この記事の結論
紹介や市町村の窓口を経由して来る相談者が確かめたいのは、「この人に任せて大丈夫か」の一点だけです。
その答えになるのは検索順位でもホームページの見た目でもなく、過去に同じような案件をどう終わらせたかという実績のエビデンスです。
エビデンスの正体は、案件記録から匿名化して起こした解決事例と、依頼者本人の言葉で残ったお客様の声の二つです。
そしてそれを届ける場所は、紙の事例集・面談で開く資料・行政や専門職に渡す活動報告という、ネットを経由しない三つの形になります。
案件記録の下書き整形はAIに任せられますが、匿名化の基準づくりと掲載同意の取得だけは司法書士が自分でやってください。
司法書士事務所の所長と実績の話をすると、ほぼ必ず同じ言葉が出てきます。「事例なんて出せません、守秘義務があるので」。これは正しい反応です。ただ、そこで止まってしまうと、事務所が十年かけて積み上げた仕事は所長と一部のベテラン補助者の頭の中にしか残らず、紹介元にも相談者にも一行も伝わりません。実際には、守秘義務を守ったまま出せる形は存在します。問題は「出す・出さない」ではなく、「どこまで削れば出せるか」を事務所として決めていないことです。
私はITコーディネータとして、埼玉を中心に士業事務所のIT導入と補助金申請を支援しています。その中で、AIを入れて事務作業を軽くした事務所ほど、次に「浮いた時間を何に使うか」で手が止まります。答えのひとつが、この記事のテーマである実績と信頼の可視化です。この記事では、案件記録から解決事例を匿名化して起こす手順、置き換えの具体的なルール、依頼者から掲載の同意をもらう段取り、そしてできあがった事例集を紙・面談・行政ルートでどう使うかまでを、そのまま真似できる粒度で書きます。ホームページやSEOの話は扱いません。ネットを使わない相談者に届く形が主役です。
紹介と行政ルートの相談者は、何を見て「この人で大丈夫か」を決めているか
司法書士事務所への相談は、検索から入ってくる層と、人づてに入ってくる層で流入の構造がまったく違います。後者は相談する前にすでに一人分の判断を経由しています。紹介者が「あそこなら大丈夫」と言った時点で、相談者の中では審査の半分が終わっているのです。だからこの層に効くのは、広告文でも料金の安さでもなく、紹介者が自信をもって名前を出せる材料です。

紹介者は自分の顔を貸している
不動産会社の担当者、税理士、地域包括支援センターの相談員、金融機関の渉外担当。この人たちが司法書士を紹介するとき、彼らは自分の信用を担保に差し出しています。紹介した先で揉めれば、傷つくのは紹介者の顔です。したがって彼らが本当に知りたいのは「腕がいいか」ではなく「自分が恥をかかない相手か」です。
この基準は、実績の見せ方に直接跳ね返ります。難しい案件を鮮やかに解決した武勇伝より、「連絡が途切れない」「見積りどおりに終わる」「高齢の方にもう一度説明してくれる」といった、事故が起きない証拠のほうが刺さります。事例に書くべきは結果の派手さではなく、途中経過の丁寧さです。
行政の窓口担当者が知りたいのは「揉めずに終わるか」
市役所の市民相談、社会福祉協議会、地域包括支援センターからの紹介は、担当者が個人の判断で名前を挙げる場合と、複数の事務所を名簿で渡す場合があります。どちらにしても担当者の関心は同じで、紹介した相談者が後から窓口に苦情を持ち込まないことです。相談者が高齢であったり、判断能力に不安があったり、家族関係が複雑であるほどこの警戒は強くなります。
ここで効くのが、その窓口が普段扱っている類型と同じ事例です。「独居の高齢者からの相談で、遠方の親族と連絡がつかないところから始めた相続登記」のような事例が一枚あるだけで、担当者は自分の抱えている案件を重ねて読めます。汎用的な業務案内のパンフレットは、この置き換えができません。
「実績のエビデンス」とは具体的に何を指すか
実績という言葉は曖昧なので、事務所の中では三つに分けて扱ってください。ひとつめは件数の実績で、「相続登記の受任は年間およそ何件」「成年後見の受任中の案件が何件」といった量の情報です。ふたつめが解決事例で、一件の案件を経緯・つまずき・処理・結果の順に短く再構成したものです。みっつめがお客様の声で、依頼者本人の言葉で書かれた感想です。
三つのうち、紹介ルートで最も効くのは二つめの解決事例です。件数は規模の話にしかならず、お客様の声は主観なので割り引いて読まれます。解決事例だけが「自分の案件もこう扱われるのか」という具体的な想像をさせます。事務所として最初に整えるべきは、この解決事例のストックです。
実績が見えない事務所で実際に起きていること
実績を形にしていない事務所でも、仕事が減るわけではありません。ただし、増え方が所長の個人的な人間関係の広さに完全に依存します。以下は、私が士業事務所の業務を見せてもらう中で繰り返し出会った詰まり方です。
紹介がベテラン一人に集中して、そこで止まる
紹介元との関係が所長個人にひもづいていると、所長が動ける時間が上限になります。補助者が代わりに紹介元へ挨拶に行っても、手ぶらでは話が続きません。渡す紙が一枚あるかないかで、訪問の意味がまったく変わります。事例集は営業ツールというより、所長以外の人間が事務所を説明できるようにするための道具です。
相談員への説明が毎回口頭で、担当が代わると消える
行政窓口や福祉関係の担当者は数年で異動します。口頭で築いた関係は、その異動で一度ゼロに戻ります。前任者から後任へ引き継がれるのは、たいてい机の引き出しに残った紙です。デジタルで送った案内は引き継ぎの対象になりません。
事例が個人のメモの中に眠っている
ほとんどの事務所には、事例の素材はすでに大量にあります。受任時の相談メモ、進行中の連絡記録、完了報告書、依頼者から届いた礼状。足りないのは素材ではなく、素材を外に出せる形に直す工程と、それを誰がいつやるかの決めごとです。
この工程が重いと感じられてきたのは、匿名化と文章化を人の手でやると一件あたり一時間近くかかるからです。生成AIが変えたのはまさにここで、匿名化済みの素材を型に流し込む作業は数分で終わります。逆に言えば、匿名化のルールさえ決まっていれば、事例づくりは月に三十分の作業に収まります。
ネットを使わない層に届く三つの形
実績を載せる場所として最初にホームページを思い浮かべる必要はありません。紹介と行政ルートの相談者は、そもそも事務所名で検索しないまま面談に来ます。優先すべきは、手渡しできる形と、相手の机に残る形です。
形その一:紙の事例集(A4で四〜八ページ)
もっとも汎用性が高いのが、A4の冊子です。表紙に事務所の基本情報、二ページ目に取扱いの構成比、三ページ目以降に解決事例を一件一ページで並べます。八ページを超えると読まれないので、事例は最大でも六件に絞ります。印刷はモノクロで構いません。カラーである必要よりも、文字が大きいことのほうが重要です。
本文の文字は十一ポイント以上、見出しは十四ポイント以上を目安にしてください。相談者本人が高齢である場合はもちろん、行政の担当者も相談者に見せながら説明するため、老眼で読める大きさが実用上の条件になります。
形その二:面談で開く差し込み式の資料
事例集を冊子として固定してしまうと、相談者ごとに見せたい事例を選べません。そこで、クリアファイルに一件一ページの事例シートを差し込み、面談の場で相談内容に近い一枚だけを抜いて見せる形が使えます。相続なら相続の事例、後見なら後見の事例と、その場で入れ替えます。
形その三:行政・専門職向けの活動報告
市町村の相談窓口、社会福祉協議会、地域包括支援センター、成年後見の中核機関などに向けては、事例集そのものより「一年間に何をどれだけ扱ったか」の報告のほうが受け取られやすいです。相談件数、受任件数、そのうち行政経由の割合、平均的な処理期間、対応した相談類型の内訳。これをA4一枚にまとめ、裏面に事例を二件だけ載せます。
これは営業資料ではなく報告書の体裁にしてください。窓口担当者は、営業を受け取ることには抵抗がありますが、紹介先からの報告を受け取ることには抵抗がありません。同じ内容でも、表紙の一語で相手の受け取り方が変わります。
三つの形の使い分け
| 形 | 渡す相手 | 分量と体裁 | 更新の頻度 |
|---|---|---|---|
| 紙の事例集(冊子) | 紹介元の事業者、相談会の来場者、地域の会合 | A4で四〜八ページ、モノクロ、本文十一ポイント以上 | 年一回まとめて刷り直す |
| 面談用の差し込みシート | 面談に来た相談者本人と同席の家族 | 一件一ページ、クリアファイルに十五枚程度 | 事例ができるたび一枚単位で差し替え |
| 行政・専門職向け活動報告 | 市町村の相談窓口、社協、包括、中核機関 | A4一枚(表=数字、裏=事例二件)、報告書の体裁 | 年度末または年度初めに一回 |
| お客様の声の一枚もの | 面談中の相談者、相談会の卓上配布 | A4一枚に三〜四件、手書きの写しを含める | 半年に一回 |
名刺・封筒・完了報告に同封して運ぶ
作った紙は、配る機会を別途つくると続きません。すでに発生している郵送や手渡しの流れに乗せます。完了報告書を郵送するときの同封物、紹介元へ書類を届けるときの添え物、相談会の受付での配布。この三つに載せるだけで、年間の配布枚数は自然に数百枚になります。
案件記録から解決事例を生成する手順の全体像
ここからが本題です。案件記録という、そのままでは絶対に外へ出せないものを、外へ出せる解決事例に変える工程を五つに分けます。順番を守ることが重要で、特に匿名化を先に済ませてからAIに渡すという順序は入れ替えないでください。
| 工程 | やること | AIに任せてよい範囲 | 司法書士がやる範囲 |
|---|---|---|---|
| 1 選定 | 今月の完了案件から事例にする一件を選ぶ | なし(案件一覧の並べ替え程度) | 依頼者との関係、紛争性の有無を見て選ぶ判断 |
| 2 素材集め | 相談メモ・進行記録・完了報告書を集める | ファイルの収集や時系列への並べ替え | 紛争情報や第三者の情報が混ざっていないかの確認 |
| 3 匿名化 | 置換ルール表に従って固有情報を置き換える | ルール表を渡した上での機械的な置換の下処理 | 置換ルールの決定と、置換後の突き合わせ確認 |
| 4 型に流す | 匿名化済み素材を事例の型に整形する | 文章の構成・要約・読みやすさの調整(ここが主戦場) | 事実関係の歪みがないかの読み合わせ |
| 5 確認と同意 | 依頼者に見せて掲載の同意をもらう | 同意書の文案の下書き | 依頼者への説明と同意の取得、最終的な掲載可否の判断 |
工程1 どの案件を事例にするかを選ぶ
選ぶ基準は「珍しさ」ではなく「よくある度」です。年に一度あるかないかの難案件は読み物としては面白いのですが、相談者は自分の状況と重ねられません。むしろ、戸籍が数世代さかのぼった相続、遠方の相続人と連絡がつかなかった案件、住所がつながらず不在住証明を取った案件といった、地味で頻出する型を選びます。
逆に、事例にしてはいけない案件もはっきりしています。相続人間で争いが顕在化した案件、債務整理のうち破産・個人再生に関わるもの、成年後見で親族間の対立が背景にあるもの、関係者が特定されうる著名人や地域で知られた法人の案件です。これらは匿名化の巧拙にかかわらず外しておくのが安全です。
工程2 素材を三点そろえる
事例に必要な素材は、受任時の相談メモ、進行中のやり取りの記録、完了報告書の三点です。相談メモからは相談者が最初に困っていたことを、進行記録からはつまずきと処理を、完了報告書からは結果と所要期間を拾います。この三点がそろえば、四百字程度の事例は必ず書けます。
素材を集める段階で、そもそも記録が残っていない事務所も多いはずです。その場合は事例づくりを止めるのではなく、今月から受任時に三行だけメモを残すところから始めてください。「誰から相談が来たか(紹介経路)」「最初の困りごとは何か」「終わったときに何が変わったか」。この三行が翌年の事例の素材になります。
工程3 匿名化してからAIに渡す(順序を逆にしない)
ここが最も事故が起きやすい工程です。案件記録をそのままAIに貼り付けて「個人情報を伏せて事例にして」と頼むやり方は、便利に見えて成立しません。伏せる作業をAIに任せた時点で、伏せる前の情報を外部サービスに渡していることになるからです。生成AIに司法書士の業務情報をどこまで入れてよいかの線引きは、司法書士がChatGPTに戸籍・登記情報を入れてよいかで整理していますので、事務所のルールはそちらの基準に合わせてください。
実務上の手順は単純です。案件記録を手元のワープロソフトで開き、次章の置換ルール表に従って置き換えたテキストを別ファイルとして作ります。AIに渡すのはその別ファイルだけです。置き換えに三分、AIでの整形に二分。合わせて五分の工程だと思ってください。
工程4 事例の型に流し込む
事例の型は事務所で一つ決めておきます。おすすめは、相談のきっかけ、直面していた問題、事務所が行ったこと、途中で起きたつまずき、結果と所要期間、同じ状況の方へのひとこと、の六段構成です。一件あたり四百字から六百字。長くすると読まれません。
AIには、匿名化済みの素材と型の定義を渡して、六段構成の文章に整えてもらいます。ここで指示に必ず入れておきたいのが、「素材にない事実を補わない」「断定的な表現を避ける」「専門用語には短い言い換えを添える」の三点です。生成AIは空白を埋めたがるので、明示しないと存在しない経緯を作文します。
工程5 読み合わせと同意
できあがった文章は、必ず司法書士自身が案件記録と突き合わせて読みます。読む観点は二つで、事実がねじれていないかと、匿名化した情報が復元されないかです。この読み合わせに五分かけられないなら、事例づくりは始めないほうがよいと考えてください。
匿名化の置換ルールを事務所の表として決める
匿名化を毎回その場の判断でやると、担当者ごとに濃さがぶれます。ぶれると、あるときは書きすぎ、あるときは何も伝わらない文章になります。事務所として一枚の表を作り、それを見ながら置き換えるのが最も安全で速いやり方です。
匿名化は「消す」ではなく「置き換える」
固有名詞を黒く塗りつぶすと、文章は安全になりますが同時に読めなくなります。「〇〇市の〇〇様から、〇〇の相談を受けました」では何も伝わりません。目指すのは、特定に使える情報を落としつつ、状況の輪郭は残す置き換えです。市名を落とすなら「県内の市部」に、金額を落とすなら「一千万円台」に、というように、粒度を一段上げた別の言葉を入れます。
この「一段上げる」感覚が匿名化の中心です。情報を削ると事例の価値が消えますが、粒度を上げるだけなら価値はほとんど落ちません。相談者が知りたいのは「自分と似た状況か」であって、正確な地名や金額ではないからです。
置換ルール表(そのまま事務所で使える形)
| 項目 | 案件記録での書かれ方 | 置き換え後の表記 | 判断の基準 |
|---|---|---|---|
| 依頼者の氏名 | 山田花子様 | ご相談者(六十代・女性) | 氏名は全削除。年代は十歳刻み、性別は残してよい |
| 相続人の氏名 | 山田一郎、山田二郎 | 長男の方、次男の方 | 続柄だけを残す。名前・イニシャル・仮名は使わない |
| 被相続人の氏名 | 山田太郎(令和三年死亡) | お父様(当時八十代) | 続柄と年代のみ。死亡年月日は書かない |
| 関与した専門家・事業者名 | 〇〇不動産、〇〇銀行〇〇支店、税理士〇〇氏 | 不動産会社、地元の金融機関、顧問税理士 | 業種のみ残す。支店名・担当者名は削除 |
| 行政機関名・担当者名 | 〇〇市福祉課の〇〇さん | 市の福祉担当部署 | 自治体名と個人名は削除。部署の機能だけ残す |
| 市区町村名・町名・字名 | 埼玉県〇〇市〇〇町 | 県内の市部/隣県/遠方の地方都市 | 都道府県名も原則落とす。事務所所在地との遠近だけ残す |
| 不動産の所在・地番・家屋番号 | 〇〇市〇〇一丁目2番3 家屋番号2番3 | ご自宅の土地建物 | 地番・家屋番号は完全削除。用途(自宅・農地・貸家)のみ |
| 不動産の個数・持分 | 土地三筆・建物一棟、持分四分の一 | 土地が複数筆と建物一棟/共有持分あり | 筆数は「複数筆」に丸める。持分の分数は書かない |
| 評価額・課税価格 | 固定資産評価額一二三四万五千円 | 評価額は一千万円台 | 百万円未満は切り捨て、〇〇万円台または〇千万円台に丸める |
| 相続財産の総額 | 預貯金と不動産で約四千八百万円 | 不動産と預貯金がある一般的な規模 | 総額はレンジにするか、原則として書かない |
| 報酬額・実費 | 報酬十二万円、登録免許税八万四千円 | 基本の報酬と実費(登録免許税を含む) | 金額は書かない。書くなら料金表の範囲を別記する |
| 受任時期・完了時期 | 令和六年四月受任、同年八月完了 | 数年前の春に受任、その年の夏に完了 | 年は「数年前」「昨年」まで。月は季節に置き換える |
| 所要期間 | 四か月半 | 約四か月 | 期間は事例の価値そのもの。丸めて残してよい |
| 戸籍の通数・取得先 | 〇〇市ほか七自治体から二十三通 | 八つの自治体から二十通あまり | 自治体名は削除、数は残す。相続人の特定に至らない範囲で |
| 家族関係の経緯 | 三十年前に家を出た次男と絶縁状態 | 長く連絡が途絶えていた相続人がいた | 年数と理由は削る。「連絡がつかない」という状態だけ残す |
| 健康状態・施設名 | 〇〇苑に入所、要介護四、認知症 | ご本人が施設に入所され、判断能力に不安があった | 施設名・介護度・病名は削除。手続き上の制約だけ残す |
| 会社名・商号・法人番号 | 株式会社〇〇(法人番号〇〇) | 県内の建設業の会社(従業員二十名程度) | 商号・法人番号は削除。業種と規模帯のみ |
| 役員・株主の氏名 | 代表取締役〇〇、株主〇〇 | 代表取締役の方、創業者のご家族 | 氏名は削除。役割だけ残す |
| 特徴的すぎる事情 | 火災で自宅が焼失、地元紙に載った | (事例そのものを採用しない) | 置き換えでは消せない特徴は、事例から外す |
地名をどこまで丸めるか
地名の扱いは事務所によって判断が分かれるところです。「埼玉県内の市部」まで書くのか、「当事務所から車で三十分ほどの市」にするのか、いっそ地理情報を全部落とすのか。判断の物差しは、その案件がその地域で何件くらいありそうかです。県内で年に数百件ある類型なら市部までは残せますし、村単位でしか起きない特殊な事情が絡むなら地理情報は全部落とします。
迷ったときは、事務所の所在地との関係だけを残す書き方が便利です。「遠方の自治体から戸籍を取り寄せた」「相続人が県外にお住まいだった」といった表現なら、手続きの難しさは伝わるのに場所は特定できません。
金額と時期は、事例の使い道から逆算する
金額を書くと事例は具体的になりますが、同時に危険度も上がります。報酬額を書けば料金表と受け取られ、実際の見積りと違ったときに苦情の種になります。評価額を書けば、地域と組み合わせて不動産が特定される可能性が出ます。原則としては、報酬は書かない、評価額は千万円単位に丸める、が安全側の運用です。
時期についても同様で、「令和六年四月」のような表記は避けます。ただし所要期間だけは別です。「戸籍の取り寄せに二か月、そこから申請まで一か月、完了まで合計四か月」という情報は、相談者が最も知りたいことのひとつであり、しかもそれ自体では誰も特定できません。期間は積極的に残してください。
不動産の特定情報は、用途と個数だけに落とす
司法書士の事例で特に注意が要るのが不動産です。所在・地番・家屋番号は登記簿を引けば誰でも所有者にたどり着けるため、事実上の氏名と同じ扱いをしてください。地目、床面積、築年数といった情報も、地域と組み合わせると特定に近づきます。
残してよいのは、用途(自宅、農地、貸家、共有の土地)と大まかな個数、そして手続き上の論点(未登記建物があった、他の相続人との共有だった、私道の持分が漏れていた)です。この三つが残っていれば、事例としての情報量は十分に確保できます。
相続人の続柄と人数の丸め方
相続人の構成は事例の骨格なので、完全に消すと意味がなくなります。「配偶者と子三人」「兄弟姉妹が相続人になり、代襲相続で甥姪まで含めて九人」といった構成は残します。ただし、人数が極端に多い場合や、非嫡出子・養子縁組・認知といった構成そのものが珍しい場合は、それが特定材料になるため、事例として採用しないか、人数を「十人近く」のように丸めます。
組み合わせで特定される事故を防ぐ最終チェック
個々の情報は匿名化できていても、複数の情報を組み合わせると個人にたどり着くことがあります。これが匿名化で最も見落とされる論点です。事例が仕上がったら、次の表の観点で一度だけ点検してください。
| 点検の観点 | 危ないサイン | 対処 |
|---|---|---|
| 地域と職業の組み合わせ | 地名を丸めても「地元で長く商店を営んでいた」など職業が具体的 | 職業は「自営業」まで抽象化するか削除する |
| 相続人構成の珍しさ | 代襲・数次相続が重なり構成が特異 | 人数を丸めるか、その事例を採用しない |
| 時期と出来事の組み合わせ | 災害・区画整理・大型開発など地域の出来事に紐づく | 時期の記述を落とし、出来事への言及を消す |
| 紹介経路の具体性 | 「〇〇の相談会で知り合った」など経路が一意 | 「知人のご紹介」「行政の窓口経由」まで丸める |
| 関係者が読む可能性 | 相続人の一人が事例を読んで自分の件と分かる | 当事者が読んで分かるのは前提。同意の範囲で扱う |
| 他の事例との突き合わせ | 同じ号の別事例と情報を足すと絞り込める | 同一冊子に近い類型を並べない |
最後の観点は特に重要です。当事者本人が読めば自分の件だと分かるのは避けられません。だからこそ、匿名化だけで済ませず掲載の同意をセットで取ります。匿名化は第三者に対する配慮、同意は当事者に対する配慮であって、片方だけでは足りません。

ここだけは外さない三点
一、匿名化は必ずAIに渡す前に、手元で終わらせる。
二、当事者が読めば分かるのは前提。だから同意を必ず取る。
三、置き換えても消えない特徴を持つ案件は、事例にしない。
依頼者から掲載の同意をもらう段取り
同意の取得は、身構えるほど難しくありません。難しく感じるのは、いつ・何を・どう聞くかが決まっていないからです。決めてしまえば、完了報告の場に一つ手順が増えるだけです。
聞くのは完了報告の場がいちばんよい
依頼者の気持ちが最も前向きなのは、登記が完了して権利証や登記完了証を渡す場面です。ここで「今回のような相続のご相談が増えていて、同じことで困っている方に向けて、お名前や場所が分からない形で流れをご紹介したいのですが」と切り出します。受任の途中に聞くと、依頼者は「断ったら扱いが変わるのでは」と感じるため、必ず終わってからにします。
郵送で完了報告をする事務所なら、同封する書面に同意の依頼を一枚入れる形になります。返送してもらう手間をかけさせるので、返信用の封筒は必ず同封してください。返送率は面談で聞く場合よりかなり落ちます。
何に同意してもらうのかを紙に書き出す
「事例として使わせてください」だけでは同意の対象が曖昧です。依頼者が想像する掲載先と、事務所が実際に使う場所がずれると、後でトラブルになります。掲載先(紙の事例集、面談資料、行政向け報告、ホームページ)、記載する範囲(続柄・年代・おおよその期間まで、氏名や地名は載せない)、掲載する期間、取り下げの方法。この四つを紙に書いて渡します。
そして、必ず完成した文章そのものを見せてください。実物を見せて同意をもらうと、後から「そんな話は聞いていない」がほぼ起きません。文章を見せずに包括的な同意だけ取るやり方は、手間は少ないですが、事務所を守る力は弱くなります。
同意書に入れておく項目
| 記載項目 | 書き方の目安 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 掲載する媒体 | 紙の事例集、面談時の資料、行政・関係機関への報告、事務所ホームページを列挙してチェック欄にする | 媒体をまとめて「広報物」と書くと範囲が読めない。個別に並べる |
| 掲載する内容の範囲 | 続柄・おおよその年代・手続きの流れ・所要期間まで。氏名・住所・不動産の所在・金額は掲載しないと明記 | 「個人が特定されない範囲で」だけでは基準が伝わらない |
| 掲載する文章の確認 | 掲載予定の文章を添付し、確認済みのチェック欄を設ける | 文案を見せないまま同意を取ると後から差し替えになる |
| 掲載期間 | 三年間など期限を切り、以後は事務所から改めて確認すると書く | 無期限にすると、依頼者の状況が変わったときに対応できない |
| 撤回の方法 | 電話一本で取り下げられること、連絡先、取り下げ後の対応(次の増刷から削除)を書く | すでに配った紙は回収できない。その旨も正直に書く |
| 署名または記名押印 | 日付と氏名。相続案件では代表して手続きをされた方の署名 | 相続人全員の署名が要るかは案件による。判断は司法書士が行う |
断られたときの代替手段
同意が得られないことは普通にあります。そのときに使えるのが、複数案件をまとめた統計型の記述です。「当事務所で昨年扱った相続登記のうち、戸籍の取り寄せに二か月以上かかった案件がおよそ三分の一ありました」といった書き方なら、特定の案件を指していないため同意は不要です。
もうひとつが、匿名度をもう一段上げた「よくある型」への一般化です。複数の似た案件から共通の流れだけを抜き出し、特定の一件ではなく類型として書きます。この場合は文中に「実際の事案を一般化した例です」と明記してください。読み手を誤解させない書き方であることが条件になります。
高齢の依頼者・判断能力に不安がある方の扱い
成年後見や、判断能力の低下が見られる方が関わる案件では、掲載同意を取ること自体を見送るのが基本です。本人の同意能力が問われる場面で、事務所の広報のために同意を求めるのは筋が通りません。ご家族の同意で代替する運用も、後見の文脈では避けたほうがよいと考えます。
後見関係の実績を示したい場合は、個別事例ではなく件数と体制の情報で代えてください。「受任中の後見案件が何件」「家庭裁判所への定期報告を年に何件提出」「後見人としての活動年数」。この種の情報は当事者の事情に踏み込まないため、行政や中核機関に対しては十分に説得力があります。
お客様の声を無理なく集める
解決事例が事務所の言葉であるのに対し、お客様の声は依頼者の言葉です。両方あると紙面の説得力が変わります。ただし、集めるのに手間をかけると続かないので、既存の流れに一枚差し込むだけの設計にします。
完了報告に一枚同封するだけにする
アンケート用紙は、完了報告書と一緒に渡します。面談で渡す場合はその場で書いてもらい、郵送の場合は返信用封筒を入れます。専用の依頼状は不要で、完了報告書の中に一行「同封のアンケートにご協力いただけますと幸いです」と入れるだけで十分です。
質問は三つだけにする
質問項目は「ご相談の前にいちばん不安だったこと」「実際に依頼されてどうだったか」「同じことで迷っている方へひとこと」の三つで足ります。満足度を五段階で聞く欄は不要です。数字は紙面で使えませんし、書く側の負担だけが増えます。
一問目が特に重要です。相談前の不安を依頼者自身の言葉で書いてもらうと、それがそのまま次の相談者に刺さる文になります。「何を持っていけばいいのか分からなかった」「費用がいくらかかるのか怖かった」といった一行は、事務所側の文章では絶対に書けません。
清書するときは言い換えない
手書きのアンケートを紙面に載せるとき、読みやすくするために文章を整えたくなります。ここは我慢してください。誤字の修正と、明らかな個人情報の削除だけにとどめ、言い回しはそのまま使います。整えた瞬間に、文章から人の気配が消えて広告文になります。
AIに清書させる場合も、「誤字と表記ゆれだけを直し、言い回しは変えない」と明示的に指示します。何も言わないと、生成AIは文体をきれいに揃えてしまいます。掲載時の表記は「六十代・女性・相続登記のご依頼」程度にとどめ、氏名やイニシャルは使いません。
相談経路と特化業種で事例を書き分ける
同じ案件でも、誰に見せるかで書くべき一行が変わります。事例を一種類だけ作って全方向に配ると、どこにも刺さらない文章になります。事例の型は共通でよいのですが、冒頭の一行と締めの一行は相手ごとに差し替えてください。
書き分けの軸は「相手が怖がっていること」
相手ごとに恐れているものが違います。個人の相談者は費用と手間、不動産会社は決済が遅れること、金融機関は書類の不備、行政の窓口は苦情、顧問先の会社は登記漏れによる過料。この恐れに対して「そこは起きませんでした」と示すのが事例の役割です。
だから同じ相続登記の事例でも、個人向けなら「最初の面談から完了まで四か月、追加費用は発生しませんでした」で締め、不動産会社向けなら「決済日の三週間前に必要書類の不足を洗い出し、当日は滞りなく完了しました」で締めます。中身は同じ案件です。
相続・個人の相談者向け
相続の個人相談者には、手続きの全体像と自分がやることの少なさを伝えます。「戸籍はこちらで取り寄せました」「ご来所は二回で済みました」「相続人の方への連絡もこちらで行いました」。相続登記の義務化以降、期限を気にして相談に来る方が増えているので、期限との関係に触れる一行も入れておくと安心材料になります。
なお、二〇二四年四月一日より前に発生した相続については、二〇二七年三月末までという申請期限が設けられています。この期限に触れた事例は、相談のきっかけとして最も多い型なので、事例集には必ず一件は入れておきたいところです。
不動産会社・金融機関からの紹介向け
この経路では、期日を守れること、連絡が速いこと、不備を事前に潰せることの三点だけが評価されます。相談者への丁寧さは前提として扱われ、加点にはなりません。事例に書くべきは、いつ連絡を受けて、いつまでに何を確認し、当日どうだったかという時系列です。
この層に渡す紙は、事例集よりも一枚ものの実績シートのほうが読まれます。取扱件数、決済への立会い件数、連絡がつく時間帯、担当者の連絡先。感情に訴える要素は不要で、事務的であるほど信用されます。
会社・顧問先向け(商業登記)
会社向けの事例では、「言われる前に気づいてくれる」が最大の価値になります。役員の任期満了を事前に通知した、本店移転にあわせて必要な変更登記を一度に整理した、目的変更の際に許認可への影響を確認した。こうした先回りの記述が、次の依頼につながります。
相談経路別の書き分け対応表
| 相談経路 | 相手が最も恐れていること | 事例に必ず入れる一行 | 避けたい表現 |
|---|---|---|---|
| 個人(相続・自主来所) | 費用が読めない、何度も呼び出される | ご来所は二回、追加のご負担は発生しませんでした | 専門用語の羅列、難易度の強調 |
| 市町村・社協・包括からの紹介 | 紹介先で揉めて苦情が窓口に戻ること | ご本人のペースに合わせ、ご家族にも同じ説明を行いました | 成果の誇示、他の専門職の批判 |
| 不動産会社・金融機関 | 決済日に間に合わない、書類不備 | 決済の三週間前に不足書類を洗い出しました | 情緒的な表現、経緯の長い説明 |
| 税理士・他士業からの紹介 | 自分の顧問先との関係を壊されること | ご紹介者と情報を共有しながら進めました | 紹介者を飛ばして直接契約した印象を与える記述 |
| 会社・顧問先(商業登記) | 登記漏れ、過料、決議のやり直し | 任期満了の三か月前にご連絡し、書類を先にご用意しました | 手続きの解説、料金の言及 |
| 成年後見・福祉関係者 | 本人の権利がないがしろにされること | ご本人の意向を確認する時間を最初に取りました | 個別事情の記述(そもそも事例化しない) |
できあがった事例集を実際に使う場面
作った紙は、置いておくだけでは何も起きません。使う場面をあらかじめ三つか四つ決め、そこに必ず登場させる運用にします。
面談の最初の五分で開く
相談者は面談の最初、まだ緊張しています。ここで自分に近い事例を一枚見せると、「同じような人が来ているのだ」と分かって話しやすくなります。効果は信頼の獲得というより、相談者の口が開くことにあります。結果として、初回でヒアリングできる情報の量が増えます。
紹介元へ定期的に届ける
紹介元への訪問は、用がないと足が遠のきます。事例集や活動報告は、その「用」を作るための道具です。年に一回でも、更新した紙を持って顔を出す口実があると、関係が切れません。所長が行けないときは補助者が届けます。
相談会・出張相談での配布
司法書士会や自治体が主催する無料相談会では、その場で受任には至らなくても、後日連絡が来ることがあります。そのときに手元に残っているのは名刺か配布物です。名刺だけだと連絡の理由が思い出せませんが、事例集があると「あのとき読んだ内容」で電話がかかってきます。
ホームページ掲載は副次的な置き場所と考える
できあがった事例をホームページに載せること自体は、やっておいて損はありません。ただしそれは、紹介を受けた相談者が事務所名で検索したときに、話が合う情報が出てくるようにしておくという確認用の役割です。新規の相談を集めるための施策としては期待しないでください。
掲載時の注意は紙と同じです。むしろネット上のほうが誰でも読めるため、匿名化は一段厳しくします。紙の事例集には残した「県内の市部」のような地理情報も、ネットでは落とすといった調整をしておくと安全です。掲載同意の書面でも、紙とホームページを別のチェック欄にしておく理由がここにあります。
続く仕組みにする(月一件、三十分の運用)
実績づくりが止まる理由はほぼひとつで、「時間ができたらやろう」にしているからです。月に一件、三十分と決めて、案件処理の流れの中に組み込んでください。
完了報告のついでに一件だけ書く
いちばん現実的なのは、完了報告書を作るときに「この案件は事例にするか」を判断し、するなら匿名化済みのメモをその場で残す運用です。記憶が新しいうちなら三分で書けます。月末にそのメモをAIで整形すれば、年に十二件の事例が貯まります。
案件管理の中に「事例メモ」の欄を一つ作る
事例メモを別ファイルで管理すると、まず続きません。案件管理に使っているソフトや表計算の中に「事例メモ」「掲載同意」の二列を足すだけで、案件を閉じるときに自然に埋まる状態になります。掲載同意を取った案件だけを抽出できるようにしておくと、冊子を作るときに探し回らずに済みます。
この作業を補助者に任せる場合は、手順を文書として残してください。匿名化の置換ルール表と事例の型があれば、補助者でも下書きまでは作れます。事務所の手順を人に渡せる形にしていく進め方は、司法書士事務所の属人化を解消するで扱っている考え方と同じです。
空いた時間を、実績づくりに戻す
書類整理や進捗連絡を機械に寄せると、事務所には時間が戻ります。その時間の使い道を決めていないと、結局は目の前の案件処理に吸収されて、事務所の状態は変わりません。戻ってきた時間の一部を、月一件の事例づくりと、年一回の紹介元回りに割り当ててください。
どの工程を手放し、どの工程を自分で引き受け続けるかという仕分けそのものは、司法書士の仕事はAIでどう変わるかで業務分野ごとに整理しています。実績づくりは、その仕分けの出口にある仕事です。効率化の目的が「楽をすること」で止まると続きませんが、「紹介され続けること」に接続すると意味が変わります。

よくある質問
守秘義務がある以上、解決事例は作らないほうが安全ではないですか
作らないという選択も、事務所の方針としては成り立ちます。ただ、その場合でも件数の実績と体制の情報は出せますし、依頼者の同意を得た上での掲載であれば守秘義務との衝突は避けられます。危ないのは、方針を決めないまま担当者の判断でその都度書いてしまう状態です。置換ルールと同意の手順を決めた上で「やる範囲」を明確にするのが、いちばん安全な運用だと考えています。
案件記録をそのままAIに入れて匿名化させてはいけませんか
順序としては避けてください。匿名化させるためには、匿名化前の情報を渡す必要があるからです。学習に使われない設定の法人向けプランであれば取り扱いの前提は変わりますが、それでも「渡した」という事実は残ります。置換ルール表があれば手元での置き換えは三分程度で終わりますので、そこだけは手作業にするのが現実的です。
依頼者に同意をお願いすると、関係が気まずくなりませんか
受任の途中で聞くと、依頼者は断りづらさを感じます。完了報告の場で、断っても手続きに何の影響もないことを先に伝えてから聞けば、気まずくなることはほとんどありません。むしろ「同じことで困っている方の役に立つなら」と快く応じてくださる方が多い、という声をよく聞きます。断られた場合に備えて、統計型の記述という代替手段を用意しておくと、事務所側も気楽に聞けます。
事例は何件あれば形になりますか
冊子として体裁が整うのは六件前後です。取扱いの中心が相続であれば、相続の型違いで四件、商業登記と後見で各一件という構成でも十分に成り立ちます。まずは三件でA4二つ折りの簡易版を作り、半年後に六件版へ差し替える進め方が現実的です。完璧な冊子を目指して一年かけるより、粗くても配り始めたほうが早く反応が返ってきます。
印刷はどこまでお金をかけるべきですか
事務所のプリンタで刷ったモノクロで構いません。渡す相手が読むのは中身であって、紙質ではないためです。年に一回、まとめて印刷会社に出す場合でも、部数は数百部で足ります。凝った装丁にすると、内容を更新したくなったときに刷り直しをためらう理由になります。差し込み式にして一枚単位で更新できるようにしておくほうが、長い目では安く済みます。
補助者に事例づくりを任せてよいですか
下書きまでは任せられます。置換ルール表に沿った匿名化と、型に沿った文章の整形は、手順が明文化されていれば補助者の作業として成立します。ただし、どの案件を事例にするかの選定、匿名化後の再特定リスクの確認、依頼者への説明と同意の取得の三つは司法書士が行ってください。この三つは、案件の全体像と依頼者との関係を知っている人でないと判断できません。
ホームページを持っていない事務所でも事例は作る意味がありますか
あります。むしろホームページを持っていない事務所ほど、紙の事例集の価値が高くなります。紹介元や行政窓口に「この事務所はこういう仕事をしています」と伝える手段が、ほかにないからです。この記事で紹介した三つの形は、いずれもホームページの有無と無関係に機能します。
事例づくりの型と匿名化ルールを、一緒に作りませんか
「どの案件なら事例にしてよいか」「どこまで置き換えれば出せるか」は、事務所の取扱い分野によって答えが変わります。案件記録から解決事例を起こす手順、AIに渡してよい範囲、そして事例づくりのために空ける時間の作り方まで、事務所の状況を伺いながら一緒に整理します。ツールの導入に補助金が使えるかどうかもあわせてご案内します。
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