建築業や製造業など、設計図をもとにゼロからモノを生み出す業種において、よく使われているのが「CADソフト」です。
この記事では、CADソフトの概要や選び方、おすすめ10選を紹介いたします。導入を検討されている場合は参考にしてみてください。
CADとは
CADとは「Computer Aided Design(コンピュータ支援設計)」の略称で、コンピュータを利用し建築や服飾、自動車など工業製品の設計、製図をおこなうツールのことです。
厚生労働省の認定する「CADトレース技能審査」をはじめ多くの資格もあり、製造業だけではなく設計を必要とするさまざまな分野の現場で幅広く活用されています。
CADソフトの主な種類
CADソフトは、おもに「汎用CAD」「建築用CAD」「機械用CAD」「BIM」などの種類があり、それぞれ用途が異なります。各特徴を解説いたします。
汎用CAD
幅広い分野での設計に対応しており、業種に関係なく利用できる機能を搭載している、そのとおり汎用的なCADです。
さまざまな業種で利用できることから高額のソフトもありますが、「Jw_cad」のようにフリーソフトもあります。
建築用CAD
住宅や施設といった建築物の設計に特化したCADのことです。建築に特化しているため、詳細部分の複雑な図面も容易に作成できます。
建築物の外観や室内の図面を作成できるほか、アニメーションやCGパースなどを作成できます。
機械用CAD
自動車や飛行機、電化製品など、あらゆる精密な機械図面の設計に特化したCADソフトのことです。
BIM
「Building Information Modeling」の略称で、特殊な機能が搭載された建築用CADのことです。従来の3DCADと異なり、最初から図面を3Dで設計、切り出して平面図を作成します。
設計図の作成ができるだけでなく、プレゼンテーション用のパース作成、住宅性能評価や構造計算などの機能が搭載されています。
現在、海外企業のBIM導入率は、アメリカで8割、ヨーロッパで7割と非常に高く、世界的に普及している注目のCADです。
CADソフトの選び方
では、利用するCADソフトを選ぶには、どのようなポイントを確認すればよいのかを解説いたします。
2DCADか3DCADか
CADには2次元に対応している2DCAD、3次元に対応している3DCADがあります。それぞれの特徴をご紹介するため、比較してどちらがよいか選ぶとよいでしょう。
2DCAD
手書きの図面と同様に、平面図と立体図を2Dで製図をおこなうCADです。
手書きでの製図をそのままコンピュータ上で実施するため、操作が比較的分かりやすく、またフリーソフトも複数あるため、まず導入にハードルが低いといえるでしょう。
紙に描かれた図面は供覧性が高く、現在も根強いニーズがあるため、決して2Dのほうが劣っているというわけではありません。
3DCAD
直方体や球を用いて、3Dで立体的な製図をおこなうCADです。曲線的なデザインや、手描きでは困難な立体も表現できます。
立体でより具体的なイメージを形にし、さまざまな角度から確認できるため、設計やプレゼンテーションの場面でも大いに役立ちます。
ただし、3DCADのフリーソフトはなく、またメモリや処理能力など一定の基準を満たすハイスペックなコンピュータが必須です。
求めている機能がついているか
CADの費用や操作性は重要ですが、いざ導入したら使いたい機能が搭載されていなかった、となればムダになってしまいます。
導入前によく機能を確認しておき、必要な機能、またもしかしたら今後利用するかもしれない機能を想定したうえで選ぶのがおすすめです。
OSに対応しているか
Windows、Macに対応しているか、だけでなくOSのバージョンもよく確認する必要があります。
企業によっては、旧バージョンのOSのままアップグレードしていないところもあるでしょう。この場合、特に確認が必要です。
サポート体制は整っているか
操作中に不明点やトラブルが生じて業務がストップしてしまっては一大事です。このような場合に、電話やメールですぐ相談できる体制が整っているかも要確認です。
夜間や休日であってもサポート対応してくれる製品だと、さらに安心できます。
CADソフトおすすめ10選
では、CADソフトのなかでも知名度が高く、おすすめのものを10種類ご紹介いたします。
Jw_cad
Windows 7、8、10で動作するフリーの2次元汎用CADです。建築分野に活用できる機能が多く、建築汎用CADともいわれます。
作図に利用できる線は9種類で、この線は色や幅を自由にカスタマイズできるほか、画面上では点線で表示し、印刷はされない補助線も利用できます。
無料でありながら機能も充実しており、気軽に導入できることでしょう。Windows用ソフトですが、有志によってMac版も無料公開されています。
特徴
- 無料で商用利用もできるフリーソフト
- 汎用CAD、建築に役立つ機能も豊富
- 線の色や幅など自由にカスタマイズ可能
- 印刷されない補助線も設定できる
- DXF/SFC/P21ファイルの読み込み・保存に対応
AutoCAD
オートデスク株式会社が開発する汎用2D/3D CADソフトウェアです。アメリカ製ですが、国内で高いシェアを誇ります。
AUTOCADシリーズ、そのほかのAUTODESK社製品や、アドオンソフトとの連携もでき、機能の追加やカスタマイズができる点が魅力です。
世界的にシェアの高いソフトであるため、マニュアル本が販売されているほか、セミナーも開催されており、操作の方法や不明点の解決方法は見つかりやすいでしょう。
特徴
- 無料トライアルあり
- 月額¥5,377~(3年契約の場合の料金)
- 機械設計機能があるAutoCAD Mechanical、建築設計の機能があるAutoCAD Architectureなど業種別ツールセットも利用できる
- アドオンソフトとの連携によりカスタマイズ性が高い
- シェアが高いためデータ変換をする手間が省ける場合も
Vectorworks
直感的で分かりやすい操作性と、作図しやすい環境を謳う、汎用2D/3D CADソフトウェアです。
インターネット経由でライセンス認証する「スタンドアロン版」と、サーバー/クライアント形式でライセンスを管理する「ネットワーク版」の2種類が用意されており、利用環境に応じて選択できます。
「Fundamentals」「Architect 」など各業種向けの製品が用意されており、基本的な機能はほとんどの製品で利用できますが、それぞれ特化した専用機能が搭載されています。
特徴
- 30日間無料トライアルあり
- インターネットで利用する「スタンドアロン版」、サーバー/クライアント形式でライセンスを管理する「ネットワーク版」あり
- 永続ライセンスとサブスクリプションあり
- 各業種別に5種類の製品が用意されている
- プラグインソフトウェアなど、ほかのソフトウェアとの連携によりデザイン性能をさらに高められる
ArchiCAD
30年以上もの長きにわたり、操作性や機能性、導入しやすさを考慮して開発されている、建築に特化したハンガリー製の建築用2D/3D CADソフトウェアです。
建築物に関するデータを構築管理するためのワークフローである、BIMを世界で最初に取り入れたソフトウェアでもあります。
建築物のデザイン作成のみならず、その設計図の解析、世界中のチームとのコラボレーション機能、モデルから自動的に作成される図面など、建築の設計を効率的におこなえる機能が豊富に揃っています。
特徴
- 体験版あり
- 教育版のシステムは学生無料
- ハードウェアベースのプロテクションキーを接続する「シングルライセンス」版、サーバーに接続、LANを介してライセンスを取得する「ネットワークライセンス」版がある
- Windows/Mac対応
- 設計だけでなく解析やコラボレーション、図面の自動生成など建築設計に係る機能が豊富
Revit
建築用BIMとして知名度の高いソフトです。ArchiCADと同様に、デザイン性の高い建築物の設計を作成、その構造解析や細部設計などを効率的におこなえます。
さらに、Architecture, Engineering & Construction Collectionを利用すれば、Revit以外にも各種ソフトと連携してBIM ワークフローの機能を拡張することも可能です。
クラウドシステムを使えば、CPU負荷を上げることなくレンダリングもできるため、パソコンのスペックが心配な場合でも問題なく利用できます。
特徴
- 無料トライアルあり
- 月額¥32,083~(3年契約の場合の料金)
- プロジェクトモデル内ではリアルタイムで会話できるチャットや設計図の自動更新により複数人との作業も可能
- ほかのソフトと連携し機能も拡張できる
- クラウドシステム経由でCPU負荷を気にせずレンダリングできる
Fusion 360OnShape
3D モデリング、CAD、CAM、CAE、PCBのソフトウェアを統合した、製品設計、製造業向けのクラウドベースのプラットフォームです。
3Dデザインとモデリングのほか、回路図設計やジェネレーティブ デザインなど非常に多くの機能が利用でき、ユーザー権限の管理やバージョン管理など管理関係の機能も利用できます。
クラウドコラボレーション機能により、チームのコミュニケーション活性化、さまざまなデバイスからのマークアップ、自動のバージョン管理なども実現します。
特徴
- 無料トライアルあり
- 月額¥5,134~(1年単位の場合の料金)
- 3D モデリング、CAD、CAM、CAE、PCB等非常に多くの機能を利用できる
- Fusion360 エクステンションと呼ばれる拡張機能の追加、カスタム ソリューションなども利用できる
- 操作方法を学べるセミナーや学習コンテンツ、コミュニティフォーラムあり
OnShape
CAD、組み込みデータ管理機能、ビジネス分析ツール、リアルタイムコラボレーション機能が集約された、SaaS型製品開発プラットフォームです。
部品、アセンブリ、図面の作成をおこなう「CAD」、製品データ管理や部品表、リリース管理などの「データ管理」、リアルタイム設計レビューや編集履歴の確認できる「コラボレーションツール」など、さまざまな機能を利用できます。
機能の多さはもちろん、データベース駆動型アーキテクチャではセキュリティリスクを排除、不正な複製やデータの漏えいを防ぐことも可能です。
特徴
- 無料トライアルあり
- 年額1,500米ドル~
- 学生、教員や非商用プロジェクトにおいては利用無料
- 「Enterprise」「Professional」「Standard」の3プランあり
- CAD、組み込みデータ管理機能、ビジネス分析ツール、リアルタイムコラボレーションをひとまとめに利用できる
SketchUp Free
無料、ダウンロード不要でブラウザから利用できる3D CADソフトです。
基本の SketchUp にブラウザから直接アクセスでき、シンプルな操作性によりオンラインで3D設計をおこなえます。
無料のため気軽に利用できるうえ、機能が多すぎないことから操作もしやすく、初心者でも比較的扱いやすいでしょう。
特徴
- 利用無料、ダウンロード不要
- さらに機能の充実した有料プランもあり
- 10GB の Trimble Connect クラウド ストレージがあり、チームとデータ共有可能
- SketchUp Viewer アプリを使えばスマホからも3Dモデルを確認できる
- 相互互換性があり、複数タイプのファイルをインポート、エクスポート可能
FreeCAD
無料のオープンソース3D CADソフトです。無料でありながら、3Dモデリング、メッシュデザイン、製図、有限要素法解析、レイトレーシング機能など、標準機能がかなり充実しています。
2Dから3Dのモデルを作成、またその反対の操作も可能です。また、デザインの詳細を抽出して実用的な図面を作成する機能も揃っています。
マルチプラットフォーム(Windows、Mac、Linux)で、高度なカスタマイズや機能拡張が可能、多くのファイル形式に対応しているため、非常に扱いやすいです。
特徴
- 利用無料のオープンソースソフト
- マルチプラットフォーム(Windows、Mac、Linux)
- 高度なカスタマイズや機能拡張が可能
- 製品設計、機械工学、建築といった幅広い用途に合うように設計されており、さまざまな業種で利用可能
DesignSpark Mechanical
電気・電子・IT・建築などの各業種、また機械工学を知らない人、非理系であっても、手軽に扱いやすいことを謳う無料の3D CADソフトです。
設計においては3Dモデルライブラリを利用できるほか、設計後の部品手配、拡張モジュールや各種サービスとの連携など、無料でありながら機能豊富です。
海外製ですが、ソフトウェアのUIやオンラインヘルプは日本語化されているため、英語に抵抗がある方でも利用できます。
特徴
- 利用無料
- 電気・電子・IT・建築などの各業種で利用できる
- 3Dモデルライブラリを利用できる
- ソフトウェアのUIやオンラインヘルプは日本語対応
- .skp、.obj、.stlファイルに対応
- 拡張モジュールや各種サービスとの連携も可能
まとめ
CADソフトの概要や種類、おすすめソフト10選をご紹介しました。
このように多くのソフトがあるため、解説した「選び方」を参考に、無料製品やトライアルなどを利用して最適なものを導入されてはいかがでしょうか。