紹介状や診断書、主治医意見書が院長の机にたまり、診療が終わってからまとめて書いている。
小規模なクリニックや歯科医院では、珍しくない状況ではないでしょうか。
医師事務作業補助者を専任で配置する余裕はない。一方で、生成AIを使えば文章作成を減らせそうに見えるものの、「患者情報をAIに入れて大丈夫なのか」が気になり、結局使えていない医院もあるでしょう。
最初から、患者のカルテ情報を生成AIへ渡す必要はありません。
患者を特定する情報を入れずに、紹介状や診断書の「型」だけをAIに作らせ、患者固有の情報は院内で埋める。
この方法であれば、電子カルテを入れ替えたり、大掛かりなAIシステムを導入したりする前から取り組めます。
ポイントは、AIに紹介状を「完成させてもらう」と考えないことです。
紹介状や診断書には、毎回共通する文章構造と、患者ごとに医師が確認しなければならない固有情報があります。この2つを分ければ、AIに任せられる作業と人が行う作業が明確になります。
この記事では、院長とスタッフ10名以下程度の無床クリニック・歯科医院を想定し、紹介状・診断書・意見書の作成時間を減らすための具体的な手順を解説します。
なぜ小規模クリニックでは紹介状・診断書が院長に集中するのか
小規模クリニックで文書作成が院長に集中する理由は、単純に「文章を書くのが大変だから」だけではありません。
受付では電話対応、予約変更、資格確認、問診、会計、レセプト、リコールなどを同じスタッフが兼務しています。そこへ紹介状や診断書の作成まで追加すると、受付側にも十分な余裕がありません。
最終的に、診療内容を最も把握している院長が文書を抱えることになります。
診療中には書き切れず、診療後の仕事になりやすい
紹介状は、患者氏名と紹介先だけを書けば終わる文書ではありません。
紹介する目的、これまでの経過、検査結果、治療内容、処方内容、紹介先に確認してほしい事項などを整理する必要があります。
患者の診療中にすべて記載できればよいのですが、外来が続いている時間帯では現実的ではない医院も多いでしょう。
その結果、「あとで紹介状を書く」という仕事が積み上がります。
診断書や意見書でも同じです。診察そのものは終わっていても、その内容を提出先に適した文章へ整理する作業が別に残ります。
ここにAIを使う余地があります。
AIが診断するのではありません。医師がすでに判断した内容を記載するための「文章の器」を先に用意しておくのです。
医師事務作業補助者を置く病院と同じ方法を取りにくい
診療報酬には「医師事務作業補助体制加算」があります。
厚生労働省の資料では、医師事務作業補助者の業務として、診断書、診療情報提供書、返信、診療サマリー、診療計画書などの文書作成補助が示されています。一方、この加算は患者の入院初日に算定する仕組みで、配置区分も病床数を基礎に設定されています。したがって、無床の小規模クリニックが「加算を前提に専従の補助者を配置する」という病院と同じ方法をそのまま採るのは現実的ではありません。
だからこそ、小規模院では「人を一人増やすか、院長が全部書くか」という二択ではなく、文書作成工程そのものを分解することが重要です。
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紹介状・診断書・意見書は「定型部分」と「患者固有部分」に分ける

紹介状作成にAIを使うとき、最初にやるべきことはプロンプトを書くことではありません。
現在使っている文書を見て、「毎回ほぼ同じ部分」と「患者によって変わる部分」に分けます。
この切り分けを行うと、生成AIへ患者情報を大量に渡さなくても、文章作成の負担を減らせることが見えてきます。
| 文書 | AIで作りやすい定型部分 | 院内で入力する患者固有部分 | 最終確認 |
|---|---|---|---|
| 紹介状・診療情報提供書 | 文書構成、紹介目的の表現、経過を並べる順序、依頼文の型 | 患者属性、具体的な病歴、診断、検査結果、処方、治療経過 | 医師 |
| 診断書 | 項目構成、一般的な文章形式、読みやすい表現への整理 | 診断内容、診察日、発症時期、療養期間、就労等に関する医学的判断 | 医師 |
| 主治医意見書など | 記載項目の整理、文章構造、説明文の型 | 患者の状態、医学的評価、その判断根拠 | 医師 |
重要なのは、「AIに入力してよい情報」と「入力してはいけない情報」を単純に二分することではありません。
その前に、そもそもAIへ患者固有情報を渡さなくても済む仕事を切り出すことです。
たとえば紹介状なら、「紹介目的を最初に書く」「現病歴を時系列で整理する」「最後に紹介先への依頼事項を書く」といった文章構造は、特定の患者に依存しません。
この部分は一度AIで整えておけば、テンプレートとして再利用できます。
一方、具体的な診断、検査結果、薬剤、診療経過などは患者ごとに異なります。ここは電子カルテなど院内側で入力し、医師が確認します。
AI=文章の型を作る / 院内=患者固有情報を入れる / 医師=医学的内容を確認する

患者情報を入れずに紹介状の下書きをAIで作る手順
それでは、実際の業務をどのように変えるのかを見ていきます。
目指すのは「AIで紹介状を自動作成する仕組み」ではありません。
文書作成が発生してから完成するまでを、次の流れに変えることです。
| 工程 | トリガー | AIに渡すもの | 反映先 | 人が確認する箇所 |
|---|---|---|---|---|
| 文書作成開始 | 紹介・診断書依頼などが発生 | 文書の種類・目的 | AI | 患者を特定する情報が含まれていないか |
| 下書き作成 | 必要項目が決まった | 匿名化・一般化した要点 | 下書き | 項目の不足、文章構成 |
| 固有情報入力 | 型が完成 | 原則として外部AIには渡さない | 電子カルテ等の院内環境 | 患者固有情報 |
| 発行前確認 | 文書が完成 | なし | 電子カルテ・文書システム | 医学的事実、日付、数値、表現 |
手順1|どのタイミングで文書作成を始めるか決める
最初に決めたいのは、AIへの指示文ではなく「文書作成の開始条件」です。
たとえば紹介状なら、院長が「専門医への紹介が必要」と判断した時点をトリガーにします。
診察終了後に院長が一から文章を考え始めるのではなく、この時点で使用する文書テンプレートを決められるようにします。
診療科や紹介目的によって複数の型が必要であれば、「精査依頼」「継続治療依頼」「手術等の相談」といった用途別に型を準備する方法も考えられます。
ただし、細かく分けすぎる必要はありません。最初は医院で発生件数の多い文書1種類から始める方が運用しやすくなります。
手順2|文書の目的・診療科・必要な要素だけをAIに渡す
次に、患者本人の情報ではなく、作成したい文書の条件をAIへ伝えます。
たとえば、「クリニックから専門医へ患者を紹介するときに使う診療情報提供書の文章構成を作る。紹介目的、主訴、経過、実施した検査、治療内容、現在の処方、依頼事項の順に整理する」といった使い方です。
この段階で欲しいのは、患者Aさんの紹介状ではありません。自院で繰り返し利用できる紹介状の型です。
毎回AIに一から聞くのではなく、一度作った型を院内のテンプレートとして保存すれば、次回からはAIを開かなくても利用できます。
手順3|AIに文章構造と定型表現を作らせる
AIには、文章を読みやすい順番へ整理させます。
たとえば、紹介目的が文章の後半に埋もれているのであれば最初に出す、時系列が分かりにくければ経過を整理しやすい構造にする、といった使い方です。
ここで重要なのは、AIがもっともらしい医学情報を補完しないようにすることです。
実際には入力されていない診断名、検査結果、薬剤、病歴などを追加する必要はありません。
テンプレートには「ここに検査結果を入力」「ここに現在の処方を入力」のような空欄を残します。
AIが医学的事実を作るのではなく、医師が事実を入れやすい文書に整えることが目的です。
手順4|患者固有情報は院内で入力する
AIで文書の型ができたら、患者固有情報を院内環境で追加します。
氏名、生年月日、診断、診療経過、検査結果、薬剤などは電子カルテ等の情報を参照しながら入力します。
ここで初めて「型」が「患者の文書」になります。
この順番にすれば、一般的な外部生成AIへ患者情報を丸ごとコピーして文章を作らせることを前提にしなくても済みます。
なお、患者情報の生成AIへの入力可否は、利用するサービスの契約条件、データの保存・学習利用、院内規程、アクセス管理などによっても変わります。
そのため、本記事では個別の患者情報を生成AIに入力する運用を前提にせず、詳しい線引きは別記事で扱います。
手順5|院長が医学的内容を確認する
AIを使っても、この工程はなくなりません。
むしろ、AIを利用するなら「誰が最後に確認するのか」を従来以上に明確にする必要があります。
文章として自然だから正しいとは限りません。
日付が一日違う、薬剤量が違う、検査結果の単位が違う、症状の経過が逆になっている、といった誤りは、文章の読みやすさだけでは発見できません。
紹介状では紹介目的と依頼事項が一致しているかも確認します。診断書や意見書では、記載した判断に診療録上の根拠があるかを確認します。
手順6|確認済みの文書を電子カルテ等へ反映する
医師による確認が終わった文書を、医院で利用している電子カルテや文書管理の運用へ戻します。
ここまでで一つの流れが完成します。
AIと電子カルテを無理にシステム連携させる必要はありません。
最初の段階では、「AIで型を作る」「院内テンプレートへ保存する」「患者固有情報を院内で入力する」「院長が確認する」という流れだけでも、ゼロから文章を考える仕事を減らせます。
AI導入というと大掛かりなシステム連携を想像しやすいですが、小規模クリニックではまず手入力そのものではなく、毎回ゼロから考えている部分を減らすことから始める方が現実的です。
診断書・意見書をAIで下書きするときに失敗しやすいポイント
紹介状より注意したいのが、診断書や各種意見書です。文章の型はAIで作れても、その文章が持つ意味までAIに判断させるべきではありません。
AIに医学的判断を確定させない
生成AIは、質問に対して自然な文章を作ることを得意としています。そのため、情報が不足していても、文章だけを見ると完成しているように見える場合があります。
診断書では特に、「いつからいつまで療養が必要か」「どの程度の制限が必要か」といった記載が、そのまま患者の勤務や各種手続きに影響する可能性があります。
AIには表現の整理をさせても、医学的判断そのものを決めさせない運用が必要です。
日付・期間・数値は必ず原資料を見る
紹介状や診断書で誤りが起きやすいのが、日付、期間、数値です。
診察日、発症時期、検査実施日、療養期間、薬剤の量などは、一文字違うだけでも意味が変わります。
文章の前後関係からAIに推測させるのではなく、電子カルテや原資料を確認して入力します。
「もっともらしい文章」と「根拠がある文章」を分ける
AIを使うと文章はきれいになります。しかし、文書の品質は文章の美しさでは決まりません。
特に意見書では、「なぜその評価になったのか」を診療録や実際の診察内容から説明できる必要があります。
生成された文章に根拠のない補足が加わっていないかを確認します。AIの文章力を使うことと、判断そのものをAIへ任せることは別です。
AIで作った文書を発行する前の院長チェックリスト
AIを利用する場合、確認作業も属人的にしないことが重要です。
院長が毎回「何となく読み返す」のではなく、確認項目を固定します。
| 確認項目 | 発行前に見るポイント |
|---|---|
| 対象患者 | 別の患者の情報が混ざっていないか |
| 日付 | 診察日、発症日、検査日、作成日、期間に誤りがないか |
| 診断 | 電子カルテ上の診断や医師の判断と一致しているか |
| 経過 | 時系列が逆転していないか、重要な情報が抜けていないか |
| 検査 | 結果、数値、単位、実施日に誤りがないか |
| 薬剤 | 薬剤名、用量、用法などに誤りがないか |
| 表現 | 必要以上に断定していないか、意味が変わっていないか |
| 根拠 | 記載内容を診療録等で確認できるか |
| 目的 | 紹介理由・提出目的に合った内容になっているか |
| 宛先 | 紹介先や提出先に誤りがないか |
この表は、AIを導入するためだけのチェックリストではありません。
従来、院長が頭の中で行っていた確認を、見える形にするものです。
スタッフが文書作成の補助を行う場合も、「どこまでスタッフが作業し、どこから院長が確認するか」を明確にできます。
つまり、AI導入をきっかけに文書作成の標準手順そのものを作れるわけです。
電子カルテの文書テンプレートとAIはどちらを使うべきか
「電子カルテに文書テンプレートがあるなら、AIは必要ないのでは」と考える方もいるでしょう。
これは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。向いている仕事が違います。
| 項目 | 電子カルテの文書テンプレート | AI |
|---|---|---|
| 同じ定型文を繰り返す | 得意 | 可能 |
| 文書構成を考える | 登録済みの型を利用 | 得意 |
| 表現を整理する | 基本は人が修正 | 下書きを作りやすい |
| 症例に合わせて文章を組み替える | 手作業が残りやすい | 条件を与えて下書き可能 |
| 患者情報を院内で保持する | 得意 | 利用環境による |
| 医学的な最終判断 | 医師が行う | AIには任せない |
毎回ほぼ同じ文章で済む文書なら、電子カルテのテンプレートだけで十分な場合があります。
一方、「基本構成は同じだが、紹介理由や経過によって文章の組み立て方が変わる」という文書では、AIが下書き作成を補助できます。
小規模クリニックで実践しやすいのは、AIで良い型を作り、その型を電子カルテ側にテンプレートとして保存する方法です。
毎回AIを開く必要はありません。
むしろ、一度AIを使って院内テンプレートを改善し、その後は電子カルテだけで運用できるなら、それもAI活用の成果です。
「AIを毎日使うこと」が目的ではなく、院長が同じ文章を何度も考える時間を減らすことが目的だからです。
クリニックで生成AIを使う前に確認したい安全管理の考え方
医療分野でAIを利用するときは、便利さだけで判断することはできません。患者情報や医療情報は慎重な管理が必要です。
一方で、最初から安全管理の議論を複雑にしすぎると、「結局、何もできない」という状態にもなりやすくなります。
本記事で紹介しているのは、まず患者を特定する情報を外部AIへ渡さず、文章の型作りから利用する方法です。
「3省2ガイドライン」はAIだけのルールではない
医療情報システムの安全管理では、一般に「3省2ガイドライン」という呼び方が使われてきました。
現在、医療機関側の重要な基準となるのが、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」です。
第6.0版では、全体を概説編、経営管理編、企画管理編、システム運用編に再構成し、外部委託や外部サービスの利用、新しい技術を導入する際の評価なども扱っています。
また、医療情報を扱うサービス提供事業者側については、経済産業省の「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」があり、2025年3月に第2.0版へ改定されています。
つまり、「生成AIだから特別な一つのチェックだけをすればよい」というものではありません。
どのサービスを使うのか、データがどこへ送られるのか、誰がアクセスできるのか、ログや保存をどう扱うのかといった、医療情報システム全体の安全管理の中で考える必要があります。
医療分野の生成AI利用ガイドラインも参考になる
厚生労働省の資料では、生成AI利用に関する研修について、医療AIプラットフォーム技術研究組合が公開する「医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン(第2版)」を研修資料として活用して差し支えないとされています。
ただし、このガイドラインを読むだけで、すべての生成AIへ患者情報を入力できるという意味ではありません。
利用するAIサービスの仕様や契約条件、院内の安全管理体制を確認する必要があります。
本記事では詳しい線引きまでは扱いませんが、少なくとも「無料の生成AIを開き、患者のカルテをそのままコピーして文章を作らせる」といった運用から始めることは避けた方がよいでしょう。
まずは患者を特定する情報を入れない「型作り」から始めれば、AIが自院の文書業務に役立つかを確認できます。
▶ 関連記事:生成AIに入力してはいけない情報10種類|企業向けチェックリスト
小規模クリニックなら最初の1種類だけをAIで型にする
AI活用を始めるとき、紹介状、診断書、意見書、問診、受付対応、レセプトまで一度に変える必要はありません。
まず、院長が「またこれを書くのか」と感じている文書を一つ選びます。
たとえば、他院への紹介状が毎週発生しているなら、過去の文書を見ながら、どの項目が毎回共通しているかを整理します。
その共通部分だけを一般化してAIへ渡し、医院で使いやすい文章構造を作ります。
完成した型は院内の電子カルテや文書テンプレートへ登録します。
次回からは、患者固有部分だけを院内で入力し、院長が確認します。
この流れであれば、AIのために新しい仕事が増えにくくなります。
AI導入でよくある失敗は、「便利そうだからAIを使う」という順番です。
院長に残っている仕事を見つける → 定型部分と固有部分に分ける → 定型部分だけAIへ渡す → 院内の既存業務へ戻す
この順番にすると、小規模院でも運用を続けやすくなります。
よくある質問
AIと音声入力を組み合わせて紹介状を作れますか?
組み合わせることは可能です。
たとえば医師が診察後に「紹介目的」「経過として盛り込みたい要点」「紹介先へ確認してほしいこと」などを音声で残し、その内容を文章化する使い方が考えられます。
ただし、実際の患者情報を音声入力する場合は、音声がどこへ送信・保存されるサービスなのかも含めて確認が必要です。
患者情報を扱わない段階では、まず架空の内容や一般化した内容で音声入力から文章化までの流れを試し、院内運用を設計するとよいでしょう。
事務スタッフが紹介状や診断書の下書きを作ってもよいですか?
「下書き」の中身を分けて考える必要があります。
厚生労働省が示す医師事務作業補助者の業務には、医師の指示の下で行う診断書や診療情報提供書などの文書作成補助が含まれています。
ただし、一般の受付・事務スタッフが医学的判断まで行ってよいという意味ではありません。
自院でスタッフへ任せる場合は、文書テンプレートの呼び出し、定型部分の入力、必要書類の準備といった補助作業と、診断・評価・医学的内容の確定を分けることが重要です。
文書の種類によって法令や制度上の要件が異なる場合もあるため、最終的には個別の文書に求められる要件と院内規程を確認してください。
患者情報をAIに入れなければ絶対に安全ですか?
「患者情報を入力しなければ絶対に安全」とは言えません。
利用するサービスのアカウント管理、端末、アクセス権限、入力履歴、保存設定など、安全管理には複数の要素があります。
ただし、AI活用を試す最初の段階で、患者を特定する情報を入力せず、一般化された文章の型だけを作る方法は、不要な情報提供を避けながら有用性を確認する一つの現実的な方法です。
電子カルテにAI機能がなくても始められますか?
始められます。
AIと電子カルテが直接連携していなくても、AIで文書の型を作り、その完成した型を電子カルテのテンプレートへ登録できれば、文書作成工程を改善できます。
むしろ、現在の電子カルテをすぐ入れ替えず、「人がゼロから文章を考えている部分」だけを減らす方が、小規模クリニックでは始めやすい場合があります。
AIが作った紹介状をそのまま発行してもよいですか?
AIが生成した文章を、そのまま正しいものとして扱う運用は避けるべきです。
紹介状には患者の診療内容や紹介目的が記載されます。診断、検査結果、処方、経過、紹介先への依頼事項などが実際の診療内容と一致しているか、発行前に医師が確認する工程を設けます。
AIは完成責任を担うのではなく、文書作成を補助する位置づけで使うのが基本です。
まとめ|AIには患者情報ではなく、まず「文書の型」を作らせる
紹介状や診断書、意見書が院長にたまっている場合、最初から患者情報を生成AIへ入れて文書を自動作成する必要はありません。
まず現在の文書を、「毎回共通している定型部分」と「患者ごとに変わる固有部分」に分けます。
AIには文書の構成や定型表現を作らせ、患者固有の情報は電子カルテなど院内の環境で入力します。そして最後は医師が医学的内容を確認します。
この方法なら、AIのために業務全体を作り直す必要はありません。
最初に取り組むなら、院長が頻繁に作っている紹介状を1種類選び、その文書の型だけをAIで作ってみるとよいでしょう。
AI活用の目的は、紹介状をAIに書かせることではありません。
医師でなければできない判断に院長の時間を残し、「毎回同じ文章をゼロから作る仕事」を減らすことです。
AIは導入して終わりではありません。現在の受付・文書作成・電子カルテ運用を確認しながら、AIに任せる業務と人が確認する業務を整理し、実際に院内で使える形になるまで伴走します。
参考資料(本文確認用)
厚生労働省「医師事務作業補助体制加算等に関する資料」
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」
経済産業省「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン 第2.0版」
厚生労働省資料(医療・ヘルスケア分野における生成AI利用ガイドライン第2版の活用に関する記載)
