施設情報(アクセス・チェックイン時間・食事・設備・キャンセル規定)を1枚にまとめてAIに読ませれば、定型的な問い合わせの多くは多言語で下書きできます。目安として、同じ質問が繰り返されている宿なら、問い合わせの8割程度を「AIが下書きできる範囲」に寄せられる可能性があります。
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ただし、氏名・予約番号・パスポート情報・カード情報を、そのまま生成AIへ入れる運用にはしません。
そして、AIは「宿としてどう対応するかを決める人」ではありません。宿が決めた内容を、英語や中国語などの返信文に整える担当として使うのが、小規模ホテル・旅館では現実的です。
1〜30室程度の宿では、フロント専任のスタッフを置けず、経営者、支配人、女将が予約管理と問い合わせ対応を兼任していることも珍しくありません。
Booking.comやAirbnbなどのOTA、自社サイトから英語や中国語の問い合わせが届くたびに、「翻訳する」「日本語で答えを考える」「もう一度外国語にする」「表現がおかしくないか確認する」という作業を繰り返していないでしょうか。
この記事では、チャットボットを導入して問い合わせを完全自動化する方法は扱いません。また、お客様との会話やおもてなしそのものをAIへ渡すことも目的にしません。
予約の前後に発生する「調べる・翻訳する・文章にする」という事務作業だけをAIへ渡す方法を、小規模ホテル・旅館向けに整理します。
※OTAの規約やメッセージ機能は変更される可能性があります。本記事内のOTAに関する情報は2026年9月13日時点で確認できた公式情報をもとにしています。実際に運用する際は、各OTAの最新規約・ヘルプ・パートナー向け管理画面をご確認ください。
問い合わせの8割は同じ質問|まず内容を7種類に分ける

外国語の問い合わせが増えると、「英語対応ができるスタッフを置かなければいけないのではないか」と考えがちです。
しかし、まず確認してほしいのは何語で問い合わせが来ているかではなく、何を聞かれているかです。
過去1か月程度の問い合わせを見返してみると、同じ質問が何度も繰り返されている宿は少なくありません。
代表的なのは、次の7種類です。
- アクセス
- チェックイン・チェックアウト
- 食事・アレルギー
- 子供・ペット
- 駐車場
- キャンセル
- 送迎
毎回内容が違って見えても、「質問の種類」で分ければかなり整理できます。
アクセス・最寄り駅
外国人宿泊者から多いのが、交通に関する問い合わせです。
たとえば、最寄り駅はどこか、駅から徒歩何分か、バスは使えるか、タクシーならどこで降りるか、夜遅くても公共交通機関で行けるか、といった質問です。
ここで毎回文章を考える必要はありません。宿側で「最寄り駅」「駅からの標準的な行き方」「最終バス後の代替手段」などを事前に決めておけば、AIはその情報を使って問い合わせ言語に合わせた返信を作れます。
チェックイン・チェックアウト時間
次に多いのが時間に関する質問です。
たとえば、「22時に到着しても大丈夫ですか」「チェックイン前に荷物を預けられますか」「チェックアウト後も荷物を置けますか」といった内容です。
これも、通常チェックイン時間、最終チェックイン時間、荷物預かりの可否、レイトチェックイン時のルールを施設情報として整理しておけば、毎回ゼロから翻訳する必要はありません。
ただし、通常時間を大きく外れる到着など、例外を受け入れるかどうかの判断までAIへ任せないことが重要です。
食事・アレルギー
食事については、AIへ渡しやすい質問と、人が判断すべき質問を分けます。
たとえば、朝食は何時からか、夕食は何時までか、食事会場はどこか、素泊まりプランに朝食を追加できるかなど、施設側で答えが決まっている内容は下書きしやすいでしょう。
一方、「重度の○○アレルギーですが完全除去できますか」といった問い合わせは別です。AIが勝手に「対応できます」と回答してはいけません。厨房や担当者が対応可否を判断したあと、その決定した内容を外国語へ整えるところだけAIへ戻すのが安全です。
子供・ペット
子供料金、添い寝、ベビーベッド、ペット同伴なども、よくある問い合わせです。
ここも施設ルールが決まっていればAIで下書きできます。逆に、通常ルールから外れる人数構成や特別対応が必要な場合は、人が判断します。
駐車場
駐車場は定型化しやすい項目です。
たとえば、駐車場の有無、台数、予約が必要か、大型車が停められるか、満車の場合の案内などを施設情報へまとめておきます。
キャンセル
キャンセルは、少し慎重に扱う必要があります。
同じ宿でも、公式サイト予約、OTA予約、早割プラン、返金不可プラン、通常プランで条件が異なることがあるためです。
AIへ「うちのキャンセル規定を答えて」とだけ指示するのではなく、その予約に適用される条件を人が確認したうえで文章化させる運用にします。
送迎
送迎についても、対応時間、乗車場所、予約期限、人数、対応できない時間などを決めておけば定型化できます。
ただし、「通常時間外でも迎えに来てもらえませんか」という依頼は、スタッフ配置などを確認して人が判断します。
つまり、AI導入の第一歩は「英語を覚えること」ではありません。過去の問い合わせを分類して、宿側ですでに答えが決まっている質問を見つけることです。
AIに読ませる「施設情報シート」を1日で作る
問い合わせ対応をAIで楽にするために、最初に作ってほしいのが施設情報シートです。
難しいシステムではありません。言い換えれば、AIに読ませるための「宿の説明書」です。
毎回、「チェックインは15時です」「駐車場は5台あります」「駅から徒歩10分です」と入力するのではなく、一度まとめておきます。
施設情報シートとは
施設情報シートには、たとえば次のような項目をまとめます。
| 分類 | 整理しておく内容 |
|---|---|
| 基本情報 | チェックイン・チェックアウト時間 |
| アクセス | 最寄り駅、バス停、徒歩ルート |
| 駐車場 | 台数、料金、予約要否 |
| 食事 | 朝食・夕食時間、追加可否 |
| 設備 | Wi-Fi、浴場、エレベーターなど |
| 子供 | 添い寝、子供料金の基本ルール |
| ペット | 同伴可否、条件 |
| 送迎 | 場所、時間、予約方法 |
| キャンセル | 案内時の確認ルール |
| 荷物 | 到着前・出発後の預かり |
| その他 | よくある質問と回答 |
重要なのは、AIに詳しく説明することではなく、宿として確定している事実を書くことです。
過去の問い合わせから質問を集める
ゼロから項目を考える必要はありません。Booking.com、Airbnb、自社サイト、メールなどに残っている過去の問い合わせを10〜30件程度見てください。
そして、「何について質問されたのか」だけを抜き出します。たとえば、「駐車場」「最寄り駅」「荷物預かり」「朝食時間」「レイトチェックイン」というように分類します。
同じ質問が3回以上出てくるなら、施設情報シートへ入れる候補です。
施設の「事実」だけを書く
施設情報シートで避けたいのが、曖昧な書き方です。
たとえば、「遅い時間でもたぶん対応可能」ではなく、「通常の最終チェックインは21時。21時以降はスタッフ確認が必要」のように分けます。
AIは文章を整えることは得意でも、宿の現場事情までは知りません。AIが判断できない状態をなくすには、事実と判断が必要なことを分けて記録することが重要です。
判断が必要な項目には「スタッフ確認」と書く
すべてに回答を用意する必要はありません。むしろ、値引き、時間外送迎、団体の食事変更、重度のアレルギー、特別な部屋変更などには、「スタッフ確認が必要」と書いておく方が安全です。
AIに「何とか回答して」と要求すると、不足している情報を補うような回答を作ってしまう可能性があります。
「施設情報に答えがない場合は、推測せず『スタッフ確認が必要』と回答する」というルールも一緒に設定しておくとよいでしょう。
スマホでも更新できる形にする
1〜30室程度の宿なら、このためだけに大規模なPMSや問い合わせ管理システムを導入する必要はありません。
最初は、共有できる文書、スプレッドシート、社内で使っているクラウド文書などでも十分です。
重要なのは、情報を作った人しか直せない状態にしないことです。たとえば送迎時間が変わったときに、女将やフロント担当者がスマホから修正できる状態にしておきます。
情報が古いままなら、AIは古い情報を丁寧な英語に変換してしまいます。AIの精度より先に、回答元となる情報を最新に保つ仕組みを作りましょう。
問い合わせ文を貼って返信下書きを作る手順

施設情報シートができたら、問い合わせ対応は次の流れにします。
基本の流れ
問い合わせを受ける → 不要な個人情報を削る → AIで下書き → 日本語で確認 → OTAやメールから人が送信
完全自動送信にはしません。
手順1:個人情報を消して問い合わせ文を入力する
外国語のメッセージが来たからといって、その画面を丸ごとコピーしてAIへ貼り付ける運用にはしません。
まず、氏名、予約番号、電話番号、メールアドレス、パスポート情報、カード情報など、返信文を作るうえで不要な部分を外します。
たとえば、「John Smith様、予約番号123456ですが……」という問い合わせであっても、AIに必要なのが質問内容だけなら、「宿泊予定者から次の問い合わせが来ています」として質問部分だけ渡せます。
手順2:施設情報シートを参照させる
次に、「あなたの知識だけで答えず、この施設情報に書かれている内容だけを使ってください」と指示します。これが重要です。
生成AIに宿の名前だけ伝えて、「うちの駐車場について答えて」と聞く使い方は避けます。インターネット上の古い情報や、不確かな情報が混ざる可能性があるからです。
回答元は、自館で管理している施設情報シートに限定するのが基本です。
手順3:問い合わせと同じ言語で返信させる
たとえば英語の問い合わせなら英語、中国語なら中国語で下書きさせます。
このとき、単に「翻訳して」と指示するのではなく、「この宿のスタッフとして、施設情報に基づいて返信文を作る」と役割を限定します。
手順4:返信トーンを指定する
宿泊施設の返信では、情報が合っているだけでなく、言い方も重要です。
たとえば、丁寧、簡潔、温かみがある、過度にくだけない、断定しすぎない、できないことは曖昧にしない、といったトーンを決めておきます。
担当者ごとに毎回プロンプトを変えるのではなく、自館の返信ルールとして固定した方が運用しやすくなります。
手順5:日本語訳も同時に出す
外国語が得意ではないスタッフの場合、「英語がきれいだから、そのまま送ろう」という運用は危険です。
おすすめは、①外国語の返信案、②その返信案の日本語訳、③参照した施設情報をセットで出させる方法です。
日本語訳を読めば、「駐車場無料と書いているが、本当は有料だった」といった間違いにも気付きやすくなります。
手順6:人が確認して送信する
最後は人が確認します。
確認するのは、語学の細かな文法だけではありません。特に見るべきなのは、内容が自館ルールと一致しているか、約束してはいけないことを約束していないか、料金やキャンセル条件が正しいか、アレルギーなど安全に関わる内容を断定していないか、OTAのルールに反する案内になっていないか、です。
AIは「外国語ができるフロント責任者」ではありません。文章作成を手伝う事務担当くらいの位置づけがちょうどよいでしょう。
AIに入れてはいけない情報|予約情報は匿名化してから使う

「問い合わせメールをAIで返信したい」と相談されたとき、最も重要なのはプロンプトの作り方だけではありません。むしろ先に決めるべきなのが、何をAIへ入れないかです。
生成AIサービスによって、データの保存方法、学習への利用条件、法人向け設定、管理機能などは異なります。
そのため「どのAIなら絶対安全」と一括して判断するのではなく、まず自社側で必要以上の情報を入力しないルールを作ることが重要です。
氏名
返信文の下書きを作るだけなら、宿泊者の本名が必要ないケースは多くあります。
「お客様」「宿泊予定者」として扱えば文章を作れます。氏名がなくてもできる作業に、本名を入れないようにしましょう。
予約番号
予約番号も同様です。予約内容そのものを検索する仕事と、文章を作る仕事は分けます。
AIへ渡す必要がなければ削除します。どうしても文章構造上必要なら、「予約番号:XXXX」のように置き換える方法もあります。
パスポート画像・パスポート情報
外国人宿泊者の対応では、パスポート関連情報を取り扱う場面があります。
しかし、問い合わせ返信文を作るためにパスポート画像そのものを生成AIへ渡す必要は通常ありません。
「外国人宿泊者だから、とりあえずパスポート画像も一緒にAIへ入れる」という運用にはしないでください。法令上必要な宿泊者情報の取得・保存と、AIで外国語の文章を作る作業は分けて考えます。
クレジットカード情報
カード番号、セキュリティコードなどの決済情報は、問い合わせ文章を作るためにAIへ入力する情報ではありません。
決済に関する問い合わせであっても、「決済に関する質問」として必要な文章部分だけ渡します。
電話番号・メールアドレス
電話番号やメールアドレスも、文章作成に不要なら外します。
基準はシンプルです。「その情報がないと、この返信文を作れないか?」と考えてください。なくても作れるのであれば、入れない方が管理しやすくなります。
問い合わせ画面を丸ごと貼らない
現場で起こりやすいのが、「面倒だから問い合わせ全文をコピーする」という使い方です。
全文には、質問とは関係のない予約情報や個人情報が含まれていることがあります。AIへ渡す前に、質問に必要な部分だけ抜き出すという一手間をルール化しましょう。
面談でよく聞かれる質問
「毎回名前や予約番号を消すのは面倒ではありませんか?」
確かに最初は一手間かかります。しかし、この作業を省くために個人情報を大量にAIへ渡すのではなく、問い合わせ文から必要部分だけ抜き出すテンプレートを作る方が先です。将来的にシステム連携を行う場合も、この線引きができていなければ「何を連携してよいか」を判断できません。
AIではなく人が判断する問い合わせ
AIを使い始めると、「どこまで任せられるか」を考えがちです。
しかし、小規模宿で先に決めたいのは逆です。「これは人が決める」という問い合わせを固定してください。
少なくとも、次の4種類は人の判断を基本にします。
値引き交渉
「3泊するので割引できますか」という問い合わせに、AIが勝手に割引額を決めてはいけません。
宿側で、「今回は値引きしない」「この条件なら対応する」と決めます。
そのあと、「お断りするが、冷たい印象にならない英語へ整えて」とAIへ戻せばよいのです。
クレーム
クレーム対応では、文章を書く前に事実確認が必要です。
たとえば、「部屋が説明と違う」というメッセージが届いた場合、AIには現場の状況が分かりません。
まずスタッフが、予約内容、実際の部屋、お客様の申し出、これまでのやり取りを確認します。宿としてどのように対応するかを人が決め、その後に返信文の整理をAIへ任せます。
医療・健康・安全に関する問い合わせ
「この症状でも温泉に入れますか」「この食品なら重度のアレルギーでも大丈夫ですか」といった質問では、AIに宿としての保証をさせないことが重要です。
施設として確認できる事実と、医学的・安全上の判断を分けます。必要に応じて専門家や適切な窓口の確認につなげます。
団体・特別対応
団体旅行、貸切、通常と違う食事時間、大量の荷物、特別な送迎なども、人の判断が必要です。
AIは、スタッフ数やその日の予約状況を自動的に把握しているわけではありません。
AIは「下書きまで」と決める
線引きすると、次のようになります。
| 問い合わせ | AIに任せること | 人が行うこと |
|---|---|---|
| 最寄り駅 | 返信下書き | 内容確認 |
| 駐車場 | 返信下書き | 内容確認 |
| 通常チェックイン時間 | 返信下書き | 内容確認 |
| 値引き交渉 | 決定後の文章化 | 条件判断 |
| クレーム | 決定後の文章化 | 事実確認・対応判断 |
| 医療・安全 | 表現整理の補助 | 判断 |
| 団体・特別対応 | 決定後の文章化 | 対応可否判断 |
| アレルギー | 確定情報の文章化 | 対応可否判断 |
ポイントは、「AIに考えてもらってから人が承認する」のではなく、「人が判断してからAIに文章化させる業務」があるということです。この違いを社内ルールにしてください。
OTAごとの返信ルールはAIではなく公式情報を確認する
問い合わせ返信をAIで作れるようになっても、もう一つ確認が必要です。
その内容を、そのOTA上で送ってよいかです。
ここをAIの知識だけで判断してはいけません。OTAの規約やメッセージ機能は変更されます。
「昔は送れた」「ほかの宿がやっている」ではなく、最新の公式情報を確認します。
Airbnbは予約前の外部連絡への誘導に注意する
2026年9月13日時点でAirbnbが公開している「Off-Platform and Fee Transparency Policy」では、予約前にゲストへプラットフォーム外での連絡を求めることや、Airbnb外へ予約を移す行為などが禁止されています。また、予約前のやり取りはAirbnb上で行うことが求められています。
そのためAIに、「問い合わせに丁寧に返して」とだけ指示すると、文脈によっては、「詳しくは当館のメールアドレスへお問い合わせください」など、宿側が意図していない外部誘導文を作る可能性があります。
施設情報シートとは別に、「この媒体では外部連絡先への誘導文を勝手に追加しない」といったルールを設定しておくとよいでしょう。
Airbnbは、プラットフォーム内のメッセージを使うことについて、トラブル時にやり取りの記録を確認しやすい利点も案内しています。
Airbnbでは個人情報の取得にもルールがある
Airbnbの公式ポリシーでは、宿泊に無関係な目的で連絡先や本人確認情報を求めることにも制限があります。
一方、法令やコンプライアンス上必要な情報については例外が設けられている場合があります。
したがって、「外国人だから必ずこの情報をメッセージで送ってください」とAIに一律回答させるのではなく、日本の法令上必要なこと、OTAのルール、自館の運用を分けて確認する必要があります。
Booking.comは管理画面・最新公式情報を確認する
Booking.comについては、公開されているビジネスパートナー向けプライバシー情報で、宿泊施設とゲストが予約前後にコミュニケーションできるメッセージ手段を提供していること、またBooking.comの通信手段を介したメッセージが保存・分析される場合があることが説明されています。
また、宿泊施設が受け取るゲストの個人データについては、予約を履行するために必要な範囲で取り扱うことなどが公式条件に記載されています。
一方、今回確認できた公開一次情報だけでは、「Booking.comではメッセージ内の外部連絡先が一律禁止」とまでは確認できませんでした。したがって、本記事ではそう断定しません。
実際にテンプレートを作るときは、Extranetの最新ヘルプ、自館に適用されるパートナー規約、Booking.comからの通知を確認してください。
OTAごとに返信ルールを持つ
施設情報シートは共通で構いません。しかし、返信ルールはOTAごとに分けるのがおすすめです。
たとえば、施設情報シート=全媒体共通の事実、Airbnb返信ルール=Airbnb上でのやり取りに合わせた注意、Booking.com返信ルール=Booking.com側の最新機能・規約に合わせた注意、自社サイトメール返信ルール=自社の個人情報保護方針や連絡方法に合わせる、という形です。
「一つの完璧なプロンプトを作る」よりも、媒体ごとの小さなルールを足す方が管理しやすいでしょう。
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定型化した回答をOTAだけで終わらせない
問い合わせ返信をAIで効率化すると、それだけでも毎日の負担は減ります。
しかし、本当の効果はその先にあります。
同じ質問が何度も来ているということは、宿泊前の情報提供に改善できる余地があるということだからです。
返信テンプレートへ転用する
AIで何度も同じ下書きを作っているなら、その回答はテンプレート化できます。
ただし、「誰にでも同じ文章を送る」という意味ではありません。回答の骨格だけを保存し、問い合わせ内容に合わせてAIが整える形です。
たとえば駐車場なら、基本情報、満車の場合、大型車の場合などを分けておくと使いやすくなります。
自社サイトのFAQへ転用する
「最寄り駅からどう行けばいいですか」という問い合わせが毎週来るなら、返信を早くするだけでなく、公式サイトのアクセス情報も見直せます。
よくある問い合わせから、アクセス、駐車場、チェックイン、荷物預かり、食事時間、子供、ペット、送迎などのFAQを作れます。
問い合わせに答える仕事を効率化しながら、問い合わせそのものを減らす方向にも進めます。
スタッフ用の回答集として使う
外国語対応だけが目的ではありません。
新人スタッフが、「この質問にはどう答えればよいですか」と毎回女将や支配人へ確認している宿でも役立ちます。
施設情報シートがあれば、「うちでは何と答えるか」をスタッフ間で統一できます。外国人スタッフがいる場合は、同じ情報を別言語の社内マニュアルに展開することも可能です。
いきなり自動送信しない
ここまで整うと、「では全部自動返信にしたい」と考えるかもしれません。
しかし、小規模宿では、まず下書き+人確認で十分です。
理由は、施設情報の抜けを見つけられる、AIが間違えやすい質問が分かる、スタッフ判断が必要なケースが蓄積する、OTAごとの注意点を確認できるからです。
1〜2か月運用すると、「この質問はほぼ定型」「ここは毎回人が確認している」という境界が見えてきます。自動化を考えるのは、その後でも遅くありません。
なお、本記事ではAIチャットボット製品の比較や、LINE自動応答の具体的な構築方法までは扱いません。まずは現在届いている問い合わせを整理し、安全に下書きできる状態を作ることを優先します。
小規模ホテル・旅館の問い合わせ対応は「AI導入」より先にルールを作る
外国語の問い合わせが増えると、翻訳ツールや最新AIを探したくなります。
しかし、宿の問い合わせ業務で最初に必要なのは、新しいシステムではありません。
まず、次の順番で整理してください。
- よくある質問を集める
- 施設情報を1枚にまとめる
- AIへ入れない情報を決める
- 人が判断する問い合わせを決める
- AIは下書きまでにする
- OTAごとのルールを確認する
この状態ができていれば、AIツールが変わっても対応できます。
逆に施設情報が整理されていないまま高機能なツールを導入しても、「結局スタッフが毎回確認している」という状態になりやすいでしょう。
小規模宿では、AIに接客そのものを任せる必要はありません。お客様への気遣いや、例外対応の判断は人が行う。その一方で、翻訳する、調べ直す、文章にする、同じ説明を繰り返すという仕事はAIへ渡せます。
「AIに何をさせるか」だけではなく、「何を入れないか」「何を人が決めるか」まで決めて初めて、現場で使えるAI運用になります。
FAQ
外国語が読めなくてもAIで問い合わせ返信を作れますか?
作成自体は可能です。ただし、外国語の返信だけを出力させて、そのまま送信する運用はおすすめしません。「外国語の返信文+日本語訳」を同時に出させ、施設情報や条件に間違いがないか人が確認してから送信してください。AIの役割は翻訳・文章化までと考えると運用しやすくなります。
Booking.comのメッセージをそのままAIへ貼り付けてもよいですか?
問い合わせ画面を丸ごとコピーするのではなく、返信作成に必要な質問部分だけを抜き出すことをおすすめします。氏名、予約番号、電話番号、メールアドレスなど、返信文の作成に不要な情報は削除・匿名化してから利用してください。利用する生成AIサービスのデータ取り扱い条件や自社の個人情報管理ルールも確認が必要です。
AIに問い合わせを自動返信させてもよいですか?
最初から完全自動送信にする必要はありません。特に小規模宿では、「AIが下書き→スタッフが確認→送信」から始める方が現実的です。実際に運用すると、定型化できる問い合わせと、人が判断しなければならない問い合わせの境界が見えてきます。
アレルギーや特別対応の問い合わせもAIに任せられますか?
対応可否の判断は人が行ってください。AIには、厨房や現場スタッフが決定した内容を外国語の返信へ整える作業だけを任せる方法があります。特に医療、安全、重度のアレルギーなどに関わる内容では、AIに独自判断や保証をさせないことが重要です。
無料の生成AIでも宿の問い合わせ対応に使えますか?
文章の翻訳や下書きという機能だけで見れば、利用できるサービスはあります。ただし、料金だけで判断せず、入力データの取り扱い、データ保存、学習利用の設定、アカウント管理、法人向け管理機能などを確認してください。サービスの料金・機能・データ利用条件は変更される可能性があるため、導入時点の公式情報を確認することが重要です。
まとめ
小規模ホテル・旅館のAI問い合わせ対応を一緒に整理します
AIを導入するだけでは、外国語の問い合わせ対応が自動的に楽になるとは限りません。
大切なのは、自館の業務を確認し、どの問い合わせをAIへ渡せるか、何を施設情報として整理するか、どの情報をAIへ入れないか、どこから人が判断するか、スタッフがどの手順で使うかまで決めることです。
「AIを契約したが、結局スタッフごとに使い方が違う」「外国語の問い合わせを楽にしたいが、個人情報が心配」「施設情報シートや返信ルールを自社だけで作るのが難しい」という小規模ホテル・旅館には、AIの初期設定だけでなく、業務整理・設定・スタッフ運用・定着まで含めた導入支援が向いています。
相談前には、分かる範囲で次の情報を整理しておくと、どこからAIへ渡せるか判断しやすくなります。
- 客室数
- 利用しているOTA
- 1週間または1か月の問い合わせ件数
- よく届く質問
- 対応している外国語
- 現在の返信方法
