月に十数通の値上げ通知。更新しきれず、旧単価のまま売り続けていた
ある中小の卸売会社では、毎月のように複数の仕入先から価格改定の案内が届いていました。
ある会社はメールにPDFを添付して送ってきます。別の会社はFAXです。営業担当者へ直接案内が届くこともありました。
そのたびに担当者が通知書を開き、対象商品を確認して、販売管理システムの仕入単価を修正します。さらに、営業担当者が使っている得意先別の売価Excelも直さなければなりません。
ところが、通常の受注、発注、請求業務をこなしながら価格改定まで処理するため、すべてを一度に更新できるとは限りません。
ある仕入先の単価は販売管理システムへ反映したものの、営業担当者のExcelは旧単価のまま。別の商品では、値上げ通知自体を確認したものの、「来月更新しよう」と保留にしたまま忘れていました。
結果として、仕入単価は上がっているのに、得意先には以前の売価で販売している商品が残りました。売上は変わっていないため、一見すると問題はありません。しかし、実際には商品を販売するたびに粗利が少しずつ削られていました。
こうした問題は、値上げ幅が大きいから起こるとは限りません。本当に危険なのは、値上げ通知が届いてから、新しい仕入単価と得意先への売価へ反映されるまでの流れがつながっていないことです。
ここでAIが役立ちます。ただし、AIに「この商品の売価はいくらにすればよいですか」と判断させるのではありません。
AIに向いているのは、PDFなどの値上げ通知から、品目、商品番号、旧単価、新単価、適用日、備考を抜き出し、人が確認しやすい一覧にする作業です。
その一覧から販売管理システム向けの更新CSVを作り、さらに得意先別売価の見直し対象を抽出します。つまり、AIの役割は価格を決めることではなく、バラバラに届く値上げ通知を、更新作業に使える形へ変換することです。
この記事では、既存の販売管理システムやExcelをすべて入れ替えるのではなく、今ある仕組みを活かしながら仕入値上げへの対応を効率化する手順を解説します。
仕入先の値上げで利益が減る原因は「値上げ幅」より更新漏れ
仕入価格が上がれば、利益率が下がること自体は多くの経営者が理解しています。そのため、大幅な値上げであれば営業会議などで話題になり、売価を見直すことも多いでしょう。
一方で注意したいのが、数%程度の小さな値上げです。値上げ幅が小さいほど緊急性を感じにくく、更新作業が後回しになりやすいからです。
例えば、仕入価格1,000円の商品を1,300円で販売していたとします。仕入価格が1,000円から1,100円へ上がったにもかかわらず、売価を1,300円のままにしていれば、1個販売するごとに従来より100円分の利益が減ります。1個なら小さな差でも、毎月100個、500個、1,000個と販売する商品なら影響は無視できません。
仕入マスタを直しても売価Excelが古ければ粗利は下がる
中小の卸売業や商社では、販売管理システムだけですべての価格を管理していないことがあります。例えば、次のような分散管理です。
- 仕入単価は販売管理システム
- 標準売価も販売管理システム
- 得意先別単価はExcel
- 特価は営業担当者のExcel
- 一部の契約価格は紙やPDF
この状態では、仕入単価だけを更新しても価格改定対応は終わりません。売価Excelが古ければ、営業担当者は旧価格で見積を出してしまいます。
そのため、価格改定対応では「仕入単価を更新したか」ではなく、「仕入単価変更の影響が、必要な売価まで反映されたか」を確認する必要があります。
PDF・FAX・メールが混在すると価格改定情報が一か所に集まらない
もう一つの原因が、値上げ通知の入口が統一されていないことです。仕入先A社はメール添付PDF、B社はFAX、C社は営業担当者へ直接連絡する、といった状態では、会社として「今どの値上げ通知を処理しているのか」が把握しにくくなります。
問題は、紙かPDFかという形式そのものではありません。価格改定情報が一覧になっていないことが問題です。そこで最初に行うべきなのは、高額なシステム導入ではなく、届いた値上げ通知を一か所へ集めることです。
「誰かが対応したはず」が最も危険
価格改定業務でよく起きるのが、「営業が見ていると思った」「仕入担当が更新したと思った」「販売管理システムに入っているから終わったと思った」という状態です。
値上げ通知を受け取ったことと、価格改定対応が完了したことは別です。最低でも次の段階で管理する必要があります。
- 通知受領
- 内容確認
- 仕入単価更新
- 売価確認
- 得意先案内
- 適用開始
結論|AIは「値上げ通知を更新用データへ変換する係」にする

仕入値上げ対応でAIを使うなら、最も相性がよいのは通知書の整理です。PDFや画像化したFAXから必要項目を取り出し、表形式にまとめる作業は、AIを活用しやすい分野です。
AIに任せやすい作業
- 値上げ通知から商品名を抜き出す
- 仕入先の商品番号を抜き出す
- 旧単価と新単価を整理する
- 適用日を抜き出す
- 値上げ率を計算する
- 「出荷分から」などの条件を備考欄へまとめる
- 表形式に整理する
- 更新対象一覧のたたき台を作る
- 得意先向け価格改定案内文を作る
特に重要なのは、「人が通知書を何ページも見比べてExcelへ打ち直す」時間を減らせる点です。
人が確認すべき作業
- 自社商品コードとの紐付け
- 同一商品かどうか
- 箱・本・個などの単位
- 税区分
- 適用開始条件
- 得意先との契約価格
- 特別値引き
- 最終的な販売価格
AIが正しそうな表を出したからといって、そのまま販売管理システムへ一括登録するのはおすすめできません。「AIで下書きを作り、人が確認したものだけ更新する」という運用が現実的です。
手順1|値上げ通知PDFをAIで「品目・新単価・適用日」に分解する
最初の工程は、値上げ通知の情報を整理することです。ここで重要なのは、最初から完璧な自動化を目指さないことです。まずは「人が通知書を見てExcelへ転記している作業」をAIへ置き換えます。
最初に値上げ通知を一か所へ集める
値上げ通知の入口をできるだけ統一します。例えば、次のような保管場所です。
- 値上げ通知専用のメールフォルダ
- 共有フォルダ
- クラウドストレージ
- 社内共有フォルダ
FAXで届いたものはPDF化し、紙だけで保管しないようにします。営業担当者へ直接届いた値上げ案内も、決めた保管場所へ必ず入れるルールにします。大切なのは、「値上げ通知を受け取った人が持っている状態」をなくすことです。
AIへ渡す前に確認する情報
AIへ値上げ通知を読み取らせる際は、出力する列をあらかじめ決めておきます。おすすめは次の項目です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 仕入先名 | 値上げ通知を出した会社 |
| 通知日 | 通知書が発行された日 |
| 仕入先商品コード | 仕入先側の商品番号 |
| 商品名 | 対象商品 |
| 旧単価 | 現在の価格 |
| 新単価 | 改定後価格 |
| 値上げ率 | 旧単価からの変化 |
| 適用日 | 新価格が始まる日 |
| 適用条件 | 受注日・出荷日など |
| 備考 | その他確認事項 |
| AI確認状態 | 読み取りに自信がない部分 |
最初から自社の商品コードまでAIへ推測させる必要はありません。まずは通知書に書いてある情報を、そのまま正確に整理することを優先します。
AIへの指示は「表にして」だけでは足りない
AIへ単に「このPDFを表にしてください」と指示すると、必要のない情報まで含まれたり、逆に重要な適用条件が抜けたりする場合があります。
例えば、「添付した価格改定通知から、仕入先商品コード、品名、旧単価、新単価、値上げ率、適用日、適用条件、備考を一覧にしてください。読み取れない数字や判断できない情報は推測せず、『要確認』と記載してください。複数ページに同じ商品がある場合は重複の可能性を示してください。」という考え方で指示します。
重要なのは、分からない部分を勝手に補わないよう指示することです。価格情報では「推測しない」というルールが特に重要です。
AIが間違えやすい値上げ通知
複数ページにまたがる一覧
1ページ目に商品コード、2ページ目に価格があるような書式では、列の対応がずれる可能性があります。
小数点がある単価
「105.5円」と「1,055円」のような読み違いは金額への影響が大きくなります。
単位が違う商品
1本、1箱、1ケースなどが混在する場合は注意が必要です。
適用条件が日付だけではない
「10月1日受注分から」「10月1日出荷分から」「現在庫終了後」では意味が違います。AIには適用日と適用条件を別項目で抽出させます。
商品コード変更を伴う価格改定
値上げと同時に型番や商品番号が変わる場合は、単純な単価上書きでは対応できません。この場合は「商品コード変更あり」として別確認に回します。
手順2|AIで整理した一覧から仕入マスタ更新CSVを作る
次は、AIで作った価格改定一覧を自社の商品マスタと結び付けます。ここからは「仕入先の情報」を「自社で更新できる情報」へ変える工程です。
AI一覧と社内の商品コードを紐付ける
仕入先の商品コードと、自社の商品コードが同じとは限りません。例えば、仕入先コードがABC-100、自社コードが0005231という場合があります。
そのため、過去の仕入先コードと自社コードの対応表をExcelで持っておくと便利です。一度対応表を整備すれば、次回以降の値上げ通知でも流用できます。逆に、商品名だけで照合するのは避けたほうが安全です。似た商品名が複数あれば、誤ったマスタを更新する可能性があるからです。
CSVに必要な項目を決める
販売管理システムへCSV取込ができる場合でも、最初から取込用CSVだけを作るのではなく、確認用の差分表を作ることをおすすめします。
| 自社商品コード | 仕入先 | 旧単価 | 新単価 | 差額 | 適用日 | 確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0005231 | A社 | 1,000 | 1,100 | 100 | 10/1 | 済 |
| 0005232 | A社 | 850 | 880 | 30 | 10/1 | 済 |
| 0005233 | A社 | 2,300 | 2,520 | 220 | 10/1 | 要確認 |
ここで「要確認」が1件でもあれば、その行を確認してからCSVを作成します。
いきなり販売管理システムへ取り込まない
一括更新の便利さは、同時に危険でもあります。100商品を数秒で更新できるということは、100商品を間違った単価へ変更することも数秒でできるということです。
そのため、「AI抽出データ → 確認用一覧 → 更新CSV」の3段階に分けます。可能であれば、更新前データも保存しておきます。誤更新があった際に元へ戻せるからです。
一括更新前に特に見るべき3項目
1.商品コード:対象商品が正しいか。
2.単位:本単価なのか、ケース単価なのか。
3.適用日:新価格へ切り替えるタイミングが正しいか。
価格そのものだけでなく、この3項目の誤りが重大なトラブルにつながります。
手順3|得意先別売価Excelは仕入単価更新と分けて反映する

仕入単価を更新したら、次に考えるのが売価です。ここで重要なのは、「仕入価格が10%上がったから、売価もすべて10%上げる」という単純な話ではないことです。販売価格には得意先ごとの条件があります。
なぜ仕入マスタと売価を同時更新してはいけないのか
仕入価格は、仕入先から通知された事実です。一方、販売価格は自社が決める経営判断です。例えば、重要顧客なので今回は一部を自社で吸収する、もともと粗利が低いため値上げ幅以上に見直す、年間契約のため来期まで変更できない、一部商品だけ特価契約になっている、といった違いがあります。
したがって、仕入価格更新と売価更新は同じ一覧から始めても、最終工程は分けます。
掛率で売価を決めている場合
例えば、仕入価格に1.3を掛けて売価を設定している会社なら、「新仕入単価 × 1.3」で新しい参考売価を算出できます。仕入単価が1,000円から1,100円になった場合、1,100円 × 1.3 = 1,430円が候補になります。
ただし、実際には10円単位、100円単位への丸め処理など、会社ごとのルールがあるはずです。そのルールまでExcelへ組み込んでおけば、AIで抽出した新仕入単価を入れるだけで売価候補を作れます。
粗利率から逆算している場合
粗利率とは、売価のうち仕入原価を差し引いた利益の割合です。例えば、目標粗利率を20%にしたい場合は、「売価=仕入価格÷(1-目標粗利率)」という考え方で計算できます。
仕入価格が1,000円なら1,000÷0.8=1,250円です。仕入価格が1,100円へ上がれば、1,100÷0.8=1,375円になります。この計算をExcelへ入れておけば、価格改定時に候補価格を自動表示できます。
得意先別の特価・固定価格は自動変更しない
特に注意したいのが、特価契約です。例えば、標準売価1,500円、A社特価1,350円、B社特価1,280円となっている場合、仕入価格が上がったからといって一律に掛率計算し直すと、取引条件を壊してしまう可能性があります。
そのため特価商品は、自動変更対象ではなく「要確認対象」として抽出するほうが安全です。AIに「特価」「固定」「契約価格」などのフラグがある得意先を一覧化させる使い方も有効です。
値上げ分をそのまま売価へ乗せるかは得意先ごとに判断する
仕入値上げを売価へどこまで転嫁するかは、AIだけでは決められません。取引関係や競合状況、利益率などを踏まえた経営判断が必要です。
取引量が多い得意先
大口顧客の場合、一度に全額を転嫁せず、一部を自社で吸収する判断もあります。ただし、その判断によって粗利がどの程度下がるのかは事前に確認する必要があります。AIやExcelで、現行売価、新仕入価格、現行粗利、改定候補売価、改定後粗利を並べれば判断しやすくなります。
利益率が低い得意先
もともと利益率が低い取引では、今回の仕入値上げを単純に転嫁するだけでは不十分な場合があります。価格改定を機に、過去から続いている低採算価格を見直すことも検討します。
契約単価・年間価格がある得意先
年間契約や期間固定価格の場合、仕入値上げがあってもすぐに変更できない可能性があります。この場合は契約書や見積条件を確認する必要があります。AIに契約条件を読ませる場合でも、最終判断は人が行います。
AIは売価を決めるのではなく判断材料を並べる
AIに適しているのは、「この得意先は現在の売価を維持すると粗利率が何%になる」「標準掛率を適用すると新売価候補はいくらになる」といった判断材料の整理です。最終的に、いくら値上げするか、いつから適用するか、どの得意先へどこまで転嫁するかを決めるのは会社側です。
得意先への価格改定案内文もAIで出し分ける
仕入価格を見直した後に負担になりやすいのが、得意先への価格改定案内です。価格表を変更するだけでなく、なぜ改定するのかを説明しなければならないからです。ここでもAIを活用できます。
値上げ案内文は全社同じにしない
すべての得意先へ同じ文章を送る方法もありますが、重要顧客や値上げ幅が大きい取引では、少し表現を変えたほうがよいでしょう。例えば、取引量、取引年数、値上げ幅、自社で吸収した割合、営業担当者が事前説明するか、などによって文章を変えます。
AIへ渡す情報
- 得意先との取引年数
- 対象商品
- 値上げ幅
- 適用日
- 仕入価格改定の背景
- 自社で吸収した部分があるか
- 事前説明の有無
- 文面の丁寧さ
ここで注意したいのは、機密性の高い顧客情報や契約情報を外部AIサービスへ入力する場合です。利用するAIサービスのデータ取扱条件や社内ルールを確認し、必要に応じて社名や担当者名を伏せて作成します。
例文1|標準的な価格改定
平素より弊社商品をご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび、仕入先からの価格改定に伴い、誠に恐縮ではございますが、一部商品の販売価格を改定させていただくこととなりました。
弊社におきましても、これまで価格維持に努めてまいりましたが、仕入価格の上昇を自社努力のみで吸収することが難しい状況となっております。
つきましては、○月○日より新価格を適用させていただきます。
今後も安定した商品供給とサービス向上に努めてまいりますので、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
例文2|長年取引している重要顧客
平素より長年にわたりお取引をいただき、誠にありがとうございます。
このたび仕入先より価格改定の通知があり、弊社でも可能な範囲で価格上昇分の吸収を続けてまいりました。
しかし、現在の価格を維持することが難しくなったため、誠に心苦しいお願いではございますが、○月○日より一部商品の価格を改定させていただきたく存じます。
今回の改定については、仕入価格の上昇分をそのまま反映するのではなく、弊社でも一部を負担したうえで改定幅を設定しております。
今後も安心してお取引いただけるよう努めてまいりますので、事情をご賢察のうえ、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
例文3|値上げ幅が大きく、事前説明を行う場合
平素より弊社商品をご利用いただき、誠にありがとうございます。
先に担当者よりご説明させていただきましたとおり、仕入先による大幅な価格改定に伴い、対象商品の販売価格を見直すこととなりました。
弊社としても価格維持に向けた調整を行ってまいりましたが、現行価格での継続が難しい状況となっております。
そのため、○月○日より改定後の価格を適用させていただきます。
お客様にはご負担をお願いすることとなり大変恐縮ですが、今後も安定供給とサービス品質の維持に努めてまいります。ご不明な点がございましたら、担当者までお問い合わせください。
AIを使えば、こうした基本文面をもとに、「もう少し柔らかく」「長年取引のある顧客向けに」「営業担当が口頭説明した後に送る文章に」と調整できます。ただし、価格や契約条件の事実関係は必ず人が確認してください。
適用日を管理しないと「更新済みなのに旧単価」が起きる
価格改定で見落としやすいのが適用日です。値上げ通知を受け取った日と、新価格が始まる日は通常異なります。
通知日と適用日は別物
例えば、7月15日に値上げ通知を受領し、9月1日から新価格適用というケースがあります。7月に販売管理マスタを新価格へ変更してしまうと、8月中の仕入まで高い単価で処理する可能性があります。逆に9月になってから変更しようとして忘れると、旧単価のままになります。
そのため、価格改定一覧には必ず「通知日」と「適用日」の両方を持たせます。
受注日基準か出荷日基準かを確認する
同じ10月1日改定でも、「10月1日受注分から」「10月1日出荷分から」「10月1日納品分から」では処理が異なります。AIに「適用日」だけを抽出させるのではなく、「適用条件」も別列で記録します。
改定予定一覧を月単位で持つ
価格改定一覧には「今月対応分」だけでなく、今月、翌月、翌々月程度まで表示できると便利です。例えば9月の月次確認時に「10月1日適用の価格改定が5件ある」と分かれば、月末までに準備できます。
月次チェック表で仕入単価の更新漏れを防ぐ
AIを導入しても、最後は運用が重要です。価格改定通知をAIで一覧化できても、担当者がその後の更新状況を管理していなければ更新漏れはなくなりません。そこで、月1回でもよいのでチェック表を確認します。
| 確認項目 | 主な担当 | 確認内容 | 完了 |
|---|---|---|---|
| 値上げ通知登録 | 事務 | 今月届いた通知を一覧へ登録したか | □ |
| AI読み取り | 事務 | 品目・新単価・適用日を確認したか | □ |
| 商品コード照合 | 商品担当 | 自社商品コードと紐付いたか | □ |
| 仕入マスタ更新 | 管理担当 | 更新CSVを反映したか | □ |
| 売価見直し | 営業 | 得意先別売価を確認したか | □ |
| 改定案内 | 営業 | 対象得意先へ案内したか | □ |
| 適用日確認 | 管理担当 | 翌月以降の改定予定を確認したか | □ |
「通知を受けた」ではなく「反映完了」で管理する
ステータスを「未処理」「処理済み」だけにすると、途中の状態が分かりません。おすすめは「通知受領」「AI読取済」「商品照合済」「仕入更新済」「売価確認済」「顧客案内済」「完了」と分ける方法です。これなら「仕入価格は更新したが、顧客案内が残っている」といった状態が見えるようになります。
AIを使った仕入単価更新で失敗しやすいポイント
AIが読み取った数字をそのまま登録する
最も避けたい使い方です。AIは読み取り間違いをすることがあります。価格改定では1桁違うだけでも影響が大きいため、少なくとも更新前後の単価差は人が確認します。例えば、値上げ率が通常5〜10%程度なのに、ある商品だけ300%になっていれば、読み取りミスを疑えます。こうした異常値チェックをExcelへ入れておくのも有効です。
商品名だけでマスタを紐付ける
似た商品名を誤って更新する可能性があります。商品コード、仕入先コード、規格など複数の情報で確認します。
単位違いを見落とす
1本と1箱を間違えると、単価が大きく変わります。商品コードと同じくらい単位確認は重要です。
得意先別特価まで一括変更する
標準売価と得意先別特価を同じルールで更新すると、契約条件を壊す恐れがあります。特価は自動更新ではなく「確認対象」とします。
更新担当者と確認担当者が同じ
人数の少ない会社では完全に担当を分けるのが難しい場合もあります。その場合でも、「午前中に更新したデータを午後に再確認する」「更新担当者が一覧を作り、営業責任者が売価だけ確認する」など、確認工程を分けます。
小さく始めるなら1社の値上げ通知から試す
仕入先が50社あるからといって、最初から50社すべてをAI化する必要はありません。むしろ、一部から試したほうが失敗しにくくなります。
最初から全仕入先を対象にしない
まずは、値上げ通知がPDFで届く、商品コードが明確、表形式が比較的整っている仕入先を1社選びます。
改定品目20〜50件程度で試す
最初は数百件ではなく、20〜50件程度で試します。人が従来どおり入力した場合と、AIで一覧化した場合を比較すると効果を把握しやすくなります。
AIの読み取り精度と人の確認時間を測る
見るべきなのは「AIが使えたか」ではありません。例えば、「従来60分かかっていた転記が15分になった」「50商品中48商品は正しく読み取れた」「適用条件だけは人の確認が必要だった」というように、具体的に評価します。
CSV取込が難しい会社はExcel一覧化だけでも効果がある
販売管理システムによっては、一括CSV更新に対応していない場合があります。その場合でもAI活用を諦める必要はありません。AIで価格改定通知をExcel一覧へまとめ、「どの商品を、いつ、いくらへ変更するか」が整理されるだけでも大きな改善です。担当者が販売管理システムへ手入力する場合でも、通知書を何度も開いて確認する必要がなくなるからです。
仕入値上げへのAI活用は「自動化」より「更新漏れを見える化する」ことから始める
仕入先の値上げ対応というと、「AIで全部自動更新できないか」と考えたくなるかもしれません。しかし、中小卸売業では、販売管理システム、得意先別Excel、特価、年間契約、営業担当者ごとの判断などが混在しています。
すべてを一気に自動化しようとすると、仕組みが複雑になりやすくなります。最初に目指すべきなのは完全自動化ではありません。どの値上げ通知が届き、どの商品が対象で、いつから変わり、仕入と売価のどこまで反映できたのかを見える状態にすることです。
そこまで整理できれば、その後にCSV連携やExcel自動計算などを追加していけます。
まとめ|値上げ対応は「通知→仕入→売価→顧客案内」を一本につなぐ
仕入先から値上げ通知が届いたとき、最も避けたいのは旧単価のまま販売し続けることです。特に中小の卸売業や商社では、販売管理システムだけで価格管理が完結せず、得意先別売価や特価をExcelで管理しているケースがあります。
その場合、仕入マスタを更新しただけでは価格改定対応は終わりません。AIを使うなら、まずはPDF・FAX・メールで届く値上げ通知から、品目、旧単価、新単価、適用日、適用条件を一覧化します。
1. 自社商品コードと照合する
2. 仕入マスタ更新CSVを作る
3. 得意先別売価を見直す
4. 特価・契約価格は人が判断する
5. 得意先へ価格改定を案内する
6. 月次チェック表で完了を確認する
AIに価格判断そのものを任せる必要はありません。AIは大量の通知を整理する一次処理、人は商品・契約・売価の最終判断と役割を分けることで、今使っている販売管理システムやExcelを残したままでも改善できます。
仕入値上げが増えている会社ほど、「通知書を読む時間」だけを見るのではなく、「最終売価まで反映できているか」を確認できる仕組みを作ることが重要です。
よくある質問
Q1.仕入先から届いた値上げPDFをAIへ入れるだけで自動更新できますか?
完全自動更新よりも、まずAIで「商品名・旧単価・新単価・適用日」を抽出し、人が確認してから更新する方法がおすすめです。商品コードや単位、適用条件をAIが誤認する可能性があるため、販売管理システムへ直接反映する前に確認工程を設けてください。
Q2.FAXの値上げ通知でもAIで読み取れますか?
画像やPDFとしてデータ化できれば読み取りに利用できる場合があります。ただし、文字がかすれているFAXや手書き、複雑な表は誤認識しやすいため、人による確認が必要です。
Q3.仕入単価が上がったら売価も同じ割合で上げればよいですか?
必ずしもそうではありません。得意先ごとの掛率、目標粗利率、特価、年間契約、競合価格などを考慮する必要があります。AIには新売価候補の計算や対象得意先の抽出を任せ、最終的な売価は人が判断するのが安全です。
Q4.販売管理システムがCSV一括更新に対応していなくてもAIは使えますか?
使えます。値上げ通知をAIで一覧化するだけでも、通知書を一件ずつ確認して手入力する負担を減らせます。更新用一覧を作り、その一覧を見ながら販売管理システムへ入力する方法でも十分改善できます。
Q5.仕入価格や得意先情報を生成AIへ入力しても大丈夫ですか?
利用するAIサービスのデータ利用条件や会社の情報管理ルールによって異なります。仕入価格、契約条件、顧客情報などは機密情報に該当する可能性があるため、利用前に社内ルールとサービス側のデータ取扱条件を確認してください。必要に応じて社名や顧客名を匿名化して利用します。
ご相談・お問い合わせ
仕入先の値上げ対応は、大規模な販売管理システムの入れ替えをしなくても改善できる場合があります。
現在使っている販売管理システムやExcelを確認しながら、AIで読み取れる部分、CSVで更新できる部分、Excel計算で自動化できる部分、人が判断すべき売価や契約条件を分けることが重要です。
「毎月の値上げ通知を処理しきれない」「仕入単価は更新したのに売価の変更が漏れる」「どの商品で粗利が落ちているか分からない」という場合は、まず現在の値上げ対応フローを整理するところから始めてみてください。
相談時には、実際の値上げ通知1〜2件、現在使用している得意先別単価Excel、販売管理システムから出力できるCSVなどがあると、改善できる範囲を具体的に整理しやすくなります。
