スマートフォンの普及により、企業のマーケティング手法は多様化しています。なかでも、日本国内でもっとも利用者の多いSNSであるLINEを活用したLINEマーケティングは、多くの企業が注目しています。
LINEは、日常的に利用されるコミュニケーションツールであり、企業が顧客と直接つながることができる強力なプラットフォームです。
しかし、LINEを活用したマーケティングには、具体的にどのような手法があり、どのように運用すれば効果的なのでしょうか。
本記事では、LINEマーケティングの概要やおもな手法、運用のポイントについて、詳しく解説いたします。
LINEマーケティングとは?
LINEマーケティングとは、国内で圧倒的なユーザー数を誇るLINEを活用したマーケティング手法です。
おもに、企業や店舗がLINEのさまざまな機能を活用して、顧客とのコミュニケーションを強化し、売上やブランド認知度の向上を目的として活用されます。
LINEマーケティングが注目される理由
LINEは、日本国内において約9,700万人以上のアクティブユーザー数(2024年時点)を誇り、老若男女問わず幅広い世代に利用されています。
さらに、メールやほかのSNSと比較して、メッセージの開封率が高い点も特徴です。そのため、企業がLINEを活用することで、より効果的に情報を届けることができます。
また、LINEは単なるチャットツールではなく、公式アカウント、LINE広告、LINEミニアプリ、LINEチラシなど、多彩なマーケティング機能を提供しています。
これにより、企業は自社のターゲットに適した施策を選び、集客・販促・顧客育成といった幅広いマーケティング活動を展開できます。
LINEマーケティングの具体的な活用シーン
LINEマーケティングは、以下のようなシーンで活用されています。
■飲食店や小売店の集客・販促
クーポン配信やキャンペーン告知を通じて、新規顧客の獲得やリピート率の向上を図る。
■ECサイトや企業の売上向上
LINE公式アカウントを活用し、パーソナライズされたメッセージを配信することで、購買促進につなげる。
■顧客サポートの自動化
LINEのチャットボットを活用して、問い合わせ対応を自動化し、業務負担を軽減する。
■企業ブランディングや情報発信
LINEプロモーションスタンプやLINE広告を活用し、ブランドの認知度を向上させる。
このように、LINEマーケティングは幅広い業種・業態で柔軟に活用できるマーケティング手法です。
LINEマーケティングの主な手法
LINEマーケティングには、さまざまな手法があり、目的に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な5つの手法について詳しく解説します。
自社のビジネスモデルやターゲットに合わせて、最適な手法を組み合わせることで、効果的なLINEマーケティングを展開できます。
LINE公式アカウント
LINE公式アカウントは、企業や店舗がLINE上で顧客に情報を配信したり、直接コミュニケーションを取ったりするためのアカウントです。
友だち登録したユーザーに対して、メッセージ配信、クーポン発行、チャット対応など、さまざまな機能で交流ができ、顧客との関係構築に適したツールです。
■特徴
- 無料で開設可能(一部機能は有料プランが必要)
- メッセージの開封率が高い
- クーポンやアンケートなど、販促に役立つ機能が充実
■活用例
- 飲食店が新商品やキャンペーン情報を配信し、来店を促進
- 小売業が割引クーポンを送付し、購買意欲を高める
- ECサイトが新規ユーザーにウェルカムクーポンを配布し、購入を促す
LINEミニアプリ
LINEミニアプリは、LINE上で動作するWebアプリのことを指します。ユーザーが新たにアプリをインストールする必要がなく、LINEアプリ内で利用できるのが特徴です。
運営側も新たにアプリやサイトを作成する手間やコストをかけることなく、業務の効率化とユーザーの利便性向上を両立できます。
■特徴
- ユーザーはアプリのインストールが不要で、すぐ利用できる
- 会員メニューや予約機能を簡単に導入可能
- LINE公式アカウントと連携し、スムーズな運用が可能
■活用例
- 飲食店でモバイルオーダー・予約機能を提供し、利便性を向上
- ポイントカード機能を追加し、リピート率を向上
- 診察予約システムを導入し、病院やクリニックの待ち時間を削減
LINEプロモーションスタンプ
LINEプロモーションスタンプは、企業やブランドが無料スタンプを配信し、ユーザーに友だち登録を促すマーケティング手法です。
自社サービスのマスコットキャラクターや、人気のキャラクターとコラボするなどし、ユーザーが興味をもつスタンプにすることで、友だち登録してもらいやすくなります。
ユーザーは、友だち登録するだけで、自分の好きなキャラクターやデザインのスタンプを無料で利用でき、短期間で大規模な認知度向上を狙える施策として、多くの企業に活用されています。
■特徴
- ユーザーは無料でダウンロード可能(企業が費用を負担)
- スタンプ利用を通じて、自然にブランド認知度を向上
- 一定期間の友だち登録を条件とすることで、LINE公式アカウントの登録者数を増やせる
■活用例
- キャラクターや企業ロゴを活用したオリジナルスタンプを配布し、ブランドの親しみやすさを強化
- LINE公式アカウントの友だち登録を条件にスタンプを提供し、フォロワーを増加
- 期間限定スタンプを配布し、キャンペーンの話題性を高める
LINE広告
LINE広告は、LINEのタイムラインやトーク一覧など、LINE内のさまざまな場所でターゲット広告を配信できるマーケティング手法です。
ユーザーの性別や年齢、地域など、みなし属性で精度の高いターゲティングができ、目的や用途に合わせて配信方法を選択できます。
■特徴
- LINEの豊富なユーザーデータを活用したターゲティングが可能
- 画像・動画・カルーセルなど多様な広告フォーマットに対応
- 金額を自由に設定できる
■活用例
- ECサイトが新規顧客獲得を目的に、ターゲット広告を配信
- 美容サロンが来店促進のために、地域ターゲティング広告を活用
- アプリ運営会社がアプリインストールを増やすために、LINE広告を配信
LINEチラシ
LINEチラシは、LINE上でデジタルチラシを配信し、近隣のユーザーに情報を届けられるサービスです。地域密着型のビジネスや実店舗の集客に適しています。
■特徴
- 店舗の近くにいるユーザーにピンポイントでチラシを配信
- 紙のチラシと比べて、低コストで広範囲にアプローチ可能
- クーポンや購入ボタンを設置でき、購買につなげやすい
■活用例
- スーパーやドラッグストアが特売情報を配信し、来店を促進
- アパレルブランドがセール情報を配信し、ECサイトへの流入を増やす
- 飲食店がランチの割引クーポン付きチラシを配信し、集客を強化
LINEマーケティングのメリット
では、LINEマーケティングをおこなうメリットとはなにか、ほかのマーケティング手法よりも優れているといえる部分についてご紹介いたします。
幅広いユーザーにアプローチできる
LINEは、日本国内で約9,700万人以上のアクティブユーザーを有するプラットフォームです。若年層からシニア層まで幅広い世代が利用しており、SNSをあまり活用しない層にもリーチできる点が強みです。
また、LINEは生活に密着したツールであり、多くの人が毎日利用しているため、企業からの情報を日常の延長として自然に届けられます。
メッセージの開封率が高い
LINEは日常的に使用されるコミュニケーションツールであり、ユーザーの多くが一日に何度もアプリを開く傾向にあります。
一般的なメールマガジンの開封率は平均20%前後とされていますが、LINEの開封率は50~60%と高く、ユーザーに内容を確認してもらえる確率はメールよりも高いです。
とくにプッシュ通知によってスマートフォンに直接情報が届くため、見逃されにくく、友だち登録されていれば、企業からのメッセージを確実に届けることができます。
友だち登録されやすい
LINE公式アカウントを活用すると、ユーザーは簡単な操作で友だち登録をおこなうことができます。
例えば、公式サイト上にリンクを設置したり、店舗にQRコードを掲示して読み取ってもらうだけで、スムーズに登録できます。
会員登録やメールマガジン登録のように記入や入力の手間がかからないため、ハードルが低く、登録者数を増やしやすい点が特徴です。
マーケティングに必要な機能が充実している
LINE公式アカウントには、マーケティング活動を支援するさまざまな機能が搭載されています。例えば、以下のようなものがあります。
- 一斉配信(メッセージやクーポンの配信)
- セグメント配信(特定の条件に合致するユーザーのみに配信)
- 自動応答メッセージ(チャットボットで問い合わせ対応を自動化)
- LINEミニアプリ(予約や決済などのサービス提供)
これらの機能を活用することで、顧客ごとに最適なアプローチを実現し、効率的なマーケティング活動を展開できます。
信頼関係を築きやすい
LINEは「個人とのコミュニケーション」を前提としたツールであるため、企業と顧客が1対1の関係を築きやすい点もメリットです。
例えば、以下のような取り組みによって、顧客との距離を縮め、長期的な関係構築へとつなげることができます。
- 定期的に有益な情報を発信する
- クーポンやキャンペーンでお得感を提供する
- スムーズな問い合わせ対応をおこなう
LINEマーケティングのデメリット
つづいて、LINEマーケティングにおける課題や注意すべきポイントについてご紹介いたします。
友だち追加してもらえないとアプローチできない
LINEマーケティングは、基本的に「友だち追加」されたユーザーに対してのみ情報を発信できる仕組みになっています。
そのため、以下のような場合は登録者数が伸びず、期待するようなマーケティング効果が得られないことがあります。
- 友だち登録のインセンティブ(クーポンや特典など)がない
- 企業の認知度が低い
- ユーザーが興味をもつ内容を発信できていない
アカウント停止のリスク
LINE公式アカウントの利用には、LINEが定めるガイドラインがあります。例えば、以下のような違反行為をおこなうと、アカウントが停止される可能性があります。
- スパム行為(過度なメッセージ送信)
- 虚偽の情報発信
- 公序良俗に反する内容の発信
アカウントが停止されると、それまで積み上げてきた友だちリストが失われるリスクがあるため、ガイドラインを遵守した運用が求められます。
登録者が増えるとコストがかかる
LINE公式アカウントには無料プランもありますが、プランによって配信できるメッセージ数に上限があります。以下の情報は2025年3月時点のものです。
- 無料プラン:200通まで
- ライトプラン(月額5,000円):5,000通まで
- スタンダードプラン(月額15,000円~):30,000通まで(追加可能)
登録者数が増えるほど、メッセージ配信にかかるコストも増加するため、コスト管理を意識した運用が必要になります。
BtoBマーケティングには適していない
LINEは基本的に「個人向けのツール」であるため、BtoBマーケティングには適していないという側面があります。
BtoBビジネスにおいて、役職や業種などの細かいセグメント分けが重要ですが、LINEマーケティングでは、こうしたビジネス向けの設定はできず、特定の役職層や業界にピンポイントでアプローチすることは困難です。
BtoBマーケティングが目的の場合は、ビジネス向けSNSのLinkedInや、マーケティングオートメーションツールなどを利用するとよいでしょう。
LINEマーケティングをおこなう際のポイント
LINEマーケティングを成功させるためには、適切な運用戦略が欠かせません。以下の3つのポイントを押さえることで、より効果的にLINEを活用し、成果を最大化することができます。
目的・目標を明確にする
LINEマーケティングを始める前に、まず「何のために運用するのか」という目的と、それに基づく具体的な目標を明確に設定することが重要です。目的を明確にすることで、施策の方向性が定まり、適切なアプローチが可能になります。
■目的の明確化
LINEマーケティングの目的は企業や業種によって異なりますが、おもに以下のようなものが挙げられます。
- 新規顧客の獲得:LINE広告やキャンペーンを活用して新規顧客を集める
- リピーターの増加:クーポン配信やポイントカード機能を活用してリピート率を向上させる
- ブランド認知度の向上:LINEプロモーションスタンプやコンテンツ配信を通じて認知度を高める
- 顧客満足度の向上:チャットボットを活用して問い合わせ対応を自動化し、顧客の利便性を向上させる
■目標の設定
具体的な目標を設定する際は、SMARTの法則を意識することで、実行可能で効果的な目標を立てやすくなります。例えば、新規顧客の獲得を目的とする場合、次のような目標が考えられます。
- 具体的(Specific):LINE公式アカウントの友だち登録数を増やす
- 測定可能(Measurable):3ヶ月以内に1,000人の友だち登録を達成する
- 達成可能(Achievable):LINE広告や店頭ポップを活用して登録を促進する
- 関連性がある(Relevant):新規顧客の獲得を目的としているため、重要な指標である
- 期限を決める(Time-bound):3ヶ月以内に達成する
このように、目標を明確にすることで、運用の方向性がブレにくくなり、施策の効果も測定しやすくなります。
運用ルールを決める
LINE公式アカウントを効果的に運用するためには、あらかじめ運用ルールを決めておくことが重要です。
運用ルールがないと、配信頻度が不規則になったり、メッセージ内容に一貫性がなくなったりして、ユーザーに悪印象を与えるおそれがあります。
設定すべきルールの例としては、以下のようなものが挙げられます。
■配信ルール
- 配信頻度の設定(例:週1回、毎月○日など)
- 配信時間帯の決定(ターゲット層に合わせて最適な時間帯を選ぶ)
- 配信内容のカテゴリ分け(キャンペーン情報、クーポン、ニュース、アンケートなど)
■友だち対応のルール
- 自動応答メッセージの設定(営業時間外の問い合わせに自動対応)
- チャット対応の範囲(問い合わせ対応を行う場合、どの範囲まで対応するのか決める)
- クレームやトラブル対応のフローを策定(返信内容のテンプレートを作成する)
■禁止事項を明確にする
- 過度な営業メッセージの送信(ブロック率を上げないため)
- ユーザーのプライバシーを侵害する行為
- 法律やLINEの利用規約に違反する内容の配信
PDCAサイクルを回して効果検証をおこなう
LINEマーケティングは、施策を実施したら終わりではなく、PDCAサイクルを回して継続的に改善していくことが重要です。
■LINEマーケティングにおけるPDCAサイクルの例
Plan(計画):目的・目標を設定し、どのような施策を実施するか計画を立てる
「LINE広告を活用して、新規友だち登録を1ヶ月で500人増やす」
Do(実行):計画に基づいて施策を実施する
「広告のターゲット層を20〜30代に設定し、クーポン付きの広告を配信する」
Check(評価):施策の効果をデータで分析する
「1ヶ月で友だち登録が350人増えた(目標未達)」
【分析すべき指標の例】
●クーポンの使用率
●友だち登録数
●メッセージの開封率・クリック率
●ブロック率
Action(改善):分析結果をもとに改善策を実施する
「広告のクリエイティブを変更し、20代女性向けにより魅力的なデザインに調整する」
このようにPDCAを回すことで、施策の効果を最大化し、より成果の出る運用が可能になります。
まとめ
LINEマーケティングは、日本国内で多くのユーザーを抱えるLINEを活用した効果的なマーケティング手法です。
LINE公式アカウントやLINE広告、LINEミニアプリなど、多様な施策を組み合わせることで、企業や店舗はユーザーとの接点を増やし、売上やブランド認知の向上を目指せます。
LINEはとくに、幅広いユーザー層へのリーチ力や、高いメッセージ開封率、充実したマーケティング機能が大きなメリットとして挙げられます。
一方で、友だち登録が必須であることや、BtoBビジネスには適していない点、運用コストの増加リスクなどのデメリットも考慮する必要があります。
効果的に活用するためには、目的や目標を明確にし、運用ルールを決めたうえでPDCAサイクルを回しながら継続的に改善を図ることが重要です。
LINEマーケティングを上手に活用し、顧客との信頼関係を築きながら、長期的なビジネス成長を目指していきましょう。