印刷会社やパッケージ制作会社でも、生成AIをデザイン制作に使う場面が増えてきました。
たとえば、背景画像の作成、ラフ案の検討、商品イメージのたたき台、写真の加工、デザインの方向性を決めるためのアイデア出しなどです。
一方で、実際の顧客案件に使おうとすると、「AIで作った画像を印刷物として納品してよいのか」「商用利用可能と書いてあるAIなら安心なのか」「AIを使ったことを顧客へ伝える必要はあるのか」「既存作品に似た画像が出てきた場合はどうすればよいのか」といった問題が出てきます。
結論から言えば、生成AIを一律に禁止する必要はありません。
重要なのは、どのツールを、どの条件で、どの制作工程に使うのかを決め、必要に応じて顧客へ事前説明することです。
逆に危険なのは、会社として何も決めないまま、デザイナーが個人判断で生成AI画像を制作物へ使い、そのまま納品することです。
生成AIデザインを業務利用する場合は、少なくとも次の4つを分けて確認すると整理しやすくなります。
- 利用するAIツールの規約
- 著作権・商標など第三者の権利
- 顧客との契約・AI利用に関する説明
- 解像度・色・塗り足しなど印刷データとしての品質
この記事では、Adobe Firefly、Canva、Figmaを例にしながら、印刷会社・パッケージ制作会社が生成AIをデザイン業務へ取り入れるときの考え方を整理します。
法務上の注意:本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件について法的判断を行うものではありません。生成AIサービスの利用条件・機能・規約は変更される可能性があります。実際に商用利用や顧客案件へ使用する際は、各サービスの最新利用規約、顧客との契約内容を確認し、必要に応じて弁護士・弁理士などの専門家へ相談してください。
結論|生成AIは「利用条件」と「顧客への説明」を決めてから使う

印刷会社やパッケージ制作会社が生成AIを使う場合、重要なのは「AIを使ってよいか、悪いか」という二択ではありません。
実務では、どの工程なら生成AIを使い、どの工程には人間の確認を残すのかを決める方が現実的です。
AIを最終判断者にするのではなく、制作担当者の作業を補助する位置付けにすると導入しやすくなります。
| 制作工程 | 生成AIの使い方の例 | 人間の確認 |
|---|---|---|
| アイデア出し | キービジュアルの方向性を複数案出す | 必要 |
| ラフ制作 | 配置・構図の案を作る | 必要 |
| 背景素材作成 | 抽象背景やイメージ素材を生成する | 必要 |
| 写真加工 | 背景変更、不要物除去など | 必要 |
| 完成デザイン | AI素材を組み込む | 必須 |
| 権利確認 | AIに参考確認させる | AIだけで完結させない |
| 入稿確認 | 解像度や色のチェック補助 | 最終確認は人 |
生成AIを一律禁止する必要はないが、担当者任せにしない
生成AIを禁止すれば、権利問題をすべて解消できるわけではありません。従来のデザイン制作でも、ストックフォト、フォント、イラスト素材、顧客提供画像、ロゴ、キャラクター、撮影写真など、それぞれ利用条件を確認する必要がありました。
生成AIも同様に、制作素材の一つとして「利用条件を確認する工程」を設けることが重要です。
問題になりやすいのは、「便利だから使った」「無料で使えたから大丈夫だと思った」「商用利用可能と書いてあった」という理由だけで、顧客向け制作物へ利用することです。会社として使用可能なサービスを決め、最低限のルールを共通化しておきましょう。
「商用利用できる」と「権利問題が起きない」は同じではない
生成AIを使うときに、特に注意したい言葉が「商用利用可能」です。
商用利用可能という表示は、そのサービスの利用規約上、一定の条件下で商業目的に出力を利用できるという意味で使われることが一般的です。
しかし、第三者の著作権、商標権、肖像等を絶対に侵害しないことが保証されるという意味ではありません。
たとえばCanvaのAI Product Termsでは、利用者が入力素材に必要な権利や許可を持っていること、入力と出力について利用者自身が責任を持って確認することが示されています。また、Canvaライブラリー内のLicensed Contentを取り込んだ場合は、その素材のライセンス条件も関係します。
つまり、「AIが生成したから権利確認不要」ではありません。
制作会社は4つのチェックを分ける
第1層:ツールの利用規約 そのAIサービスで顧客案件や商用制作が認められているか確認します。
第2層:第三者の権利 生成された画像が既存作品、ロゴ、キャラクター、著名人などに近くないか確認します。
第3層:顧客との契約・説明 顧客がAI利用を認めているか、どこまで説明しておくかを決めます。
第4層:印刷品質 解像度、色、サイズ、塗り足しなど、印刷データとして問題がないか確認します。
この4つは別問題です。「権利上問題なさそうだから、そのまま印刷できる」とは限りません。
印刷物の生成AIデザインでトラブルになりやすい4つの場面
既存作品やキャラクターに似た生成物が出た
生成AIへ簡単な指示を入れただけでも、既存のイラスト、商品、キャラクター、広告表現などを連想させる画像が出てくる可能性があります。
この場合、「AIが勝手に作ったから問題ない」とは考えない方が安全です。納品物として使用する前に、人間が確認する工程を設けます。
- 有名キャラクターを連想させる
- 特定ブランドの商品に似ている
- 有名なポスター・広告に構図が近い
- 特定作家の作品を強く連想させる
- ロゴのような文字やマークが生成されている
文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」でも、生成・利用段階における著作権侵害の判断について、既存著作物との類似性や依拠性など、従来の著作権法上の考え方を踏まえて検討することが示されています。制作会社では「AI出力をそのまま採用しない」というルールだけでも、リスクを下げやすくなります。
商用利用可能という表示だけで採用した
「商用利用可能」という説明だけで判断しないことも重要です。確認したいのは次のような条件です。
- サービス本体の利用規約
- AI機能固有の利用規約
- 契約プラン
- 使用したモデル
- 使用した素材
- 顧客案件への使用条件
同じサービス内でも、機能や使用する外部モデルによって条件が違う場合があります。利用規約は更新されることもあるため、「去年確認したから大丈夫」ではなく、会社として定期的に確認する仕組みを作っておくと安心です。
顧客・素材サイトから預かった画像をAIへ入力した
生成結果だけでなく、AIへ何を入力するかも重要です。たとえば顧客から次のような情報を預かっている場合があります。
- 未公開商品の写真
- 新商品のパッケージ案
- 顧客名簿
- 社外秘資料
- ロゴデータ
- キャラクターデータ
- 撮影した人物写真
これらを生成AIへアップロードする前に、「この素材を制作に使う権限」と「外部AIサービスへ入力することが許されているか」は別と考えた方がよいでしょう。顧客から「チラシ制作に使ってください」と預かった写真だからといって、必ずしも任意のAIサービスへアップロードしてよいとは限りません。機密保持契約や顧客との取り決めも確認します。
AI出力とストック素材を混ぜて権利関係が分からなくなった
制作現場では、完全なAI生成画像だけを使うケースより、AI生成背景、ストックフォト、顧客の商品写真、購入したフォント、テンプレートなどを組み合わせる方が一般的です。この場合、それぞれの権利関係を分けて管理する必要があります。
たとえばCanvaでは、AI機能で生成したOutputにCanvaライブラリーのLicensed Contentを取り込んだ場合、そのライブラリー素材には別途ライセンス条件が適用されます。「Canvaで完成させたから全部同じ権利」とは限らないため注意しましょう。
著作権だけ確認しても足りない|印刷会社が見るべき権利関係
著作権
文章、写真、イラスト、デザインなどの著作物について考える権利です。生成AIで作成した素材について、既存作品との関係、人間による創作的な関与、元素材の権利などが論点になる場合があります。個別ケースでの権利の成立や侵害判断は、制作会社だけで断定せず、必要に応じて専門家へ確認します。
商標・ロゴ・ブランド表現
AI画像内に偶然、既存企業のロゴに似たマーク、有名ブランドを連想させる商品、特徴的なパッケージ、店舗サインなどが生成される場合があります。パッケージや広告物ではブランド表示が大きく使われるため、完成原稿を拡大してチェックしましょう。
人物・肖像等
実在人物を連想させる表現にも注意が必要です。特に「有名俳優のように」「○○選手に似せて」といった指示で、特定人物への類似を狙う運用は避ける方が管理しやすくなります。人物生成について社内ルールを別途作るのも一つの方法です。
ストック写真・イラスト・フォントなどの素材ライセンス
生成AIを使用した案件でも、従来素材のライセンス確認は必要です。特にパッケージでは、再販範囲、印刷部数、商品への利用、テンプレートへの利用、二次利用などが関係する場合があります。AI素材だけ確認して安心しないようにしましょう。
顧客との制作契約・納品条件
法律上可能かどうかとは別に、顧客との契約でAI利用が禁止されている場合も考えられます。大手企業との案件では、外部クラウドサービスの利用制限、AIサービスへの情報入力禁止、再委託の制限、素材利用条件などが決められていることがあります。その場合は、AIサービスの規約上使えるかどうか以前に、顧客との契約確認が必要です。
Adobe Firefly・Canva・Figmaはどう使い分ける?
ここでは「どのAIが一番優秀か」を比較するのではなく、印刷・パッケージ制作会社が業務で使うときの考え方を整理します。料金や細かな機能は変更される可能性があるため、詳細は各サービスの公式情報や個別比較記事で確認してください。
Adobe Firefly(ファイアフライ)|画像生成・画像加工を制作工程へ入れたい場合
Adobe Fireflyは、画像生成や編集を制作フローへ組み込みたい場合に検討しやすい選択肢です。PhotoshopやIllustratorなどAdobe製品をすでに利用している会社では、既存制作工程の延長としてAI機能を使いやすい場面があります。
Adobeの公式FAQでは、Fireflyの一定の生成出力について商用プロジェクトへの利用が可能と案内されています。またAdobeは、Fireflyモデルの学習データに関する方針も公表しています。
ただし、これを「Fireflyなら何を生成しても絶対に権利問題が起こらない」という意味に解釈しないことが大切です。実際の利用機能、契約条件、入力素材、出力内容を確認してください。
印刷会社では、背景素材、イメージ画像、ラフ案、写真補正、画像の一部分の変更などから導入すると使いやすいでしょう。
Canva(キャンバ)|AI生成とテンプレート・素材を組み合わせる場合
Canvaは、生成AIだけでなく、テンプレート、写真、イラストなどを一つの環境で組み合わせられることが特徴です。そのため、AI生成物とCanvaライブラリー素材を分けて考えることが重要です。
Canva AI Product Termsでは、利用者がInputに必要な権利・ライセンス・許可を持っていることを求めています。また、適用法で認められる範囲においてOutputに関する考え方を示す一方、Licensed Contentを変更または取り込んだOutput等は別の扱いになります。
たとえば、Canvaライブラリーにある写真をAIで編集した場合、「AIで加工したから、その写真自体を自社所有にできる」ということではありません。ライブラリー素材については、その素材ライセンスが残ります。
Canvaを印刷物制作に使う場合は、自社で生成した素材、Canvaライブラリー素材、顧客提供素材を区別して管理すると分かりやすくなります。
Figma(フィグマ)|共同制作・デザイン工程でAIを使う場合
Figmaは、デザインや共同制作の工程でAIを活用する場合に確認しておきたいサービスです。Figma AI Termsでは、AIへ提供するプロンプト、画像、ファイル等をInput、AIから生成される画像・ファイル・コード等をOutputとして扱い、InputとOutputをCustomer Contentとして規定しています。
企業利用では「Content Training」の設定にも注意が必要です。管理設定や契約条件によって、Customer ContentのAIモデル改善への利用に関する扱いが変わるため、制作会社では「Figmaを使っているか」だけでなく、「会社の管理者がAI関連設定を把握しているか」まで確認した方がよいでしょう。
3ツールを「著作権の安全度ランキング」にしない理由
Firefly、Canva、Figmaを「安全度」で単純比較するのはおすすめしません。そもそも主な用途が異なるうえ、使用する機能、契約プラン、入力素材、生成内容、顧客契約、組み合わせる外部素材によって確認事項が変わるからです。重要なのは、何を作るために、どのサービスを使うのかを明確にすることです。
Firefly・Canva・Figma比較表|印刷会社が確認するポイント
| 確認項目 | Adobe Firefly | Canva | Figma |
|---|---|---|---|
| 主に想定しやすい工程 | 画像生成・画像加工 | デザイン制作・素材活用 | デザイン・共同制作 |
| 商用利用 | 利用機能・条件を確認 | AI規約・素材条件を確認 | AI規約・契約条件を確認 |
| Input確認 | 必要 | 必要 | 必要 |
| Output確認 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 外部・ライブラリー素材 | 組み合わせ素材を確認 | Licensed Contentを区別 | Input・外部素材を確認 |
| 顧客データの入力 | 契約・情報管理を確認 | 契約・情報管理を確認 | 契約・AI設定を確認 |
| 社内で確認したい点 | Firefly機能・契約条件 | AI規約・素材ライセンス | AI設定・Content Training |
| 最終確認 | 最新公式規約 | 最新公式規約 | 最新公式規約 |
この表で重要なのは、すべての欄が単純な「○」にならないことです。AIツールの業務利用では、「使えるか」ではなく「どの条件なら使うか」を決める必要があります。
印刷会社で生成AIを使うなら社内ルールを先に決める
生成AIを導入するとき、最初から数十ページの社内規程を作る必要はありません。まずは1〜2ページ程度でも構わないので、「社員が迷わない最低限のルール」を決めることから始めます。
①使用を認めるAIツールを決める
会社として使用を認める生成AIサービスを決めます。社員が自由に新しいサービスへ顧客データを入力できる状態は避けた方が管理しやすくなります。サービスを追加するときの申請方法も決めておきます。
②入力してよい情報・いけない情報を決める
特に重要なのがInputのルールです。原則として確認なしに入力しないものの例として、個人情報、顧客の未公開情報、NDA対象資料、新商品情報、顧客のロゴ、使用権限が不明な画像、他社から預かったデータ、社外秘の制作資料などがあります。「生成したもの」だけでなく、「AIに渡したもの」も管理対象です。
③AI生成物をそのまま採用しない
生成された画像を一度も確認せず、そのまま入稿データへ使う運用は避けます。最低限、既存作品との類似、ロゴらしき表現、不自然な文字、人物の違和感、商品形状の誤り、顧客要件との違いなどを人間が確認します。
④確認記録を残す
重要案件では、利用したAI、利用日、AIを使った工程、入力した素材、最終的に人間が修正した内容、顧客確認の有無などを簡単に残しておくと、後から確認しやすくなります。
⑤最終責任者を決める
AIが出したものについて「誰も判断していなかった」という状態を避けます。たとえば、デザイナーが一次確認、制作責任者が最終確認、顧客が校了という従来フローの中にAI確認を追加する方が運用しやすくなります。
【ひな形】生成AIデザイン制作の社内ルール
以下は、印刷会社・パッケージ制作会社が生成AI利用ルールを作る際のたたき台です。そのまま利用するのではなく、自社の契約や顧客構成に合わせて調整してください。
1.利用目的 生成AIは、デザイン制作、画像作成、アイデア出し、文章作成等の業務効率化を目的として使用する。
2.使用可能なサービス 会社が承認した生成AIサービスのみ、顧客案件への使用を認める。新規サービスを使用する場合は、事前に管理責任者へ確認する。
3.入力禁止情報 個人情報、顧客の機密情報、NDA対象情報、未公開商品情報、権利関係を確認できない画像・デザイン、顧客から外部サービスへの入力を禁止されているデータは、許可なく入力しない。
4.顧客提供素材 顧客提供の画像・ロゴ・デザインデータ等をAIへ入力する場合は、契約条件および利用目的を確認する。
5.生成結果の確認 生成AIの出力をそのまま納品せず、人間が内容・権利・品質を確認する。
6.人間による修正 最終制作物は担当デザイナーが確認し、必要な修正を行う。
7.顧客説明 顧客との契約、案件内容、AI使用範囲に応じて、AI利用について事前説明または確認を行う。
8.利用記録 必要に応じて、使用したサービス、使用工程、確認者を案件記録へ残す。
9.入稿確認 AI生成物であるかにかかわらず、解像度、色、サイズ、塗り足し等の印刷データチェックを行う。
10.ルールの見直し AIサービスの利用規約や社内業務が変更された場合、定期的に本ルールを見直す。
ひな形利用時の注意:このひな形は一般的な運用例です。個別企業の契約・法律上の判断を代替するものではありません。
顧客には生成AI利用をどう説明する?
生成AIを顧客案件へ使う場合、「どこまで伝えるべきか」は案件によって異なります。法律上の義務の有無だけで一律判断するのではなく、後から顧客との認識違いが起きないかという視点で考えると分かりやすくなります。
案件開始前にAI利用方針を伝える
可能であれば、見積もり時、発注前、提案段階、制作条件確認時など、制作開始前に方針を共有します。納品直前になって「実はAIを使っています」と伝えるよりもスムーズです。
説明すべきなのは「AIを使うか」だけではない
「AIを使用します」だけでは、顧客側も何を意味するのか分かりません。ラフ案に使用する、背景素材生成に使用する、写真加工に使用する、完成デザインはデザイナーが調整する、最終確認は人間が行う、といったところまで説明すると誤解を減らしやすくなります。
AI利用NGの顧客にも対応できるようにする
顧客によっては「AIを一切使わないでほしい」という要望も考えられます。その場合、AI使用可、一部工程のみ可、AI使用不可を案件管理項目として持っておくと便利です。営業担当者だけが知っていて、制作担当者が知らない状態を避けましょう。
【文例】顧客へ生成AI利用を説明するときの書き方
以下は一般的な説明文の例です。契約条項としてそのまま使うのではなく、案件内容に応じて調整してください。
見積もり・発注前の説明文
本案件では、デザイン案の検討や一部の画像素材作成に生成AIを使用する場合があります。生成AIの出力はそのまま納品せず、担当デザイナーが内容を確認・調整したうえで最終データを制作します。生成AIの使用を希望されない場合は、制作開始前にお知らせください。
デザイン提案時の説明文
今回ご提案するデザインでは、背景イメージの一部に生成AIを使用しています。最終デザインについては担当デザイナーが調整し、印刷用データとして必要な確認を行っています。修正をご希望の場合は通常のデザイン修正と同様に対応します。
AI利用を希望しない顧客向けの確認文
本案件について生成AIを使用しない制作をご希望の場合は、その条件で制作工程を設定します。制作方法や納期・費用に影響する場合は、事前にご案内します。
修正が発生した場合の説明文
生成AIを使用した素材についても、通常の制作物と同様に完成デザインをご確認いただきます。修正が必要な場合は、再生成またはデザイナーによる加工・差し替えを行います。
顧客との同意はどう残す?
口頭だけではなく記録に残す
たとえば、メール、見積条件、発注確認書、制作仕様書、チェック欄、案件管理システムなどです。大げさな契約書を毎回作らなくても、案件の性質に応じて記録を残せます。
案件ごとにAI利用の可否を管理する
同じ顧客でも、「求人チラシはAI可」「新商品の未公開パッケージはAI不可」ということもあり得ます。そのため、顧客単位だけでなく案件単位で確認する方が実務に合いやすくなります。
契約書そのものの判断は専門家へ
AI利用に関する免責条項や権利条項を正式な契約書へ入れる場合は、法的有効性も含めて専門家へ相談するのがおすすめです。制作会社独自の判断だけで「AIに関する責任はすべて負いません」といった過度な免責文を作ることは避けた方がよいでしょう。
生成AI画像を入稿するときは「権利」と「印刷品質」を別工程にする
生成AI画像について著作権や利用規約を確認したからといって、そのまま印刷できるとは限りません。権利確認と印刷品質確認は別工程です。
著作権チェックを通過しても印刷できるとは限らない
生成AIでは、画面上ではきれいに見えても、サイズが小さい、解像度が不足している、細部が崩れている、色味が想定と違うということがあります。通常の画像素材と同じように入稿前チェックを行います。
解像度を確認する
生成画像を拡大して使う場合は特に注意します。Web表示用に見れば十分きれいでも、大判ポスターやパッケージ全面に使うと粗さが目立つ可能性があります。使用する実寸サイズ、元画像サイズ、最終出力時の解像度を確認し、自社の入稿基準に合わせて判断してください。
RGB・CMYK・特色などの色管理を確認する
生成AI画像はRGBベースで扱われるケースが多いため、印刷工程では色変換が必要になることがあります。鮮やかな青、緑、蛍光感のある色などは、画面上と印刷物で印象が変わる場合があります。「AIだから色が合わない」のではなく、従来の画像制作と同じく色管理の問題として扱いましょう。
トリミング・塗り足し・文字・細部を確認する
AI画像をパッケージ全面などに使う場合は、トリミング位置、塗り足し、折り位置、切り抜き、重要部分の配置も確認します。また、AIが生成した画像内に意味不明な文字や記号が残っていないかも確認してください。
AI特有の不自然な細部も拡大確認する
生成画像では、一見すると問題がなくても拡大すると、指や手が不自然、商品形状が崩れている、箱の辺がつながっていない、文字らしき記号が入っている、背景の物体が途中で変形している、繰り返し模様がおかしいといったことがあります。特にパッケージでは完成後に長期間市場へ出るため、拡大確認をおすすめします。
生成AIデザインの社内チェックフロー

STEP1 使用ツールを確認する 会社が承認したAIサービスか確認します。
STEP2 入力素材の権利を確認する AIへ入力する写真、ロゴ、顧客資料等を確認します。
STEP3 生成結果を確認する 既存作品との類似、ロゴ、人物、不自然な表現等を確認します。
STEP4 顧客確認を行う 必要な案件ではAI利用について顧客へ説明します。
STEP5 デザイナーが修正する 生成結果をそのまま使わず、制作意図に合わせて調整します。
STEP6 入稿技術チェックを行う 解像度、色、塗り足し、サイズなどを確認します。
STEP7 制作記録を保存する 使用ツール、確認担当、必要に応じてAI利用工程を記録します。
ポイントは、著作権・利用条件のチェックと、印刷データチェックを同じチェック欄にまとめすぎないことです。目的が違うため、工程を分けた方が見落としを減らしやすくなります。
こんな使い方は避ける|生成AIデザインで失敗しやすい例
「○○風」と特定作家・作品への類似を狙い続ける
特定の現役作家や有名作品を強く意識した指示を繰り返し、似た表現を納品物へ使う運用は避ける方が管理しやすくなります。「高級感のある水彩風」「昭和レトロ風」など、表現の方向性を一般化する方法もあります。
顧客から預かった素材を無条件でAIへアップロードする
顧客が制作に利用するため提供したデータでも、外部AIへのアップロードまで認められているとは限りません。特に未公開商品や機密資料では注意してください。
「商用利用可」の一言だけで判断する
サービス名を検索して「商用利用OK」というブログ記事だけを見て判断するのは避けます。最新の公式規約を確認しましょう。
生成結果を確認せずそのまま納品する
AIは完成データを保証するものではありません。デザイナーが最終成果物を確認する工程を残します。
AI利用を制作担当者しか把握していない
営業担当者はAIを使っていないと思っている一方で、デザイナーだけが利用している状態は、顧客説明時に問題になりやすくなります。使用ルールを営業・制作・管理部門で共有しましょう。
著作権確認だけして入稿技術チェックを省略する
著作権上の確認と印刷品質は別です。画像生成後は通常の制作工程へ戻し、入稿基準を適用します。
生成AIデザイン導入前チェックリスト
自社で生成AIを使い始める前に、以下を確認してみてください。
ツール
- 使用する生成AIを会社で把握している
- 最新の利用規約を確認している
- 契約プランやAI固有条件を確認している
- 新しいAIサービスを使う際の確認担当がいる
入力
- 顧客提供素材の扱いを決めている
- 機密情報をAIへ入力するルールがある
- 個人情報の入力ルールがある
- 権利不明の素材を入力しないルールがある
出力
- AI画像を人間が確認している
- 既存作品との類似を確認している
- ロゴ・ブランド・人物等を確認している
- AI出力をそのまま完成データにしない
顧客
- AI利用を説明する基準がある
- AI利用不可の案件を管理できる
- 営業と制作でAI利用情報を共有できる
- 必要な案件では確認記録を残せる
入稿
- 解像度を確認している
- 色を確認している
- サイズ・塗り足しを確認している
- AI画像の細部を拡大確認している
すべてを最初から完璧にする必要はありません。チェックできない項目から社内ルールを整備していくと、導入手順が見えやすくなります。
印刷会社が生成AIを導入するときの現実的な始め方
STEP1 いきなり最終デザインから始めない
最初からパッケージのメインビジュアル全体をAI生成する必要はありません。まずはアイデア出し、ラフ案、配色案、背景案、プレゼン用イメージ、社内検討用カンプなどから始めます。失敗しても顧客成果物へ直接影響しにくい工程から試すことで、社内でも使い方を覚えやすくなります。
STEP2 使用ツールを1〜2種類に限定する
最初から大量のAIを使うと、規約や管理方法の確認だけでも大変です。たとえば「画像制作はFirefly」「共同デザインはFigma」のように、用途をある程度絞ります。
STEP3 社内ルールを1ページで作る
最低限、使えるツール、入れてはいけない情報、人間確認、顧客説明、最終責任者だけでも決めます。
STEP4 顧客説明文を営業と制作で共有する
営業担当者が説明できる状態を作っておきます。顧客から「AI使っていますか?」と聞かれたとき、担当者によって回答が違う状態は避けたいところです。
STEP5 定期的に規約と運用を見直す
生成AIサービスは変化が速く、機能・規約・設定が更新されることがあります。新機能を導入するとき、契約更新時、半年ごと、トラブル発生時など、見直すタイミングを決めておくとよいでしょう。
Q. 生成AIで作った画像は印刷物に商用利用できますか?
A. 利用できる場合がありますが、すべての生成AIについて一律に判断することはできません。まず利用するサービスの最新利用規約を確認してください。そのうえで、生成された画像が第三者の著作権、商標、肖像等と関係しないか、人間による確認も必要です。「商用利用可能」という表示だけで、すべての権利問題が解消されるわけではありません。
Q. Adobe Fireflyなら著作権の心配はありませんか?
A. Adobeの公式情報では、Fireflyの一定の生成出力について商用プロジェクトで利用できることや、Fireflyモデルの学習データに関する方針が示されています。ただし、Fireflyを使えばすべての第三者権利リスクがなくなるという意味ではありません。実際の生成物、入力素材、利用方法、顧客契約などを確認する必要があります。
Q. CanvaのAI画像をチラシやパッケージに使えますか?
A. CanvaのAI Product Termsでは、Outputについて利用可能な考え方が示されていますが、利用者自身がInputとOutputについて確認する責任も定められています。また、CanvaライブラリーのLicensed ContentをAIで加工・組み込む場合、その素材のライセンス条件にも注意が必要です。利用前に最新規約と使用素材の条件を確認してください。
Q. 生成AIを使ったことは顧客へ必ず伝える必要がありますか?
A. すべての案件について一律に「必ず伝える」「伝えなくてよい」と断定するのは適切ではありません。顧客との契約、制作物の性質、使用工程などによって判断が変わります。実務上は、AI利用によって顧客の意思決定や契約条件に影響する場合、後から認識違いが起きないよう事前に説明しておく方が管理しやすいでしょう。正式な契約上の判断が必要な場合は専門家へ確認してください。
Q. AI画像の著作権は誰のものになりますか?
A. 一律には判断できません。日本における著作物性については、人間による創作的な関与など具体的な事情によって検討されます。また、AIサービスとの関係で出力を誰が利用できるかという契約上の問題と、著作権法上の著作権が成立するかという問題は同じではありません。各サービスの規約を確認するとともに、重要な商品デザイン等について権利判断が必要な場合は、専門家への相談を検討してください。
印刷会社・パッケージ制作会社が生成AIをデザイン業務へ取り入れる場合、「AIは危険だから禁止する」か「便利だから自由に使う」かの二択にする必要はありません。
現実的なのは、使用条件を決め、人間の確認を残したうえで使うことです。
特に確認したいのは、AIツールの最新利用規約、著作権・商標等の第三者の権利、顧客への説明と契約条件、解像度・色等の印刷入稿条件の4つです。
Adobe Firefly、Canva、Figmaも、それぞれ得意な制作工程や利用条件が異なります。「一番安全なAIはどれか」だけを探すのではなく、自社がどの工程で使い、誰が確認し、顧客へどう説明するかを先に決めることが大切です。
生成AIは、ルールなく使えば管理対象が増えます。一方で、使い方を整理すれば、ラフ制作、画像加工、アイデア出しなど、制作担当者の時間を減らす手段にもなります。まずは最終納品物よりも前の工程から試し、自社に合うAI活用ルールを作っていきましょう。
生成AIを「禁止するか」ではなく「どう使うか」から整理しませんか?
生成AIを制作業務へ取り入れたいものの、「どこまで使ってよいか分からない」「顧客へどう説明すればよいか決まっていない」「デザイナーごとに使い方が違う」という状態であれば、まず現在の制作フローを整理するところから始めると進めやすくなります。
印刷・パッケージ制作だけでなく、見積、校正、原稿確認、顧客対応なども含めて、AIで負担を減らせる業務と、人が確認を残すべき業務を一緒に整理できます。
AIで仕事をラクにする相談会に申し込む
まとめ 注意事項:本相談会は個別の法律判断や法律相談を行うものではありません。著作権・商標・契約その他の法的判断が必要な場合は、弁護士・弁理士等の専門家へご確認ください。
