女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定とは
一般事業主行動計画とは、次世代育成支援対策推進法に基づき、企業が従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などに取り組むに当たって、
- 計画期間
- 目標
- 目標達成のための対策及びその実施時期
を定めるものであり、従業員101人以上の企業には、行動計画の策定・届出、公表・周知が義務付けられています。
IT導入補助金では、従業員数100人以下であって「女性の活躍推進データベース」の女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していると加点されます。
なぜ女性の活躍推進が必要なのか
日本における働く女性の現状は、下記のとおりとなっており、日本では働く場面において女性の力が十分に発揮できているとはいえない状況にあります。
- 女性の就業率(15歳~64歳)は上昇しているが、就業を希望しながらも働いていない女性(就業希望者)は約171万人に上る。
- 第1子出産を機に約5割の女性が離職するなど、出産・育児を理由に離職する女性は依然として多い。
- 出産・育児後に再就職した場合、パートタイム労働者等になる場合が多く、女性雇用者における非正規雇用労働者の割合は5割となっている(53.6%)。
- 管理的立場にある女性の割合(課⾧級以上)は約11.0%(令和3年)と、管理職に占める女性の割合は⾧期的には上昇傾向にあるが、国際的に見ると依然その水準は低い。
一方で、日本は急速な人口減少局面を迎え、将来の労働力不足が懸念されている中で、国民のニーズの多様化やグローバル化に対応するためにも、企業等における人材の多様性(ダイバーシティ)を確保することが不可欠となっており、女性の活躍推進が重要となっています。また、企業自身にとっても、採用や育成等に多大なコストを投じた女性社員が能力を高めつつ継続就業できる職場環境にしていくことは、人材の確保・定着や社員のモチベーションの向上など、多岐にわたり大きなメリットがあります。
このような状況を踏まえ、女性の個性と能力が十分に発揮できる社会を実現するため、国、地方公共団体、民間事業主(一般事業主)の各主体の女性の活躍推進に関する責務等を定めた「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(以下「女性活躍推進法」という。)が2016年(平成28年)4月から全面施行されました(2025年度(令和7年度)末までの時限立法)。
また、2019年(令和元年)5月に改正女性活躍推進法が成立し、2022年(令和4年)4月から全面施行されています。さらに、常時雇用する労働者301人以上の事業主を対象として、2022年(令和4年)7月8日から男女の賃金の差異が情報公表の必須項目となりました。
女性活躍推進法特集ページもご参照ください
一般事業主行動計画の策定・届出等について
一般事業主行動計画の策定・届出の進め方は4ステップ
一般事業主行動計画の申請方法は、4ステップです。自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析を行い、その結果を勘案して定め、都道府県労働局雇用環境均等部へ届出を致します。
【ステップ1】自社の女性の活躍状況を、基礎項目に基づいて把握し、課題を分析する
■基礎項目(必ず把握すべき項目)
- 採用した労働者に占める女性労働者の割合(区)
直近の事業年度の女性の採用者数(中途採用含む)÷直近の事業年度の採用者数(中途採用含む)×100(%) - 男女の平均継続勤務年数の差異(区)
- ・期間の定めのない労働契約を締結している労働者及び
・同一の使用者との間で締結された2以上の期間の定めのある労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が対象 - 管理職に占める女性労働者の割合
女性の管理職数÷管理職数×100(%) - 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況
①「各月の対象労働者の(法定時間外労働+法定休日労働)の総時間数の合計」÷「対象労働者数」これにより難い場合は - ②[「各月の対象労働者の総労働時間数の合計」―「各月の法定労働時間の合計=(40×各月の日数÷7)×対象労働者数」]÷「対象労働者数」
※(区)の表示のある項目は、雇用管理区分ごとに把握を行うことが必要です。
雇用管理区分とは
雇用管理区分とは、職種、資格、雇用形態、就業形態等の労働者の区分です。
当該区分に属している労働者について他の区分に属している労働者と異なる雇用管理を行うことを予定して設定しているものです。例:正社員、契約社員、パートタイム労働者/事務職、技術職、専門職、現業職など
管理職の定義
「管理職」とは、「課⾧級」と「課⾧級より上位の役職(役員を除く)」にある労働者の合計をいいます。
※「課⾧級」とは、以下のいずれかに該当する者です。
・事業所で通常「課⾧」と呼ばれている者であって、2係以上の組織からなり、若しくは、その構成員が10人以上(課⾧含む)の⾧
・同一事業所において、課⾧の他に、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課⾧級」に相当する者
(ただし、一番下の職階ではないこと)
労働時間の把握について
非正規雇用労働者も含めた全労働者の労働時間(高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者(労働基準法第41条の2第1項)については、健康管理時間)の状況を把握する必要があります。
なお、事業場外みなし労働時間制の適用を受ける労働者(労働基準法第38条の2第1項)、専門業務型裁量労働制の適用を受ける労働者(労働基準法第38条の3第1項)、企画業務型裁量労働制の適用を受ける労働者(労働基準法第38条の4第1項)、管理監督者等(労働基準法第41条)、高度プロフェッショナル制度の適用を受ける労働者、短時間労働者(パート・有期雇用労働法第2条)は、それ以外の労働者と区分して把握して下さい。
【ステップ2】一般事業主行動計画を策定し、社内周知と外部公表を行う
ステップ1を踏まえて
- 計画期間
- 1つ以上の数値目標
- 取組内容
- 取組の実施時期
を盛り込んだ一般事業主行動計画を策定し、労働者に周知、外部に公表してください。
行動計画モデルが公表されていますのでご参照ください。
【モデル計画A:育児をしている社員が多く、いろいろなニーズのある会社】【モデル計画B:育児をしている社員が多いが、長時間労働になりがちな会社】【モデル計画C:出産をきっかけに退職する女性従業員が多いため、出産前後の支援を強化したい会社】【モデル計画D:男女とも育児休業等が進んでいない会社】【モデル計画E:20~30代の男性従業員が多く長時間労働になりがちな会社】【モデル計画F:認定を目指し、両立支援対策の充実を目指す会社】【モデル計画G:高齢者が多いこと等により育児をしている社員がほとんどいない会社】【モデル計画H:地域等に対する次世代育成支援対策を行いたい会社】【モデル計画I:「両立指標」を使って目標設定等を行う会社】【モデル計画J:既にくるみん認定を受けており、両立支援制度が充分に整っている会社】【モデル計画K:正社員の両立支援制度が整っている会社】
を統合した全モデル計画が厚生労働省のページよりダウンロードが始まります。
一般事業主行動計画策定にあたっての留意点
行動計画の内容は、男女雇用機会均等法(均等法)に違反しない内容にしなければなりません。
募集・採用・配置・昇進等において女性労働者を男性労働者に比べて優先的に取り扱う取組については、雇用管理区分ごとにみて女性が4割を下回っている場合など、一定の場合以外は、法違反として禁止されています。
女性が4割を上回っている雇用管理区分において女性の活躍を推進しようとする場合は、男女労働者をともに対象とした取組とする必要があります。
【計画期間】
2025年度(令和7年度)までの期間で、各事業主の実情に応じておおむね2年間から5年間に区切り、定期的に行動計画の進捗を検証しながら、改定を行ってください。
2-1 外部公表する項目(1項目以上)
自社の女性の活躍に関する状況について、以下の項目から1項目以上選択し、求職者等が簡単に閲覧できるように情報公表してください。(非正社員を含めた全ての労働者に周知が必要です。)
①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | ②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 |
---|---|
・採用した労働者に占める女性労働者の割合(区) ・男女別の採用における競争倍率(区) ・労働者に占める女性労働者の割合(区)(派) ・係長級にある者に占める女性労働者の割合 ・管理職に占める女性労働者の割合 ・役員に占める女性の割合 ・男女別の職種または雇用形態の転換実績(区)(派) ・男女別の再雇用または中途採用の実績 | ・男女の平均継続勤務年数の差異 ・10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された 労働者の男女別の継続雇用割合 ・男女別の育児休業取得率(区) ・労働者の一月当たりの平均残業時間 ・雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの 平均残業時間(区)(派) ・有給休暇取得率 ・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率(区) |
※「(区)」の表示のある項目は、雇用管理区分ごとに公表を行うことが必要です。
※「(派)」の表示のある項目は、労働者派遣の役務の提供を受ける場合には、派遣労働者を含めて公表を行うことが必要です。
【社内周知の方法】
事業所の見やすい場所への掲示、電子メールでの送付、イントラネット(企業内ネットワーク)への掲載、書面での配布などがあります。
【外部公表の方法】
厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」(女性の活躍推進企業データベース)への掲載、自社のホームページへの掲載、県の広報誌・日刊紙への掲載などがあります。
※認定の申請または特例認定の申請を予定している場合は、申請の際に公表および従業員への周知をした日付が分かる書類が必要になりますので、以下のような書類を保存しておいてください。
- 「両立支援のひろば」や自社ホームページで公表した日が分かる画面を印刷した書類
- 社内イントラネットで従業員へ周知した日が分かる画面を印刷した書類
2-2 併せて、上記の項目とは別に、以下の項目についても、女性活躍推進法に基づく公表が可能です
- 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に資する社内制度の概要
- 労働者の職業生活と家庭生活の両立に資する社内制度の概要
【ステップ3】一般事業主行動計画を策定したことを都道府県労働局に届け出る
届出の様式(フォーマット)は、以下をご参照ください。
厚生労働省のページよりダウンロードが始まります。
都道府県労働局雇用環境均等部(室)へ申請
行動計画を策定したら、策定の日からおおむね3か月以内に、「一般事業主行動計画策定・変更届」(様式第一号)を郵送、持参、電子申請のいずれかにより、管轄の都道府県労働局雇用環境均等部(室)に届け出てください。
なお、行動計画そのものを添付する必要はありません。
【ステップ4】取組を実施し、効果を測定する
定期的に数値目標の達成状況や、一般事業主行動計画に基づく取組の実施状況を点検・評価してください。
IT導入補助金の加点だけ獲得したい方はこちらをご参照ください
IT導入補助金で必要な一般事業主行動計画は3ステップで完了します。最低限でよい方はこちらの記事をご参照ください。