ECサイトでは問題なく注文を受けられているのに、注文が入った後は毎朝、人が管理画面を開き、Excelやスプレッドシートへ受注情報をコピペしている。
少人数でネットショップを運営している事業者では、このような状態は珍しくありません。
Shopifyで注文を確認して、楽天市場の注文も確認する。注文番号、氏名、商品、数量、金額などを社内の受注管理表へ転記し、備考欄を読みながら必要な対応を書き足す。
1件ずつなら数分でも、毎日積み重なると大きな負担です。
そこで、「AIに受注処理を任せられないか」「Makeなどを使えば自動化できるのか」「一元管理システムを入れた方が早いのか」と考える方も多いでしょう。
| 結論:EC受注の単純なコピペをなくすために、最初からAIを使う必要はありません。 ① CSVで済まないか → ② 標準API・アプリ連携 → ③ Makeなどのノーコード連携 → ④ 画面等から拾う必要があるならAI → ⑤ 文章理解や例外判断が必要ならAI |
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受注情報のように、すでに数字や文字がデータとして存在しているものは、できるだけそのまま取得した方が確実です。重要なのは、すべてをAIに置き換えることではありません。
機械的に処理できる注文は自動で流し、人が考えなければならない注文だけを見る状態に変えることが、少人数のEC事業者にとって現実的なゴールです。
この記事では、Shopify・WooCommerce・MakeShop・BASE・STORES・カラーミーショップ・EC-CUBE・楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピングなどを利用している事業者を想定し、毎日の受注コピペを減らす考え方を具体的に解説します。
想定事例|Shopify+楽天の注文を毎朝1時間コピペしていた雑貨店

ここでは分かりやすくするため、実在企業ではない想定例を使います。
ある小規模な雑貨店では、自社ECをShopify、モール販売を楽天市場で運営していました。店舗運営は数名体制です。
注文自体はオンラインで入ってくるため、一見すると十分にデジタル化されているように見えます。しかし、担当者の毎朝の作業は次のようになっていました。
- Shopifyの注文管理を開く
- 前日から当日朝までの注文を確認する
- 注文番号、購入者、商品、数量、金額などを受注管理用スプレッドシートへ入力する
- 楽天市場の管理画面を開く
- 同じように注文情報を受注管理表へ転記する
- 備考欄を読む
- ギフトや特殊な依頼に印を付ける
- 社内で確認が必要な注文を担当者へ伝える
注文が少ない日は30分程度で終わります。しかしセール後や繁忙期になると1時間以上かかることもあります。
本当の問題は「受注」ではなく受注後の転記だった
この店は、EC化できていないわけではありません。注文はすでにオンラインで受けています。
問題は、オンラインで取得した情報を、その後もう一度人が入力し直していることです。つまり改善すべきなのはECサイトそのものではなく、EC管理画面と社内の受注管理表との間にある「継ぎ目」でした。
全部AI化する必要はない
ここで「AIに管理画面を読ませて、全部判断させよう」と考えると、仕組みが必要以上に複雑になります。
注文番号が「12345」なら、AIに「これは注文番号12345ですね」と判断させる必要はありません。数字をそのまま受注管理表へ移せばよいからです。
一方、「友人へのプレゼントなので金額が分かるものは入れないでください。できれば誕生日用でお願いします」という備考欄は、単純な列のコピーでは処理できません。この部分はAIが得意です。
| 役割分担の基本 注文番号・商品・数量・金額などは連携で取得し、備考欄など人の読み取りが必要なところだけAIに整理させます。 |
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なぜECでは受注できているのに、その後はコピペになるのか
ネットショップを導入していても、受注後の業務まで自動化されるとは限りません。なぜ受注管理表へのコピペが残りやすいのでしょうか。
ECごとに管理画面とデータ形式が違う
複数のネットショップやモールを運営すると、注文情報の持ち方が異なります。
- 注文番号
- 商品コード
- 商品名
- 数量
- 金額
- 購入者名
- 配送先
- 決済方法
- 注文ステータス
- 備考
- ギフト指定
必要な情報は似ていても、列名や構造が完全に同じとは限りません。そのため、「Shopifyはこちらの列」「楽天はこちら」と担当者が見比べながら、自社の管理表へ並べ直す運用が生まれます。
社内では別の受注管理表を使っている
ECの管理画面だけで仕事が完結しない会社も多くあります。社内のExcelやGoogleスプレッドシートを、発注判断、売上確認、社内共有、問い合わせ対応、在庫確認などにも使っているため、「ECの管理画面だけを見ればよい」という状態にはなりません。
問題はExcelを使っていることではありません。ECからExcelへ人が手で情報を移していることです。
「昔からこのExcel」が業務ルールになっている
受注管理表は最初から高度に設計されていたわけではなく、必要な列が少しずつ追加されて現在の形になっていることがあります。担当者しか意味が分からない色分けや、「この場合は備考に★を付ける」「この得意先だけ会社名を別の名前に直す」といったルールが残っていることもあります。
例外処理が担当者の頭の中にある
「この文章が入っていたらギフト扱い」「同じ住所で名前が似ていれば同一顧客として確認する」「大量注文の場合は担当者へ回す」といったルールが担当者の頭の中にある状態では、単純なシステム連携だけで完全自動化するのは難しくなります。
| 自動化前の重要ポイント 受注処理を自動化する前に、「データを移す仕事」と「内容を判断する仕事」を分けます。 |
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EC受注のコピペをなくすなら、この順番で判断する

① CSV書き出しだけで済まないか確認する
最初に確認したいのがCSVです。CSVとは、Excelやスプレッドシートで扱える表形式のデータです。EC管理画面から注文一覧をCSVで書き出せるなら、1件ずつコピーする必要はありません。
| 50件を1件ずつコピーする → 50件をまとめてCSV出力して一括取り込み 最初から完全自動化を目指さなくても、手作業を大幅に減らせます。 |
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Shopifyでは注文管理画面から注文をCSV形式でエクスポートできます。BASEでも公式の「注文データダウンロードApp」で注文データをCSV出力できます。STORES ネットショップにもオーダー情報のCSV出力機能があります。
CSVを毎朝ダウンロードする作業自体は残りますが、それでも1件ずつコピペするより大幅に作業を減らせる可能性があります。さらにExcelのPower QueryやGoogleスプレッドシートの関数・スクリプトなどを使えば、CSVの列順を自社の管理表に合わせて整形することもできます。ここで解決できるなら、AIもAPI開発も必要ありません。
② 標準API・アプリ連携で済まないか確認する
CSVの次に確認したいのが、EC側に用意されているAPIやアプリ連携です。APIとは簡単にいうと、システム同士が直接データを受け渡すための仕組みです。
たとえば、「注文が入る → システムが注文データを取得する → スプレッドシートや社内システムへ登録する」という流れを作れます。
WooCommerceの公式REST APIでは注文情報の取得・作成・更新などが可能です。EC-CUBEもCSVの出力項目や並び順を外部システム向けに設定できます。
参考:WooCommerce Developer Docs:Orders API
APIという言葉を見ると「開発会社に頼まないと無理」と感じるかもしれません。しかし、実際にはAPIを直接プログラムするだけでなく、次に説明するノーコード連携サービスを間に入れる方法もあります。まず重要なのは、利用しているECに正式なデータ取得手段がないか確認することです。
③ Makeなどのノーコード連携で済まないか確認する
APIがあるからといって、自社でプログラムを書く必要があるとは限りません。Makeなどのノーコード・ローコード型の自動化サービスでは、複数サービスをつなぎ、決めたルールに従って処理させることができます。
たとえば、「Shopifyに新規注文 → 注文情報を取得 → 必要項目を選択 → Googleスプレッドシートに新しい行を追加」という流れです。
参考:Make:Google Sheets と Shopify の連携
ただしノーコードだからといって、何も考えずに作れるわけではありません。
- どの項目をどの列へ入れるか
- 同じ注文を二重登録しない方法
- キャンセル時にどうするか
- エラー時に誰が確認するか
といった設計は必要です。
④ 画面から拾うしかない場合はAIを検討する
CSVでもAPIでも必要な情報を取得できず、画面や文書を人が見なければならない場合は、AIが候補になります。たとえば、「管理画面のこの場所にしか表示されない文章を確認しなければならない」「メール本文にしか必要な情報がない」という場合です。
ただし、画面を読み取る自動化は注意が必要です。管理画面のレイアウト変更によって動かなくなる可能性があります。そのため、CSVやAPIで取れる情報まで画面読み取りにしないことが重要です。
⑤ 例外や判断が必要なところだけAIを使う
AIの強みが出るのはここです。たとえば備考欄に「母の日のプレゼントです。値段が分かるものは入れず、可能であれば5月10日の午前中に届くようお願いします」と書かれていたとします。
この文章から「ギフト」「金額表示なし」「配送希望あり」「日時指定あり」と整理するのは、単純な列コピーよりAIが得意です。
| データの移動=連携・自動化 文章の理解や例外判断=AI |
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CSV・API・ノーコード・AIは何が違う?受注処理の選び方
方法ごとの違いを整理すると次のようになります。
| 方法 | 主な用途 | 正確性 | 導入難易度 | 例外処理 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|---|---|
| CSV | 一括転記 | 高い | 低い | 苦手 | まずコピペ件数を減らしたい |
| API・標準連携 | 継続的なデータ連携 | 高い | 中程度 | 苦手 | 毎日自動で受注データを取りたい |
| ノーコード連携 | 複数サービス間の定型処理 | 高い | 中程度 | 条件分岐は可能 | 開発せず自動化したい |
| AI | 自由記述・分類・判断補助 | 要確認 | 中程度 | 得意 | 備考や例外が多い |
| 一元管理ツール | 複数店舗の集中管理 | 製品による | 中〜高 | 製品による | 複数モール・大量注文をまとめたい |
ここで重要なのは、「どれが一番優秀か」ではありません。同じ会社の中でも複数の方法を組み合わせます。たとえば「受注取得:API/受注管理表への追加:Make/備考分類:AI/最終確認:担当者」という形です。AIと自動化ツールを競わせる必要はありません。役割が違います。
Shopify・楽天・BASEなど、EC別に最初に確認する場所
ここからは主要なECサービスについて、「受注コピペをなくしたいとき、まず何を見るか」を整理します。仕様・提供プラン・API条件は変更される可能性があります。実際に導入する際は、各サービスの最新公式情報を確認してください。
Shopify|まず注文CSV、その次に連携を確認する
Shopifyでは注文管理画面から注文データをCSV形式でエクスポートできます。そのため、現在1件ずつ注文をコピーしている場合は、まずCSVで必要な項目を取得できないか確認するのが第一歩です。毎日のCSVダウンロードさえなくしたい場合は、アプリやAPI、外部自動化サービスによる連携を検討します。
最初に確認する順番:CSV → Shopify側のアプリ・連携 → ノーコード連携 → 必要部分だけAI
WooCommerce|API連携を検討しやすい
WooCommerceにはREST APIがあり、注文情報の取得や更新などを行えます。WordPress上で運営していることから外部連携の設計自由度はありますが、プラグインやカスタマイズ状況によって注文情報の持ち方が変わることがあります。現在のサイト構成を確認して設計する必要があります。
参考:WooCommerce Developer Docs:Orders API
MakeShop|まず注文CSVを確認する
MakeShopでは注文一覧から検索した注文データをCSVとしてダウンロードできます。現在、注文画面から社内Excelへコピーしているのであれば、まず注文CSVを使って一括処理できないか確認しましょう。
BASE|注文データダウンロードAppを確認する
BASEでは「注文データダウンロードApp」を利用することで注文情報をCSV形式でダウンロードできます。つまり、1件ずつ管理画面からコピーする前に、CSVでまとめて取得できないかを確認する価値があります。
STORES|オーダーCSVから始める
STORES ネットショップでは「オーダーCSV出力」を利用して、オーダー情報をまとめてCSVで取得できます。購入者情報や配送先、商品、個数、金額、備考など、受注管理で利用しやすい項目が含まれます。ただし、出力項目などは利用状況やプランによって差が出る場合があるため、現在の契約内容と最新ヘルプを確認してください。
カラーミーショップ|受注一括データを確認する
カラーミーショップでは各種データをCSV形式でダウンロードでき、「受注一括データ」も対象です。まずは現在人がコピーしている項目が受注一括データに含まれているかを確認します。個人情報を含むデータの取り扱いにも注意が必要です。
EC-CUBE|受注CSVを連携先に合わせる
EC-CUBEでは受注CSVを含む各種CSVを出力でき、出力項目や並び順を設定できます。自社で利用している受注管理表や販売管理システムの列構成が決まっている場合、比較的考えやすい方法です。
楽天市場|まずRMS内の取得方法と公式連携を確認する
楽天市場を利用している場合は、RMS側で取得できる受注情報と、現在利用可能な公式連携方法を確認します。楽天市場では外部システムとの連携に利用されるRMS WEB SERVICEがありますが、利用できる機能や権限、申請条件は変更される可能性があります。
「楽天だから必ずこのAPIで取得できる」と決めつけるのではなく、契約・権限を確認したうえで設計することが重要です。特にShopifyとの併売など複数店舗運営では、楽天だけ独立した手作業を残すのではなく、一元管理ツールを含めて全体を比較する方がよいケースがあります。
Amazon|SP-APIやレポートを確認する
AmazonではSelling Partner API(SP-API)が提供されています。公式ドキュメントではOrders APIを利用して注文情報を取得でき、注文同期などのアプリケーション開発に利用できると案内されています。また、Reports APIによって注文履歴などのデータを取得する方法もあります。画面をAIに読ませる前に、まず正式なデータ取得手段を確認する方が安定します。
参考:Amazon Selling Partner API:Orders API
Yahoo!ショッピング|注文APIの利用条件を確認する
Yahoo!ショッピングには注文関連APIがあり、注文検索や注文詳細取得などの機能が提供されています。ただし、公式情報では本番環境で注文関連APIを利用するには審査が必要とされています。「APIがある=今日からすぐ使える」とは限らないため、自社で利用可能かを確認したうえで、CSV、既存連携、一元管理ツールなども含めて比較します。
AIを使った方がよいEC受注処理は「コピペ」ではなく例外処理

AIが特に役立つのは、列から列へコピーする仕事ではなく、文章や曖昧な情報を整理する仕事です。代表例を見ていきましょう。
備考欄の自由記述を分類する
ECの備考欄には、「プレゼントです」「領収書が欲しい」「午前中に届けてほしい」「不在の場合は宅配ボックス希望」「2件をまとめてほしい」「前回と同じ内容にしてほしい」など、さまざまな文章が入ります。
AIを使えば、「注文備考 → 内容を分類 → 社内用の短い確認事項へ変換」という処理ができます。たとえば「友人への誕生日プレゼントなので金額を分からないようにしてください」という文章から、「ギフト/金額表示なし/要確認」という候補を作るイメージです。重要な注文は担当者が確認する仕組みを残します。
ギフト指定を社内向けの指示に整理する
「プレゼント」「贈答用」「友人に直接送りたい」など、意味が近くても表現が異なります。AIを利用すれば、こうした文章を社内の共通分類へ変換できます。AIに最終判断を任せるというより、担当者が読む前の整理係として使うと考えると安全です。
まとめ注文の分割案を作る
1回の注文の中に、配送先や対応方法が異なる商品が含まれることもあります。明確なルールを設定できる部分は通常の自動化で処理し、文章から判断しなければならない部分についてAIに分割案を出させます。最終確定は担当者が行う運用が適しています。
名前・会社名・住所などの名寄せ候補を出す
同じ顧客でも「株式会社〇〇」「(株)〇〇」「〇〇株式会社」のように入力されることがあります。名前や住所も、全角・半角やスペースなどで表記が変わります。こうした名寄せ候補をAIで探す方法があります。ただし、似ているからといって同じ顧客とは限りません。「AIが候補を提示する → 人が同一人物か確認する」という形が安全です。
「自動化+AI」にするとEC受注処理はどう変わるか
受注業務の理想形は、「人を完全に外すこと」ではありません。目指したいのは、人が全部の注文を見る状態から、確認が必要な注文だけを見る状態へ変えることです。
現在の受注処理
- 注文発生
- 担当者がEC管理画面を開く
- 注文を探す
- 注文番号・氏名・商品・数量・金額をコピー
- 備考を読む
- 管理表へ入力
- 次のECを開く
自動化後の受注処理
- 注文発生
- APIや連携機能で注文データを取得
- 受注管理表へ自動追加
- AIが備考や例外候補を確認
- 通常注文はそのまま次工程へ
- 確認が必要な注文だけ担当者へ
- 人が最終判断
こうすると、担当者の役割が「転記する人」から「例外を確認する人」へ変わります。注文数が増えても、通常注文の件数に比例してコピペ作業が増えにくくなります。
一元管理ツールを入れた方がよいのはどんなEC事業者か
受注件数だけで判断しない
「月100件なら不要、1,000件なら必要」と単純に線引きすることはできません。見るべきなのは次の要素です。
- 運営EC・モール数
- 注文量
- 在庫同期の必要性
- キャンセル・変更件数
- 例外注文の多さ
- 自社で自動化を保守できる人がいるか
- 今後さらに販売チャネルを増やすか
注文数がそれほど多くなくても、5店舗、6店舗と販売先が増えれば、管理画面を横断するだけで負担が大きくなります。
複数モールの確認自体が負担なら検討する
Shopify、楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングと順番に管理画面を開いている場合、一元管理ツールを検討する価値があります。特に「受注情報をスプレッドシートへ入れる」だけではなく、注文ステータスなどもまとめて管理したい場合は比較が必要です。
在庫まで同期したいなら別の問題になる
単なる受注転記ならノーコード連携などで十分でも、複数モールの在庫数を同期したい、キャンセル時に在庫を戻したい、店舗ごとの在庫引当を管理したい、となれば仕組みは複雑になります。この段階では、個別に自動化を作り続けるより、専用システムの方が保守しやすい場合があります。
自動化を維持する担当者がいない場合も注意
自作の自動化には保守が必要です。EC側の仕様変更、API変更、列の追加などで処理が止まる可能性があります。作った本人しか直せない状態になると、新しい属人化が生まれます。一元管理ツールの料金だけを見るのではなく、自作自動化を維持する時間と人件費も含めて比較しましょう。
EC受注の自動化で失敗する3つのパターン
失敗1|全部AIでやろうとする
注文番号がデータとして取得できるのに、画面画像からAIに読み取らせる必要はありません。100という数量をそのまま取得できるなら、AIに「これは100です」と判断させる工程を増やす意味もありません。定型データは直接取得する方が単純で、確認もしやすく、トラブル原因も減らせます。AIはAIでなければ処理しづらいところに使いましょう。
失敗2|確認工程までなくす
「人が見る作業をゼロにしたい」と考えがちですが、受注は顧客との契約や発送につながる重要な情報です。特に高額注文、大量注文、特殊な配送依頼、住所に不自然な点がある注文、AIの判定に確信がない注文などは確認対象として残した方が安全です。
重要なのは確認をゼロにすることではなく、正常な注文まで毎回確認する無駄を減らすことです。
失敗3|担当者の頭の中のルールを書き出さない
担当者に「この注文はどうしていますか?」と聞くと、「それは見れば分かります」「このお客さんだけ特別です」「大量注文のときはいつもこうしています」という回答が出てくることがあります。システムやAIは、この「いつもの感じ」を自動では理解できません。
- どんな注文なら通常処理か
- 何があれば要確認か
- どの条件なら担当者へ回すか
- どこまでAIに判断させるか
- 最終判断者は誰か
AI導入より先に業務ルールを整理することが、自動化成功の近道です。
EC受注コピペをなくすための導入手順
STEP1|毎朝コピペしている項目を書き出す
まず現在の作業をそのまま一覧にします。注文番号、注文日、購入者名、配送先名、商品コード、商品名、数量、金額、決済方法、備考などです。この時点ではツールを決める必要はありません。
STEP2|「転記」と「判断」を分ける
| 項目 | 処理 |
|---|---|
| 注文番号 | 転記 |
| 商品コード | 転記 |
| 数量 | 転記 |
| 金額 | 転記 |
| 備考欄 | 判断 |
| ギフト対応 | 判断 |
| 名寄せ | 判断 |
| 大量注文への対応 | 判断 |
これだけでも、AIが必要な場所がかなり絞られます。
STEP3|各ECからCSVで取得できる情報を確認する
次に管理画面のCSV出力機能を確認します。現在人がコピペしている項目の大半がCSVに入っていれば、一括取り込みへ変更できる可能性があります。最初から完全自動化しなくても構いません。1件ずつコピペする状態から、CSVを1回取り込む状態にするだけでも改善です。
STEP4|API・アプリ・公式連携を確認する
毎日のCSVダウンロードもなくしたい場合は、APIや標準連携を確認します。ただし、「APIがあるか」だけでは足りません。必要な注文情報を取得できるか、契約プランで使えるか、API利用申請が必要か、更新頻度はどの程度必要か、個人情報をどう扱うかまで確認します。
STEP5|必要な部分だけノーコードでつなぐ
ECとスプレッドシートを直接つなげられるなら、ノーコード自動化を検討します。最初から巨大な自動化を作らず、「新規注文を1行追加する」程度から始める方法がおすすめです。安定したら、必要に応じて条件分岐を追加します。
STEP6|最後にAIが必要な例外処理を決める
ここまで自動化すると、人が残している仕事が見えます。備考欄を読む、ギフトか判断する、名寄せする、大量注文を確認するなどです。ここで初めてAI活用を考えます。AIには「判断して処理を確定させる」より、「分類する、要約する、候補を出す」役割から任せる方が安全です。
STEP7|最初の1〜2週間は人が結果を照合する
自動化を作った翌日から確認作業をすべてなくすのはおすすめできません。一定期間は、元の注文データと自動作成された管理表を照合します。
- 注文漏れ
- 二重登録
- 金額
- 数量
- キャンセル
- 特殊注文
- AI分類の誤り
問題が安定してから、人の確認範囲を徐々に減らします。
導入前に整理しておきたい受注処理チェックリスト
- 利用しているEC・モールは何か
- 店舗はいくつあるか
- 1日・1か月の平均注文件数は何件か
- 注文データを最終的にどこへ入れているか
- ExcelかGoogleスプレッドシートか
- 何の項目を手作業でコピーしているか
- CSVで取得できる項目は何か
- 毎回人が読んで判断している情報は何か
- ギフトなど特殊注文はどの程度あるか
- 注文変更・キャンセルはどの程度あるか
- 同じ顧客の名寄せを行っているか
- 確認が必要な注文の条件は何か
- エラーが発生した場合は誰が対応するか
このチェックを行うと、「AIを入れれば解決すると思っていたが、ほとんどCSVで済みそう」「転記は簡単だが、備考処理だけ難しい」「複数モール管理そのものが限界なので一元管理ツールを検討した方がよい」といった判断がしやすくなります。
EC受注の自動化で考えておきたいセキュリティ
受注情報には個人情報が含まれることがあります。氏名、住所、電話番号、メールアドレスなどを外部サービスやAIへ渡す場合は、業務効率だけで判断してはいけません。
- どの情報を外部サービスへ送信するか
- 利用するサービスのデータ取り扱い
- 社内で利用を許可するAIサービス
- アクセス権限
- ログ管理
- 不要な個人情報をAIへ渡していないか
たとえばAIに必要なのが「備考欄の内容をギフトかどうか分類すること」だけなら、氏名や電話番号までAIへ渡す必要がないケースがあります。AIに必要な情報だけを渡す設計にすることが重要です。
利用サービスの規約・セキュリティ機能・データ利用方針は変更される場合があります。導入時点の公式情報を確認し、自社の情報管理ルールに合わせて判断してください。
EC受注の自動化はどこまで効果を測ればよいか
自動化の目的を「AIを導入したこと」にしてはいけません。確認したいのは、実際の業務がどう変わったかです。
毎日の受注処理時間
導入前に60分かかっていたものが、確認作業だけになったかを測ります。
手入力件数
1日50件の受注を50件手入力していた状態から、例外3件だけ確認する状態になれば大きな改善です。
転記ミス
商品コード、数量、金額などの手入力ミスが減ったか確認します。
要確認注文の割合
AIやルールで抽出した注文のうち、実際に人の確認が必要だった割合を確認します。要確認が多すぎる場合はルールが厳しすぎる可能性があります。逆に、本来確認すべき注文が通常処理に流れているなら改善が必要です。
自動化の保守時間
自動化した結果、毎週何時間も設定修正しているなら、必ずしも成功とはいえません。一元管理ツールへ移行した方が費用対効果が高い可能性もあります。
よくある質問
Q1.EC受注のコピペは生成AIだけで自動化できますか?
技術的にはAIを利用できる場面がありますが、すべてを生成AIで処理する方法はおすすめしません。注文番号、商品コード、数量、金額など、元から構造化されたデータはCSVやAPIなどで直接取得する方が確実です。AIは備考欄の自由記述、ギフト指定、名寄せ候補など、文章理解や判断が必要な部分に絞って利用する方が適しています。
Q2.今使っているExcelやGoogleスプレッドシートを残したまま自動化できますか?
可能なケースは多くあります。必ずしも新しい基幹システムや受注管理システムへ全面移行する必要はありません。まずECからCSVで注文情報を取得し、既存のExcelへ取り込む方法を検討できます。Googleスプレッドシートの場合は、APIやMakeなどのノーコードサービスと組み合わせて、新規注文を自動追加する方法も考えられます。
Q3.Shopifyと楽天など、複数店舗の受注でもまとめられますか?
可能です。ただし、各ECで取得できるデータ形式や利用可能な連携手段が異なるため、最初にそれぞれのCSV・API・標準連携を確認します。販売先が増え、在庫や注文ステータスまでまとめたくなった場合は、一元管理ツールを含めて比較した方がよいでしょう。
Q4.Makeなどのノーコードツールと一元管理ツールはどちらがよいですか?
受注情報をスプレッドシートへ移すなど、目的が明確で処理が比較的単純ならノーコード連携が向いています。一方、多数のモールを管理する、在庫も連携する、注文状態もまとめたい、自作自動化の保守をしたくないという場合は、一元管理ツールが適する可能性があります。月額料金だけではなく、構築費、保守時間、人件費まで含めて比較してください。
Q5.顧客名や住所などの個人情報をAIに入力しても大丈夫ですか?
利用するAIサービス、契約プラン、設定、社内ルールによって判断が異なります。「AIだから大丈夫」「有名なサービスだから問題ない」と一律には判断できません。必要のない個人情報を送らない設計を基本とし、サービスの最新の利用規約、データ取り扱い、セキュリティ機能を確認してください。
まとめ|EC受注のコピペは「AI化」する前に消せるところから消す
ECの受注コピペをなくしたいと考えたとき、最初にAIツールを探す必要はありません。
| 判断する順番 ① CSVで済まないか → ② 標準API・アプリ連携 → ③ Makeなどのノーコード連携 → ④ データ取得が難しい部分だけAIを検討する → ⑤ 文章理解や例外判断にAIを使う |
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ECから取得できる注文番号、商品、数量、金額などをわざわざAIに判断させる必要はありません。そのままデータとして取得した方がシンプルです。
- 備考欄
- ギフト指定
- 特殊な注文
- 注文分割
- 名寄せ
など、人が内容を読んで判断している部分にはAIを活用できる可能性があります。目指したいのは、担当者を受注業務から完全に外すことではありません。担当者がすべての注文を転記・確認する状態から、例外だけを確認する状態へ変えることです。
また、店舗数や処理内容が増えた場合は、一元管理ツールの方が管理しやすいこともあります。現在のExcelやスプレッドシートを捨てることから始める必要もありません。まず、「今日の受注処理で、どの項目を何回コピペしているか」を書き出してみてください。そこから、CSVで消せる仕事、連携で消せる仕事、AIを使う意味がある仕事を分けていくのが、最も現実的な進め方です。
ECの受注コピペをなくす方法は、必ずしも新しいシステムを導入することではありません。現在利用しているECとExcel・スプレッドシートの流れを確認すると、CSVだけでなくせる作業、連携で自動化できる作業、AIを使った方がよい作業を分けられることがあります。
「Shopifyと楽天の注文を毎朝まとめている」「今の管理表を残したい」「Make、AI、一元管理ツールのどれが必要なのか分からない」という場合は、まず現在の受注フローを整理するところからご相談ください。
相談時に、利用しているEC・モール、1日の注文件数、現在の受注管理表、手作業している内容が分かると、改善方法を整理しやすくなります。
