運送・物流業でAI・DX導入を検討するとき、「まずAI配車システムを入れれば、配車担当者の負担を減らせるのではないか」と考える経営者や管理者は少なくありません。
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しかし、AI配車の導入を先行させても、受注情報が電話やFAXに残り、紙伝票を見ながら運賃を確認し、配送完了後に請求担当者がもう一度入力している状態では、業務全体の効率化にはつながりにくいでしょう。
AI配車を有効に活用するために、最初に取り組むべきことは、受注、伝票、車両、運転者、配送先、運賃、運行実績、請求を一つのデータ系列として管理することです。
配送依頼を受けた時点で登録した情報を、配車、運行、完了確認、運賃計算、請求まで引き継げる状態をつくります。そのうえで、配車案の作成、ルート最適化、荷待ち分析、荷量予測、伝票読取、問い合わせ対応などへAIの活用範囲を広げていくことが重要です。
帝国データバンクが2026年3月に実施した調査では、生成AIを業務で活用している企業は全体の34.5%でした。業界別では「運輸・倉庫」が27.5%で、「建設」の26.4%とともに相対的に低い水準です。また、大企業の活用率が46.5%であるのに対し、中小企業は32.4%、小規模企業は28.0%となっており、企業規模による差もみられます。
運送会社でAI活用が進みにくい背景には、単にITへの関心が低いからではなく、現場の重要な情報が電話、紙、ホワイトボード、担当者の記憶などに残り、AIが処理できるデータになっていないという事情があります。
この記事では、車両10〜100台規模の運送会社を想定し、AI配車の前に何を整理すべきか、どの順序でAI・DX導入を進めればよいかを解説します。
運送・物流業のAI・DX導入は、なぜ配車から始めてはいけないのか
結論からいえば、AI配車は、正確な受注情報、車両情報、運転者情報、配送先条件などがそろって初めて有効に機能します。元となるデータが不足していたり、古かったり、表記が統一されていなかったりすれば、AIが提示する配車案も現場で使いにくいものになります。
AI配車は元データが整っていなければ機能しない
AIが配車案を作るためには、少なくとも次のような情報が必要です。
- いつ集荷するのか
- いつまでに納品するのか
- どこからどこへ運ぶのか
- 荷物の重量や容積はどれくらいか
- どの車格が必要か
- 冷蔵・冷凍などの温度条件があるか
- 荷役作業が必要か
- 運転者に必要な資格があるか
- 車両と運転者がその時間に稼働できるか
- 運転時間や拘束時間に問題がないか
ところが、配送依頼を電話で受け、担当者がメモ用紙へ書き、あとで配車表へ転記している会社では、これらの情報がすべてデータとして残っているとは限りません。
例えば、「いつもの4トン車で」「前回と同じ入口から」「午前中の早い時間に」といった会話だけで依頼が成立している場合、その条件は担当者には分かっても、システムやAIには伝わりません。
AI配車を導入する前に、担当者の頭の中にある暗黙の条件を、共通のデータ項目やマスターデータとして整理する必要があります。
配車だけを効率化しても前後の業務が残る
AIによって配車表を早く作れたとしても、受注入力、伝票整理、運賃照合、請求作成が手作業のままでは、会社全体の業務時間は十分に減りません。よくあるのは、次のような状態です。
- 電話で配送依頼を受け、紙へ記入する
- 紙を見ながらExcelへ受注内容を入力する
- 別のExcelで配車表を作成する
- 運転者へ電話やメッセージで指示する
- 配送後に紙伝票や受領書を回収する
- 運賃表を見て請求金額を計算する
- 会計・請求システムへ再入力する
この流れにAI配車だけを追加すると、受注システム、配車システム、請求システムへ同じ情報を入力することになり、かえって作業が増える可能性があります。重要なのは、配車機能の高度さよりも、「受注時に入力した情報を、その後の業務で何回使い回せるか」です。
物流DXは紙を電子化するだけではない
紙伝票をPDFに変えたり、ホワイトボードをExcelに置き換えたりすることは、デジタル化の第一歩です。しかし、それだけでは物流DXとはいえません。
国土交通省は物流DXについて、単なるデジタル化や機械化ではなく、それによってオペレーション改善や働き方改革を実現し、物流産業のビジネスモデルや物流のあり方を変革する取り組みと位置づけています。
- 受注内容の転記をなくす
- 配車判断の根拠を共有する
- 荷待ち時間をデータで把握する
- 請求漏れを防ぐ
- 車両や案件ごとの採算を確認する
- 熟練担当者以外でも一定水準の配車ができるようにする
こうした業務全体の変化まで設計することが、物流DXの本来の目的です。

運送・物流業で生成AI活用が進みにくい背景
大手物流会社と中小運送会社ではデータ環境が異なる
大手物流会社では、受注管理、倉庫管理、配送管理、動態管理、請求管理などがシステムで連携していることがあります。一方、中小運送会社では、次のように情報が分散しやすい傾向があります。
- 受注は電話、FAX、メール
- 配車はホワイトボードやExcel
- 運転者への連絡は電話や個別メッセージ
- 配送実績は紙の日報
- 受領書は事務所で回収
- 運賃表は紙または担当者別のExcel
- 請求書は別のシステムで作成
AIは、紙や人の記憶にある情報を、そのまま利用できるわけではありません。大手企業と同じ高度なAIを導入する前に、まず「どの情報が、どこにあり、誰が管理しているか」を整理する必要があります。
運送業は例外条件が多い
配車は、単に最短距離の車両を割り当てればよい業務ではありません。実際には、次のような条件を同時に確認します。
- 納品時間
- 車格指定
- 積載量
- 荷台の形状
- 冷蔵・冷凍設備
- フォークリフト資格
- 危険物に関する資格
- 荷主指定の進入経路
- 大型車が通れない道路
- 荷役作業の有無
- 運転者の経験
- 運転時間と休憩時間
- 帰庫後の翌日運行
こうした条件の一部はシステムへ登録できますが、工事中の道路、季節による混雑、納品先担当者の運用変更など、常に変化する情報もあります。そのため、運送業のAI導入では、「すべてをAIに決めさせる」のではなく、「AIが候補を作り、人が確認する」という運用が現実的です。
最初に受注から請求までの業務を一つにつなげる
受注情報を共通フォーマットにする
電話、FAX、メールなど、依頼を受ける方法が複数あっても、社内で登録する項目は統一します。主な項目は次のとおりです。
| 分類 | 管理する情報 |
|---|---|
| 基本情報 | 受注番号、受注日、荷主、担当者 |
| 集荷情報 | 集荷先、集荷日時、連絡先 |
| 納品情報 | 配送先、納品日時、受付条件 |
| 荷物情報 | 品目、荷姿、数量、重量、容積 |
| 車両条件 | 必要車格、荷台仕様、温度帯 |
| 作業条件 | 荷積み、荷下ろし、附帯作業 |
| 運賃情報 | 基本運賃、割増、待機料、高速代 |
| 注意事項 | 進入経路、受付方法、現場ルール |
電話を受けた担当者が自由な文章だけで記録すると、必要な条件が抜ける可能性があります。必須項目と任意項目を決め、「配車担当者が聞き直さなくても判断できる状態」を目指します。
配送案件ごとに共通の管理番号を付ける
受注から請求までをつなげるうえで重要なのが、共通の案件番号です。例えば、一つの配送に「20260804-001」という番号を付けたら、その番号を受注内容、配車内容、車両、運転者、運行実績、納品書、受領書、待機時間、高速道路料金、請求明細、外注費にも使用します。
配送案件に関する情報を同じ番号で検索できれば、「この請求はどの運行に基づくものか」「待機料を請求できているか」といった確認が容易になります。
紙伝票を撮影するだけで終わらせない
紙伝票をスキャンしたり、スマートフォンで撮影したりするだけでも、紛失防止には役立ちます。ただし、画像ファイルを共有フォルダへ保存するだけでは、後から必要な伝票を探しにくくなります。重要なのは、画像を該当する配送案件へひも付けることです。案件画面を開けば、受注内容、配車、運行実績、納品書、受領書、請求状況まで確認できる状態を目指します。
AI配車の前に整備する7つのデータ
1.荷主・受注データ
- 荷主名
- 担当者
- 連絡先
- 締め日
- 支払条件
- 通常の配送パターン
- 運賃契約
- 附帯作業の条件
- 請求書の形式
- 必要な伝票
毎回同じ条件を電話で確認するのではなく、荷主マスターとして登録しておけば、受注入力と配車判断を効率化できます。ただし、契約条件が変更された場合に、誰がマスターを更新するのかも決めておく必要があります。
2.集荷先・配送先データ
- 正式住所
- 地図上の位置
- 受付時間
- 連絡先
- 車両制限
- 高さ・幅・重量制限
- 大型車の進入可否
- 指定ルート
- 待機場所
- 荷役方法
- 受付手続き
- 過去の待機時間
住所表記が複数に分かれていると、同じ配送先が別の場所として集計されることがあります。名称や住所の表記ルールを統一し、重複登録を防ぎましょう。
3.車両データ
- 車両番号
- 車種
- 車格
- 最大積載量
- 荷台寸法
- 荷台形状
- 冷蔵・冷凍設備
- パワーゲート
- 車検期限
- 点検予定
- 修理状況
- 稼働可能時間
- 所属営業所
点検や修理の予定が更新されていなければ、AIが稼働できない車両を配車候補に含める可能性があります。車両マスターは一度作って終わりではなく、日々更新する仕組みが必要です。
4.運転者データ
- 保有免許
- 運転可能な車格
- フォークリフトなどの資格
- 危険物関連の資格
- 担当可能エリア
- 経験のある配送先
- 勤務予定
- 休日
- 運転時間
- 拘束時間
- 休息状況
- 健康・点呼上の確認事項
トラック運転者には拘束時間、休息期間、運転時間などを定める改善基準告示が適用されます。AIが提示した配車案であっても、運行管理者が最新の勤務状況や法令・社内基準を確認しなければなりません。
5.運賃データ
- 荷主別基本運賃
- 車格別運賃
- 距離別運賃
- 重量別運賃
- 時間指定料金
- 高速道路料金
- 待機料
- 荷役料
- 深夜・休日割増
- 燃料サーチャージ
- キャンセル料
契約条件を運賃マスターとして整理し、配送実績から請求候補を作れる状態にします。
6.配車・運行実績データ
- 配車した日時
- 出庫時刻
- 集荷到着・完了時刻
- 納品到着・完了時刻
- 帰庫時刻
- 走行距離
- 実車距離
- 空車距離
- 待機時間
- 荷役時間
- 遅延の有無
- 配車変更の理由
計画と実績を比較することで、「どの配送先で待機が多いか」「どの時間帯に遅延しやすいか」を分析できます。
7.請求・原価データ
- 請求金額
- 高速道路料金
- 燃料費
- 外注費
- 荷役費
- 待機料
- キャンセル料
- 追加料金
- 未請求の明細
- 入金状況
売上だけでなく配送にかかった費用も案件へひも付けることで、荷主別、車両別、配送ルート別の採算を確認しやすくなります。

受注・伝票・運賃・請求を一元化する業務フロー
ステップ1.配送依頼を受注データとして登録する
電話、FAX、メールのどの方法で依頼を受けても、共通の受注画面やフォームへ登録します。最初からすべてを自動化する必要はありません。電話で受けた内容を担当者が入力する方法でも、必要項目と入力ルールが統一されていれば、データ整備の第一歩になります。
ステップ2.受注データから配車対象を作る
受注登録が完了したら、同じ情報を配車対象として表示します。「未配車」「配車済み」「変更」「完了」「キャンセル」などの状態を付け、今どの段階にあるか確認できるようにします。別の配車表へ転記しないことが重要です。
ステップ3.車両と運転者を割り当てる
初期段階では、配車担当者が車両と運転者を選んでも構いません。ただし、積載量超過、車格不一致、資格不足、点検予定、勤務予定との重複、納品遅延の可能性などを警告できると、確認漏れを減らせます。まずは自動決定ではなく、人の判断を支援する仕組みから始める方法が現実的です。
ステップ4.運行実績と伝票を登録する
運転者や事務担当者が、出発、到着、荷役、待機、完了などの実績を登録します。紙の受領書や納品書は、スマートフォンで撮影して案件へ添付する方法もあります。入力負担を増やさないよう、現場で本当に必要な項目に絞りましょう。
ステップ5.運賃を照合して請求データを作る
運行完了後、案件に登録された運賃条件と実績を使って請求候補を作成します。予定外の待機や荷役作業が発生した場合、その実績を請求候補として表示できれば、請求漏れを防ぎやすくなります。最終的な金額は人が確認し、承認後に請求書を発行する流れにします。
データ整備後に進める6つのAI活用
1.配車案の自動作成
AIが受注内容、車両、運転者、納品時間などを照合し、配車候補を提示します。最初は、配車担当者がゼロから配車表を作る代わりに、AIが作ったたたき台を修正する使い方から始めます。AI案と最終決定の差を記録すれば、どの条件がシステムに不足しているかも把握できます。
2.配送ルートの最適化
複数の配送先を回る場合、距離、納品時間、車両条件などから配送順を提案できます。ただし、地図上で最短のルートが、トラックにとって最適とは限りません。大型車通行条件、道幅、混雑、荷主指定の入口、工事や通行止めなどを人が確認します。
3.荷待ち時間の分析
到着時刻と荷役開始時刻を記録すれば、配送先、曜日、時間帯、荷主、車両ごとの荷待ち時間を集計できます。待機時間を感覚ではなくデータで把握することは、配車改善だけでなく、荷主との協議にも役立ちます。
4.荷量・受注量の予測
過去の受注データが蓄積されれば、曜日、月、季節、荷主別の傾向を分析できます。繁忙期に必要な車両台数、外注車両を確保する時期、運転者の勤務計画、点検時期などの判断に利用できます。ただし、予測は確定値ではなく、経営者や配車責任者の判断を補助する情報として扱います。
5.伝票の自動読取
AI-OCRなどを使い、紙伝票から日付、伝票番号、数量、金額などを読み取る方法があります。どの項目を読み取るか、どの案件へひも付けるか、失敗時の確認方法、原本保管、最終確認者を決めます。重要項目は人が確認します。
6.問い合わせ対応の自動化
運行データや案件情報が一元化されていれば、荷物の出発状況、到着予定、受領書、請求書、過去の配送実績などの定型問い合わせへ迅速に回答できます。事故、遅延、破損、契約条件に関する回答は責任者が確認する運用が必要です。
AIに任せてはいけない配車判断と確認体制
道路条件は最新情報と現場知識を確認する
地図データに登録されていても、実際にはトラックが通りにくい道路があります。
- 高さ・幅・重量制限
- 大型車通行禁止
- 工事による通行止め
- 災害による規制
- 積雪や凍結
- 朝夕の進入制限
- 荷主が指定する進入経路
- 待機場所の変更
AIの提案をそのまま確定せず、配車担当者や運転者が最新情報を確認できる仕組みを設けます。
労務管理は運行管理者が最終確認する
- 拘束時間
- 休息期間
- 運転時間
- 連続運転
- 休憩
- 時間外労働
- 休日
- 点呼結果
- 翌日の勤務予定
勤怠システム、デジタコ、配車システムのデータが連携していない場合、AI配車画面だけでは最新の状況を把握できない可能性があります。
安全条件と車両条件は人が承認する
- 最大積載量
- 偏荷重
- 荷崩れリスク
- 温度帯
- 危険物
- 車両設備
- 運転者の資格
- 経験が必要な配送
- 天候や道路状況
AIが「条件を満たしている」と判定しても、元データが間違っていれば判定も誤ります。データ登録者、確認者、承認者を決め、責任の所在を明確にしましょう。
配車案の作成・確認・承認を分ける
- システムまたはAIが配車案を作る
- 配車担当者が配送条件と道路条件を確認する
- 運行管理者が労務・安全条件を確認する
- 必要に応じて責任者が承認する
- 修正した場合は理由を記録する
修正理由を蓄積すれば、「特定の配送先では大型車を避ける」「この運転者は特定設備の扱いに慣れている」といった条件を、今後の配車案へ反映しやすくなります。
車両10〜100台規模の運送会社が進める導入手順
全社の業務を一度に変えようとすると、現場の負担が大きくなります。次の7段階で進める方法が現実的です。
ステップ1.現状の業務フローを書き出す
受注から請求まで、誰が何をしているかを整理します。
| 業務 | 担当者 | 使用媒体 | 次工程への渡し方 |
|---|---|---|---|
| 受注 | 営業・事務 | 電話、FAX | 紙、口頭 |
| 配車 | 配車担当 | Excel、ホワイトボード | 電話、メッセージ |
| 運行 | 運転者 | 紙日報 | 帰庫後に提出 |
| 伝票確認 | 事務 | 紙 | ファイル保管 |
| 運賃計算 | 事務 | 運賃表、Excel | 請求システムへ入力 |
| 請求 | 経理 | 請求ソフト | 郵送、メール |
現在の流れを見える化すると、転記や待ち時間が発生している場所が分かります。
ステップ2.二重入力と確認作業を洗い出す
同じ情報を何回入力しているか確認します。担当者が毎回確認している作業を、「判断が必要な確認」と「データがあれば自動化できる確認」に分けます。
ステップ3.共通データ項目とマスターを決める
最初からすべての項目を登録する必要はありません。まずは荷主、配送先、車両、運転者、運賃、配送案件番号を優先し、重複や表記ゆれを整理します。
ステップ4.受注から請求までを一元化する
AIを導入する前に、正確な業務データを蓄積します。新しいシステムを導入する方法だけでなく、既存の配車システム、会計システム、クラウドデータベースを連携する方法もあります。「高機能か」だけでなく、「再入力をどこまで減らせるか」を重視します。
ステップ5.一つの営業所・荷主・配送業務で試す
依頼件数がある程度多い、繰り返しが多い、配送条件が比較的安定している、協力的な担当者がいる、効果を数字で測りやすい業務から始めます。
ステップ6.配車案や伝票読取からAIを試す
配車の候補作成、配送順の提案、伝票の項目抽出、日報の要約、問い合わせ回答案、荷待ち時間の集計など、結果を人が確認しやすい業務から始めます。
ステップ7.効果を確認して対象範囲を広げる
試験導入の前後で数値を比較し、効果が確認できたら、別の荷主、営業所、配送パターンへ広げます。

運送・物流DXで失敗しやすい進め方
配車システムを導入することが目的になる
「AI配車を導入する」という目標だけでは、成功を判断できません。配車表の作成時間、電話連絡、空車距離、請求漏れなど、改善したい業務と測定する指標を導入前に決めます。
現場の例外条件を整理せず自動化する
担当者しか知らないルールを整理せずに導入すると、AIが作った配車案を毎回大幅に修正することになります。修正理由を記録し、条件をマスターや配車ルールへ追加します。
同じ情報を複数システムへ入力する
受注、配車、動態管理、請求を別々のシステムで管理する場合、連携方法と正しい情報の管理元を決めます。
入力ルールを決めない
正式名称、略称、住所表記、必須項目、変更者、変更日などのルールを決めます。
導入後の責任者を決めない
マスター更新、操作教育、問い合わせ対応、改善要望の整理を担当する責任者を決めます。
導入するシステムを選ぶときの比較ポイント
受注から請求までをどこまで一元化できるか
- 受注登録
- 配車
- 運転者への指示
- 運行実績
- 伝票保存
- 運賃計算
- 請求
- 原価管理
既存システムと連携できるか
- API連携
- CSV入出力
- 会計ソフト連携
- 請求システム連携
- デジタコ連携
- 動態管理連携
- 勤怠管理連携
運送業固有の条件を登録できるか
- 車格
- 積載量
- 温度帯
- 荷姿
- 荷役
- 待機
- 附帯作業
- 荷主別運賃
- 運転者資格
AIの提案理由と修正履歴を確認できるか
- どの条件を基に配車したか
- 条件違反の警告
- 誰が修正したか
- 修正理由
- 過去の配車
現場が使える入力方法か
- スマートフォン操作
- 文字の見やすさ
- 入力項目数
- 通信が不安定な場合の利用
- 写真添付
- 音声入力
- 高齢の運転者への配慮
導入支援の範囲は十分か
- 現状業務の整理
- マスターデータ作成
- データ移行
- 初期設定
- 操作研修
- 運用ルール作成
- システム連携
- 導入後の問い合わせ対応
- 改善提案
「連携可能」とされていても、別料金の開発や設定が必要な場合があります。対象範囲、費用、自社で準備する作業を確認しましょう。
導入効果を測るためのKPI
事務・配車業務
- 1日当たりの受注入力時間
- 配車表の作成時間
- 配車変更への対応時間
- 同じ情報を入力する回数
- 運転者への電話連絡件数
- 荷主からの問い合わせ件数
運行効率
- 車両稼働率
- 実車率
- 空車距離
- 1台当たりの配送件数
- 配送遅延件数
- 荷待ち時間
- 荷役時間
請求・収益管理
- 請求書作成時間
- 運賃の照合時間
- 請求漏れ件数
- 待機料の請求件数
- 附帯作業料の請求件数
- 案件別収支を把握できる割合
安全・労務管理
- 労働時間超過の警告件数
- AI配車案の手動修正件数
- 安全条件による差し戻し件数
- 配車案の承認率
- 点呼後の配車変更件数
AI配車案の修正率が高い場合、AIの性能が低いと決めつけるのではなく、必要な条件がデータ化されているかを確認します。
運送・物流業のAI・DX導入に関するよくある質問
AI配車を導入すれば配車担当者は不要になりますか
AI配車を導入しても、配車担当者が不要になるとは限りません。AIは配車候補を作れますが、最新の道路状況、荷主固有のルール、運転者の体調、安全条件まで常に正確に判断できるわけではありません。担当者の役割は、配車表をゼロから作る作業から、AI案を確認・修正し、例外に対応する仕事へ変わっていくと考えられます。
紙伝票が多くても物流DXを始められますか
始められます。すべての伝票を一度に廃止するのではなく、まず必要な項目を決め、伝票画像を配送案件へひも付けます。その後、読取精度や費用対効果を確認しながら、自動読取や電子伝票へ進めます。
車両10台程度でもAI配車は必要ですか
必要性は車両台数だけでは決まりません。時間指定、配車変更、車格の使い分け、担当者負担が大きい場合は効果が期待できます。固定ルート中心の場合は、受注や請求の一元化を優先した方がよいこともあります。
現在使っているExcelをそのまま活用できますか
Excelは現状整理や試験運用には活用できます。ただし、複数人編集、変更履歴、権限管理、マスターデータ統一、システム連携には限界があります。正式な管理データを決め、必要に応じてクラウドシステムへ移行します。
生成AIは運送会社のどの業務から使えますか
日報や会議記録の要約、問い合わせ回答案、業務マニュアル、事故・遅延報告の文章整理、社内規程の検索、伝票内容の整理、荷待ちデータの分析補助など、結果を人が確認しやすい業務から始められます。
まとめ|AI配車の前に受注から請求までのデータをつなげる
運送・物流業のAI・DX導入では、AI配車システムの選定から始めるのではなく、受注から請求までの業務とデータを整理することが重要です。
電話受注、紙伝票、車両、運転者、配送先、運賃、運行実績、請求が分断されたままでは、AIへ正確な条件を渡せません。まずは、一つの配送案件番号を軸に情報をつなげ、受注時に入力した内容を配車、運行、伝票確認、請求まで引き継げる状態をつくりましょう。
その後、配車候補の作成、配送ルートの最適化、荷待ち時間の分析、荷量・受注量の予測、伝票の自動読取、問い合わせ対応の自動化へ進みます。
道路条件、労務管理、積載量、運転者の資格、安全条件は、配車担当者や運行管理者が最終確認する体制が必要です。最初から全社一斉に導入するのではなく、一つの営業所、荷主、配送パターンを対象に試し、配車時間、待機時間、空車距離、請求漏れなどの変化を測りながら対象を広げることが、失敗を防ぐポイントです。
参考情報
- 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」:https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260514-genai/
- 国土交通省「物流DXの推進」:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/seisakutokatsu_freight_mn1_000018.html
- 国土交通省 改正物流効率化法ポータル:https://www.revised-logistics-act-portal.mlit.go.jp/
- 国土交通省 トラック運転者の改善基準告示関連資料:https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000306033.pdf
※制度、法令、調査結果、システムの機能や料金は変更される場合があります。導入や運用を判断する際は、最新の公式情報をご確認ください。
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