを叶える」といったものです。
先の章で解説した3つの勝ちパターンも参考に、自社の強みとターゲットのニーズが交差する点を見つけ出し、独自のコンセプトを設定しましょう。
ステップ3:集客につながるプロフィールを作成する
プロフィールは、アカウントに興味を持ったユーザーが必ず訪れる「玄関」のような場所です。ここで魅力を感じてもらえなければ、フォローにはつながりません。
以下の4つの要素を押さえて作り込みましょう。
- アカウント名:「〇〇工務店|埼玉の注文住宅」のように、何をしている会社か分かりやすく記載します。
- プロフィール写真:会社のロゴや、象徴的な建物の外観写真などがおすすめです。
- 自己紹介文:誰のためのアカウントで、フォローするとどんなメリットがあるのかを簡潔に伝えます。
- URL:ホームページやイベント予約ページへの導線となるリンクを必ず設置しましょう。
ステップ4:投稿コンテンツを計画し、発信する
いよいよ、ステップ2で決めたコンセプトに基づき、コンテンツを作成・発信します。施工事例、お役立ち情報、ルームツアー動画(リール)、イベント告知など、様々な切り口の投稿をバランス良く計画しましょう。
大切なのは継続することです。最初から完璧を目指さず、まずは「週2〜3回」など無理のない投稿頻度を決め、継続できる体制を整えましょう。
投稿を作成する際は、ユーザーの目を引く1枚目の画像、読みやすい文章、適切なハッシュタグ選定を意識することがポイントです。
ステップ5:インサイトで分析し、改善を繰り返す
インスタグラム運用は、投稿して終わりではなく改善の繰り返しが不可欠です。必ず、インサイトと呼ばれる公式の分析ツールを使い、投稿の成果を振り返りましょう。
インサイトでは、以下のようなデータを確認できます。
- リーチ数:投稿が何人に届いたか
- 保存数:ユーザーが「後で見返したい」と思った数
- プロフィールへのアクセス数:アカウントに興味を持った人の数
特に「保存数」は、ユーザーの関心度を示す重要な指標です。 どの投稿の反応が良かったのか、その理由はなぜかを分析し、次の投稿に活かす。この改善のサイクル(PDCA)を回し続けることが、アカウントを成長させる唯一の方法と言えるでしょう。
【これでネタ切れしない】工務店のインスタグラム投稿ネタ10選

「運用を始めたものの、どんな投稿をすればいいか分からない…」
そんな悩みを解決するため、ここでは工務店が発信するべき具体的なコンテンツ内容を10個厳選して紹介します。これらを組み合わせることでネタ切れを防ぎ、ユーザーを飽きさせないアカウント運用が可能になります。
施工事例
アカウントの根幹となる、最も重要なコンテンツです。外観、リビング、キッチン、造作棚など、こだわりの空間を美しい写真で紹介しましょう。複数枚のカルーセル投稿で、様々な角度から見せるのが効果的です。
ルームツアー動画
写真だけでは伝わりにくい空間の広がりや動線を、ショート動画(リール)で紹介します。没入感が高く、ユーザーがその家で暮らすイメージを膨らませやすいため、人気の高い投稿形式です。
お客様の声・インタビュー
実際に家を建てたお客様の満足の声は、何よりも信頼性の高いコンテンツです。お客様の笑顔の写真やインタビューを通じ、未来のお客様が抱える不安を解消し、安心感を与えます。
家づくりの豆知識・Q&A
「土地選びのポイント」「断熱材の種類と選び方」など、専門家ならではの知識を発信。ユーザーの疑問に先回りして答えることで、「信頼できる専門家」としての立ち位置を確立できます。
スタッフ紹介・職人紹介
設計士や現場監督、大工さんなど、家づくりに携わる「人」を紹介するコンテンツです。仕事へのこだわりや人柄を見せることで親近感が湧き、会社の温かい雰囲気を伝えられます。
現場の裏側・工事の進捗
普段は見られない基礎工事や構造部分など、工事が進む様子を発信します。丁寧な仕事ぶりや完成までの過程を見せることで、品質への自信や誠実さをアピールできます。
見学会・相談会のイベント告知
完成見学会や相談会などのイベント情報は、見込み客とのリアルな接点を生むために不可欠です。日程や場所だけでなく、イベントの見どころや参加メリットを分かりやすく伝え、参加を促しましょう。
NG間取り・よくある後悔ポイント
「やってしまいがちな失敗例」や「後悔しないための注意点」など、あえて失敗談の視点から切り込むコンテンツです。ユーザーの「失敗したくない」という心理に強く響き、関心が高く「保存」されやすい傾向があります。
コンセプト・家づくりへの想い
どのような理念で家づくりに取り組んでいるのか、自社の哲学を発信します。デザインや性能といった機能的な価値だけでなく、背景にある想いを伝えることで深い共感を呼び、企業のブランディングにつながるでしょう。
地域情報の発信 「会社近くのおすすめランチ」「施工エリアの素敵な公園」など、地域に根ざした情報を発信。これにより、地域での暮らしをより具体的にイメージさせると同時に、親しみやすい工務店であることをアピールできます。
まとめ
本記事では、工務店がインスタグラム集客に取り組むべき理由から、具体的な5つのステップ、そして投稿内容までを網羅的に解説しました。
インスタグラムは、もはや単なるコミュニケーションツールではありません。未来のお客様と出会い、信頼を育み、自社のファンを創り出すための強力なマーケティングプラットフォームです。
短期的な成果を求めず、明確な戦略のもとで継続的に運用すれば、必ずビジネスを加速させる力となるでしょう。 何から始めればいいか分からないという方は、まず本記事で紹介した「ステップ1:目的とターゲットの明確化」からぜひ取り組んでみてください。