毎月の給与計算で、いちばん時間を取られるのは計算そのものではなく、その前段にある「顧問先から届いた勤怠を、給与ソフトに入る形に直す作業」だという事務所は多いと思います。ある顧問先はエクセルの独自様式、ある顧問先はマネーフォワード クラウド勤怠のCSV、ある顧問先はfreee人事労務、そして紙やスマホ写真で送ってくる先もある。締め日直後の数日に、この読み替えと転記が集中します。
解決策として「顧問先に勤怠ソフトを統一してもらう」という案が出ることがありますが、現実には言い出しにくいものです。顧問先には顧問先の事情があり、こちらの都合でソフトを変えてもらう話ではありません。この記事では、顧問先の運用を一切変えずに、事務所側の入口で形式を吸収する方法を、実際の工程に沿って整理します。
この記事の結論
顧問先を変える必要はありません。事務所側に「受信→形式判別→統一フォーマット変換→異常値フラグ→給与ソフト投入」という5工程の入口を作り、AIエージェントに形式の違いを吸収させます。人が決めるのは統一フォーマットの中身と異常値の基準、そして例外の扱いだけです。

顧問先の勤怠がバラバラでも、事務所側だけで揃えられる
「顧問先に合わせてもらう」以外の選択肢
勤怠の形式が揃わない問題への対処は、大きく2つに分かれます。1つは顧問先側を揃える方法、もう1つは事務所側で吸収する方法です。前者は理屈としては正しいのですが、顧問先が数十社あれば、全社に説明して運用を変えてもらうだけで年単位の時間がかかります。しかも新規の顧問先が増えるたびに同じ交渉が発生します。
後者は、事務所側に1つの仕組みを作れば、顧問先が何社増えても同じ入口を通せます。生成AIが得意なのは、まさにこの「決まっていない形式を読んで、決まった形に直す」という処理です。従来この処理は人がやるしかありませんでしたが、そこが変わりました。
今、担当者は何をしているのか
入口を作る前に、現状の作業を分解しておきます。多くの事務所では、次のような流れになっているはずです。
| 届く形 | 担当者がしていること | 1件あたりの目安 |
|---|---|---|
| エクセルの独自様式(添付) | 列の意味を読み替え、集計し、給与ソフトの項目に転記する | 20〜40分 |
| 勤怠SaaSのCSV | 項目名を対応付け、不要列を落とし、フォーマットを整える | 10〜20分 |
| 紙・スマホ写真 | 目視で読み取り、手入力する。読めない箇所を問い合わせる | 30〜60分 |
| メール本文に直接記載 | 本文から拾って表に起こす | 15〜30分 |
ここで注目したいのは、どの形式でもやっていることの中身は同じだという点です。読む、意味を対応付ける、統一の形に直す、おかしい数字を見つける。形式が違うだけで、処理の骨格は共通しています。だからこそ、入口を1つにまとめられます。
入口に置く5つの工程
事務所側の入口は、次の5工程で構成します。この順番で並べておくと、どこまでを機械に任せ、どこから人が見るかがはっきりします。
工程1:受信
顧問先からのメール添付、共有フォルダへのアップロード、チャットへの投稿など、届く経路をできるだけ1本にまとめます。経路が分散していると、どこに何が届いたかの確認そのものが仕事になってしまいます。理想は「勤怠専用のメールアドレスまたは共有フォルダ1つ」です。顧問先には「ここに送ってください」と伝えるだけなので、運用変更の負担はほとんどありません。
工程2:形式判別
届いたファイルが、どの顧問先の、どの形式のものかを判別します。ファイル名や送信元で機械的に分かる場合もありますが、実務では「毎月ファイル名が微妙に違う」「同じ顧問先が月によって違う形で送ってくる」ことが起こります。ここは中身を読んで判断する必要があるため、AIの担当になります。
工程3:統一フォーマットへの変換
判別した形式から、事務所で決めた1つの統一フォーマットに変換します。ここが入口の中心です。変換のルールは顧問先ごとに違いますが、出口の形は1つに固定します。出口を固定しておくと、給与ソフトへの投入方法も1つで済みます。
工程4:異常値のフラグ立て
変換したデータのうち、明らかにおかしい数字に印をつけます。総労働時間がゼロ、深夜時間が所定を超えている、前月と比べて残業が3倍になっている、といったものです。ここでAIに「正しいかどうか」を判断させるのではなく、「基準から外れているものを抽出させる」のがポイントです。判断は人が行います。
工程5:給与ソフトへの投入
統一フォーマットになっていれば、給与ソフトへの取り込みは決まった手順の繰り返しです。ここはRPAや既存ソフトのインポート機能の担当で、AIを使う場所ではありません。確定処理はできるだけ機械的に、再現性のある方法で行います。
| 工程 | 担当 | 人がすること |
|---|---|---|
| 1. 受信 | メール/共有フォルダ | 送付先を1本化して顧問先に伝える |
| 2. 形式判別 | AI | 顧問先の一覧と想定形式を渡しておく |
| 3. 統一フォーマット変換 | AI | 統一フォーマットと顧問先別ルールを決める |
| 4. 異常値フラグ | AI | 基準値を決める。フラグの立った行だけ見る |
| 5. 給与ソフト投入 | RPA/インポート機能 | 取り込み結果の確認と確定 |

統一フォーマットの決め方
この仕組みで人がいちばん頭を使うのが、統一フォーマットの設計です。ここが決まっていないと、AIは何に変換すればよいか分かりません。逆に言えば、ここさえ決めれば残りは動きます。
決めるべき4つの要素
| 要素 | 決めること | 決め方のヒント |
|---|---|---|
| 項目 | 統一フォーマットに載せる列の一覧と並び順 | 給与ソフトの取込様式から逆算して決める |
| 締め日 | 顧問先ごとの締め日と、対象期間の表し方 | 末締め・20日締めなど型を数種類に整理する |
| 丸め | 時間の丸め単位(1分・15分など)と丸め方向 | 顧問先の就業規則に合わせる。勝手に統一しない |
| 休暇区分 | 有給・特別休暇・欠勤・振替などの区分名 | 事務所側の呼び方を正とし、顧問先の呼び方を対応表で吸収する |
丸めと休暇区分は「統一しない」ことが正解
誤解されやすいのですが、統一フォーマットとは「全顧問先を同じルールにすること」ではありません。丸めの単位や休暇の扱いは、顧問先ごとの就業規則で決まっています。事務所の都合で統一してしまうと、それは労務管理上の誤りになります。
統一するのはデータの入れ物の形であって、中身のルールではありません。丸めは「顧問先Aは15分単位切り捨て」「顧問先Bは1分単位」と顧問先別ルール表に書いておき、AIはその表を見て変換します。この分離ができていれば、顧問先が増えても表に1行足すだけで済みます。
顧問先別ルール表の作り方
1顧問先1行、列は「締め日」「丸め単位」「丸め方向」「所定労働時間」「休暇区分の呼び方の対応」「特記事項」程度で始めます。最初から完璧を目指す必要はありません。実際に変換して差が出たところを1行ずつ足していくほうが、実態に合った表になります。
この表は、AIに渡す前提であると同時に、担当者が変わったときの引き継ぎ資料にもなります。今まで担当者の頭の中にしかなかったルールが、初めて文字になるという副次的な効果もあります。

異常値の基準をどう決めるか
「おかしい」を数字で書く
担当者は経験的に「この数字はおかしい」と気づけますが、その基準は言語化されていないことがほとんどです。仕組みに乗せるには、これを数字で書く必要があります。とはいえ難しく考える必要はなく、次のような単純な基準で十分に効果があります。
| 基準の例 | 拾えるミス |
|---|---|
| 総労働時間が0またはマイナス | 入力漏れ、様式の読み違い |
| 1日の労働時間が16時間を超える | 打刻漏れ、日またぎの計上ミス |
| 前月比で残業時間が±50%以上動いた | 集計範囲の誤り、対象者の取り違え |
| 在籍者数が前月と一致しない | 入退社の連絡漏れ |
| 有給日数が残日数を超えている | 付与管理とのずれ |
フラグが立った行だけを人が見る
この仕組みの効果は、全件を目視していた作業が「フラグが立った行だけ見る」作業に変わることです。実際には全体の1割前後しかフラグは立ちませんから、確認にかける時間は大きく変わります。
ただし、フラグが立たなかった行を人が一切見ないのは不安だ、という声もあります。その場合は「最初の3か月は全件を人も見て、AIの結果と突き合わせる」という進め方をおすすめします。3か月分の突き合わせで差が出なければ、そこから先はフラグだけで運用できます。この慣らし期間があると、職員も安心して任せられるようになります。
形式別に、実際どう吸収するか
エクセルの独自様式
いちばん厄介に見えますが、実はAIがもっとも力を発揮する形式です。列の位置が毎月ずれる、途中に空行が入る、合計行が混ざる、といった揺らぎを、AIは中身を読んで判断できます。人が「この列は残業時間だな」と読み取っているのと同じことを、AIも文脈から判断します。
注意点は、シートが複数ある場合や、セル結合が多用されている場合です。この場合は「どのシートの、どの範囲を見るか」を顧問先別ルール表に書いておくと安定します。
勤怠SaaSのCSV
マネーフォワード クラウド勤怠、freee人事労務、ジョブカン、KING OF TIMEなど、顧問先が使っている勤怠SaaSはさまざまです。CSVの列構成はサービスごとに決まっているので、一度対応表を作ればその後は安定します。むしろ気をつけたいのは、SaaS側のバージョンアップで列が増減することです。異常値フラグに「想定した列が見つからない」という項目を入れておくと、変化に気づけます。
紙・スマホ写真
画像から数字を読み取る処理は、以前より格段に精度が上がりました。ただし手書きの場合は誤読の可能性が残るため、読み取り結果を必ず人が確認する運用にします。ここは「フラグが立った行だけ」ではなく全件確認が前提です。それでも、目で見て手入力していた作業が「読み取り結果を確認する」作業に変わるだけで、負担は下がります。
形式別のまとめ
| 形式 | AIの得意度 | 人の確認範囲 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| エクセル独自様式 | 高い | フラグが立った行のみ | 複数シート・セル結合は事前に指定 |
| 勤怠SaaSのCSV | 高い | フラグが立った行のみ | SaaS側の列変更に注意 |
| 紙・スマホ写真 | 中程度 | 全件 | 手書きは誤読の可能性が残る |
| メール本文の記載 | 高い | フラグが立った行のみ | 本文中の訂正・追記を見落とさない |

最初の1社をどう選ぶか
エクセル添付の顧問先から始める
最初の対象には、エクセル添付で送ってくる顧問先を選ぶことをおすすめします。理由は3つあります。1つ目は、いま最も時間がかかっているのがこの形式であることが多く、効果を実感しやすいこと。2つ目は、変換の成否が目で見て確認しやすいこと。3つ目は、この形式で回れば他の形式は比較的簡単だからです。
逆に、最初に紙・写真の顧問先を選ぶのは避けたほうがよいと思います。読み取り精度の話に議論が集中してしまい、「入口を作る」という本来の目的が見えにくくなります。
従業員数は少なめの先を選ぶ
最初は10〜30名程度の顧問先が扱いやすいでしょう。件数が少なければ人の目での突き合わせも現実的で、差が出た場合の原因追跡も簡単です。100名を超える先で始めると、差が出たときに原因を追うだけで時間が溶けます。
3か月の進め方
| 期間 | やること | できていれば合格 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 統一フォーマットを決める。対象1社の現状作業時間を測る | フォーマットと作業時間が数字で書けている |
| 2か月目 | AIで変換。人の結果と全件突き合わせて差を確認 | 差が出た理由を説明できる |
| 3か月目 | 異常値の基準を決め、フラグ運用に切り替える | 担当者以外でも確認できる |
| 4か月目以降 | 2社目・3社目へ横展開する | ルール表に行を足すだけで済む |
費用と効果をどう見積もるか
かかる費用の内訳
この仕組みにかかる費用は、大きく3つに分かれます。AIの利用料、仕組みを作る初期の工数、そして毎月の運用工数です。AIの利用料は処理量に応じた課金が中心で、勤怠データの変換程度であれば月額の負担は限定的です。むしろ大きいのは初期の工数で、統一フォーマットと顧問先別ルール表を作る作業がここに入ります。
| 費用の種類 | 発生の仕方 | 抑えるための考え方 |
|---|---|---|
| AI利用料 | 処理量に応じて毎月 | 対象顧問先を絞って始め、効果を見てから広げる |
| 初期の設計工数 | 最初の1〜2か月に集中 | 1社分だけ作り、2社目以降は複製して直す |
| 毎月の運用工数 | 承認と例外対応の時間 | 異常値の基準を育てて例外を減らす |
| 接続・自動化の構築費 | 必要に応じて一度だけ | 手動起動でも効果が出るなら後回しにする |
効果は「時間」と「担当者依存の解消」で見る
効果を測るときは、削減時間だけを見ないほうがよいと思います。もう1つの効果は、担当者しか知らなかったルールが表になり、誰でも処理できるようになることです。これは時間では測りにくいものの、担当者の退職・産休・急な休みへの耐性という形で効いてきます。
測る指標としては、①受領から給与ソフト投入までの時間、②担当者以外が処理できる顧問先の数、③異常値フラグの的中率(フラグが立った行のうち実際に修正が必要だった割合)の3つがおすすめです。③は基準の調整に使えます。的中率が低ければ基準が厳しすぎ、逆に見逃しがあれば基準が緩すぎるという判断ができます。
導入でつまずきやすい3つのポイント
つまずき1:統一フォーマットを完璧に作ろうとする
全顧問先のすべてのパターンに対応した統一フォーマットを最初から作ろうとすると、設計だけで数か月かかります。実際には、1社目のデータが入る形にして、2社目で足りない列を追加する、という進め方のほうが早く着地します。列を後から足すことは難しくありません。
つまずき2:AIの出力を全件チェックし続ける
慣らし期間として3か月の全件確認は有効ですが、それを永久に続けると作業は減りません。差が出なくなった時点でフラグ運用へ切り替える、という判断を最初に決めておくことが大切です。「3か月連続で差がゼロならフラグ運用へ移行する」といった具体的な条件を書いておくと、切り替えの判断で迷いません。
つまずき3:例外を都度その場で判断する
イレギュラーな勤怠が出るたびに担当者がその場で判断していると、判断内容が記録されず、次に同じことが起きてもまた考えることになります。例外が出たらルール表に1行足す、という運用にしておくと、時間の経過とともに例外が減っていきます。
つまずきの回避策まとめ
| つまずき | 起きること | 回避策 |
|---|---|---|
| フォーマットを完璧に作ろうとする | 設計だけで数か月かかる | 1社分で始め、必要な列を後から足す |
| 全件チェックを続ける | 作業時間が減らない | 移行条件を最初に数字で決めておく |
| 例外をその場で判断する | 判断が記録されず繰り返す | 例外が出たらルール表に1行足す |
顧問先への伝え方
基本は「変えなくていい」と伝える
この仕組みの利点は、顧問先に運用変更をお願いしなくてよいことです。したがって顧問先への連絡も「これまで通りで結構です」が基本になります。強いてお願いするとすれば、送付先を1本にすること、そして送るタイミングを決めること、の2つ程度です。
お願いすると効果が大きい3点
| お願いすること | 顧問先の負担 | 事務所側の効果 |
|---|---|---|
| 送付先を勤怠専用のアドレスに統一 | ほぼゼロ(宛先を変えるだけ) | 受信の確認作業がなくなる |
| 締め日から◯営業日以内に送付 | 小さい | 処理を平準化できる |
| 訂正は本文でなく再送で | 小さい | 訂正の見落としが減る |
この3点は、AIを入れるかどうかに関係なく効果があります。導入の前段として、まずここだけ整えるという進め方も現実的です。
既存のRPA・給与ソフトとどう併用するか
RPAが止まっていた場所がAIの担当になる
すでにRPAで勤怠の取り込みを自動化している事務所もあります。その場合でも、RPAが処理できるのは「毎月同じ形で届く顧問先」に限られているはずです。様式が変わった、列が増えた、合計行の位置がずれた——こうした場面でRPAは止まり、結局人が手作業に戻ります。
ここが生成AIの担当領域です。RPAを外す必要はありません。RPAが安定して回っている顧問先はそのまま任せ、止まりやすい顧問先だけをAI経由の入口に通す、という併用が現実的です。
給与ソフトへの投入はAIにやらせない
統一フォーマットができた後の投入処理は、AIではなく既存ソフトのインポート機能かRPAに任せます。理由は確実性です。確定処理は毎回まったく同じ結果になる必要があり、そこに揺らぎのある仕組みを挟む理由がありません。AIの担当は「投入できる形にする」ところまで、と線を引いておきます。
| 顧問先の状況 | おすすめの構成 |
|---|---|
| 毎月同じ様式のCSVが届く | 既存のRPA・インポート機能のまま(変更不要) |
| 様式が毎月少しずつ違う | AI経由の入口を通してから投入 |
| 紙・写真で届く | AIで読み取り、全件確認のうえ投入 |
| 顧問先が勤怠SaaSを変更した | AI経由に一時的に切り替え、安定後にRPAへ戻す |
担当者にどう説明するか
「仕事を取られる」ではなく「工程が前にずれる」
この仕組みを入れると、担当者の仕事は「自分で変換する人」から「変換の前提を決めて、結果を承認する人」に変わります。作業量は減りますが、判断の重みはむしろ増えます。統一フォーマットをどう定義するか、丸めのルールをどう書くか、どこからを例外とするか——これらは経験のある担当者にしか決められません。
説明の順番としては、まず「今の作業のうち、どこが機械に向いているか」を一緒に洗い出すところから始めるとスムーズです。担当者自身が「ここは自分がやる意味がない」と感じている工程は必ずあります。そこから着手すると、反発ではなく協力を得られます。
評価の見方も変える
処理件数で職員を評価していると、この仕組みは評価を下げる方向に働いてしまいます。整備した顧問先の数、例外の削減、担当者以外でも回せるようになった顧問先の数——こうした指標に置き換えていくことが、定着のうえでは重要です。
情報の扱いで気をつけること
氏名を社員コードに置き換える
勤怠データには従業員の氏名が含まれます。変換処理の入口で氏名を社員コードに置き換え、事務所側の対応表でだけ紐づける形にすると、AIに渡る情報から個人が特定されにくくなります。この置換は工程の中に組み込んでしまい、人が毎回判断しないようにするのが確実です。
マイナンバーは入口に入れない
勤怠データにマイナンバーが含まれることは通常ありませんが、顧問先が同じファイルに従業員情報をまとめて送ってくるケースがあります。受信時点で不要な列を落とす処理を入れておくと、そもそもAIに渡りません。「入れない」より「入る経路がない」設計のほうが安全です。
法人向けプランを使う
業務でAIを使う以上、入力内容が学習に使われない設定になっている法人向けの契約を選びます。無償版・個人向けプランのまま顧問先のデータを扱うのは避けてください。これは社労士事務所に限らず、顧客情報を扱うすべての事業者に共通する前提です。

この仕組みが効いてくると、次に何が見えるか
勤怠が揃うと、給与の突合ができるようになる
入口が整うと、次の詰まりどころが見えてきます。それは「給与計算が1つのソフトで終わらない」という問題です。勤怠がバラバラな状態では突合の土台がありませんでしたが、統一フォーマットができれば、給与ソフトの出力と突き合わせて差異を出せるようになります。
つまり、勤怠の入口を整えることは、それ自体の時間短縮に加えて、次の工程を可能にする土台づくりでもあります。順序として勤怠が先になるのは、このためです。
繁忙期の負荷も下がる
年度更新や算定基礎届では、平常月の勤怠・給与データが揃っていることが前提になります。入口が整っていれば、繁忙期に「まずデータを集める」ところから始めずに済みます。繁忙期対策として何かを新しく入れるのではなく、平常月の入口を整えておくことが、結果的に繁忙期の負荷を下げます。
ベストプランナーでは、ITコーディネータが勤怠の入口づくり(統一フォーマットの設計、顧問先別ルール表、異常値基準の決め方)から、既存の給与ソフト・RPAとの接続までを一緒に進める伴走型の支援を行っています。デジタル化・AI導入補助金の活用可否もあわせて確認できます。AI導入・活用のご相談はこちら
よくある質問
Q. 顧問先が使っている勤怠ソフトを事務所側で把握しきれていません
把握できていなくても始められます。最初の月は「届いたファイルの形式を一覧にする」ところから始めてください。実際にやってみると、形式は思ったより少ない種類に収まることが多いです。
Q. 統一フォーマットは給与ソフトの取込様式と同じでよいですか
基本的にはそれが最も効率的です。ただし取込様式には含まれない項目(顧問先名、対象期間、備考など)を足しておくと、突合や確認のときに役立ちます。取込様式+管理用の数列、という構成をおすすめします。
Q. AIが変換を間違えた場合、誰の責任になりますか
従来と同様、事務所の責任です。だからこそ、確定処理の前に人の承認を必ず挟む設計にします。AIは変換と抽出を担当し、確定は人が行う。この線を守っていれば、責任の所在は今までと変わりません。
Q. 紙で送ってくる顧問先が多いのですが
紙の読み取りも可能ですが、全件を人が確認する前提になります。効果は出ますが、他の形式ほど劇的ではありません。まずエクセル・CSVの顧問先で仕組みを作り、紙の顧問先はその後に追加するのが現実的です。
Q. 顧問先ごとに丸めのルールが違うのですが、対応できますか
できます。丸めは顧問先別ルール表に書いておき、AIはその表を参照して変換します。むしろ、これまで担当者の記憶に頼っていた丸めルールが表になることで、担当者交代時のリスクが下がるという効果もあります。
Q. どのくらいで効果が出ますか
1社目は準備に時間がかかるため、初月はむしろ増えます。2か月目から人の作業が減り始め、3か月目にフラグ運用へ移行できれば効果がはっきりします。2社目以降は準備が短くて済むので、社数が増えるほど効いてきます。
顧問先から「勤怠ソフトを入れたい」と相談されたら
事務所側の入口があると、提案の自由度が上がる
事務所側で形式を吸収できる状態になっていると、顧問先から勤怠ソフトの相談を受けたときに「事務所の都合」で製品を絞る必要がなくなります。どのソフトを選んでも事務所側では受けられるので、顧問先の業種・勤務形態・予算に合った選び方を素直に提案できます。
これは顧問先から見ても納得感のある提案になります。「うちの事務所が対応できるのはこれです」ではなく「御社に合うのはこれです」と言えるのは、事務所側に吸収する仕組みがあるからこそです。
導入支援そのものをサービスにできる
勤怠ソフトの選定・初期設定・運用ルールづくりは、顧問先にとって面倒な作業です。事務所側でその知見が溜まっていれば、顧問業務とは別の支援として提供する余地もあります。デジタル化・AI導入補助金の対象になるケースもあるため、あわせて確認する価値はあります。
Q. すでにRPAで取り込んでいる顧問先も切り替えるべきですか
安定して回っているなら切り替える必要はありません。止まりやすい顧問先だけをAI経由の入口に通す併用が現実的です。RPAとAIは競合しません。
Q. 職員が「自分の仕事がなくなる」と不安がっています
減るのは変換と転記の作業で、増えるのは前提を決める仕事と承認の仕事です。統一フォーマットや丸めルールの定義は、経験のある職員にしか決められません。まず「自分がやる意味がない」と感じている工程を一緒に洗い出すところから始めると、協力を得やすくなります。
まとめ|顧問先を変えずに、事務所側の入口で揃える
勤怠の形式が揃わない問題は、顧問先を説得して解決するものではありません。事務所側に「受信→形式判別→統一フォーマット変換→異常値フラグ→給与ソフト投入」という入口を1つ作れば、顧問先が何社増えても同じ経路を通せます。
人が決めるのは、統一フォーマットの中身、顧問先別ルール表、異常値の基準の3つだけです。この3つが決まっていれば、あとは毎月同じ品質で回ります。逆に言えば、この3つを決めないまま「AIに勤怠を読ませる」だけでは、毎月出力がぶれて確認の手間が増えるだけになります。仕組みの中心はAIそのものではなく、人が決める前提のほうにあります。
まずはエクセル添付の顧問先を1社選び、現状の作業時間を測り、統一フォーマットを決めるところから始めてみてください。1社で回れば、2社目からは表に1行足すだけで済みます。勤怠の入口が整えば、次は給与計算の突合、その次は届出前の確認へと同じ考え方を広げていけます。
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