分析の仕方
カテゴリー別
働き方の記録を集計、分析するためには、「外出」「会議」などカテゴリーごとに項目を立てたうえで、個別タスクを記入するようにします。
項目は大小の2段階にすると便利です。
例えば、大項目を「会議」とし、小項目を「社内会議」「社外会議」とします。そうすれば、「会議-社外会議-A社との戦略会議」と記録することで、業務時間内の何%を会議に使っているか、また、その内容までも把握できます。
もしも、会議に時間を費やしていて、その大半が小項目「社内」であったなら、定例会議を短縮できないかなど、具体的な解決策を打つことができます。そのためにも大項目・小項目を設定する必要があるのです。
最初から数多くの項目を設定すると、取り組みのハードルが上がってしまうので、最初は大項目をざっくりと決めてスタートさせ、少しずつブラッシュアップしていくことをおすすめします。
設定した項目に該当しないものは「その他」に分類されますが、気が付くとその他に分けられたものが増えてしまう可能性があります。その他の項目が増えてしまうと、集計・分析ができなくなるため、その他の項目が3割を超えるようであれば、設定した項目が適正であるかを見直すといいでしょう。
増やしたい仕事と減らしたい仕事
チーム戦力を上げるためにイメージした「自分が目指すべき働き方」を基に、増やしたい仕事と減らしたい仕事に着目して項目を立てます。そうすれば、それぞれにどれだけの時間を使っているかを可視化することができます。可視化することで自分が目指すべき働き方とのギャップが明確となり、そのギャップを埋めるための解決策を考えることができます。
プレイングマネージャーが働き方の記録を始めるときは、「増やしたい仕事=マネジメント、減らしたい仕事=プレイヤー」でが明確になるよう大項目を設定するといいでしょう。
例えば同じ資料作成でも、マネージャーとしての資料作成とプレイヤーとしての資料作成は違います。
そこで、大項目をマネージャー資料作成とプレイヤー資料作成に分けます。そして主なタスクを小項目として設定します。
項目が決まったら記録開始です。
集計、分析をするためには、最低でも2週間から1ヵ月は同じ項目で記録していきます。
1ヵ月を経過したら集計・分析をします。
マネージャーの仕事とプレイヤーの仕事に、それぞれどれくらいの時間をかけていたのかが明確になります。
想像以上にマネージャーの仕事にかけた時間が少なかったとしても、これは現実を認識するための作業ですから、ここから 目指すべき働き方にむけて改善策を考えていけばいいのです。
問題がありそうなタスク
大項目を分析すると、予想以上に時間がかけられているものがあるかもしれません。それが問題であれば、小項目をチェックします。すると、何に時間を取られているかを分析することができます。
予想以上に時間を取られていたものが「(大項目)プレイヤー営業-(小項目)ルート営業」だったとします。
これは、ルート営業を他のプレイヤーに任せることによって、プレイヤーとしての時間を減らし、その分をメンバーの育成の機会に充てることができるかもしれません。
「(大項目)マネージャー打ち合わせ-(小項目)報告連絡相談」の時間が少なく、「(小項目)突発的なミーティング」が多かったとします。その場合は、メンバーがマネージャーに報告相談しづらい環境になっていないか。また、報告相談ができないことで、マネージャーがトラブル案件の把握ができず、突発的なミーティングが増加してるのではないかと問題意識に結び付けることができます。
このように、項目を立てることで「問題のある場所」「問題を生み出している要因」「解決策」と掘り下げていくことができるようになります。
生産性向上
問題の原因
働き方の記録することで、現状把握→問題点の気づき→原因の特定→解決策の実行というサイクルを回すことができます。
ここで注目するのは「原因の特定」です。
例えば、資料作成に時間をかけすぎているとことに気づいたら、その問題が生じる原因は何なのかと深堀して考えることが大切です。原因を特定したうえで、適切な手立てを講じることができたときに問題は解消されます。
資料作成に時間がとられている原因が、他のメンバーからの声掛けが多くて集中できないということであれば、重要な資料作成は、別室にこもって作成したり、社外に出て集中できる場所で作成するなどの解決策を見つけることができます。
そして、解決策を実行してから一定期間が経過した後、再び働き方の記録を集計・分析します。
あまり改善が見られないようであれば、別の原因がないか再分析しましょう。
もしかしたら、それはなくてもいい資料かもしれません。その可能性があるのなら、簡単な資料でカバーできないか、代替え資料がないかなどを見直します。作成する資料の量を減らせることができれば、作業時間の削減にもなります。
注意すべきこと
残業を減らそう、効率よく作業しようと、業務のムダを省くことばかりに意識してしまうと、思わぬ弊害が起きてしまうかもしれません。
生産性は「投入した資源(人・もの・金・時間)」を分母に、「得られた成果(仕事の結果)」を分子にした分数によって計算されます。生産性を向上させるためには、「投入した資源」を最小化するとともに「得られた成果」を最大化する必要があります。業務のムダを省くことによって分母が小さくなることはいいのですが、それに伴って分子まで小さくなってしまっては、生産性が悪化してしまう恐れがあるので注意しましょう。
では、仕事の成果を最大化するために大切なこととは何でしょうか。
それは、持っている資源を「マネージャーとしての仕事」に投入することです。
業務のムダを省くことばかりを意識してしまい、マネージャーとしての仕事を充実させなければ、むしろ生産性は悪化してしまうかもしれません。
ムダを省いたことで生まれた余力を、マネージャーとしての仕事に向ける意識を忘れないでください。
重要な仕事を増やすために、重要でない仕事を減らすことは、働き方改革の大原則です。
仕事の重要性
「プレイングマネージャーにとって重要な仕事は何か」を確認するには、マトリクス表を使って仕事を整理するといいでしょう。
まず、マネージャーがやるべき仕事を書き出します。ここで忘れてはいけないのが、これまで十分にできていなかったマネージャーとしての仕事をできる限り書き出すことです。
そして、マトリクス表の①緊急かつ重要 ②緊急だが重要ではない ③緊急ではないが重要 ④緊急でも重要でもないの該当する場所に当てはめていきます。
振り分けたら、③緊急ではないが重要 に注目します。おそらく、マネージャーとしての業務が多く該当しているのではないでしょうか。「メンバーとのコミュニケーション」「メンバーの育成」「チーム状況の観察」など、最も注力すべきマネージャー業務が、緊急ではないという理由で、積極的にアクションを起こせていなかったことがわかると思います。
①緊急かつ重要 ②緊急だが重要ではない に該当する業務は、プレイヤーとしての業務が多く該当しているでしょう。これは、緊急という理由でマネージャー業務よりもプレイヤーとしての業務を優先してしまっているからだと考えられます。
人間はだれしも、緊急性の高い物事に気を取られてしまいがちです。その結果、重要な物事が放置されてしまうという事態を招いてしまうのです。
プレイングマネージャーが自分の働き方を見直す場合には、③緊急ではないが重要 に該当する業務に時間をかけられるように、①緊急かつ重要 ②緊急だが重要ではない に該当する業務を減らすことを意識することが必要なのです。
チーム戦力
プレイングマネージャーがマネジメントに注力できるよう働き方を変えるサイクルを回し続けると、数か月後には少しずつ変化を感じられるようになるでしょう。
メンバーとのコミュニケーションが増えた。自宅に持ち帰る仕事が減ったなど、小さな変化でも「働き方」を変えることにモチベーションが高まっていくことでしょう。
しかし、変化が起き始めたと同時に、限界を感じ始めるかもしれません。それは、マネージャー一人で解決することができない問題が多数あることに気が付くからです。
しかし、チームメンバーを巻き込んでいくのであれば、慎重に準備を進めなくてはなりません。
仕事をメンバーに任せることは簡単ですが、その手順を間違えてしまうと、逆に大きな問題を生んでしまうかもしれません。安易に仕事を任せると、「面倒な仕事を丸投げされた」と感じるメンバーもいるかもしれませんし、トラブルを頻発させてしまうメンバーがいるかもしれません。
そうなってしまうと、チームを成長させるためにマネジメント業務に力を入れるどころか、チームを危機的状況に追いやってしまいかねないのです。
メンバーを巻き込む前にしっかりと準備をする必要があります。
チーム戦力の分析
今把握しているメンバーの情報を基にチーム戦力の分析をし、今後どのようなシナリオでチームを成長させていくかをイメージします。
各メンバーの特性や担当業務などを書き出し、チームの現在の戦力図を描いてみましょう。
出来上がった戦略図から「Aさんは成長意欲が高いからもう少し難易度の高い仕事を任せよう。」「Bさんは一部の仕事を新人と分担して、指導係をお願いしよう」など作戦を考え、自分がマネージャーとしてどう支えていくかをイメージします。
このような作業をしていると、メンバーのことを意外と知らない自分に気が付くと思います。
プレイヤーの仕事に意識がいっているときは、メンバーとのコミュニケーションが不足していることが多く、メンバーを育成しようと思ったときには、必要な情報が揃っていないなんてこともあるかもしれません。それでも、メンバーが「どんな仕事をやりたいのか」「どんなスキルを身に付けたいのか」「得手不得手は?」「育児や介護はあるか」など知っている限りのメンバーの情報をもとに、近い将来目指すべきチームの戦力図を描いてみましょう。
もちろん、これをすぐに実行するのではなく、まずメンバーとのコミュニケーションを充実させましょう。
メンバーとの1対1のミーティングが難しければ、スキマ時間を使った面談を行い、メンバーのモチベーションの源を把握できるような質問をしてみましょう。また、仕事上の悩みやどんなスキルを身に付けたいかなどを聞いてみるのもいいでしょう。改まった場ではないからこそ、メンバーの状況を聞きやすくなるのではないでしょうか。
コミュニケーションが増え、メンバーに対する理解が深まったなら、先ほどの戦力図を加筆修正していきます。何度も修正を加えることで、より実現可能性を高めていくことができます。
そして、充実したコミュニケーションからマネージャーとメンバーが良質な人間関係が築くことができれば、「関係の質」が向上します。そうなった時こそ、メンバーを巻き込んでいけるようになるのです。