結論:対象抽出は「レセコンCSV → スプレッドシート → AIで条件抽出」で効率化できます。配信は今使っているLINE・はがき・電話のままで構いません。
歯科医院のリコール業務で最初に自動化したいのは、「LINEを自動送信すること」ではありません。
先に減らしたいのは、受付スタッフがレセコンやExcelを見ながら、「今月は誰に連絡すればよいのか」を一人ずつ探す作業です。
対象抽出は、現在使っているレセコンからCSVを出し、スプレッドシートへ整理して、AIに院内で決めた条件を渡すことで効率化できます。
LINEへ切り替えなければならないわけでも、レセコンそのものを入れ替えなければならないわけでもありません。連絡方法は今のままで、「誰に連絡するかを探す工程」から先に減らすことができます。
特に院長とスタッフ10名以下の歯科医院では、受付担当者が電話、予約、資格確認、問診、会計、レセプト、リコールまで兼務しているケースも珍しくありません。
この規模の医院ほど、新しい大規模システムを増やす前に、今あるデータを使って対象抽出を仕組み化する方が取り組みやすいでしょう。
この記事では、レセコンCSVからリコール候補を抽出し、患者の状態に応じて案内文を分け、既存のLINE・はがき・電話へつなぐところまでを順番に解説します。
2026年改定で歯科は「継続して管理する患者」を把握する重要性が高まった
2026年度の診療報酬改定では、歯科における継続管理に関する評価が見直されています。
代表的なのが歯周病治療です。厚生労働省は、これまでの「歯周病安定期治療」と「歯周病重症化予防治療」を整理・統合し、「歯周病継続支援治療」としています。目的についても、ライフコースを通じた継続的・効果的な歯周病治療を推進する観点が示されています。
また、小児口腔機能管理料と口腔機能管理料についても、要件や評価が見直され、対象患者の範囲が拡大されています。
ここで重要なのは、「診療報酬が変わったからAIで算定対象を自動判定しよう」という話ではありません。算定の可否や治療方針は、診療内容や正式な算定要件を踏まえて歯科医師・医院側が判断するものです。
AIが向いているのは、その前段階です。たとえば「院内で継続管理している患者のうち、一定期間来院していない人を探す」「次回予約が入っていない患者だけを一覧化する」といった、すでに医院が決めた条件に沿って患者候補を探す作業です。
出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」歯科関連資料
「処置した患者を見る」だけでなく「継続管理する患者を追う」
小規模な歯科医院では、日々の診療が忙しいと、どうしても「今日来た患者」「明日来る患者」が仕事の中心になります。
一方、リコールで問題になるのは「来なくなった患者」です。予約表に出てこないため、意識して抽出しなければ見えません。
2026年度改定を「処置積み上げ型から継続管理型へ」という実務上の視点で捉えるなら、必要になるのは、継続して管理すべき患者を医院側が把握できる仕組みです。これは厚生労働省の正式な制度名称ではなく、医院の業務設計としての整理ですが、リコール対象抽出を考えるうえでは重要な視点です。
制度を覚える前に「対象患者を拾える状態」を作る
診療報酬の算定要件を理解していても、対象になり得る患者が数百人のデータの中に埋もれていては、日常業務では活用できません。
受付スタッフが毎月レセコンを開き、「この人は前回来院がいつだったか」「治療途中だったか」「予約が入っているか」を一人ずつ確認していたら、継続管理の仕組みそのものが担当者依存になります。
そこで、診療上の判断とデータ抽出を分けます。
| 工程 | 担当させる役割 |
|---|---|
| 継続管理が必要か判断する | 歯科医師・医院 |
| リコール条件を決める | 歯科医師・院内担当者 |
| 条件に合う患者候補を探す | スプレッドシート・AI |
| 抽出結果を確認する | 人 |
| 患者への連絡方法を決める | 医院 |
| LINE・はがき・電話で連絡する | 既存の運用 |
AIを「診療判断をするもの」としてではなく、大量の一覧から条件に合う行を探す作業者として位置づけると、役割分担が分かりやすくなります。

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歯科のリコール対象が抜ける原因は「配信」より「対象抽出」にある
リコール業務を効率化しようとすると、LINE公式アカウントや自動配信ツールに目が向きがちです。
しかし、小規模歯科医院で実際に時間がかかっているのは、その前です。「誰に送るか」が決まっていなければ、自動配信機能があっても仕事は減りません。
最終来院日はレセコン、フォロー対象はExcelという分散
典型的なのは、患者の基本情報や来院履歴はレセコンにある一方、リコール対象は別のExcelで管理している状態です。
さらに電話で聞いた内容はメモ、予約変更は予約システム、担当歯科衛生士が覚えている情報は頭の中、といった具合に分散すると、「正しい対象者一覧」を作ること自体が難しくなります。
たとえば、前回来院から3か月経過した患者をExcelで管理していても、その間に電話で予約を取った患者がレセコン側にしか反映されていなければ、すでに予約済みの患者へ案内してしまうことがあります。逆に、治療中断患者が通常リコールのExcelへ移されていなければ、そのまま連絡対象から抜ける可能性があります。
問題はデータが存在しないことではありません。データはあるのに、一つの抽出条件で見られる状態になっていないことです。
「3か月未来院」だけでは十分ではない
リコール対象というと、「最終来院から3か月以上経過した患者」をイメージしやすいでしょう。しかし、それだけでは同じ一覧に性質の違う患者が混ざります。
| 患者の状態 | 同じ3か月未来院でも意味が違う |
|---|---|
| 定期管理中 | 次回の定期受診を案内したい |
| 歯周病の継続管理中 | 院内で定めた管理条件に沿って確認したい |
| 治療途中で中断 | 歯科医師の確認後に連絡したい |
| 小児の口腔機能管理中 | 管理状況に沿った確認が必要 |
| 自費相談後 | 通常リコールとは別の案内にしたい |
| すでに次回予約済み | 原則として抽出対象から外したい |
| 転院・連絡不要 | 対象外として管理したい |
つまり、必要なのは「リコール対象か、対象外か」という二択ではありません。なぜ連絡する患者なのかを分類することです。この分類ができれば、その後のLINEや電話の内容も変えられます。
LINEを自動化しても、対象者探しが手作業なら仕事は残る
LINEのステップ配信や予約配信を導入しても、毎月受付スタッフが「今月送る患者」をExcelで作っているのであれば、根本部分は手作業のままです。
順番としては、「対象者を機械的に絞れる状態を作る → 文面を分ける → 配信を効率化する」の方が自然です。
小規模医院では、いきなりすべてを自動化する必要はありません。まず「毎月2時間かけて患者を探していた作業が、一覧を確認する作業になる」というところから始めるだけでも、運用は大きく変わります。
歯科のリコール対象を「レセコンCSV→スプレッドシート→AI」で抽出する手順
ここからが具体的な手順です。基本形は、レセコンをAIと直接連携するのではなく、CSVを中間データとして使う方法です。
多くの医院にとって、既存システムそのものを変更するより始めやすい方法です。
手順1|レセコンから来院・処置データをCSVで出す
最初に確認するのは、現在使っているレセコンから何の項目を書き出せるかです。製品によって項目名や出力方法は異なりますので、「この項目が必ず存在する」という意味ではありません。
リコール対象抽出では、次のような情報が使えると整理しやすくなります。
| CSVにあると便利な項目 | 用途 |
|---|---|
| 患者管理用ID | 同一患者を識別する |
| 最終来院日 | 最後の受診からの経過期間を見る |
| 診療・処置に関する区分 | 院内で設定する管理区分の参考にする |
| 年齢・生年月日に関する情報 | 小児・成人などの分類に使う |
| 担当者 | 歯科医師・歯科衛生士別に一覧化する |
| 次回予約の有無 | 予約済み患者を除外する |
| 管理状態 | 継続中・終了・中断など院内区分に使う |
| 連絡可否に関する院内項目 | 連絡不要患者などを除外する |
大切なのは、最初から完璧なデータを作ろうとしないことです。まず「最終来院日」「予約の有無」「院内で使っている患者区分」など、現在出せる項目だけで始めます。
そして、実際に抽出してみて「この条件も必要だった」と分かったら、次の月に列を追加します。
手順2|スプレッドシートを「リコール候補を作る中間地点」にする
CSVを毎回そのまま扱うのではなく、スプレッドシート側で列をそろえておくと運用が安定します。
たとえば、医院内で次のような形に統一します。
| 管理用ID | 最終来院日 | 次回予約 | 院内管理区分 | 担当 | 連絡区分 | 確認結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 患者A用ID | 日付 | なし | 定期管理 | 担当者A | 未設定 | 未確認 |
| 患者B用ID | 日付 | なし | 治療中断 | 担当者B | 未設定 | 未確認 |
| 患者C用ID | 日付 | あり | 継続管理 | 担当者A | 対象外 | 確認済 |
実際には患者氏名など医院側で必要な情報も管理することになりますが、AIへ渡すデータの範囲については別途ルールを決めます。
この中間表を作る目的は、AIに高度なことをさせるためではありません。毎月同じ列、同じ条件で処理できる状態を作ることです。
「先月はAさんがExcelを加工し、今月はBさんが別の並べ方をした」という状態では、自動化が安定しません。
手順3|AIには「診断」ではなく「抽出条件」を渡す
ここが最も重要です。AIに、「この患者は歯周病継続支援治療の対象ですか?」と判断させる使い方は避けます。
代わりに、医院側で条件を定義します。たとえば、「院内管理区分が定期管理で、最終来院から90日以上経過し、次回予約がない患者を抽出する」という形です。
あるいは、「院内管理区分が歯周病継続管理で、次回予約がなく、最終来院から医院が定めた期間を超えている患者を抽出する」という形にします。
小児口腔機能管理についても同じです。AIに医学的判断をさせるのではなく、「医院側ですでに小児口腔機能管理の対象として登録されている患者の中から、次回予約がない患者を一覧にする」という使い方にします。
2026年度改定では、小児口腔機能管理料や口腔機能管理料の対象範囲が見直されていますが、正式な対象や算定要件は厚生労働省の最新通知等で確認し、院内の診療判断として設定する必要があります。AIは、その判断後のデータ整理を担当します。
手順4|抽出結果を「連絡理由」で分ける
対象患者を一つの「リコールリスト」にまとめると、次の工程でまた人が考える必要があります。そこで、抽出時点で連絡理由まで分けます。
| 連絡区分 | 抽出の考え方 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 定期管理 | 一定期間経過+予約なし | 通常の受診案内 |
| 継続管理確認 | 院内管理対象+予約なし | 担当者確認後に案内 |
| 治療中断 | 治療途中+一定期間未来院 | 歯科医師確認 |
| 小児管理 | 院内管理対象+予約なし | 保護者向け案内 |
| 自費相談後 | 相談済み+未予約 | 過度な勧誘にならない案内 |
| 無断キャンセル | 予約日経過+再予約なし | 再予約案内 |
こうすると、受付スタッフが一覧を開いた時点で「なぜこの患者へ連絡するのか」が分かります。
さらに担当者列を使えば、「担当歯科衛生士別」「歯科医師確認が必要な患者だけ」といった一覧も作れます。これが、単なる3か月経過者リストとの違いです。
手順5|最後は人が確認して配信一覧へ反映する
AIで候補者を抽出した後、そのまま一斉送信はしません。まず一覧を人が確認します。
たとえば、CSVを出した後に電話で予約が入っている可能性があります。転院の連絡があった患者や、今後の連絡を希望していない患者が混ざっている可能性もあります。
治療中断については、患者の治療経過や状態によって、どのように案内するかを歯科医師が確認した方がよいケースもあります。
そのため、「AIが候補を狭め、人が最終確認する」という二段階にします。AI導入の目的は人の確認をゼロにすることではありません。「500人を見る仕事」を「抽出された30人だけ確認する仕事」に変えることが目的です。
リコール文面は「定期検診・治療中断・自費相談後」で分ける
対象抽出ができたら、次は連絡文面です。ここでも、全患者へ同じテンプレートを送る必要はありません。
AIは、連絡区分に応じた下書きを作る作業に向いています。
定期検診・継続管理の患者には受診を思い出せる案内にする
定期管理の患者には、過度に不安を与える必要はありません。
「前回のご来院から一定期間が経過しています」「ご希望の場合は次回予約をご案内できます」といった、事実と予約導線を中心にします。
たとえば文章の構造は、次のように統一できます。
| 文面の要素 | 内容 |
|---|---|
| 冒頭 | 医院名と案内の目的 |
| 中盤 | 前回来院から一定期間経過している旨 |
| 案内 | 定期的な確認を希望する場合の予約方法 |
| 最後 | すでに予約済みの場合は行き違いへのお詫び |
AIには、この構造と文字数、医院の文体を指定して下書きを作らせます。毎回ゼロから文章を考える必要がなくなります。
治療中断患者は通常リコールとは分ける
治療途中で来院が止まった患者は、定期検診の患者とは意味が異なります。「そろそろ定期検診の時期です」という文章では不自然になることがあります。
一方で、AIが治療内容だけを見て「早急に受診してください」と判断するのも適切ではありません。治療中断患者については、AIは候補抽出と文章の下書きまでにとどめ、連絡するか、どのような表現にするかを歯科医師または担当者が確認する工程を残します。
| 工程 | AI | 人 |
|---|---|---|
| 治療中断候補を探す | 対応可能 | 確認 |
| 患者を分類する | 院内条件に基づき補助 | 最終確認 |
| 案内文の下書き | 対応可能 | 修正・承認 |
| 治療上の必要性を判断 | 任せない | 歯科医師が判断 |
| 送信するか判断 | 任せない | 医院が判断 |
自費相談後は「リコール」と分けて管理する
インプラント、矯正、審美歯科などの相談後、すぐに契約や予約へ進まなかった患者をフォローしている医院もあるでしょう。この層も通常の定期管理と一緒にしない方が整理しやすくなります。
たとえば、「相談後30日経過・次回予約なし」という条件で候補を出すことはできます。ただし、連絡の目的は定期検診とは違います。
検討状況を急かしたり、治療効果を過度に強調したりする文面ではなく、「ご不明点があればご相談ください」「改めて説明をご希望の場合はご予約いただけます」という案内を基本にします。
AIで文章を作る場合も医療広告の考え方は外さない
歯科医院が患者向けの文章やWeb上の案内を作る際には、医療広告規制も意識する必要があります。
厚生労働省は、病院・診療所・歯科医院等に関する医療広告ガイドラインやQ&A、ウェブサイトの事例解説を公開しています。
AIへ「もっと強い表現にして」「予約したくなるように煽って」と指示すると、意図せず誇大な表現や誤認を招く表現が生まれる可能性があります。
| AIへの条件 | 目的 |
|---|---|
| 事実にない効果を書かない | 誇張を防ぐ |
| 治療結果を保証しない | 誤認を防ぐ |
| 不安を過度に煽らない | 適切な患者案内にする |
| 医院で確認した情報だけを使う | 架空情報を防ぐ |
| 最後は人が確認する | AI出力をそのまま公開しない |
制度や表現について判断が難しい場合は、最新の公式資料を確認してください。
出典:厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」
抽出した一覧をLINE・はがき・電話へ渡す
対象一覧が完成した後で、初めて配信方法を考えます。
ここでのポイントは、AIを使うからといって連絡方法まで全部変える必要はないことです。
LINEを使っている医院は配信対象一覧へ渡す
すでに患者との連絡にLINEを使っている医院なら、対象リストと文面を既存の配信運用へ渡します。
理想的には、「定期管理」「治療中断確認後」「小児管理」などの区分ごとに対象を分け、それぞれ対応する文面を使用します。
ただし、使っているサービスによってCSV取込、タグ管理、ステップ配信など対応機能は異なります。したがって、最初から完全自動連携を目指す必要はありません。
最初の段階では、「AIで対象一覧を作る → 人が確認する → LINE側へ登録する」でも十分です。これだけでも、受付スタッフがレセコンを一件ずつ検索する作業は削減できます。
はがきを使う医院は印刷対象リストにする
高齢患者が多い地域密着型の歯科医院では、LINEへ全面移行する必要はありません。はがきの方が患者層に合っているのであれば、そのまま使います。
AIで作った一覧を、「今月はがきを出す患者一覧」として使えばよいのです。従来は受付スタッフがレセコンを見て宛先一覧を作っていたところを、条件抽出後の一覧から確認する運用へ変えます。
この記事ではリコールはがきのデザイン自体には踏み込みません。重要なのは、デザインより前の対象者選定を仕組み化することです。
電話なら「理由つき架電リスト」にする
電話でリコールしている医院でも使えます。むしろ、電話の場合は一覧の作り方が重要です。
単に患者名と電話番号を並べるのではなく、次のように連絡理由や確認事項を持たせます。
| 管理用ID | 連絡理由 | 最終来院 | 担当 | 確認事項 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 患者A | 定期管理 | 日付 | 衛生士A | 次回予約なし | 未対応 |
| 患者B | 治療中断 | 日付 | 医師A | 医師確認済み | 未対応 |
| 患者C | 無断キャンセル | 日付 | 衛生士B | 再予約なし | 不在 |
こうしておけば、受付スタッフが「なぜ電話する患者なのか」を毎回調べ直す必要がありません。電話後に結果を書き戻せば、翌月の抽出条件にも使えます。

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AIで抽出しても、人が確認する箇所は残す
歯科医院のAI活用では、「どこまで自動化できるか」と同じくらい、どこを自動化しないかを決めることが重要です。
リコールの場合、人の確認を残すべき代表的な部分は、治療上の判断、患者への連絡可否、抽出結果の最終確認です。
治療中断患者への連絡内容は歯科医師が確認する
治療途中で来院が止まっている患者については、単純な経過日数だけで連絡内容を決めるべきではありません。
どの段階で中断したのか、現在どのような状態が想定されるのか、どの程度の表現で受診を案内するのかは、診療内容に関わります。ここはAIに任せず、人が判断します。
AIの役割は「治療中断として院内で登録され、一定期間未来院になっている患者を探す」ところまでです。
「予約済み」「対応済み」「連絡不要」を最後に外す
データは常に完全に同期しているとは限りません。朝にCSVを書き出した後、午後に患者から電話が来て予約が入ることもあります。
そのため送信直前には、予約状況などの最終確認が必要です。完全自動化より、「抽出は自動、送信前確認は人」という設計の方が、小規模医院では導入しやすくなります。
患者情報をAIへ渡す範囲は院内で決める
患者情報には慎重な取り扱いが必要です。
利用するAIサービスの契約条件、データの取り扱い、院内ルール等を確認し、必要に応じて氏名など個人を特定できる情報を除いた管理用データで処理します。
具体的な患者情報の線引きについては、本記事では深掘りせず、医療機関の生成AI利用ルールを扱う別記事で確認する構成とします。
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無断キャンセル患者も「再予約導線」として別管理する
リコールを整備すると、次に見えてくるのが無断キャンセルや当日キャンセル後の再予約です。
ここも通常リコールとは分けて考える方が分かりやすくなります。
リコールと無断キャンセルではトリガーが違う
定期リコールのトリガーは、基本的には「最終来院から一定期間経過した」です。
一方、無断キャンセルは、「予約日が来た → 来院しなかった → 次回予約が入っていない」というイベントがトリガーになります。したがって、同じ一覧にすると対応時期がずれます。
| 区分 | トリガー |
|---|---|
| 定期リコール | 最終来院から一定期間経過 |
| 継続管理 | 院内管理条件+予約なし |
| 治療中断 | 治療途中+一定期間未来院 |
| 無断キャンセル | 予約日経過+再予約なし |
無断キャンセルは数か月後に思い出して連絡するのではなく、医院で決めた期間内に再予約導線を作った方が運用しやすくなります。
再予約できていない患者だけを抽出する
予約データをCSV等で確認できる場合は、「キャンセル・未来院になった人のうち、その後の予約がない患者」を抽出します。
その一覧へ、「再予約済み」「連絡済み」「連絡不要」「不通」などの結果を残しておけば、何度も同じ患者へ連絡することも防ぎやすくなります。
一定期間後は通常のリコール運用へ戻す
再予約案内を何度か行っても予約につながらない患者を、いつまでもキャンセル一覧に残す必要はありません。
医院側で、「キャンセル後○日までは再予約フォロー」「それ以降は通常のリコール条件へ戻す」といったルールを決めます。
数字自体に万能な正解があるわけではありません。重要なのは、受付担当者の感覚ではなく、院内で同じルールにすることです。
歯科リコールの対象抽出を定着させるには「毎月同じ手順」にする
AIを使ったリコール抽出で失敗しやすいのは、最初だけ立派な仕組みを作り、翌月から使われなくなることです。
小規模医院では、高度なシステムを作ることより、毎月同じ担当者が短時間で回せることを優先した方が定着します。
たとえば月初にCSVを出す医院なら、作業を次の表のように固定します。
| タイミング | 作業 | 主担当 |
|---|---|---|
| 月初 | レセコンから対象期間のCSVを出す | 受付 |
| 同日 | 決めたスプレッドシートへ反映 | 受付 |
| 同日 | 決めた条件で候補を抽出 | AI・表計算 |
| 同日〜翌日 | 治療中断等を確認 | 歯科医師・担当者 |
| 確認後 | 文面を作成・確認 | AI+人 |
| 配信日 | LINE・はがき・電話で連絡 | 受付 |
| 配信後 | 予約・不通・対象外を記録 | 受付 |
| 翌月 | 前月結果を反映して再抽出 | 同じ運用 |
毎回プロンプトを考える必要もありません。抽出条件が固まったら、医院用の指示文として保存しておきます。
さらに、「抽出件数」「実際に連絡した人数」「再予約になった人数」「対象外だった人数」を毎月確認すると、条件の精度も改善できます。対象外が多いのであれば、AIが悪いのではなく、抽出条件や元データに不足がある可能性があります。
リコール業務のAI化は、一度に完成させるものではありません。最初は「3か月未来院+予約なし」だけでも構いません。
その後、「治療中断は分けよう」「小児管理は別にしよう」「予約済み患者をもっと確実に除外しよう」と医院に合わせて条件を育てていく方が現実的です。
まとめ|最初に自動化するのは「送信」ではなく「誰に連絡するか」
歯科医院のリコール業務では、LINE、はがき、電話のどれを使うかより前に、誰がリコール対象なのかを毎回人が探している状態を見直すことが重要です。
レセコンからCSVを出せるのであれば、「レセコンCSV → スプレッドシート → AIで条件抽出 → 人が確認 → 既存の連絡手段へ渡す」という流れから始められます。
2026年度診療報酬改定では、歯周病安定期治療と歯周病重症化予防治療が歯周病継続支援治療へ整理・統合され、小児口腔機能管理料や口腔機能管理料も見直されています。
ただし、AIに診療判断や算定判断を任せるわけではありません。医院が決めた管理条件をもとに、AIには「対象になりそうな患者を大量のデータから探す作業」を担当させます。そして最後は人が確認します。
この分担にすると、現在のレセコンやLINE、はがき、電話を全部入れ替えなくても、「受付が一人ずつ患者を探す仕事」から順番に減らしていくことができます。
よくある質問
レセコンを入れ替えないとリコール対象の自動抽出はできませんか?
必ずしも入れ替える必要はありません。現在使っているレセコンから来院履歴などをCSVで書き出せる場合は、そのCSVをスプレッドシート等へ取り込み、条件に合う患者候補を抽出する方法があります。ただし、出力できる項目やCSV機能は製品によって異なります。まずは現在のレセコンから「患者管理用ID」「最終来院日」「予約状況」「院内で利用している管理区分」など、何を出せるか確認するところから始めます。
AIだけで歯周病継続支援治療の対象患者を判断できますか?
AIだけに算定対象を判断させる運用は避けた方がよいでしょう。2026年度改定では歯周病継続支援治療が設けられていますが、正式な算定要件に基づく判断は医院側で行う必要があります。AIには、「院内で継続管理対象として登録されている患者のうち、次回予約がなく一定期間未来院の患者を探す」といった条件抽出を担当させます。
LINEを使っていない歯科医院でもできますか?
できます。この記事で中心としているのはLINE配信ではなく、リコール対象者の抽出です。抽出した一覧は、はがきの発送対象、受付スタッフの電話リスト、SMS等、医院が現在使っている連絡方法へ渡せます。患者層に合わない連絡方法へ無理に変更する必要はありません。
患者名を生成AIに入力してもよいですか?
患者情報は慎重に取り扱う必要があります。使用する生成AIの契約内容やデータの取り扱い、医院の情報管理ルールなどを確認し、必要に応じて患者氏名など個人を直接特定できる情報を除いた管理用データで処理します。本記事ではリコール対象抽出にテーマを絞っているため、患者情報を生成AIへ入力する際の具体的な線引きは別記事で詳しく解説します。
3か月未来院の患者を全員リコール対象にすればよいですか?
一律に決めるのではなく、医院の診療方針や患者の管理状態に合わせて条件を分ける必要があります。同じ3か月未来院でも、定期管理中、治療中断、小児口腔機能管理、すでに次回予約済みなどでは対応が異なります。最終来院日だけで一つのリストを作るより、「連絡理由」まで分類した一覧を作る方が実際の受付業務では使いやすくなります。
AIは導入して終わりではありません。現在使っているレセコンや予約管理、LINE、はがき、電話の運用を確認し、「どこをAIへ渡し、どこを人が確認するか」まで整理して、実際の業務に定着するところまで伴走します。
注記:診療報酬の算定要件・医療広告規制等は改定や通知により変更される場合があります。実運用時は厚生労働省等の最新の公式資料をご確認ください。
