業務改善とは?取り組む目的と進め方について解説
企業においてとくに重要となるのが利益を上げることですが、時間や費用といったコストを削減することもまた重要な課題といえます。その際に取り組むべきなのが業務改善です。
では、業務改善とはなんなのか、具体的にどのような方法でどう進めればよいのか、その効果などについてあわせて解説していきます。
業務改善とは
業務改善は「ムリ、ムダ、ムラ」をなくすことで、効率よく業務をおこない、時間や費用などのコストを削減することをいいます。
この「ムリ、ムダ、ムラ」とは、トヨタ生産方式のコスト削減原理であり、業務において削るべき部分を表している言葉です。
たとえば、従業員1時間あたりの人件費を2,000円とし、1人あたり1日10分の時間短縮ができれば、年間8万円のコストを減らせます。従業員が100人なら80万円もの削減が見込めることになります。
業務改善の目的
業務改善の単純にコスト削減へ集中することだけではありません。それだけを目的にしてしまうと、業務上の利便性が損なわれたり、品質が下がったりするおそれがあります。
そうではなく、業務の方法を見直し、ムダを削減して効率化することにより、業務を「改善」することが重要です。そのために以下のようなことを目的とすべきです。
生産性の向上
業務改善を実施する理由として、もっとも多い目的が組織・従業員の業務効率化、生産性向上です。業務の流れを見直したり、単純作業を自動化したりすれば、余剰時間が生まれます。
余剰時間が生まれればその分ほかの業務に注力でき、また残業が削減されれば、従業員も早く帰宅できるので、万全の状態で翌日も能力を発揮できます。
無駄なコストの削減
コスト削減を主目的として追求するのではなく、無駄な部分のみを削ることで、顧客満足度や商品・サービスの質を落とすことなく、結果的にコストを削減できます。
前述のように、無駄を削ることで業務効率化ができれば残業を減らすことにつながります。これにより、人件費や電気代などの諸経費を削減可能です。
業務改善の進め方
業務改善を成功に導くには、正しい手順を踏み実施していくことが重要です。それには、つぎのようなステップで進める方法が一般的です。
業務の可視化
まずは業務を可視化することで現状分析をおこない、業務の全体像を把握することが重要です。そのために、つぎのような情報を洗い出し、KPI(企業の目標達成度を評価する指標)を設定します。
- どの業務を改善可能か
- 業務の流れはどうなっているか
- 使用している設備やツールはなにか
- 担当者は誰か
- その業務がなにを生むか
- 各業務プロセスとのつながり
問題分析
現状を把握したうえで、どこに問題があるのか特定して分析をおこないます。問題の発見・分析には業務プロセスのフローチャート化、現場をもっとも理解する従業員へのヒアリングが効果的です。
これにより問題の特定ができたら、問題が生じる原因と解決策を考えます。これにはロジックツリーを使った方法が一般的です。
改善策の立案
問題分析により、改善すべき部分が洗い出せたら、改善策の立案をおこないます。それには、以下のような「ECRS」というフレームワークに則って順に考えるとよいでしょう。
Eliminate(排除):既存業務の無駄を取り除けないか
Combine(結合):業務をひとつにまとめられないか
Rearrange(再配置):業務の流れ、方法を変更して効率化できないか
Simplify(簡易化):業務をより簡易にできないか
改善策の実行
改善策を立案したら、現場の従業員によって実行に移ります。新規システムの導入などをおこなうのであれば、トラブル時の体制も整えておくことが望ましいです。
また、実行と同時にKPIによって改善策が計画どおりに進んでいるか、目標を達成できているかを測定して確認することも重要です。
改善策の効果測定
改善策を実行した結果をKPIで測定して終わりではありません。この数値を元に、目標よりうまくいかなかった部分があれば、その部分を修正してより改善することが重要です。
業務改善をおこなった企業の多くが、改善策を実行してそのままになっているといわれます。それでは、理想的な状態にすることができません。
PDCAサイクルを回していき、実行した内容をよりブラッシュアップしていくことにより、理想的な業務効率の向上、コストの削減が達成できるのです。
業務改善の手法
業務改善をおこなう手法として、具体的にはつぎのようなものを取り入れるとよいでしょう。
業務マニュアルの作成
業務の流れや方法をどう改善したのかなどをマニュアル化することで、全社に改善の効果を反映できます。また、ノウハウの継承や担当者ごとのムラもなくす効果もあります。
そのほか、予期しない作業がおこなわれていないか、不正がないかなど、業務の再確認や品質向上などにもマニュアルが役立つことでしょう。
アウトソーシング
単純作業や外部に委託しても支障がないような業務がある場合、アウトソーシングを活用することで、時間を節約してほかの業務に集中できたり、むしろ人件費の節約になったりする場合があります。
ただし、単に丸投げしても余計コストが増す、委託先との連携が取れず混乱する、という事態が生じる可能性もあります。委託するかどうかは以下のような分析をしてからが望ましいででしょう。
現状分析
現在その業務にかかっている時間、人件費、利益
予測分析
委託した場合、人件費や売上がどうなれば利益が出るか? どの分野をどう改善できるか?
委託先に前述の業務マニュアルを提供すれば、無駄がなく適切に業務を進めてもらえることでしょう。そうすることで、委託の人件費や無駄なやり取りも減らせます。
ITツールの導入
ITツールの導入により、これまでおこなっていた業務の無駄をなくしたり、効率を高めたりできる場合があります。多くの企業が導入しており、業務改善に効果が見込めるツールが以下です。
チャットツール
チャットワークやLINE WORKSなどが有名です。メールを作成するよりもスピーディーに、また気軽に会話をおこなえます。タスク管理機能があるものもあります。
メールでのやり取りが多い場合、送受信ボックスの整理にも時間が取られますが、チャットツールであればこのような作業は不要です。また、メールでは不可能なグループでのやり取りもできます。
WEB会議システム
Skype やGoogleハングアウトなどが有名です。資料の共有機能があるツールもあります。会議のために一箇所に集まる時間・費用も必要なく、またテレワークの推進にも役立ちます。
オンラインストレージ
社内でのデータ共有などに共有サーバーを使う場合は多いでしょう。しかし、保存するデータが多いとそれだけサーバーの初期コストや維持費が掛かります。
その点、DropboxやGoogle Driveなどは登録すればカンタンにデータのやり取りがおこなえ、ログインすればどこからでもデータにアクセスできるので、外出中やテレワークにも便利です。
RPA(ロボットによる業務自動化)
ロボットにより、単純なデスクワークを自動化できるソフトウェアです。WinActorやBizRobo!、UiPath、Pega Robotic Automation、NECのRPA Software Robot Solutionなどが知られます。ロボットによる作業のため動きに無駄やミスがない部分が魅力です。
業務手順のルールを設定すれば、部署に関係なく業務を自動化できます。単純作業をRPAに任せ、生産性の高い業務に時間を割くことができるため、費用対効果も大きいでしょう。
まとめ
業務改善には多くのメリットがあり、たとえ設備投資やツール導入などにコストが掛かっても、生産性向上やコスト削減に成功すれば、結果的にペイすることが可能です。
まずは業務を可視化し、従業員と意見交換を交わしながら改善策を立て、実行して終わりでなく、定期的に見直すことで、理想的な改善をおこなうことができるでしょう。