AIを開いて、入力欄の前で手が止まったことはないでしょうか。
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「何か仕事に使えそうなのは分かる」
「もっと良いことをAIに伝えれば、きっと良い回答が返ってくるはず」
「でも、その“もっと良いこと”をなんて言えばいいのか分からない」
このような状態になる人は少なくありません。
生成AIを使い始めると、多くの人が「良いプロンプトを書かなければいけない」と考えます。目的、役割、背景、条件、出力形式などをきれいに整理し、それからAIへ入力しようとします。
もちろん、必要な情報を整理して伝えることは大切です。しかし、それができないからといって、AIを使えないわけではありません。
むしろ、うまく言葉にできない状態そのものをAIに渡してしまうという使い方があります。
入力例:うまく言葉にできないのですが、今考えていることを整理したいです。必要なことを一問ずつ質問してください。
これだけでも、AIとの対話は始められます。
AI活用というと「人間がAIへ正しい質問をする」という一方向のイメージを持ちやすいですが、実際にはそうとは限りません。こちらからAIへ質問するだけではなく、AIから自分へ質問してもらうという使い方も非常に重要です。
「自分には過去のデータがない」「会社の情報をAIへ登録していない」「コンテキストが足りないから、良い回答は無理だろう」そう考えて諦めているのであれば、まだ早いかもしれません。
過去の大量データだけがコンテキストではありません。今の状況、困っていること、目的、相手、制約、理想の状態なども、すべてAIが判断するための重要な情報です。
そして、その情報は最初から全部用意しなくても、AIとの対話を通じて後から作ることができます。
この記事では、次のポイントを具体的に解説します。
- AIに何を伝えればいいか分からなくなる理由
- うまく言葉にできないときの対処法
- AIから質問してもらう方法
- 過去データがなくても始められる理由
- 何を伝えればいいか分からないときの5ステップ
- そのまま使える「手が止まったときの言い方」
- AIを使える人が身につけたい考え方
この記事の核心:「完璧なプロンプトを作ってからAIを使う」のではなく、AIを使いながら、自分が伝えたいことを明確にしていきます。
AIに何を伝えればいいか分からなくなる3つの理由
AIを前にして手が止まる原因は、単純に「プロンプトの知識がないから」とは限りません。多くの場合、もっと手前に原因があります。代表的なのが、次の3つです。
頭の中にあることを最初から文章にしようとしている
一つ目は、頭の中の考えを、いきなり完成した文章へ変えようとしていることです。
人の頭の中では、考えが常に文章になっているわけではありません。たとえば、会社の営業について考えているとします。頭の中には、「最近、新規のお客様が少ない」「営業担当者によって成績に差がある」「問い合わせは来るけれど受注しない」「もっとAIを使える気がする」「営業資料にも問題がありそう」といった複数の考えが同時に存在しているかもしれません。
しかし、これを一つのプロンプトにまとめようとすると急に難しくなります。「つまり、自分は何をAIへ質問したいのだろう」と考え始め、入力欄の前で止まってしまいます。
ここで覚えておきたいのは、思考は最初から整理されている必要はないということです。箇条書きでも、単語でも、「何となく困っている」という感覚でも構いません。それをAIに渡し、「この中から、まず何を考えるべきか整理してください」と頼めばよいのです。
AIを使う前に自分だけで考えを完成させようとする必要はありません。AIを、考えを整理する工程そのものに参加させることができます。
正しいプロンプトを書かなければならないと思っている
二つ目は、プロンプトには正解があると思ってしまうことです。
生成AIについて学ぶと、「役割を指定する」「目的を書く」「背景を書く」「条件を書く」「出力形式を書く」「例を提示する」といったプロンプトの基本を目にすることがあります。これらは、AIから精度の高い回答を得るうえで有効です。
しかし、初心者がこれを「最初から全部書かなければいけない」と理解してしまうと、逆にAIを使えなくなります。たとえば「営業会議を改善したい」と思ったときに、「目的は何だろう」「背景はどう説明するのだろう」「AIにどんな役割を与えるべきだろう」「条件は何個書くべきだろう」と考えてしまいます。これでは、AIへ相談する前に疲れてしまいます。
入力例:営業会議を改善したいのですが、何から考えればいいか整理できていません。改善案を出す前に、現在の会議について必要なことを質問してください。
AIが「会議の目的は何ですか」「参加者は誰ですか」「現在どのくらい時間がかかっていますか」「一番困っていることは何ですか」などと聞いてきたら、それに答えていきます。
結果として、最初から長いプロンプトを書くのと同じような情報が、対話の中でそろっていきます。
AIが自分のことを知らないから無理だと思っている
三つ目は、AIに過去の情報がないから良い回答は出ないと考えてしまうことです。
確かに、自社の事情や過去の経緯、顧客像、業務ルールなどをAIが把握していれば、より状況に合った回答を得やすくなります。しかし、「過去データがない=何もできない」ではありません。
AIが知らないのであれば、必要な範囲から教えていけばよいのです。しかも、すべてを一度に説明する必要はありません。
入力例:この相談をするために、あなたが知っておいた方がよいことを質問してください。
ここで重要なのは、コンテキストを「準備してからAIを使う」のではなく、「AIとの会話の中でコンテキストを作る」という発想です。
結論|最初から全部伝えなくていい
AIに何を伝えればいいか分からないとき、まず覚えておきたいことがあります。最初から全部伝えなくても大丈夫です。
生成AIを「完成した指示を入れると、完成した答えが返ってくる機械」としてだけ見ると、最初のプロンプトが非常に重要に感じます。しかし、生成AIは対話できます。
つまり、1回目で不足していれば2回目で足す。2回目でも違えば3回目で修正する。必要なことが分からなければAIから質問してもらう、という進め方ができます。
人に仕事を相談するときも同じではないでしょうか。信頼している社員やコンサルタントへ、「今から完璧に整理された相談内容を話します」とは限りません。
「最近ちょっと営業がうまくいっていなくて」というところから会話が始まり、「何が一番問題なのですか」「問い合わせ数ですか、受注率ですか」「最近何か変わりましたか」と質問されることで、自分自身も問題を整理できることがあります。
AIでも同じです。むしろ、AIへ相談しながら、自分自身の考えを具体化するという使い方ができます。

「うまく言えない」をそのままAIに伝えていい
「もっと良いことを伝えたいのに、なんて言えばいいか分からない」。そんなときは、無理にきれいな文章を作る必要はありません。「うまく言えない」という状態自体をAIへ伝えてください。
「なんとなく違う」から対話を始める
たとえば、AIに営業メールを書いてもらったとします。文章としては間違っていない。丁寧でもある。しかし、読んでみると何となく違う。
このとき、「もっと良くしてください」だけでは、AIも何を変えればいいのか判断しにくくなります。一方で、自分自身も「どこが違うのか分からない」ということがあります。
入力例:文章としては悪くないのですが、私が伝えたい感じと何か違います。ただ、どこが違うのか自分でも言語化できません。違和感を特定するために質問してください。
こうすると、AIは「もっと親しみやすくしたいのか」「売り込み感を減らしたいのか」「信頼感を高めたいのか」「相手との距離感を変えたいのか」「文章を短くしたいのか」といった観点から確認できます。違和感を自分だけで完全に言語化してからAIへ戻す必要はありません。言葉になっていない部分を、AIとの会話で探すことができます。
「言葉にできないので質問してください」でよい
非常に便利なのが、次の一言です。
入力例:うまく言葉にできないので、必要なことを質問してください。一度にたくさん質問されると答えにくいので、一問ずつ質問してください。
たとえば、新しいサービスを考えているとします。頭の中には、「中小企業向け」「AIを使える社員を増やしたい」「研修だけでは定着しない気がする」「動画だけでも足りない」「相談もできる方がよさそう」など、断片的なアイデアがあるとします。
これをそのまま書き、「まだサービスとして整理できていません。商品設計をするために必要なことを一問ずつ質問してください」と頼みます。
AIから「最も解決したい顧客の悩みは何ですか」と質問されたら答えます。次に「その悩みを持つのは誰ですか」と聞かれたら答えます。さらに「利用後にどのような状態になってほしいですか」と聞かれたら答えます。
このやり取りを続けるうちに、最初はぼんやりしていたアイデアが具体化していきます。
断片的な情報でも、まず出してみる
AIに入力する内容は文章でなくても構いません。たとえば、次のような箇条書きでも十分にスタートできます。
入力例:今考えていること
・社員がAIをあまり使わない
・研修はやった
・ChatGPTのアカウントはある
・一部の人だけ使っている
・毎日の仕事に結びついていない
・何を改善すればいいか分からない
この状況を整理してください。
最初から、「弊社のAI導入における課題を構造的に分析し……」といった完成された文章を作る必要はありません。
頭の中の素材を出すことと、素材を整理することを分ける。そして、整理する側をAIに手伝ってもらう。この考え方を持つと、AIへの入力のハードルは大きく下がります。
AIに質問してもらうとコンテキストは後から作れる
生成AIを使ううえで、「コンテキスト」という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。コンテキストとは、簡単にいえば、AIが回答を考えるための背景情報や前提情報です。
コンテキストとは大量の過去データだけではない
コンテキストというと、過去のメール、顧客データ、議事録、社内マニュアル、過去の提案書、社内規程、過去のAIとの会話など、大量の情報を想像する人がいます。もちろん、それらも重要なコンテキストになり得ます。しかし、それだけではありません。
たとえば、営業提案を考える場合なら、次のような情報もコンテキストです。
- 何を売っているのか
- 誰に売るのか
- 相手はどんな課題を持っているのか
- 今回の提案の目的
- 予算
- 期限
- 競合
- 絶対に避けたい表現
しかも、これらの情報を最初から完璧に準備する必要はありません。
AIから質問させる
一番簡単な方法は、「良い回答をするために必要なことを質問してください」と頼むことです。
入力例:新しい採用方法を考えたいです。ただ、何を伝えれば良いのか分かりません。提案する前に、必要な情報を質問してください。
このとき重要なのは、AIにいきなり答えを出させないことです。「すぐに提案しないでください」「まず状況整理からしてください」「必要な情報がそろってから提案してください」と伝える方法もあります。これにより、浅い情報だけで一般論を出すのではなく、状況を聞き取る工程を作りやすくなります。
一問ずつ質問してもらう
AIに「必要な質問をしてください」と頼むと、場合によっては多くの質問が一度に返ってくることがあります。すると、回答する側がまた止まってしまいます。
そのような場合は、「質問は一問ずつしてください。私が答えたら、次の質問へ進んでください」と指定します。
この方法は特に、自分の考えがまとまっていない、何が重要なのか分からない、長い入力をするのが苦手、会話しながら考えたい、という人に向いています。
質問へ答えているうちに、「自分はここを問題だと思っていたのか」「本当に解決したいのは別のことかもしれない」と、自分自身の理解が深まることもあります。AIの質問は、単に情報を補うためだけではありません。自分の頭の中を整理するためのきっかけとして使うことができます。
「過去データがないからダメ」と諦めるのはまだ早い
生成AIを使い込んでいる人を見ると、「その人は過去の会話履歴が大量にあるから良い回答が出るのだ」「自分には会社のデータを入れていないから無理だ」と思うことがあります。しかし、過去データがないからといって、AI活用を諦める必要はありません。
過去データが役立つケース
もちろん、過去データが大きな価値を持つ場面はあります。たとえば、次のような用途です。
- 過去の提案書を参考に新しい提案書を作る
- 社内規程を検索する
- 過去の問い合わせ履歴からFAQを作る
- 過去の会議内容を踏まえて次の施策を考える
- 自社独自の文章表現へ合わせる
このような用途では、適切なデータをAIが参照できることで、より自社に合った回答を得られる可能性があります。ただし、それはAI活用の一つの方法です。AIを使うすべての場面で、過去データが必要なわけではありません。
過去データがなくても現在の状況から始められる
たとえば、「毎週の営業会議が2時間かかっている」という今の状況だけでも相談できます。
入力例:毎週10人で営業会議をしています。2時間ほどかかり、報告が中心です。もっと短くしたいのですが、何から見直せばいいか分かりません。必要なことを一問ずつ聞いてください。
AIとの会話の中で、会議の目的、参加者、報告内容、事前共有の有無、決定事項、課題などを補っていけば、必要なコンテキストができていきます。
対話そのものが新しいコンテキストになる
ここが非常に重要です。最初の質問時点では、「営業会議を改善したい」という情報しかなかったとします。
しかし、AIから質問されて答えていくと、「営業担当8名と管理職2名が参加」「案件の進捗報告が中心」「報告だけで約90分かかる」「会議前の情報共有はない」「本当に話したいのは失注案件と大型案件」といった情報が追加されます。
最初はなかったコンテキストが、会話によって生まれています。つまり、コンテキストは過去から持ってくるだけではなく、今の対話から作ることもできるということです。
何を伝えればいいか分からないときの5ステップ
ここからは、実際にAIの前で手が止まったときに使える方法を5ステップで紹介します。

ステップ1:「今困っていること」をそのまま書く
最初に、きれいな質問を作ろうとしないでください。まずは事実や感覚を書きます。
たとえば、「社員にAIを使ってほしいのですが、あまり使ってくれません。」これだけで構いません。さらに書けそうなら、「研修は一度実施しました」「アカウントも用意しています」「一部の社員しか使っていません」などを追加します。
文章にならなければ箇条書きでも問題ありません。重要なのは、最初の素材をAIへ出すことです。
ステップ2:「うまく説明できない」と伝える
次に、自分の情報が不十分であることを正直に伝えます。
「何が問題なのか、自分でもまだ整理できていません」「うまく説明できないのですが……」「何を伝えればいいか分かりません」。これらも重要な情報です。
AI側は、「このユーザーは完成した回答が欲しいのではなく、まず状況整理が必要なのだ」と判断しやすくなります。
ステップ3:「必要なことを質問して」と頼む
次に、「この問題を整理するために必要なことを質問してください」と頼みます。
さらに使いやすい形は、「答えを出す前に、状況を理解するために必要なことを一問ずつ質問してください」です。これにより、自分が質問を作る立場から、AIの質問へ答える立場へ変わります。
ゼロから質問文を作るのは難しくても、聞かれたことへ答えるのは比較的簡単です。
ステップ4:質問へ一つずつ答える
AIから「現在、一番困っているのは何ですか」と聞かれたら、それだけに答えます。次に、「どの社員に使ってほしいですか」と聞かれたら答えます。
ここでも、完璧な回答は必要ありません。「営業担当です」「特に事務作業へ使ってほしいです」程度でも構いません。
分からなければ、「そこも自分ではまだ分かりません。考えるために選択肢を出してください」と返すこともできます。分からないことを、さらに分解してもらうことができます。
ステップ5:AIに「ここまでを整理して」と頼む
ある程度やり取りしたら、「ここまでの話を整理してください」と頼みます。
さらに、「私の課題、原因として考えられること、次に考えるべきことの3つに分けて整理してください」と指定すると、思考を構造化できます。
最初は「社員がAIを使わない」だけだった悩みが、「どの業務へ使うか決まっていない」「具体的な成功体験がない」「利用する時間が業務として確保されていない」など、より具体的な論点に変わるかもしれません。
ここまで来ると初めて、「では改善策を考えてください」と頼めます。いきなり答えを求めるのではなく、まず問題を明確にする。この順番が重要です。
実務で使える「手が止まったときの言い方」7選
ここからは、実際にそのまま使いやすいフレーズを紹介します。
1.「うまく説明できないので、質問しながら整理してください」
もっとも汎用性の高い使い方です。自分の考えが整理できていないときに使えます。
入力例:新しいサービスを考えています。ただ、まだうまく説明できません。質問しながら考えを整理してください。
2.「私が本当に困っていることを特定するために質問してください」
表面的な悩みと本当の課題が違う可能性があるときに使います。「売上を増やしたい」と思っていても、新規客が少ない、商談化率が低い、受注率が低い、リピート率が低いなど、原因によって対策は変わります。AIにすぐ解決策を出させるのではなく、問題の特定から行わせます。
3.「一問ずつ質問してください」
初心者に特におすすめです。AIから一度に多くの質問が出ると、それだけで入力する気がなくなることがあります。
入力例:一問ずつ聞いてください。私が回答したら次へ進んでください。
4.「まだ答えを出さず、まず状況を整理してください」
AIは質問するとすぐに解決策を出そうとする場合があります。しかし、課題自体が曖昧な段階では、早すぎる解決策が役立たないこともあります。
入力例:まだ施策は提案しないでください。まず現在の状況と問題点を整理してください。
5.「私の説明で不足している情報を教えてください」
自分である程度プロンプトを書いたものの、「これで情報が足りているのか分からない」というときに使えます。AIを回答者だけではなく、依頼内容のチェック役として使う方法です。
入力例:営業資料を作る依頼文を書きました。この内容で不足している前提情報や条件があれば、作成を始める前に質問してください。
6.「この話から私が言いたいことを言語化してください」
文章を書くときだけではなく、自分の考えを理解したいときにも使えます。AIが出した文章を読んで、「そう、それが言いたかった」となることもあれば、「近いけれど、少し違う」となることもあります。その違いをさらに伝えることで、考えが明確になります。
入力例:私はAI研修だけでは社員がAIを使えるようにならないと思っています。ツールの操作より、自分の業務へどう使うか考えることが大事だと感じています。ただ、うまく言語化できません。私が言いたいことを整理してください。
7.「ここまでの話を整理して、次に考えるべきことを教えてください」
長く会話をしていると、自分でも何を話していたのか分からなくなることがあります。そんなときは途中で整理します。AIとの対話は、ひたすら続ければ良いわけではありません。定期的に現在地を整理することで次の問いを作りやすくなります。
入力例:ここまでの内容を、分かったこと・まだ分からないこと・次に決めることに分けて整理してください。
良いAI活用は「質問する力」だけではない
生成AI活用では「質問力が重要」とよく言われます。確かに、AIへ良い問いを投げる能力は重要です。しかし、それだけではありません。
AIに質問させる力も重要
自分が何を知らないのか分からない状況では、良い質問そのものを作れません。そのとき必要なのは、「何を聞けばいいか分からないので、あなたから質問してください」と言えることです。
つまりAI時代には、自分が良い質問をする力だけではなく、AIに良い質問をさせる力も重要になります。
入力例:この事業計画を検討する経営者として、私が考え切れていない点を質問してください。
入力例:お客様へ提案する前に、営業担当者として確認しておくべきことを質問してください。
入力例:この業務を改善するために、ITコーディネータの視点で現状をヒアリングしてください。
AIへ「答える役」だけではなく「聞く役」を与えることで、使い方の幅が広がります。
答えではなく思考整理にAIを使う
生成AIを使い始めた人は、「答えを教えてもらう」ことに集中しがちです。もちろん、それも便利です。しかし、生成AIの価値は答えを出すことだけではありません。
- 考えを分類する
- 選択肢を出す
- 抜け漏れを指摘する
- 質問する
- 比較軸を作る
- 仮説を整理する
- 自分の言葉を言語化する
特に仕事では、最初から答えが明確な問題ばかりではありません。「そもそも何が問題なのか」「何を優先すればいいのか」「誰に聞けばいいのか」といった曖昧な状態から始まります。その曖昧な段階こそ、AIと対話する価値があります。
AIとの対話で自分自身の考えも明確になる
AIへ自分の状況を説明しようとすると、「なぜそう思うのか」「本当に困っていることは何か」「どんな状態になれば成功なのか」を考えることになります。
つまりAI活用は、単にAIから情報を得る作業だけではありません。自分自身の考えを言葉にする作業でもあります。言葉にすることで、曖昧だった考えが見えるようになります。その意味では、AIとの対話そのものが「言語化の練習」にもなります。
AIへの伝え方でよくある失敗
最初から完璧な依頼文を書こうとする
最も多い失敗です。長く考えた結果、AIへ何も入力しないのであれば本末転倒です。まず短く入力し、不足情報を後から足してください。
テンプレートを埋めることが目的になる
プロンプトテンプレートは便利ですが、「役割」「背景」「目的」「条件」を全部埋めなければならないと考えると、テンプレートそのものが負担になります。テンプレートはAIを使うための手段です。空欄があっても構いません。分からない項目については、「この項目を決めるために質問してください」とAIへ頼む方法もあります。
1回目の回答だけでAIの性能を判断する
AIへ短い質問をして一般的な回答が返ってくると、「AIは大したことない」と判断してしまうことがあります。しかし、AIが持っている情報が少なければ、回答も一般的になりやすくなります。「私の場合に合わせるために必要なことを質問してください」と続けてみてください。
背景を説明せず「もっと良くして」とだけ伝える
AIの回答に不満があるとき、「もっと良くして」「もっと分かりやすく」だけでは、何をどう変更すべきか曖昧です。自分で改善ポイントを言語化できない場合は、「私はこの回答に違和感がありますが、理由を言語化できません。何が違う可能性があるか、選択肢を出して質問してください」と頼めます。
重要な判断までAIへ丸投げする
AIと対話して考えを整理することと、意思決定そのものをAIへ丸投げすることは別です。特に、契約、法務、人事評価、採用、経営判断、金融、医療、個人情報を含む業務など、影響が大きい領域では、人間による確認や専門家への相談が必要な場合があります。AIの出力をそのまま事実や最終判断として扱わず、利用するAIサービスや契約プラン、自社の情報管理ルールに応じて、機密情報や個人情報の入力可否も事前に確認してください。
AIを使える人は「答えを知っている人」ではない
では、AIを使える人と使えない人の違いは何でしょうか。「プロンプトをたくさん覚えている人」「AIについて詳しい人」だけではありません。
むしろ重要なのは、分からない状態のままでも、AIとの対話を始められることです。
AIを使える人は、「分からないから質問できない」で終わりません。「何が分からないのかを一緒に整理して」とAIへ頼みます。
「うまく言葉にできないから使えない」で終わりません。「言葉にするために質問して」と頼みます。
「コンテキストがないから使えない」で終わりません。「必要なコンテキストを作るために何を伝えればいいか聞いて」と頼みます。
ここには大きな違いがあります。AIを使える人とは、最初から答えを持っている人ではありません。自分の曖昧さを認識し、それをAIとの対話によって少しずつ具体化できる人です。
よくある質問
プロンプトを勉強しないと生成AIは使えませんか?
高度なプロンプトの知識がなくても、生成AIを使い始めることはできます。最初から完璧な指示を書くのではなく、「何を伝えればいいか分からないので質問してください」というところから始めても構いません。利用経験が増えるにつれて、目的、背景、条件、出力形式などを意識できるようになると、さらに効率よくAIへ依頼できるようになります。
自社データがなくてもAIは使えますか?
用途によりますが、自社の過去データがなくても使える業務は多くあります。たとえば、アイデア整理、文章のたたき台、会議の進め方、業務課題の整理などは、現在の状況を伝えることから始められます。一方で、自社独自の規程や過去案件を踏まえた回答が必要な場合は、適切なデータを安全に参照できる環境が必要になることがあります。
何を質問すればいいか分からない場合はどうすればいいですか?
「私が何を質問すればいいかも分かっていません。目的を整理するために一問ずつ質問してください」とAIへ伝えてください。質問そのものをAIに考えてもらうことができます。
AIに質問してもらってもいいのでしょうか?
もちろんです。AIを回答者だけではなく、ヒアリング役や思考整理役として使う方法があります。特に、自分の考えがまだまとまっていない段階では有効です。
AIへどこまで会社の情報を伝えてよいですか?
利用するAIサービス、契約プラン、自社の情報管理ルールによって異なります。顧客の個人情報、機密情報、パスワード、秘密鍵など、取り扱いに注意が必要な情報は安易に入力しないでください。会社として生成AIを利用する場合は、入力可能な情報と入力禁止情報をあらかじめ決めておくことが重要です。
まとめ|「何を伝えればいいか分からない」からAI活用は始められる
AIを使おうとして、「何を伝えればいいか分からない」「もっと良いことを伝えたいのに、なんて言えばいいか分からない」と手が止まることがあります。しかし、それはAIを使えないという意味ではありません。
最初から完璧なプロンプトを作る必要はありません。最初から大量のコンテキストを用意する必要もありません。
まず、「今こんなことで困っています」と伝える。次に、「うまく言葉にできません」と伝える。そして、「必要なことを一問ずつ質問してください」と頼む。質問へ答えながら情報を増やし、最後に、「ここまでの内容を整理してください」と頼む。
この流れだけでも、最初は曖昧だった考えを少しずつ具体化できます。大切なのは、きれいに伝えられるようになってからAIを使うのではないということです。AIを使いながら、伝えたいことを言葉にしていけばよいのです。
過去のデータがないからと諦めるのも、まだ早いでしょう。現在の状況や目的を一つずつ伝えれば、対話そのものが新しいコンテキストになります。
生成AIを使える人になるために、最初から高度なプロンプトを書く必要はありません。まずはAIへ、次の一言を伝えるところから始めてみてください。
入力例:うまく言葉にできないので、質問しながら整理してください。
AIを使いたいけれど、「何からAIへ相談すればいいのか分からない」「自社のどの仕事にAIを使えるのか整理できていない」という状態でも問題ありません。
現在時間がかかっている仕事、面倒だと感じている仕事、社員によってやり方が違う仕事などから整理することで、AIを活用できる業務が見えてくることがあります。
最初から完璧に説明する必要はありません。現在の仕事や困っていることをお聞きしながら、AIでラクにできそうな業務を一緒に整理していきます。
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