企業活動をおこなううえで、業務効率の向上や売上アップなどを目標に掲げる企業は多いことでしょう。
その目標達成のためには、過去の購買データや売上の推移、競合他社のデータといった、さまざまな情報の比較・分析が有用です。
しかし、このようなデータを見やすいグラフや表にするには、膨大なデータから必要なものだけを抽出し、加工もしなくてはならず、多くの時間や手間がかかります。
これを簡単にひと目で分かるデータとして可視化できるのがBIツールです。この記事では、BIツールとはなにか、おすすめの製品などまとめてご紹介いたします。
BIツールとは
BIツールとは、企業の有するさまざまなデータを集約して分析、可視化し、いつでも必要な情報を確認できるようにするツールです。BIシステムともいいます。
BIとは「ビジネスインテリジェンス」の略で、これは企業のデータを収集・分析し、経営上の意思決定に活用する手法のことです。
BIツールの主な機能
前述のようにBIツールとは、企業のデータを集約し、意思決定をスムーズにするツールです。そのために、どのような機能が搭載されているのかを解説いたします。
レポーティング
企業に日々蓄積されていく複数のデータをグラフなどで可視化、レポートとして出力する機能です。データの必要な際に管理画面(ダッシュボード)ですぐ確認できます。
売上やKPIの管理、問題の検知やパフォーマンスの確認といった、あらゆる場面で活用できます。
OLAP分析
OLAPとはOnline Analytical Processing(オンライン分析処理)の略で、蓄積されたデータを多次元的かつ多角的に分析、問題に対して要因を掘り下げ、検証をする機能です。
通常、データの多元的な分析には専門知識を要しますが、この機能があれば簡単に分析をおこなえます。また、インメモリ型のBIツールだと大量のデータも高速処理が可能です。
データマイニング
マイニングとは日本語で「発掘」を意味し、データマイニングとは各種データの分析により、そこから関係性や傾向などを深堀する機能です。
分析の手法には、2つのデータの関係性の高さを数値化する「相関分析」、アンケートの集計などで用いられる「クロス分析」、結果と要因の関係を数値化する「回帰分析」などが使われます。
プランニング
過去の実績をもとにシミュレーションをおこない、その結果を分析して意思決定をサポートする機能です。
BIツールが注目されている理由
BIツールを導入している企業が増えてきていますが、いま注目されている理由としては、人々の行動様式の変化が挙げられます。
これまで、商品を売るには直接営業マンが売り込んだり、店頭に買いに来てもらったり、人から人に商品と金銭が渡り、いくら儲かったか、なにが人気か、すぐ分かりました。
しかし、近年はインターネットが普及し、誰でも情報を調べられるようになったことで、類似品と比較され、売り込んでその場で買ってもらうということも少なくなりました。
また、商品や金銭の流れもデータになり、購入者のデータや競合他社の情報など、売り上げを伸ばすためにさまざまな情報を分析する必要が出てきたのです。
これを、誰でも見やすく分析できるようにしたものがBIツールであり、特別な知識も必要なく、すぐビジネスに活用できるため、情報を分析したい企業の多くが取り入れています。
BIツールおすすめ10選
Microsoft Power BI
無料の「Power BI Desktop」、クラウドで利用できる「Power BI Pro」、より拡張性の高い「Power BI Premium」など、利用スタイルや組織規模にあわせて選べる6種類の製品があります。
Microsoft製品のため、Microsoft Power Platform 全体やOffice 365、Dynamics 365、Azureをはじめとする数百ものアプリと連携できるのが大きな特徴です。
特徴
- 無料トライアルあり
- 1ユーザー月額¥1,090
- 60分間のトレーニングは無料で利用できる
- モバイル版もあり、どこでもデータを閲覧できる
- Microsoft Power Platform 全体やOffice 365、Dynamics 365、Azure、その他数百のアプリと連携が可能
- 専用コミュニティあり
Yellowfin
AI対応の最新アナリティクスツールで、世界50ヶ国以上、29,000社の導入実績があります。ドラッグ&ドロップ、クリックでの直感操作で、丸1日かかる分析を1分で完了できます。
エンタープライズ向けと組み込みビジネス向けがあり、オンプレミス、クラウドどちらでも導入可能、各社のニーズにあった価格を提案するスタイルのため、料金は問い合わせが必要です。
特徴
- 30日無料トライアルあり
- 料金体系はサブスクリプション
- ITトレンド年間ランキング「BIツール部門」6年連続1位
- 製品の特徴や製品デモは定期開催のウェビナーで視聴可能、個別デモもあり
- 通常のお問い合わせだけでなく、専用コミュニティやWiki、YouTubeチャンネルなども用意されている
Tableau
ほぼすべてのシステムからあらゆる種類のデータを取得し、迅速かつ容易に実用的なインサイトを引き出せるツールです。
ドラッグ&ドロップ操作をデータクエリに変換して、データを視覚的に表現できる、直感的なインターフェースが特徴。
Tableau Desktopは14日間の無料トライアルができるほか、Tableau Prep BuilderやTableau Onlineなど、ほかのトライアルも利用できます。
特徴
- 14日無料トライアルあり
- ライセンスは年額¥102,000~
- 権限の異なるライセンスが3種類用意されている
- 認可校の学生と教員は無料で利用可能
- 専用コミュニティあり
MOTION BOARD
クラウド版とパッケージ版があり、導入企業の環境や要望にあわせて最適のものを選べる、国産のBIツールです。
「定期オンラインライブトレーニング」や「個社オンラインライブトレーニング」が用意されており、実習環境に接続して操作しながら受講できるため、操作方法を実践的に身に着けられます。
特徴
- 無料トライアルあり
- 無料トライアルでも60種類のダッシュボードが利用可能
- 初期費用10万円/月額3万円~
- Salesforceとも連携可能
- 地図機能や3Dマップなど、従来のBIにとどまらない多種多様なビジュアライズが可能
DOMO
数千人のユーザーに対応でき、数十億行のデータを扱えるうえに、様々なデータソースをシームレスに統合できるなど、高い拡張性が魅力のBIツールです。
すべてのシステムをDomoに接続、統合でき、データの分析や可視化だけでなく、AI技術を活用した予測が可能で、さらにどこで利用されているデータにもアクセスできるようになります。
特徴
- 無料トライアルあり
- 数千人のユーザーにも対応可能
- AWSやSalesforceなどともシームレスに連携可能
- モバイルアプリもあり、どこからでも利用可能
- クラス最高レベルの多層化セキュリティ
Qlik Sense
独自の連想アナリティクスエンジン、高度な AI、高性能なクラウドプラットフォームを備えたデータアナリティクスプラットフォームです。
Qlik Sense「Business」「Enterprise SaaS」がありますが、いずれも業界最高水準の最新アナリティクスを利用でき、1つのプラットフォームですべてのデータを統合、確認できます。
特徴
- 無料トライアルあり
- 1ユーザー月額$30
- データをドラッグ&ドロップで、完全にインタラクティブなアナリティクスアプリを作成できる
- AIがインサイトの提案をおこなう
- 自動でデータ更新がされるため、誤って古いデータを参照してしまうミスが起きない
Sisense
Sisense AIを利用した分析プラットフォームです。数十億レコードの大量のデータ、複雑なデータセットを高速に可視化・分析し、組織のデータ活用を加速させます。
独自のin-chip技術により、一般的なサーバー環境でも驚異的な高速処理を可能にし、大人数のユーザーによる同時接続や、大量のデータの結合においても、問題なく動作します。
特徴
- 無料トライアルあり
- 独自のin-chip技術により大容量のデータ通信を可能に
- 130以上の豊富なコネクターで多様なデータソースに接続可能
- 官公庁、保険、交通機関、旅行業など業種を問わずAIを用いた分析が可能
MicroStrategy
200以上のデータソースから、便利なアナリティクス機能を備えたダッシュボードを作成できるほか、ユーザーが毎日使用するアプリケーションやサイトにアクションを付加できます。
クラウドやモバイル端末からでも、コーディングする必要もなく、組織に合わせてカスタマイズされた状態で利用できるツールです。
特徴
- 無料トライアルあり
- オンデマンドのウェビナーも実施
- Google、Amazon、Salesforceなど90種類ものデータソースと連携できる
- データマイニングツールで構築した予測モデルも取り込める
- 仮説検証、変動予測、顧客スコアリングモデルなどをすぐ実行可能
Looker
最新のBIと分析、各種システムとシームレスに連携できるインサイトと、データドリブンなワークフロー、カスタムアプリケーションが利用できるBIツールです。
G Suiteやshopify、Adobeなど広く使われているさまざまなアプリケーションとも連携でき、高い拡張性があります。
特徴
- デモあり
- AWSやGCPなどのパブリッククラウドや、マルチクラウド環境、ハイブリッド環境でのホスティングに対応
- 小売業からヘルスケアに至るまで、各業種に最適なカスタマイズが可能
- ユーザーごとの暗号化アクセスコントロールでデータへのアクセスを簡単管理
Dr.Sum
上記でご紹介した「MOTION BOARD」と同じウイングアーク1st株式会社の提供している、データ基盤ソリューションです。もちろんMOTION BOARDとも連携できます。
強化されたインメモリエンジンとSQLにより、IoTなどの大容量データや20億件の集計なども超高速処理を可能にしました。
特徴
- 無料トライアルあり
- 強化されたインメモリエンジンとSQLで大量データも高速処理
- Safari/Chrome/Firefoxなどのブラウザにも対応
- 運用支援として、年度変更などテーブルの切り替えに便利なテーブルローテーションコマンドも提供している
- JIIMA認証「電子帳簿ソフト法的要件認証」「電子書類ソフト法的要件認証」取得
BIツールを選定するときのポイント
これほどあるBIツールのなかから、最適なツールを選定するには、どのようなポイントに注目すべきかを解説します。
必要な機能は搭載されているか
BIツールは基本的に、「BIツールの主な機能」の部分でご紹介した機能を備えており、そのほか、ツールによっては独自の機能があったり、特定の機能に特化していたりします。
そもそも、導入によりどのような課題を解決したいか、なにを分析したいのかを検討し、それに必要な機能はなにか、それを搭載している製品はどれか、調べるとよいでしょう。
具体的には、たとえば社内の各部署のデータを一元的に確認できるようにしたい場合、ダッシュボード機能に特化したツール。
経営判断のためにERPなど基幹システムの情報を視覚化したい場合は、レポーティングの機能に優れる製品を選ぶ、などです。
操作をしやすいUIか
今後、長期的に利用していくツールであれば、おもに利用する社員が操作しやすく、分かりやすいUIであることも重要です。
機能の充実した高額で高度なBIツールを導入しても、使わない機能が多かったり、操作しにくいからと利用しなくなったりすれば、非常にもったいないことです。
宝の持ち腐れとなってしまわないためにも、事前に各ツールの使い勝手や操作性などを確認しておくことをおすすめします。
サポート体制は整っているか
導入や操作方法に関して、疑問が生じた際にすぐ相談できる体制があるかもチェックしておくと、もしもの場合に安心できます。
また、サポートはいつでも対応してくれるか、メールや電話のほかに、たとえば出張してくれるサービスがあるのか、利用しやすさも調べておくとさらによいでしょう。
ツールによっては、ユーザーが意見交換できるコミュニティが用意されていたり、操作や活用方法に関するセミナーを開催していたりするところもあります。
BIツールを導入するメリット
BIツールを導入した場合、具体的にどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
社内に散在するデータの収集し分析できる
社内にある各種システムやツールに、フォーマットの異なるデータが散在している状態の企業は少なくないでしょう。
さらに、そのデータを自力で分析するとなると、そこから必要な情報のみを抽出し、共通の書式に落とし込む作業や、分析するにも専門知識が必要です。
しかしBIツールがあれば、社内にある複数のシステムやツールに散在していたデータを一箇所に集約でき、また分析もツールが実行するため、手間や時間がかかりません。
データを可視化でき現状把握が容易になる
前述のように、BIツールは散在するデータを集約できるだけでなく、フォーマットの異なるデータであっても、ひと目で分かりやすいグラフや表として可視化できます。
BIツールにはOLAP分析やデータマイニング機能があり、膨大なデータの多次元分析や、回帰分析・相関分析などさまざまな手法で、スピーディかつ容易に現状把握が可能です。
表計算ソフトでもデータの集計や分析はできますが、人力でおこなうとなると、関数やピボットテーブルなどを使う手間があり、結構な時間や労力がかかってしまうでしょう。
レポート作成の手間と時間を軽減できる
BIツールにはレポーティング機能もあるため、データ分析の結果を即座にレポートとして出力可能です。
通常、レポート作成には膨大なデータから必要な情報を抽出し、分析してグラフや表に加工するなど多くの作業が必要ですが、ツールならこのような手間や時間をかけずにすぐ作成できます。
問題・課題を早期に発見でき迅速に対応ができる
BIツールを用いれば、データマイニングによってこれまで気づかなかった企業としての課題が浮き彫りになり、予測分析により問題の発生前に早期発見できる場合もあります。
ビジネスにおいては、たとえば情報漏えいなどの問題が発生してしまえば、重大な損害になりかねません。このような問題の発生前に気づけることは、大きなメリットといえるでしょう。
BIツールを導入する際のデメリット
つづいて、BIツールを導入した場合にデメリットとなってしまう部分についてご紹介します。
コストがかかる
多くのBIツールは有料であり、当然ですが導入にコストがかかります。無料の製品だと、セキュリティや機能面でも劣ってしまいがちです。
また、一般的に料金はユーザー数や利用する機能で変動するため、とりあえず導入すると、あとでユーザーや機能を増やしたいとなった場合、追加料金が発生します。
当初想定していたよりも月額コストがかかってしまった、とならないよう、導入前は慎重に検討されることをおすすめします。
導入時の設定が必要
BIツールでは各種システムやツールを横断し、データの集計や分析がおこなえますが、それを可能にするにはほかのシステムやツールとの連携が不可欠です。
そのほかにも、既存のデータから取り込みたい情報を選んでインポートしたり、場合によっては、情報システム部に依頼したりする必要もあるでしょう。
BIツールの製品によっては、導入に際して手厚くサポートしてくれるところもあるため、心配な場合はこのような製品を選ぶとよいでしょう。
まとめ
BIツールの概要や導入のメリット・デメリット、おすすめの製品など幅広くご紹介しました。
自社での導入を検討される際は、「BIツールを選定するときのポイント」でご紹介したように、必要な機能の有無、操作性などをもとに最適なものを選ばれるとよいでしょう。