中間管理職に求められるのは、与えられたリソースを生かして、チーム目標を達成させることと、限られたリソースを活用して生産性高く成果を上げることだと思います。
そのためには、
①目標をチーム全体で共有すること
②チームメンバーの育成
③仕事配分の配慮
④プロジェクトスケジュールの管理
をしっかりとやらなくてはなりません。
これらはチームメンバーとのコミュニケーションが重要になっていることを忘れないでください。
マネージャーとメンバーの信頼関係を基に、意思疎通を成立させるための「関係性の質」を構築することが、マネージャーとしての仕事を行う大前提であり、生産性の高いチームを生み出すポイントではないでしょうか。
生産性の高いチーム
生産性の高いチームには、「チームメンバーの発言量が同等である」「人の気持ちへの感受性が高い」という特徴があります。この特徴を持ったチームは、集合知によって問題を解決するが、この特徴を持たないチームは個々のメンバーが優秀であっても、チームをダメにしてしまうという調査結果が出ています。
一人の人が発言しているだけでほかの人は黙っているようでは話し合いは進みません。たとえ発言を遮られたとしても、メンバーが同等の発言量を持っていれば話し合いは成立します。
「自分の意見を笑われない、拒絶されない、叱られない」という安心感を心理的安全性といいます。
仲が良いチームでもそうでないチームでも、自然と心理的安全性が共有されているチームの生産性は高いといわれています。
心理的安全性を育む
チームには経験豊富な人がいれば新人もいる。外交的な人も内向的な人もいるでしょう。チームは、気の合う人合わない人、価値観や仕事観も違ったいろんなタイプの人が集まっています。
個々の違いを受け入れ、立場の違いも超えてお互いの意見に耳を傾ける。相手の気持ちを汲み取りながら、理解しようとコミュニケーションを図っていく。このように心理的安全性が保証されることが、関係の質を高く保つための根本的要因ではないでしょうか。
そして、この心理的安全性を育むのも壊すのも、マネージャーにかかっているといえます。
マネージャーがメンバーの心理的安全性を保証する言動を積み重ねることで、徐々に醸成されていくものなのです。
しかし、プレイングマネージャーが心理的安全性を育むどころか、壊してしまう傾向にある傾向があるのが現実のようです。なぜなら、プレイングマネージャーは「個人目標」「チーム目標」を達成させるべく動き回っているため、時間的にも精神的にもコミュニケーションを取る余裕がなくなってしまいがちなのです。
思うように動けないメンバーの穴埋めのために、マネージャーがプレイヤーの仕事をしてしまったら、状況はさらに悪化してしまいます。そのうち、マネージャー自身に被害者意識が生まれ、ついメンバーを責めてしまったり、十分なコミュニケーションがとれないままマネージャー目線で一方的な指示を出してしまったり、心理的安全性とはかけ離れた環境になってしまう可能性があります。
チームの生産性を高めようとするなら、メンバーの「心理的安全性」を何よりも大切にすることに意識しましょう。
極論を言えば、目先の目標達成よりも心理的安全性を優先すべきとも言えます。
「心理的安全性が保証されている」とメンバーが感じ始めてくれたら、「関係の質」は高まっていくでしょう。すると、「思考の質」「行動の質」「結果の質」とグッドサイクルが回り始めることでしょう。
目先の結果にとらわれず、このグッドサイクルを回し始めることがとても重要です。
当初は目標達成ができなかったとしても、グッドサイクルが回っていれば、後から結果はついてくるのです。
長い目で見れば、「心理的安全性」を優先する方が効率的といえるのです。
メンバーより優秀である必要はない
プレイングマネージャーが、「ほかのメンバーより優秀でなければいけない」と自分にプレッシャーを与えていると、メンバーに自分の考えを押し付けてしまったり、ピリピリしているマネージャーにメンバーから話しかけることができなくなるなど、チーム内の心理的安全性を失ってしまうかもしれません。
マネージャーだからとか、メンバーより高給だからという責任感や使命感もあると思いますが、自分の優秀さを証明するのではなく、心理的安全性を重視することこそが、マネージャーに求められているといえます。
メンバーより優秀でなければいけないという思い込みは捨てましょう。
心理的安全性が生まれる瞬間
弱みを開示する
マネージャーのAさんは、担当したチームでうまく成果を出すことができませんでした。別の新しいチームマネージャーになり、今度こそはと意気込んだものの、メンバーの反応も良くはありませんでした。
ある日、チームの課題を話し合うためにメンバー全員を集めて会議を開きました。
議題に入る前に、Aさんがある病気を患っていることをメンバーに打ち明けました。その瞬間は誰も何も発することはできませんでしたが、しばらくして一人のメンバーが自分の健康問題について話し始めました。すると、また別のメンバーが失恋話を打ち明けたそうです。
マネージャーが自らの弱みや悩みを開示したことで、メンバーも自己開示をすることができ、「心理的安全性」が生まれたのです。多くのメンバーは、自分たちが仕事に対して抱えていた悩みや不満を正直に話すことに、それほど抵抗を感じなかったといいます。
マネージャーのAさんは、この会議の結論として、「チームの仕事が会社にどのような影響を与えているかをメンバーに伝える」「誰かが疎外感を感じたり、落ち込んだりしていないかなど、お互いに気を配る」というチームの規範を作ることを決めました。
こうして新たな一歩を踏み出し、素晴らしいチームへと育っていくのです。
仕事の仮面
マネージャーのBさんは、「メンバーより優秀でなくてはいけない」という思い込みで、マネージャーは弱音を吐いてはいけないと自分を鼓舞して必死に毎日を送っていました。
メンバーより優秀であることを証明しなければという思いが強く、苦手な仕事や大きなプレッシャーがかかった仕事があると、メンバーに強く言いすぎることも多く、傷つけたのではないかと自己嫌悪に陥り苦しんでいました。
新たな仕事に挑戦するも、何度も「限界かもしれない」と胸の内でつぶやくほどの想像を超えたストレスがかかっていました。そんなときBさんは、メンバーといろいろな話をする機会があり、思い切って抱えていた不安を打ち明けたのです。メンバーに弱音を吐いたことのないBさんですから、メンバーは驚くとともにマネージャーも普通の人だったんだと安心感もあったといいます。そして、いつでもヘルプを出してくれれば助けますと言ってくれたのです。
このような経験から、Bさんはメンバーに対して強がる必要がないと思えるようになりました。
自分の弱みや悩みを開示して助けを求めることで、自分の存在がメンバーに受入れられ、心も楽になれることを学んだのです。
この出来事をきっかけに、メンバーも少しずつ自己開示をするようになり、職場の雰囲気が柔らかくなったといいます。これも心理的安全性の芽生えといえるでしょう。
優秀なマネージャーになるためには、「チームの目標達成」「メンバーがいきいきと働けること」などに強い思いを持ち、そのうえで弱みを明かせること、助けを求めることできることがポイントなのです。
マネージャが最初に「仕事の仮面」を捨てて正直な気持ちを伝えるようにすれば、次第に他のメンバーも仮面を外し始めるでしょう。それはチームの根本的な部分が変わり始める時なのです。