社員12名の商社では、システムが3つあるのに手入力が減らない
社員12名ほどの商社を想定してみます。
売上や仕入、請求、在庫は販売管理システムで管理しています。得意先ごとの販売単価や掛率はExcel。営業案件や訪問履歴はkintoneです。
一見すると、十分にデジタル化されている会社に見えます。ところが、朝一番に事務担当者がする仕事は、FAXやメールで届いた注文書を見ながら販売管理システムへ入力することです。
注文書に商品名が正式名称で書かれていなければ、過去の注文や得意先別のルールを確認します。営業から見積依頼が来れば、販売管理システムだけでは価格が決まらないため、得意先別単価のExcelを開きます。
在庫数は販売管理システムで確認できますが、「そろそろ発注した方がよい商品」は担当者のExcelや経験で判断しています。営業担当者は外出先で商談をしたあと、帰社してからkintoneへ案件情報や日報を入力します。
月末になると、経理担当者はネットバンクから明細をダウンロードし、売掛一覧と見比べながら入金消込を進めます。つまり、システムはあるのに、人がシステムとシステムの間をつないでいます。
| この記事の結論 販売管理システムをAIへ置き換えることではありません。販売管理システム、Excel、kintone、メール、FAXなどの間に残っている「継ぎ目」を減らすことです。 |
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卸売業のAI活用というと、需要予測や高度なデータ分析を想像するかもしれません。しかし、社員10〜30名ほどの会社では、もっと手前に減らせる仕事があります。
受注内容を打ち直す。得意先別単価を探す。同じ案件情報を別のシステムへ入れる。入金明細と売掛一覧を見比べる。営業日報を書く。こうした毎日の小さな手作業を見直した方が、AI導入の効果を実感しやすいケースがあります。
この記事では、卸売業・商社の仕事を「基幹システムで処理する部分」と「基幹システムに入りにくい部分」に分け、どこからAI活用を始めるべきかを整理します。各業務の詳しい設定方法や操作手順には踏み込みません。この記事では全体像と順番をつかみ、自社で最初に減らす仕事を決めることを目的とします。
卸売業のAI活用は「基幹を変える」より「継ぎ目を減らす」ことから始める

結論から言えば、卸売業でAIを導入するために、今使っている販売管理システムを最初から入れ替える必要はありません。むしろ、長年使っている基幹システムはそのまま残した方がよい会社も多くあります。
ここでいう基幹システムとは、売上、仕入、請求、在庫など、会社の中心となる取引データを管理しているシステムのことです。こうしたシステムを変更すると、商品マスタ、得意先マスタ、請求処理、会計との連携など、多くの部分に影響が出ます。
そのため、「AIを使いたいから基幹システムを変える」という発想から始める必要はありません。先に見るべきなのは、基幹システムの外側です。
卸売の仕事には「基幹で処理する部分」がある
販売管理システムが得意なのは、決まった形式のデータを正確に管理することです。
- 売上伝票
- 仕入伝票
- 請求
- 入金
- 商品マスタ
- 得意先マスタ
- 在庫数
ここは会社の数字につながる重要な領域なので、正確性や再現性が求められます。すでに販売管理システムで安定して動いているのであれば、その役割までAIへ置き換える必要はありません。
一方で「基幹に入りきらない仕事」が大量に残る
卸売業や商社では、得意先ごとに取引のやり方が違います。たとえば、「A社にはケース単位で販売する」「B社は商品名を独自の略称で注文してくる」「C社には通常価格ではなく個別単価を適用する」「D社の案件は営業担当者が個別に進捗管理している」といった例です。
こうした情報は、きれいにマスタ化できないことがあります。その結果、得意先別単価Excel、営業担当者のメモ、kintoneの案件管理、過去のメール、FAX注文書、紙の資料などに情報が分散します。
| 問題の本質 Excelやkintoneを使っていることではありません。基幹システムに入らない情報を、人が毎回探し、読み、判断し、別の場所へ入力していることです。 |
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AIが入りやすいのは、その間にある「継ぎ目」
AIは、すべての業務を置き換えるために使う必要はありません。効果が出やすいのは、人がシステム間の橋渡しをしている部分です。
FAX注文書を読む。メール本文から商品名と数量を探す。営業担当者が話した内容を文章にする。得意先別単価の候補を探す。銀行明細と売掛一覧の一致候補を探す。こうした「読む・探す・整理する・候補を出す」という作業は、AIを組み合わせやすい領域です。
逆に、確定した売上データを別システムへそのまま移すだけなら、AIよりもCSV連携やAPI連携などの仕組みが向いている場合があります。この違いを理解することが、卸売業のAI活用では重要です。
なぜ販売管理システムを導入してもExcel・kintoneがなくならないのか
「せっかく販売管理システムを入れているのに、なぜExcelが残るのか」と感じる経営者もいるでしょう。しかし、Excelが残っていること自体が失敗とは限りません。卸売業では、標準化しやすい仕事と、個別対応が必要な仕事が混在しているからです。
得意先ごとの例外をすべて基幹へ入れるのは難しい
得意先によって、単価、掛率、商品名、注文単位、締め条件、納品方法などが異なる会社では、例外ルールが増えていきます。すべてを販売管理システムへ登録しようとすると、設定が複雑になりすぎることがあります。
結果として、「正式な情報は販売管理システム」「営業が使う単価表はExcel」という運用になります。これは必ずしも間違いではありません。問題は、両方の情報を人が何度も確認しなければならないことです。
営業案件や現場情報は販売管理システムだけでは管理しにくい
販売管理システムは、受注や売上になった取引を管理することには向いています。一方で、まだ受注していない案件、商談中の情報、訪問履歴、次回提案予定、得意先から聞いた要望、競合との比較状況などは、営業管理ツールやkintoneなどの方が管理しやすい場合があります。
そのため、販売管理システムと案件管理システムが並行して使われます。問題になるのは、同じ顧客名や案件内容を両方へ入力している場合です。
問題はExcelそのものではなく「同じ情報を何度も入れること」
「AIを導入するならExcelをなくさなければならない」と考える必要はありません。現場にとってExcelが使いやすく、現在の業務に合っているなら、残しても構いません。
見直したいのは、誰かが同じ情報を何度も入力していないかという点です。Excelをなくすことより、Excelにある情報を別のシステムへ手入力する作業をなくす。販売管理システムの数字を別のExcelへコピーする作業をなくす。営業が一度話したことを、日報と案件管理へ二重に入力する作業をなくす。こうした改善の方が現実的です。
卸売業で最初に作る「継ぎ目の棚卸し表」

AIツールを選ぶ前に、まず業務の「継ぎ目」を棚卸しします。ポイントは、システム名から考えないことです。「ChatGPTを何に使えるか」「kintoneと何を連携できるか」から始めるのではなく、今、人がどこからどこへ情報を移しているかを確認します。
卸売業・商社では、まず次の6業務を見ると整理しやすくなります。
| 業務 | どこで詰まるか | 基幹外で使うもの | AIで減らすか | 連携で消すか |
|---|---|---|---|---|
| 受注 | FAX・メール注文を販売管理へ打ち直す | PDF・メール・Excel | 注文内容の読み取り・整理をAIで補助 | CSV等で販売管理へ取り込む |
| 見積 | 得意先別単価や過去価格を探す | 単価Excel・過去見積 | 単価や見積項目の候補作成をAIで補助 | マスタやデータ連携を検討 |
| 在庫 | 在庫数は分かるが発注判断が担当者依存 | Excel・担当者メモ | 過去実績の整理や発注候補抽出をAIで補助 | 在庫・受注データの連携 |
| 請求・消込 | 名義違い・合算入金・手数料差引を照合 | ネットバンクCSV | 一致候補の抽出をAIで補助 | 入金データとの連携 |
| 営業 | 日報や商談情報の入力が後回し | kintone・メモ | 音声の文字起こし・要約をAIで補助 | 案件管理への登録を連携 |
| 仕入 | 仕入値上げを販売価格へ反映するのが大変 | メール・Excel | 値上げ内容や変更箇所の抽出をAIで補助 | マスタ更新との連携 |
この表で重要なのは、「全部AIで解決する」と考えないことです。同じ業務の中でも、AIで減らした方がよい部分と、システム連携で完全になくした方がよい部分があります。
たとえば、FAX注文書から商品名や数量を読み取る部分はAIが役立つ可能性があります。しかし、読み取って確定したデータを販売管理システムへ毎回コピーするだけなら、その部分はCSV取込などで消せるかもしれません。
| AIと連携の考え方 AIと連携は競合するものではありません。「AIで情報を整え、連携で移す」という組み合わせが適している業務もあります。 |
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AIで減らす仕事と、システム連携で消す仕事は分けて考える
卸売業でAI活用を失敗しにくくするには、「AIが向く仕事」と「普通のシステム連携が向く仕事」を分ける必要があります。
曖昧な情報を読む仕事はAIが向いている
AIが役立ちやすいのは、入力される情報の形が毎回違う仕事です。
- FAX注文書
- メール本文
- 営業担当者の音声
- 得意先からの自由記述
- 過去の商談メモ
人は、こうした情報を読んで意味を理解し、必要な部分を抜き出しています。AIは、この「読む」「まとめる」「分類する」「候補を作る」という部分を補助できます。ただし、AIの出力が常に正しいとは限りません。商品名、数量、単価、金額など、取引に直接影響する情報は人による確認を残すことが重要です。
同じ形式のデータを移す仕事は連携で消す
一方で、「Aシステムにある商品コードをBシステムにも入れる」「確定したCSVを販売管理システムへ取り込む」というような仕事では、AIを使う必要がない場合があります。
このような定型処理は、CSV連携やAPI連携などで自動化できる可能性があります。CSVとは、表形式のデータをシステム間で受け渡すためによく使われるファイル形式です。APIは、システム同士が直接データを受け渡すための仕組みと考えると分かりやすいでしょう。
| 経営者が覚えておく判断軸 判断が必要なところはAI、ただ移すだけのところは連携。 |
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「AIですべて自動化」が正解ではない
AI導入の提案を受けると、「完全自動化」という言葉に魅力を感じるかもしれません。しかし、卸売業では得意先ごとの例外が多く、すべてを無人化することが最適とは限りません。
たとえば注文処理でも、AIが注文書を読む。商品名や数量の候補を整理する。事務担当者が確認する。確定後、販売管理システムへ取り込む。という形でも十分に効果があります。これまで10分かけて入力していた作業が、確認だけになるのであれば、それも立派な業務効率化です。
卸売業でAI活用を進める順番は「受注転記→見積→在庫→消込→営業日報」
社員10〜30名ほどの卸売業・商社であれば、基本的には次の順番で検討すると整理しやすくなります。
- 1.受注転記
- 2.見積
- 3.在庫
- 4.入金消込
- 5.営業日報
もちろん、会社によって優先順位は変わります。ただし、最初は「毎日発生する」「件数が多い」「成果を確認しやすい」仕事から始める方が、社内へ定着させやすくなります。
1番目:受注転記
最初に確認したいのは、FAXやメールで届く注文を販売管理システムへ打ち直している仕事です。受注は毎日発生し、商品名確認、商品コード検索、数量入力、納期確認などが繰り返されます。ここで1件数分の作業を減らせれば、件数が増えるほど効果が積み上がります。また、作業内容が見えやすいため、AI導入の変化を社内で共有しやすい業務です。
別記事「FAX・メール受注を販売管理システムに打ち直す仕事をなくす」で詳しく解説します。
2番目:見積
卸売業では、販売管理システムに標準価格があっても、得意先ごとに単価や掛率が違うケースがあります。「前回価格はいくらだったか」「何掛けで出していたか」と探す時間が発生します。AIに価格を勝手に決めさせるのではなく、過去見積や単価表から候補を整理させ、人が最終判断する使い方が現実的です。
詳しくは「卸売の見積属人化をAIで解く」で解説します。
3番目:在庫
小規模な卸売業では、いきなり高度な需要予測システムを導入しなくても改善できることがあります。「何個になったら発注するか」「季節によって発注点を変えるべきか」といった判断が担当者の経験に残っていることがあるからです。まずは過去の出荷実績や発注履歴を整理し、現在の発注点を見直します。
詳しくは「卸売の在庫ズレと発注点AI」で解説します。
4番目:入金消込
入金消込とは、銀行へ振り込まれた金額と、どの請求に対する入金なのかを照合する仕事です。振込名義が会社名と違う、複数請求をまとめて振り込む、振込手数料を差し引くなど、単純一致しないケースがあります。AIに完全自動で確定させるのではなく、一致する可能性が高い候補を先に出し、人が確認するだけでも作業量を減らせます。
詳しくは「ネットバンク明細と売掛の突合をAIで」で解説します。
5番目:営業日報
営業日報はAIとの相性がよい業務ですが、会社全体では受注入力や見積の方が時間削減効果が大きい場合があります。一方、営業担当者の入力不足で案件情報が残らない会社では、優先順位を上げてもよいでしょう。目指したいのは、営業担当者に長い日報を書かせるのではなく、スマートフォンに話してもらうことです。
詳しくは「ルート営業日報を音声AIで」で解説します。
受注では「打ち直す作業」を最初に疑う
卸売業の受注には、FAX、メール、電話、EDI、Web発注など複数の入口があります。ここで重要なのは、受注チャネルそのものをすぐに一本化しようとしないことです。大口得意先はEDI、小口得意先はFAX、別の得意先はメールというように、相手の都合で受注方法が決まっていることがあります。
その場合、入口を無理に一つにするより、「入口は複数のままでも、社内へ入った後のデータ形式をそろえる」という考え方があります。AIで注文内容を読み取り、必要な情報を整理する。人が確認する。販売管理システムへ取り込む。このように、得意先側の運用を変えずに社内作業だけを減らす方法も検討できます。
受注チャネル全体の整理については、別記事で詳しく解説します。
見積では得意先別単価Excelを捨てる必要はない
見積業務を改善しようとすると、「得意先別単価Excelを廃止して全部マスタ化しましょう」という話になりがちです。しかし、現場でそのExcelが長年使われており、得意先ごとの細かな条件まで整理されているのであれば、無理に捨てる必要はありません。
大切なのは、そのExcelを一部のベテランだけが理解している状態を変えることです。どの得意先に、どの商品を、過去いくらで、どの条件で見積したかを探しやすくしておけば、見積の属人化を減らせます。AIの役割は、最終販売価格を勝手に決めることではありません。過去データから候補を出し、担当者が判断しやすくすることです。価格決定は利益に直結するため、人による確認を残す方が安全です。
在庫ではAIに「未来の在庫数」を当てさせることから始めない
「AIを使えば需要予測ができる」という話を聞いたことがある経営者も多いでしょう。確かに、十分なデータがあり、商品数や取引量が多ければ、高度な予測の価値が出る場合があります。しかし、小規模な卸売業で最初から大規模な需要予測を目指す必要はありません。
- 在庫数はどこにあるか
- 発注判断は誰がしているか
- 発注点は何を基準に決めているか
- Excelと基幹の在庫数にズレがないか
- 長期間動いていない商品は把握できているか
AIは、過去の出荷実績や在庫推移を整理し、「この商品の発注点を見直した方がよさそうだ」という候補を探す補助として使えます。未来を完璧に当てることより、今ある判断基準を見える化する方が先です。
入金消込は「完全自動化」より候補を出させるだけでも効果がある
入金消込は、経理担当者の経験に依存しやすい業務です。「この名義なら○○株式会社だろう」「この金額は請求書2枚分をまとめたものだろう」と、人が過去の取引を思い出しながら処理していることがあります。
この仕事では、完全自動化を最初の目標にすると難易度が上がります。そこで、銀行明細と売掛一覧を比較し、一致する可能性が高いもの、複数請求の合計と一致しそうなもの、手数料差引の可能性があるものを候補として整理する方法が考えられます。人はゼロから探すのではなく、候補を確認するだけになります。
| 共通する考え方 「探す仕事を確認する仕事に変える」という考え方は、卸売業のAI活用全体に共通します。 |
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営業日報は「入力させる」のではなくスマホで話してもらう
営業担当者へ新しいAIツールを導入するとき、最も避けたいのは入力作業を増やすことです。経営者は「情報を残してほしい」と考えますが、営業担当者からすると、訪問、見積、電話対応のあとにさらに日報を書く状態になっています。
営業はスマホで話すだけ
訪問後に、「A社を訪問。新商品の見積依頼あり。数量は月200程度。来週火曜日までに見積提出。競合も提案中」とスマートフォンへ話します。長い文章を書く必要はありません。
AIが商談内容を整理する
音声をAIで整理し、訪問先、商談内容、次回対応、見積期限、確認事項などに分けます。
事務担当者が確認する
重要なのは、営業担当者にすべて確認・修正させないことです。AIが整理した内容を事務担当者や営業事務が確認し、必要な情報だけ案件管理へ残します。こうすれば、「営業は話すだけ、事務は確認するだけ」という役割分担に近づきます。
kintoneと販売管理システムの二重入力はAIだけで解決しない
販売管理システムとkintoneを併用している会社では、二重入力が発生することがあります。ただし、この問題をすべてAI転記で解決するのが正解とは限りません。
AI転記が向いているケース
入力元がメール、PDF、自由記述、営業メモ、音声など、毎回形が違う場合です。AIで必要な項目を整理してから登録する方法が考えられます。
CSV連携が向いているケース
毎回同じ列のExcelやCSVから同じ項目を移しているのであれば、AIを使わずCSV連携で十分なことがあります。
システム連携を検討すべきケース
毎日大量に同じ情報を双方向で更新するのであれば、APIなどを使ったシステム連携を検討した方がよいケースがあります。重要なのは「AIを使うこと」ではありません。人が手で入力しなくてよい状態を作ることです。AI、CSV、APIのどれを使うかは、そのための手段にすぎません。
具体的な比較は「kintoneと基幹の二重入力をなくす方法」で詳しく解説します。
AIに入力してよい情報・避けるべき情報を社内で決める
卸売業のAI活用では、情報管理も重要です。特に、顧客情報、担当者情報、得意先別単価、原価、見積、注文内容、契約情報、社外秘資料などを扱う可能性があります。これらを、社内ルールなしで外部のAIサービスへ入力するのは避けるべきです。
顧客情報・単価・注文情報を無条件に入力しない
「AIなら何でも入れてよい」という考え方は危険です。個人情報、機密情報、取引条件など、扱いに注意が必要な情報を整理します。
利用するAIの契約・データ利用条件を確認する
AIサービスによって、法人向けのデータ管理や利用条件は異なります。導入前に、入力データがどのように扱われるのか、管理機能はあるのかを確認してください。サービス内容や契約条件は変更される可能性があるため、最新の公式情報を確認することが重要です。
社内ルールと人による確認を残す
最低限、「入力してよい情報」「入力してはいけない情報」「AIの結果をそのまま使ってよい業務」「必ず人が確認する業務」を決めます。特に単価、請求、発注、契約など、金額や取引条件に影響する情報は、人による最終確認を残した方が安全です。
卸売業のAI導入で補助金を検討するときの考え方
AIや業務効率化ツールを導入する際、補助金を検討する企業もあります。ただし、AIを導入するから自動的に補助対象になるわけではありません。
- 対象となる事業者
- 対象ツール
- 対象経費
- 契約期間
- 申請時期
- 交付決定前後の手続き
また、一般に販売されているプランと、補助対象として登録されているプランが異なる場合もあります。そのため、補助金ありきでAIツールを選ぶより、まず「どの業務を減らしたいのか」「どのシステムとの継ぎ目を改善したいのか」を決め、その後に対象になる制度やツールを確認する方が進めやすくなります。
制度内容や対象範囲は変更される可能性があります。申請を検討する場合は、最新の公募要領や事務局情報、対象ツールの登録内容を確認してください。採択や補助を保証するものではありません。
卸売業のAI活用で失敗しやすい3つの進め方
最初から基幹システムを全部入れ替える
「AIを使うためには新しい販売管理システムが必要だ」と考え、最初から大規模刷新を始めると、プロジェクトが重くなります。社員10〜30名規模の会社では、日常業務を止めずに移行する負担も大きくなります。現在の販売管理システムが安定しているなら、まず外側にある手作業を改善する方が現実的です。
AIですべて自動化しようとする
AIには間違いがあります。特に商品名、数量、金額、得意先、納期などの情報を誤ると、実際の取引へ影響します。最初は「AIに確定させる」ではなく、「AIに候補を作らせる」という設計から始める方が安全です。
現場へ新しい入力作業を増やす
新しいシステムを導入した結果、「これまで販売管理だけに入れていた情報を、今後はAIツールにも入力してください」となってしまえば、現場の負担は増えます。AI活用の目的は、新しい入力先を増やすことではありません。既存の入力を減らすことです。現場へお願いする作業は、できるだけ少なくします。
最終的に目指すのは「営業は話すだけ、事務は確認するだけ」
卸売業・商社のAI活用で目指したいのは、社員全員が高度なAIツールを使いこなす会社ではありません。社員10〜30名ほどの会社であれば、もっとシンプルな形で十分です。
- 営業担当者 → スマホで話す
- AI → 内容を読む・整理する・候補を作る
- 事務担当者 → 内容を確認する
- 販売管理システムやkintone → 必要な情報だけ残す
同じ考え方は受注にも使えます。FAXやメールを事務担当者が一から入力するのではなく、AIが読み取った候補を確認する。見積でも、一から過去資料を探すのではなく、AIが候補として整理した情報を確認する。入金消込でも、一件ずつ照合するのではなく、AIが出した一致候補を確認する。
| AI活用の本質 「入力する人を減らす」ことより、「入力という作業そのものを減らす」ことにあります。 |
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まとめ|卸売業のAI活用はシステムではなく「継ぎ目」を見る
卸売業のAI活用を考えるとき、最初からAIツールを探す必要はありません。まず自社の仕事を、「基幹システムで処理する仕事」と「基幹システムに入りきらない仕事」に分けてください。そして、その間を誰かが手作業でつないでいないか確認します。
- FAX・メール受注の転記
- 得意先別単価を探す見積
- 在庫と発注判断の分離
- 銀行明細と売掛の消込
- 営業日報
- 仕入値上げの単価更新
- kintoneと販売管理システムの二重入力
そのうえで、曖昧な情報を読む・整理する仕事はAIで減らす。決まったデータを移すだけの仕事はシステム連携で消す、という考え方で整理します。
取り組む順番は、基本的に「受注転記→見積→在庫→消込→営業日報」です。ただし、自社で最も件数が多く、最も時間がかかっている業務が別にあるなら、そこから始めても構いません。
AI導入の目的は、販売管理システムを新しくすることでも、社員全員にAIを使わせることでもありません。「営業はスマホで話すだけ。AIが整理し、事務担当者は確認するだけ。」そこまで仕事を単純にできれば、少人数の卸売業・商社でも、既存の基幹システムを残したまま業務効率化を進められます。
まずは、「誰が、どの情報を、どこからどこへ手で移しているか」を一度書き出すところから始めてみてください。
よくある質問
Q1.卸売業でAIを導入するなら、販売管理システムも入れ替える必要がありますか?
必ずしも必要ありません。現在の販売管理システムが安定して稼働しているなら、まずはFAX・メール受注の転記、Excelとの二重入力、営業日報、入金消込など、基幹システムの周辺に残る手作業を見直す方が現実的です。既存システムを残しながら、AIやCSV連携などを組み合わせる方法も検討できます。
Q2.卸売業ではどの業務からAI活用を始めるのがおすすめですか?
一般的には、毎日発生し、件数が多く、効果を確認しやすい受注転記から検討しやすいでしょう。その後、見積、在庫、入金消込、営業日報の順で棚卸しすると整理しやすくなります。ただし、自社で最も時間がかかっている仕事が別にある場合は、その業務を優先してください。
Q3.AIを使えばExcelやkintoneをやめられますか?
やめること自体を目的にする必要はありません。Excelやkintoneが現場に合っているなら、そのまま使いながら、二重入力や転記だけを減らす方法があります。重要なのはツール数を減らすことではなく、人が同じ情報を何度も入力する状態を減らすことです。
Q4.得意先別単価や注文情報をAIへ入力しても大丈夫ですか?
無条件に入力するのは避けた方がよいでしょう。利用するAIサービスの契約条件、データ利用方針、管理機能などを確認し、社内で入力してよい情報と避ける情報を決める必要があります。特に顧客情報、単価、原価、契約情報、個人情報などは慎重に扱ってください。
Q5.卸売業のAI導入に補助金を使えますか?
利用できる可能性はありますが、AIであれば自動的に補助対象になるわけではありません。対象事業者、対象ツール、対象経費、申請時期などは制度ごとに異なります。制度内容は変更される場合があるため、申請前に最新の公募要領、事務局情報、対象ツールの登録状況を確認してください。
ご相談・お問い合わせ
販売管理システムをすでに導入していても、Excel・kintone・FAX・メールとの間に手作業が残っていれば、まだ減らせる仕事があるかもしれません。
「AIを導入するか」から考える必要はありません。まずは、どの情報を、誰が、どこから、どこへ、何回入力しているかを整理すると、自社で改善すべき「継ぎ目」が見えてきます。
基幹システムを変えずに改善できる範囲、AIを使うべき業務、CSVやシステム連携でなくせる業務、補助金を検討する場合の進め方まで整理したい方は、現在の業務フローをもとにご相談ください。
