AIを導入すれば業務時間を削減できる。生成AIを使えば文章作成や資料作成を効率化できる。
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こうした説明を聞いても、経営者やAI導入担当者としては、もう一歩踏み込んで知りたいのではないでしょうか。
「結局、月に何時間削減できれば元が取れるのか?」
たとえば、AIツールや導入費用、研修費などを合わせて年間60万円かかるとします。
月に3時間削減できれば得なのでしょうか。それとも5時間必要なのでしょうか。
利用者が5人の場合と30人の場合では、採算ラインも大きく変わります。
そこで重要になるのが、AI導入前の費用対効果シミュレーションです。
本記事では、ROIという言葉の定義を詳しく解説することを目的としていません。
対象人数、人件費、現在の作業時間、AI導入後の作業時間、AIツール費など、自社にある数字を使って、
「うちの場合は、1人あたり月○時間削減できれば、このAI導入は元が取れる」
というところまで具体的に計算することを目的としています。
なお、「AI導入の費用相場」が知りたい場合と、「AI導入後にKPIを使って成果測定したい」場合では、考える内容が異なります。
この記事ではあくまで、AIを導入する前に、その投資が成立する可能性を数字で判断する方法に集中します。
AI導入の費用対効果は「何時間削減できれば元が取れるか」で考える

AI導入を検討するとき、「ROIは何%になるのか」と考える企業は少なくありません。
もちろんROIも重要な指標ですが、中小企業のAI導入では、それより先にもっと分かりやすい数字を出すことをおすすめします。
それが、
「何時間削減できれば、AIにかかる費用を回収できるのか」
です。
たとえば、年間60万円かかるAIを10人で利用するとします。
対象者の人件費を1時間3,000円とすると、年間60万円を回収するために必要な削減時間は次のように計算できます。
年間600,000円 ÷ 10人 ÷ 3,000円 ÷ 12か月
=1人あたり月約1.67時間
つまり、単純計算では、10人それぞれが月約1時間40分以上の純粋な業務時間を削減できれば、年間60万円のコストと同等の効果が出ることになります。
このように考えると、
「AIだから導入する」
「周りの会社が使っているから導入する」
という判断ではなく、
自社の業務時間と人件費から投資判断ができるようになります。
ROI率より先に損益分岐となる削減時間を出す
ROIは、一般的には投資に対してどれだけ利益が得られたかを見るための指標です。
しかし、AI導入を検討している現場で、
「ROIが150%です」
と言われても、それだけでは具体的な業務イメージにつながりにくいことがあります。
一方、
「このAIは、営業担当10人が1人あたり月2時間以上削減できれば採算ラインを超えます」
と示せれば、現場でも経営者でも判断しやすくなります。
さらに、
「現在、提案書作成に1人あたり月10時間かかっている。AIで月2時間以上削減できそうか?」
と業務レベルまで落とし込めます。
AI導入の費用対効果は、難しい財務用語だけで考える必要はありません。
まずは、
費用を時間へ置き換える。
これが実務上、非常に使いやすい考え方です。
AI導入費用はツール料金だけではない
費用対効果のシミュレーションで最初に注意したいのが、AIツールの利用料金だけを「AI導入費用」と考えないことです。
実際のAI導入には、さまざまなコストが発生します。
代表的なものは次の5つです。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| AIツール費 | 月額利用料、アカウント費用など |
| 初期導入費 | 初期設定、環境構築、業務への組み込みなど |
| 研修費 | 社員向け研修、教育など |
| 運用費 | 継続的な運用、見直し、サポートなど |
| 社内担当者工数 | 管理者やAI推進担当者が使う時間 |
たとえば、月額3万円のAIツールなら年間36万円です。
しかし実際には、初期導入費10万円、社員研修10万円、運用対応年間10万円が必要になるかもしれません。
この場合、年間AI導入費用は36万円ではなく66万円です。
さらに社内のAI担当者が毎月数時間を運用管理に使うなら、その人件費も本来は考慮した方が正確です。
したがって、年間AI導入費用は次の考え方で整理します。
年間AI導入費用=AIツール費+初期導入費+研修費+運用費+社内担当者工数
特に初年度は、初期設定や教育に時間がかかるため、2年目以降より費用対効果が低く見える場合があります。
そのため可能であれば、初年度と2年目以降を分けてシミュレーションすると、より現実的な判断ができます。
AI導入の費用対効果を計算する基本式
ここから実際に計算してみましょう。
AI導入による業務効率化を金額に換算する場合、基本になるのは次の考え方です。
年間効果額=1人あたり月間削減時間×対象人数×1時間あたり人件費×12か月
たとえば、対象人数10人、1人あたり月5時間削減、人件費3,000円/時間とします。
5時間×10人×3,000円×12か月
=1,800,000円
年間180万円分の業務時間を削減できる計算になります。
もちろん、削減された時間がそのまま現金として戻ってくるわけではありません。
しかし、その時間を、営業活動、顧客対応、商品開発、採用活動、改善活動、残業削減などへ再配分できれば、生産性向上の効果として考えることができます。
年間AI導入費用を計算する
次に、AI導入に必要な年間コストを計算します。
たとえば、AIツール費が年間36万円、初期導入費10万円、研修費10万円、運用費10万円なら、
年間AI導入費用=66万円
です。
年間効果額が180万円なら、
180万円-66万円=114万円
となり、金額換算上では114万円分のプラス効果が期待できる計算です。
何時間削減すれば元が取れるかを逆算する
本記事で特に重要なのはこちらです。
AI導入費用から逆算して、
「最低何時間削減する必要があるのか」
を計算します。
式は次のようになります。
1人あたり月間必要削減時間=年間AI導入費用÷対象人数÷1時間あたり人件費÷12か月
年間AI導入費用が60万円、対象人数が10人、人件費が1時間3,000円なら、
600,000÷10÷3,000÷12
=約1.67時間
です。
つまり、
1人あたり月約1.7時間以上の純削減が期待できる業務なら、単純計算上は採算ラインを超える
という判断ができます。
この数字が分かれば、AI導入の検討は格段に具体的になります。
AI費用対効果の簡易シミュレーション
自社でAI導入の費用対効果を計算する場合、まず次の数字を用意してください。
入力する項目
| 項目 | 入力する数字 |
|---|---|
| 対象人数 | AIを利用する人数 |
| 1人あたり人件費 | 1時間あたりの人件費 |
| 現在の作業時間 | 1人あたり月何時間か |
| AI導入後の想定作業時間 | 月何時間まで減るか |
| AIツール費 | 年間利用料金 |
| 初期導入費 | 初年度に必要な費用 |
| 研修費 | 社員教育に必要な費用 |
| 運用費 | 継続運用に必要な費用 |
STEP1 現在の業務時間を出す
まず対象業務を1つ決めます。
たとえば営業部門の「提案書作成」です。
営業担当10人がそれぞれ月10時間使っているなら、
10時間×10人=月100時間
です。
年間では、
100時間×12か月=1,200時間
になります。
人件費を1時間3,000円とすると、
1,200時間×3,000円=年間360万円
分の人件費が提案書作成に使われている計算になります。
STEP2 AI導入後の業務時間を予測する
AIを使うことで、1人あたり月10時間から月6時間になると仮定します。
1人あたり4時間削減です。
10人なら、
4時間×10人=月40時間削減
年間では480時間削減です。
STEP3 年間効果額を計算する
480時間×3,000円=1,440,000円
年間144万円分の時間削減効果となります。
STEP4 AI導入費用と比較する
年間AI導入費用が60万円なら、
144万円-60万円=84万円
です。
ただし、この段階ではまだ「本当に4時間削減できるのか」を確認する必要があります。
そこで重要になるのが、後ほど説明する純削減時間です。
5人・10人・30人ではどれだけ違う?AI費用対効果シミュレーション
AI導入の費用対効果は、利用人数と削減時間によって大きく変わります。
ここでは、人件費を1時間3,000円として3つのケースを比較します。
| ケース | 対象人数 | 人件費 | 1人あたり月間削減時間 | 年間削減時間 | 年間効果額 |
|---|---|---|---|---|---|
| ケースA | 5人 | 3,000円 | 3時間 | 180時間 | 540,000円 |
| ケースB | 10人 | 3,000円 | 5時間 | 600時間 | 1,800,000円 |
| ケースC | 30人 | 3,000円 | 10時間 | 3,600時間 | 10,800,000円 |
ケースA|5人・月3時間削減
5人がそれぞれ月3時間削減できた場合、
3時間×5人×3,000円×12か月
=540,000円
年間54万円分の効果です。
仮にAI導入総費用が年間60万円なら、この条件ではまだ費用を完全には回収できません。
つまり、「3時間も削減できた」ではなく、年間導入費用と比較すると少し足りないという判断になります。
ケースB|10人・月5時間削減
10人が月5時間削減できれば、
5時間×10人×3,000円×12か月
=1,800,000円
年間180万円分の効果です。
年間導入費用が60万円なら、金額換算上は十分に回収できる可能性があります。
ケースC|30人・月10時間削減
30人が1人あたり月10時間削減できれば、
10時間×30人×3,000円×12か月
=10,800,000円
年間1,080万円分です。
業務時間の削減効果だけを見れば非常に大きくなります。
ただし、利用人数が増える場合はAIツールのアカウント料金も増えることがあります。
そのため、人数が多いほど必ず得になるわけではありません。
対象人数が増えた場合は、ライセンス費、研修費、管理工数、セキュリティ管理、利用状況の把握なども増える可能性があります。
必ず費用側も人数に合わせて見直してください。
「月5時間削減できた」だけではAI導入が得とは限らない

AI導入の費用対効果を考えるとき、最も注意したいのが「削減時間」の定義です。
たとえば、「これまで資料作成に10時間かかっていたが、AIを使えば5時間になった」とします。
これだけを見ると5時間削減です。
しかし、本当にそうでしょうか。
実際にはAIを使うために、AIへ指示を入力する、必要な資料を準備する、AIの出力を確認する、誤りを修正する、表現を調整するといった時間が発生します。
そこで費用対効果を見るときは、単純な削減時間ではなく、純削減時間で考える必要があります。
作業時間ではなく「純削減時間」で考える
考え方は次のとおりです。
純削減時間=従来作業時間-AI利用後の作業時間-AI導入によって追加された作業時間
たとえば、従来10時間、AI利用後4時間、AIへの入力・確認・修正が2時間なら、
10時間-4時間-2時間
=純削減時間4時間
です。
一見すると6時間削減したように見えますが、実質的な効果は4時間です。
AIを使う時間もコスト
AIはボタンを押せばすべて自動で完成するとは限りません。
特に生成AIでは、目的を整理する、指示を作る、参考資料を渡す、出力結果を確認する、不足部分を再度指示するといった作業が必要になります。
この時間を無視すると、費用対効果を過大評価しやすくなります。
チェック時間をゼロにしない
AIの出力には誤りが含まれる可能性があります。
重要な資料や顧客向け文章、契約関連情報、数値を含む資料などでは、人による確認が必要です。
たとえば、従来作成時間60分、AI作成時間15分でも、確認・修正に30分かかるなら、実際の削減は15分です。
「60分が15分になったから45分削減」と計算すると、効果を3倍に見積もってしまいます。
教育・研修時間も考える
AIを導入してすぐに全員が効率的に使えるとは限りません。
AIの基本操作、指示の作り方、自社業務での使い方、情報管理ルール、出力確認方法などを学ぶ時間が必要です。
特に初年度は、この教育時間を導入コストとして見ておくことが重要です。
社内担当者の運用時間も忘れない
AI導入後には、利用ルールの管理、アカウント管理、社員からの相談対応、活用事例の共有、問題発生時の対応などを担当する人が必要になる場合があります。
月10時間を担当者が使っているのであれば、その時間もコストです。
AI導入の効果を正しく見るためには、現場で減った時間だけを見るのではなく、会社全体で増えた時間も見ることが大切です。
どの業務ならAI導入の費用対効果が出やすい?
AI導入の費用対効果は、会社単位ではなく業務単位で計算することをおすすめします。
「会社全体でAIを導入したら何時間削減できるか」では範囲が広すぎるためです。
まずは次のような業務から1つ選びます。
文章作成
生成AIと相性が良い代表的な業務です。
たとえば、メール文面、報告書のたたき台、社内文書、FAQ、SNS投稿案などがあります。
ただし、完成文章をそのまま利用するのではなく、人による内容確認が必要です。
計算するときは、従来作成時間-AI利用時間-確認修正時間で判断します。
議事録
会議録音や文字起こしをもとに、要点整理、決定事項整理、ToDo抽出、要約などをAIで効率化できる場合があります。
たとえば毎週1時間かかっていた議事録作成が20分になれば、1回40分削減です。
月4回なら約2時間40分です。
このように年間効果まで積み上げます。
社内資料作成
会議資料、報告資料、企画書なども対象になります。
資料作成では、文章作成時間だけでなく、情報整理、構成作成、要約、表現調整のどこをAIで短縮できるか分けて考えます。
「資料作成を全部AI化する」のではなく、作業工程のどこに時間がかかっているのかを調べることが重要です。
問い合わせ対応
顧客や社内から同じような問い合わせが多い場合は、回答案作成、FAQ検索、過去回答検索などを効率化できる可能性があります。
1件あたりの削減時間は小さくても、件数が多い業務では年間効果が大きくなることがあります。
たとえば1件3分削減でも、月1,000件なら月3,000分、約50時間です。
頻度の高い業務はAI費用対効果を出しやすい候補になります。
見積・提案書
営業担当者が毎回似た構成の提案書をゼロから作っている場合、構成案、説明文、顧客別提案のたたき台、過去資料の要約などにAIを利用できます。
一方で、最終的な価格、契約条件、顧客固有の内容などは人による確認が必要です。
データ入力・整理
AIや自動化ツールを組み合わせることで、文書から情報抽出、分類、転記、データ整理などを省力化できる場合があります。
ただし、数字や顧客情報など重要データを扱う場合には、精度確認やセキュリティ対策が必要です。
業務別に「現在→AI利用→確認→純削減」で計算する
AI費用対効果を検討するときは、次のような表を業務ごとに作ると判断しやすくなります。
| 業務 | 現在時間 | AI利用後 | 確認等 | 純削減時間 |
|---|---|---|---|---|
| 文章作成 | 10時間 | 4時間 | 2時間 | 4時間 |
| 議事録 | 6時間 | 2時間 | 1時間 | 3時間 |
| 社内資料 | 12時間 | 7時間 | 2時間 | 3時間 |
| 問い合わせ | 20時間 | 12時間 | 3時間 | 5時間 |
| 見積・提案書 | 15時間 | 8時間 | 3時間 | 4時間 |
| データ入力 | 30時間 | 15時間 | 5時間 | 10時間 |
※数値は計算方法を示すための想定例です。実際には自社の業務時間を計測してください。
この表を作ると、「どの業務でAI導入効果が出そうか」が見えてきます。
たとえばデータ入力は月10時間削減できる一方、社内資料作成では3時間しか削減できないかもしれません。
すると、最初にAIを導入すべきなのは社内資料ではなくデータ入力ではないかという判断ができます。
これが、AI導入を「ツール選び」ではなく「業務選び」から考えるということです。
売上アップ型AIの費用対効果はどう計算する?
ここまでは時間削減型のAI導入を中心に説明してきました。
しかしAI活用には、営業支援、マーケティング、問い合わせ対応、顧客フォロー、提案支援など、売上向上を目的とするものもあります。
この場合、「何時間削減できたか」だけでは効果を測れません。
売上ではなく粗利益で考える
売上アップ型では、次のような計算が分かりやすいでしょう。
追加利益=問い合わせ増加数×成約率×平均粗利益
たとえばAI活用によって月20件問い合わせが増えると仮定します。
成約率が20%なら4件成約です。
1件あたり平均粗利益が5万円なら、
4件×5万円=月20万円
年間240万円の追加粗利益です。
AI関連費用が年間100万円なら、差額は140万円となります。
AI導入前後の「差分」で見る
重要なのは、AI利用後の売上全体をAIの効果にしないことです。
たとえば導入前から年間5,000万円売上がある会社が、導入後5,500万円になったからといって、「AIによって500万円増えた」とは限りません。
広告費を増やしたのかもしれません。
営業担当者が増えたのかもしれません。
市場環境が良かった可能性もあります。
そのため、問い合わせ件数、成約率、平均粗利益など、AI導入によって変化が期待される項目を個別に設定します。
AIだけの成果と断定しない
AIをマーケティングや営業に利用する場合、成果は複数の要因から生まれます。
そのため事前シミュレーションでは、「AIを使えば必ず問い合わせが20件増える」と考えるのではなく、保守的ケース、標準ケース、好調ケースなど複数パターンを設定すると、より現実的です。
ROI150%より「何か月で投資を回収できるか」で判断する
経営判断では、ROI率だけでなく投資回収期間も非常に分かりやすい指標です。
たとえば、「ROIが高いです」より、「初期投資は約6か月で回収できる見込みです」の方がイメージしやすいでしょう。
投資回収期間は、概算では次のように考えます。
投資回収期間=AI導入費用÷月間効果額
3か月で回収できる場合
短期間で投資回収が期待できる場合は、比較的導入判断をしやすいでしょう。
ただし、本当にその削減時間が継続するのか確認する必要があります。
短期間のテスト結果だけを年間へ単純換算しないことも重要です。
12か月で回収する場合
1年程度で回収できる計画なら、中長期的な業務改善として検討しやすいケースがあります。
特に、AI活用が定着するほど効果が高まる業務では、初年度より2年目の方が費用対効果が改善する可能性もあります。
3年以上かかる場合
投資回収に3年以上かかる場合は、「AIだから将来性がある」という理由だけで進めず、もう一度対象業務を見直した方がよいでしょう。
ただし、費用対効果を人件費だけで評価できない場合もあります。
たとえば、採用難への対応、属人化解消、業務品質の安定、ミス削減、顧客対応速度向上、技能継承などは、単純な時間削減では表しにくい効果です。
その場合は、定量効果と定性効果を分けて評価することをおすすめします。
AI費用対効果のシミュレーション結果が悪かったときの6つの打ち手
シミュレーションをした結果、「このままでは3年以上かかる」となったとしても、すぐに「AI導入はやめよう」と判断する必要はありません。
重要なのは、どの条件を変えれば採算が合うかを考えることです。
1.対象業務を変える
最初に選んだ業務がAIに向いていなかった可能性があります。
月2回しか発生しない業務より、毎日繰り返す業務の方が年間削減時間は大きくなりやすいです。
頻度の高い業務を探してください。
2.利用人数を限定する
全社員へ一斉導入する必要はありません。
特に初期段階では、営業5人、管理部門3人、特定プロジェクトメンバーなど、効果が出やすい人に限定する方法があります。
これによりライセンス費や研修負担を抑えられます。
3.小さくPoCする
PoCとは、本格導入前に小さな範囲で実現可能性や効果を確かめる取り組みです。
たとえば1か月間、「営業5人の提案書作成」だけにAIを使い、導入前時間、AI利用時間、確認時間、純削減時間を測定します。
予測値ではなく実測値を得られるため、本導入判断の精度が高まります。
4.SaaS型AIから試す
最初から大規模なAIシステム開発をする必要がないケースもあります。
既存のクラウド型AIツールで目的を検証し、「この業務は本当にAIで効果が出る」と確認できてから、システム連携や個別開発を検討する方法があります。
5.AI導入前にワークフローを見直す
AIを導入しても、元の業務が複雑すぎれば効果が出にくいことがあります。
たとえば、同じ情報を何度も転記する、承認が多すぎる、担当者ごとにやり方が違う、不要な資料を毎回作っているという状態です。
この場合、AIを入れる前に業務プロセス自体を見直した方が大きな効果につながる可能性があります。
6.自動化範囲を変える
業務全体をAIへ任せる必要はありません。
「文章を完成させる」ではなく、構成を作る、要約する、情報を分類する、最初のたたき台だけ作るなど、AIが得意な部分だけを対象にすると、確認コストを抑えられる場合があります。
AI導入前に費用対効果を計算する5ステップ
ここまでを実際の導入判断手順にまとめます。
STEP1 対象業務を1つ決める
最初から「全社AI活用」と考えないことが重要です。
まず、提案書、議事録、問い合わせ、データ入力など、具体的な業務を1つ選びます。
STEP2 現在時間を測る
「たぶん月10時間くらい」ではなく、可能であれば実際に1〜4週間程度測定します。
対象人数も確認してください。
STEP3 AI導入後の時間を小さく検証する
一部の社員に使ってもらい、AI操作、作業、確認、修正を含めた実際の時間を測ります。
STEP4 純削減時間と年間効果額を計算する
純削減時間を出したら、純削減時間×人数×時間単価×12で年間効果額へ換算します。
STEP5 投資回収期間から判断する
最後にAI導入総費用と比較します。
その結果、3か月で回収、6か月で回収、12か月で回収、3年以上必要などを判断します。
この数字が出れば、経営者への説明や社内稟議も具体的になります。
AI導入の費用対効果を社内稟議へどう使う?
AI導入を会社として進める場合、費用対効果シミュレーションは社内稟議の根拠になります。
稟議書では、「生成AIを導入すると業務効率化が期待できます」だけでは弱い場合があります。
それよりも、対象業務は営業提案書作成、対象人数10人、現在時間は月100時間、導入後想定は月60時間、純削減は月40時間、時間単価3,000円、年間効果額144万円、年間導入費用60万円、想定回収期間約5か月という形で数字を出した方が、投資判断をしやすくなります。
重要なのは、数字だけを書くのではなく、何を前提に計算した数字なのかも稟議書へ記載することです。
本記事でシミュレーションした後は、「AI導入 稟議書」の関連記事で、導入目的、費用、期待効果、リスクなどを整理するとスムーズです。
AI導入の費用を詳しく知りたい場合
費用対効果を計算するためには、まずAI導入にどのような費用が発生するのか把握する必要があります。
AI導入費用には、AIツール利用料、初期設定、システム連携、開発、研修、運用、保守などがあります。
既存の生成AIサービスを使う場合と、自社専用のAIシステムを開発する場合では必要な予算が大きく異なります。
具体的な価格帯や費用項目については、「AI導入 費用相場」の関連記事と分けて確認すると整理しやすいでしょう。
導入後はKPIでシミュレーションとの差を確認する
費用対効果シミュレーションは、AI導入前の予測です。
導入後は、「本当に計画どおりの時間削減ができたのか」を確認する必要があります。
たとえば、事前予測が月40時間削減で実績が月20時間削減だった場合、その理由を調べます。
利用率が低い、チェック時間が想定より長い、操作に慣れていない、対象業務が適切ではないといった原因が考えられます。
逆に、事前予測が月40時間で実績が月70時間なら、利用範囲を拡大できる可能性があります。
この導入後の評価については、「AI導入 KPI・効果測定」の関連記事で詳しく扱うと、記事同士の役割を分けられます。
つまり、導入前=費用対効果シミュレーション、導入時=稟議・意思決定、導入後=KPI・効果測定という流れです。
AI導入の費用対効果に関するよくある質問
AIは月何時間削減できれば元が取れますか?
企業ごとに異なります。
基本的には、年間AI導入費用÷対象人数÷1時間あたり人件費÷12か月で、1人あたり月間に必要な削減時間を計算できます。
たとえば年間60万円、10人、人件費3,000円の場合は、1人あたり月約1.67時間が損益分岐の目安です。
人件費は給与額だけで計算すればよいですか?
簡易シミュレーションでは時間単価を設定すれば計算できます。
より正確に判断したい場合は、給与だけでなく会社が実質的に負担している人件費の考え方を取り入れる方法もあります。
重要なのは、社内で計算基準を統一することです。
AIのチェック時間も費用に含めるべきですか?
はい。
AI出力の確認や修正が必要な業務では、その時間も含めて「純削減時間」を計算することをおすすめします。
AIを使った作業時間だけを見てしまうと、費用対効果を過大評価する可能性があります。
売上アップ目的のAIはどう計算しますか?
売上向上型では、問い合わせ増加数×成約率×平均粗利益などを使って追加利益を試算します。
売上額そのものではなく、可能であれば粗利益ベースで考えると、投資効果を判断しやすくなります。
投資回収期間は何年以内ならよいですか?
一律の正解はありません。
投資額、事業規模、導入目的、業務上の重要性によって判断が変わります。
3か月で回収できる投資と、3年かかる投資ではリスクが異なるため、ROI率だけでなく回収期間も確認することが大切です。
また、人手不足対策や技能継承など、金額換算しにくい効果が大きい場合は定性的な効果も合わせて評価してください。
まとめ|「AIを導入するか」ではなく「どの業務なら投資効果が出るか」を考える
AI導入の費用対効果を考えるとき、最初から複雑なROI計算をする必要はありません。
まず、「このAIは、1人あたり月何時間削減できれば元が取れるのか」を計算してみてください。
基本となる考え方はシンプルです。
年間効果額=1人あたり月間純削減時間×対象人数×1時間あたり人件費×12か月
そして、
年間AI導入費用=AIツール費+初期導入費+研修費+運用費+社内担当者工数
です。
さらに、年間AI導入費用÷対象人数÷人件費÷12と逆算すれば、1人あたり月何時間削減すれば採算ラインに到達するのか分かります。
ただし、単純な作業時間短縮だけで判断してはいけません。
AIへの入力時間、出力確認時間、修正時間、教育時間、社内担当者の運用時間も考慮し、純削減時間で見ることが重要です。
シミュレーションの結果が悪かった場合も、「AIは導入しない」とすぐに結論を出す必要はありません。
対象業務を変える。利用人数を絞る。小さくPoCする。SaaSから始める。業務フローを見直す。自動化範囲を変える。
こうした方法で採算性が改善する可能性があります。
AI導入で重要なのは、「AIを導入するかどうか」ではなく、「自社のどの業務ならAIによる投資効果が出るのか」を見極めることです。
ご相談はこちら:AI導入支援サービス/お問い合わせ
