介護ソフトを入れても、なぜスプレッドシートの仕事は消えないのか
「介護ソフトを導入したのだから、Excelは全部なくした方がいい」と考える必要はありません。
介護ソフトとスプレッドシートでは、そもそも得意な仕事が違うからです。
介護ソフトは国保連請求・実績・帳票の「基幹」になっている
介護ソフトの重要な役割は、利用者情報やサービス実績を管理し、請求や必要な帳票につなげることです。
国保連請求のための実績、サービス提供に関する記録、請求に必要な情報などは、事業所独自のExcelではなく、基幹となる介護ソフトで管理する方が自然です。
制度改定への対応もあるため、介護ソフト側へ集約すべき情報を、わざわざ別のスプレッドシートだけで管理するのは得策ではありません。
一方で、介護ソフトだけですべての日常業務が使いやすくなるとは限りません。
利用者対応・送迎・加算管理・経営数字にはスプレッドシートが残りやすい
たとえばデイサービスなら、翌日の送迎順を一覧にして職員へ見せたいことがあります。
訪問介護なら、ヘルパーごとの訪問予定と急なキャンセル、代替職員の調整を一覧で見たいでしょう。
放課後等デイサービスでは、曜日ごとの利用予定、学校への迎え、帰宅時間などを独自の表で管理している事業所があります。
管理者であれば、利用者数、稼働率、売上、加算、職員配置などを月次のスプレッドシートにまとめて見たいこともあります。
こうした表は、請求ソフトの代わりではありません。
現場で見たい形に情報を並べ直すための表です。
そのため、「介護ソフトがあるのにExcelを使っているから遅れている」という考え方ではなく、役割を分けて考える必要があります。
問題はExcelが残ることではなく「同じ情報を二度入力すること」
たとえば利用者Aさんの利用実績について、介護ソフトへ入力したあと、管理者が同じ利用回数をExcelへ入力しているとします。
この場合、Excelを使っていること自体が問題ではありません。
問題なのは、
介護ソフト→人が画面を見る→Excelへもう一度入力する
という工程です。
介護ソフトからCSVを出力できるなら、そのCSVをスプレッドシート用の形式に整えれば、人が一件ずつ転記する必要はありません。
紙や音声で残っている内容についても、AIで必要な項目へ整理したうえで、人が確認して反映する形へ変えられる場合があります。
介護ソフトとExcelを一本化できないか悩む前に、
「人間が情報の運び屋になっている場所はどこか」
を見ることが大切です。
まず「どこで二重入力しているか」を棚卸しする

AIを選ぶ前にやることがあります。
現在の業務で、同じ内容をどこからどこへ転記しているのかを書き出します。
ここを飛ばして「とりあえずAIを導入する」と、便利なAIは増えたのに業務手順は変わらず、かえって入力先が一つ増えることがあります。
手書き記録から介護ソフトへ入力している
現場で紙に記録し、事業所へ戻ってから介護ソフトへ入力しているのであれば、典型的な転記業務です。
紙そのものをすぐ廃止できなくても構いません。
紙や音声から必要項目をAIが整理し、人は内容を確認して介護ソフトへ反映するという形が考えられます。
詳しい進め方は、介護記録の転記残業をAIで減らすで解説します。
介護ソフトの実績を提供票やExcelへ転記している
介護ソフトにすでに入っている実績を、職員が画面で確認しながらExcelへ入力している場合も見直し候補です。
元データがすでにデジタル化されているなら、AI以前に、
「CSVを出せないか」
「標準連携が使えないか」
「ベンダー側に出力機能がないか」
を確認します。
画面に存在する数字を人がもう一度入力する工程は、優先して削減したい部分です。
送迎表を別に作っている
デイサービスや放課後等デイサービスでは、介護ソフトや支援ソフトに利用予定が入っていても、送迎順や車両、担当職員はExcelで管理していることがあります。
この場合、「送迎表を介護ソフトへ移す」必要はありません。
利用予定をCSVで出し、送迎表に必要な利用者だけを抽出して並べ替える方が現実的なことがあります。
加算要件チェック表を別管理している
加算対象となる利用者や職員配置、必要な記録、研修、会議などを独自のExcelで確認している事業所もあります。
これもスプレッドシートをやめることより、
介護ソフトや勤怠データなどにすでにある情報を、もう一度手で打っていないか
を確認します。
加算関連の書類作成については、処遇改善加算の実績報告書と生産性向上推進体制加算の委員会議事録をAIで作るも参考にしてください。
家族連絡簿と介護記録へ似た文章を書いている
介護記録を書いたあと、家族向け連絡にも似た文章を書く。
または家族へLINEで返信した内容を、あとから記録へ転記する。
これも「二重入力」の一種です。
ただし、介護記録と家族向け連絡では文章の目的が違います。
そのため完全なコピーではなく、一つの元情報から「記録向け」「家族向け」に文章を整える使い方がAIと相性のよい領域です。
家族対応については、デイ・放デイの家族LINEを職員が手打ちしていませんかで詳しく扱います。
事故・ヒヤリハットを複数の表へ記載している
事故報告書を作ったあと、施設内の一覧表にも日時や分類、対応結果を入力していることがあります。
同じ情報から複数の帳票へ必要項目を振り分ける仕事も、AIや表計算による自動化を検討しやすい部分です。
最初の棚卸しは、次のような表で十分です。
| 元になる情報 | 入力先① | 入力先② | 今の作業 | 抜けた場合の影響 | 改善候補 |
|---|---|---|---|---|---|
| 手書き介護記録 | 紙 | 介護ソフト | 職員が再入力 | 記録漏れ | AIで項目化 |
| 利用実績 | 介護ソフト | Excel | 画面を見ながら転記 | 集計ズレ | CSV連携 |
| 利用予定 | ソフト | 送迎表 | 毎日転記 | 送迎漏れ | CSV+整形 |
| 家族との連絡 | LINE等 | 介護記録 | 要点を再入力 | 記録漏れ | AIで要約・下書き |
| 加算関連情報 | 各種帳票 | チェック表 | 担当者が集約 | 算定確認漏れ | CSV・AI・チェック |
ここまで書き出せれば、「何をAI化すればよいか」がかなり見えてきます。
介護ソフトへ寄せる・スプレッドに残す・AI・連携の4つを使い分ける

二重入力を見つけたら、すべてをAIに任せるのではなく、4つに分けて考えます。
| 判断 | 向いている業務 |
|---|---|
| 介護ソフトへ寄せる | 請求、制度上必要な記録、基幹となる利用者・実績データ |
| スプレッドシートに残す | 送迎、独自チェック、会議用集計、経営管理など一覧性が必要なもの |
| AIに渡す | 紙、音声、自由記述、形式が揃っていない文章の整理 |
| CSV・標準連携を使う | 同じ項目を大量・反復して移す定型データ |
介護ソフトへ寄せるもの
国保連請求などの基幹業務に必要な情報は、介護ソフト側を正として扱う方が管理しやすくなります。
同じ利用者情報について、
「正式な内容は介護ソフトなのかExcelなのか」
が分からなくなる状態は避けなければなりません。
特に利用者番号、認定期間、サービス区分、実績など、請求へ影響する項目は「どこを正本とするのか」を決めます。
スプレッドシートに残してよいもの
スプレッドシートのメリットは、事業所独自の見方へ柔軟に変えられることです。
管理者が毎朝見る利用予定一覧、送迎表、会議用の集計、経営数字などは、必ずしも介護ソフトへ押し込む必要はありません。
大切なのは、
スプレッドシートに残すことと、人が転記することを分けること
です。
「Excelを残したいから手入力も残す」必要はありません。
AIに転記させるもの
AIが力を発揮しやすいのは、データの形が揃っていない仕事です。
たとえば、
「今日の訪問内容を職員がスマートフォンへ話す」
「紙のメモを読み取る」
「長い家族連絡から必要事項を抜き出す」
といった情報を、決められた項目に分ける仕事です。
従来のExcel関数では扱いにくかった文章や音声を、構造化された下書きへ変換できるのが生成AIの強みです。
ただしAIの出力をそのまま確定情報として扱うのではなく、最後は職員が確認する運用にします。
CSVや標準連携を優先するもの
逆に、すでにデータが整っている場合、AIを挟む必要はありません。
介護ソフトから、
利用者番号、日付、サービスコード、回数、単位数
などが決まった列でCSVとして出力できるのであれば、そのまま表計算やシステム連携で処理した方が再現性を高くしやすくなります。
AIは便利ですが、定型データを毎回AIに解釈させることが最適とは限りません。
標準連携できるところは標準連携。
CSVで済むところはCSV。
形式が揃っていない部分をAI。
この順番で考えることが、長く使える仕組みにつながります。
AIに転記させる基本は2つの型だけ
小規模事業所が最初から複雑な自動化システムを構築する必要はありません。
まずは2つの型で考えると分かりやすくなります。
型1 紙・音声→AIが構造化→介護ソフトへ
たとえば訪問介護職員がサービス終了後に、
「今日は食事量は普段どおり。薬は確認済み。少し足のむくみが気になったので家族へ共有した」
と音声で残したとします。
AIには、その文章を自由に要約させるだけではなく、
「実施内容」
「本人の状態」
「変化」
「家族等への連絡」
「次回確認事項」
のように、事業所で決めた形式へ整理させます。
流れは次のようになります。
トリガー: サービス終了、支援終了、送迎終了など。
AIへ渡すもの: 職員の音声メモ、紙メモを読み取った文章など。
反映先: 介護ソフトや支援記録の入力欄。
人が確認する箇所: 日付、対象利用者、事実関係、数値、医療・介護上重要な表現。
注意点: AIの文章をそのまま確定記録にせず、職員が原情報と照合して確定します。
この方法なら、職員の仕事を「文章をゼロから入力する」から「整理された文章を確認する」に変えられます。
具体的な記録業務の進め方は、介護記録の転記残業をAIで減らすで解説しています。
ケアマネ業務については、ケアマネの支援経過・担当者会議議事録・モニタリング記録をAIで整文するもあわせて確認してください。
型2 介護ソフトのCSV→AIが整形→スプレッドシートへ
もう一つは、逆方向です。
介護ソフトにすでに情報が入っており、それを現場用の表へ持っていく場合です。
たとえば介護ソフトから出力したCSVに、
利用者ID、サービス日、サービス種別、回数、担当者
など多数の列が入っているとします。
管理会議では、その全部は必要ありません。
利用者別の利用回数と担当者だけ見たいのであれば、必要列だけ抽出し、並べ替え、集計してスプレッドシートへ反映します。
ただし毎回同じ列を同じ形に変換するだけなら、最終的には表計算の関数やCSV取込、システム連携など、より固定的な方法へ移行した方が安定する場合があります。
AIは最初の試作に便利です。
「このCSVからどの項目をどう並べれば管理表になるのか」
を整理し、運用が固まったら固定処理へ置き換える方法もあります。
AIが得意なのは「入力」より「形をそろえること」
生成AIを単なる入力ロボットだと考えると、使い方を誤りやすくなります。
介護・福祉現場でAIが特に役立つのは、
ばらばらな情報を一定の形へそろえる工程
です。
音声を決められた項目へ分ける。
長い文章から必要事項を抜き出す。
CSVの列名が分かりづらいときに意味を整理する。
職員ごとに違う文章表現を、一定の記録形式へ整える。
こうした「整える仕事」にAIを使い、その後の確定処理は人または既存システムが担当する方が実務に向いています。
人の仕事を「入力」から「チェック」に変える
AI活用で目指したいのは「人が何もしなくなること」ではありません。
人が入力する箇所を減らし、人にしかできない確認へ時間を使うことです。
特に次の情報は、人が必ず確認する前提にします。
利用者番号
似た氏名の利用者や同姓同名がいる場合、違う利用者へ記録を紐づけるミスは避けなければなりません。
AIが文章を整理できても、「誰の情報か」を確定する工程まで無条件に任せるのは危険です。
内部管理番号などと照合し、対象者が正しいか確認します。
認定期間
要介護認定や有効期間など、請求に関係する期間情報については、元システムの登録内容を基準に確認します。
スプレッドシート側へ写す場合も、AIが推測して補完する運用にはしません。
サービス・加算区分
サービス種別や加算区分も請求へ影響するため、AIの文章生成だけで確定させない方が安全です。
介護ソフトや正式な元データを確認し、最終判断は担当者が行います。
「全部入力する」から「間違っているところだけ見る」へ
この考え方が、二重入力削減の大きなポイントです。
100人分の情報を人がゼロから入力する場合、100人分の入力作業が必要です。
一方で、元データから自動的に一覧を作り、
「利用者番号は合っているか」
「期間外の人はいないか」
「異常値だけ色を付ける」
といった形にすれば、人が見るべき対象を絞れます。
仕事の中心を、
作成する→確認する
へ変えるわけです。
介護現場でAIを導入するとき、最初から「完全自動化」を目標にする必要はありません。
むしろ小規模事業所では、
定型作業は機械、人は例外処理と最終判断
という分担の方が定着しやすくなります。
制度・データ連携は「AIで転記」より先に確認する
介護・福祉分野では、AIとは別に公的なデータ連携や標準化が進んでいます。
そのため、二重入力を見つけたら、すぐAIを作るのではなく、
既存の標準連携でその転記自体をなくせないか
を先に確認することが重要です。
ケアプランデータ連携など、正規の連携が使えるなら優先する
厚生労働省は、介護分野のデータ連携に関する標準仕様やCSVファイルレイアウトなどを公開しています。また、介護情報基盤に関しても、2026年5月には介護保険資格確認等WEBサービスとの連携におけるAPI仕様書の暫定版、2026年8月にはAPI標準仕様書第1.0版に関する情報が掲載されており、仕様の整備が続いています。(参考:厚生労働省)
つまり、今は職員が転記している業務であっても、今後の標準連携や利用中ソフトの対応状況によって、AIを挟まず連携できる可能性があります。
AIで独自の転記フローを作る前に、
介護ソフトのベンダーへ「CSV出力はできますか」「標準連携に対応していますか」「今後の介護情報基盤への対応予定はどうなっていますか」と確認しておく方がよいでしょう。
LIFEも独自転記の前にCSV連携仕様を確認する
LIFEについても、介護ソフトとのCSV連携に関する標準仕様が公開・更新されています。厚生労働省の「科学的介護」のページでは、2026年5月11日更新のCSV連携仕様書や関連事務連絡が掲載されています。(参考:厚生労働省)
したがって、
「LIFEへ入力する内容をAIで画面転記する」
という発想から入るのではなく、
利用している介護ソフトが公式のCSV連携へどう対応しているか
を確認する方が先です。
AIは、公式連携では埋められない前後工程を整理するために使う方が適しています。
2026年度介護報酬改定に関する情報は最新資料を確認する
厚生労働省は令和8年度(2026年度)介護報酬改定について、改定概要、告示、通知、各種様式などを公開しています。令和8年6月以降の加算算定に係る様式であることが明記された資料もあります。(参考:厚生労働省)
制度改定に伴い、「去年使っていたExcelをそのまま今年も使う」ことが適切とは限りません。
加算のチェック表などをAIやスプレッドシートで作る場合も、最新の算定要件や様式を一次情報で確認したうえで設計してください。
また、今後の制度改定について検討段階の情報を確定事項として業務フローへ組み込まないことも重要です。
制度・標準仕様は更新されます。
最新情報は厚生労働省、国民健康保険中央会、利用中の介護ソフトベンダーなどの一次情報で必ず確認してください。
利用者情報をAIへ入れる前に決める線引き
介護や障害福祉でAIを使う場合、「便利だから職員が自由に利用者情報を入れる」という運用にはしない方がよいでしょう。
まず法人・事業所として、何を入力してよく、何を入力しないのかを決めます。
氏名・被保険者番号をそのまま入れない
AIへ渡す必要がない場面では、
「山田太郎さん」
ではなく、
「利用者A」
「利用者001」
など、AI側だけでは本人を特定しにくい記号へ置き換えます。
被保険者番号など、処理に不要な識別情報も入力しない設計を基本にします。
AIに何でも渡してから削除するのではなく、
AIへ渡す前に情報を減らす
ことが重要です。
法人向け環境と社内ルールを先に決める
業務利用するAIについては、サービスの契約内容、データの取扱い、管理機能などを確認し、法人として利用環境を決めます。
さらに、
誰が使えるのか。
入力してよい情報は何か。
入力禁止情報は何か。
出力を誰が確認するのか。
どの業務ではAIを使わないのか。
という社内ルールを決めてから運用します。
この記事では個人情報保護制度全体の解説までは行いませんが、少なくとも利用者情報を扱うAI運用を職員個人の判断へ任せないことは重要です。
事務職員がいない小規模事業所ほど「全部自動化」しない
従業員30名以下の事業所では、AI導入だけを担当する職員がいるケースは多くありません。
管理者が現場へ入りながら請求も見る。
ケアマネ自身が記録や会議録を作る。
サ責が訪問調整と記録確認を兼務する。
児発管・サビ管が支援計画と現場対応を両方担う。
こうした組織では、大規模な自動化システムを一度に作るより、毎日の二重入力を一つずつ消す方が定着しやすくなります。
厚生労働省の調査では、令和3年10月1日時点の居宅介護支援事業所について、事務職員が「有」と回答した割合は22.2%でした。これは現在のすべての介護・福祉事業所の配置率を示す数字ではなく、調査時点・対象を限定して読む必要がありますが、「専任事務職員がいる前提で業務改善を考えない」という視点の参考になります。
最初は一つの二重入力だけを消す
たとえば最初の対象を、
「毎日の介護記録」
だけにします。
あるいは、
「毎週作っている利用実績一覧」
だけにします。
一つの業務で、
入力時間が減ったか。
間違いが増えていないか。
職員が使えているか。
確認方法が分かりやすいか。
を見ます。
うまくいったら次の業務へ広げます。
毎日起きる転記から優先する
月に一度30分かかる仕事より、毎日全職員が10分ずつ行っている作業の方が、改善効果が大きくなる場合があります。
優先順位をつけるなら、
発生頻度が高い
複数職員がやっている
同じ内容を繰り返している
転記ミスが後工程へ影響する
という仕事から見ていきます。
管理者自身が保守できる形にする
小規模事業所では、「作った人しか直せない仕組み」は長続きしません。
担当者が辞めたら動かなくなる。
Excelの列を一つ変えたらエラーになる。
何かあるたび外部業者へ依頼する。
これでは新しい属人化が生まれます。
最初は多少自動化率が低くても、
何を入力して、どこへ出て、人がどこを見るか
を管理者が説明できる仕組みを優先した方が運用しやすくなります。
二重入力の先にある業務も、一つずつAIへ渡せる
介護ソフトとスプレッドシートの二重入力を整理すると、その先にある別の手作業も見えてきます。
大切なのは、「介護AI活用を一度に全部やる」のではなく、同じ考え方で一つずつ改善することです。
ケアマネの記録を整える
担当者会議のメモ、モニタリング、支援経過など、内容はあるのに文章へ整える作業に時間がかかる場合は、ケアマネの支援経過・担当者会議議事録・モニタリング記録をAIで整文するを参考にしてください。
個別支援計画の下書きを作る
障害福祉や児童発達支援では、支援記録やモニタリング内容から個別支援計画の下書きを整理する仕事があります。
AIに最終判断をさせるのではなく、児発管・サビ管が仕上げる前段階の下書きとして使う方法は、個別支援計画の下書きをAIで作り児発管・サビ管が仕上げるで解説します。
家族LINEの手入力を減らす
デイサービスや放課後等デイサービスでは、家族への連絡が職員の負担になりやすい業務です。
記録にすでにある情報を使って家族向け文章を作るなど、一つの情報を再利用する考え方については、デイ・放デイの家族LINEを職員が手打ちしていませんかをご覧ください。
訪問介護のスケジュール調整を減らす
訪問介護では、キャンセルや担当変更のたびにExcelを書き換え、職員へ連絡し、別の表も修正することがあります。
この業務は、訪問介護のスケジュール作成と急なキャンセル調整をExcel×AIで回すで詳しく説明します。
国保連の返戻を減らす
二重入力によって実績や提供票に不一致が起きると、後工程の確認にも影響します。
返戻理由の整理や再請求前チェックについては、国保連の返戻を減らすへつなげます。
運営指導前の書類確認を効率化する
「どこに何の記録があるか分からない」という状態は、日常業務だけでなく運営指導時の確認負担にもつながります。
書類のチェック方法については、運営指導(実地指導)の必要書類チェックと自己点検をAIで回すをご覧ください。
外国人介護職員の記録を支援する
介護内容は理解していても、日本語の記録文章に時間がかかる職員については、音声や短い日本語から文章を整える使い方も考えられます。
具体的な運用ルールは、外国人介護職員の日本語記録をAIで整文・翻訳する運用ルールで扱います。
よくある質問
介護ソフトのベンダーに頼めば二重入力はなくせませんか?
まずベンダーへ確認することをおすすめします。
介護ソフトに標準機能、CSV出力、外部連携機能が用意されているなら、独自にAIを作るよりそちらを使った方が安定する場合があります。
特に定型データについては、AIより公式連携を優先します。
一方、事業所独自の送迎表、会議用管理表、経営者が作ったExcelなどまで、介護ソフト側がすべて対応できるとは限りません。
その「基幹システムと現場独自業務の隙間」がAIの対象になります。
事務職員がいない小規模事業所でもできますか?
できますが、最初から大きなシステムを作らないことが重要です。
たとえば、
「毎日30分かかっている転記を一つなくす」
ところから始めます。
AI活用の担当者を新しく一人置くのではなく、今その仕事をしている管理者やサ責、ケアマネが確認できる単純なフローにする方が定着しやすくなります。
AIとCSV連携はどう使い分ければよいですか?
すでに項目や形式が決まっているデータはCSV・システム連携を優先します。
紙、音声、自由記述など、そのままでは列に入れにくい情報を一定の項目へ変えるところにAIを使うと分かりやすくなります。
簡単に言えば、
揃ったデータを運ぶなら連携。揃っていない情報を整えるならAI。
という考え方です。
AIを使えば介護ソフトへの入力を完全自動化できますか?
完全自動化を最初の目標にする必要はありません。
特に利用者、認定期間、サービス区分、加算、請求へ影響する情報については、人の確認を残す方が安全です。
「入力作業をゼロにする」より、
AIが下書き・整理し、人が重要項目をチェックして確定する
ところから始める方が現場へ導入しやすくなります。
見守りセンサーなどの介護テクノロジー導入とは違いますか?
この記事で扱っているのは、情報入力・転記・整理といった事務業務の改善です。
見守りセンサー、移乗支援機器などの介護テクノロジーとは導入目的や検討する機器が異なります。
介護テクノロジーについては、見守りセンサーや移乗リフトなど介護テクノロジーと離職率の記事で別に解説しています。
補助制度についても年度、地域、対象経費、申請条件等によって内容が変わるため、導入時点の公募要領や自治体・事務局等の一次情報を確認してください。
まとめ|介護ソフトとスプレッドシートを捨てず「二度打ち」だけをなくす
介護ソフトを導入してもExcelやスプレッドシートが残ること自体は、問題ではありません。
国保連請求や制度上必要な情報は介護ソフト。
送迎表や現場独自のチェック表、会議用集計、経営数字などはスプレッドシート。
それぞれ役割が違うからです。
問題なのは、その間を職員が毎回手でつないでいることです。
最初に行うのは、新しいソフト探しではありません。
現在の業務を、
トリガー→元になる情報→入力先→もう一つの入力先→人が確認している項目
という順番で棚卸しします。
そして、
介護ソフトへ寄せる。
スプレッドシートに残す。
AIに整理させる。
CSVや標準連携でつなぐ。
という4つに分けます。
紙や音声、自由記述など、形が揃っていない情報を整える仕事にはAIが向いています。
すでに形が揃った大量のデータを移動するなら、CSVや標準連携を優先します。
人に残すのは、利用者番号、認定期間、加算区分などの重要項目と、最終判断です。
こうすることで、職員の仕事を、
「同じ内容を何度も入力する」から「AIやシステムが作った内容を確認する」
へ変えられます。
小規模な介護・障害福祉事業所ほど、一度にすべてをDX化する必要はありません。
まずは毎日発生している一つの二重入力から減らしていくことが、現場に定着するAI活用への第一歩です。
AIは導入して終わりではありません。介護・障害福祉の現場では、現在使っている介護ソフトやスプレッドシートを活かしながら、AIへ任せる部分、人が確認する部分、既存システムの連携を使う部分を分け、職員が実際に使い続けられる業務フローへ落とし込むことが重要です。既存業務の棚卸しからAI導入、運用ルールづくり、現場への定着まで伴走します。
